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二章
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「雷をよろしく、末吉」
「任せろにゃ」
輝夜さんを思い出しボ~ッとしてた僕を糾弾しなかった末吉の男気に応えるためにも、最後はきちんと決めよう。僕はそう、自分で自分に喝を入れた。
前方に闇油怨想を捕捉。七尺、四倍、十六圧を実行し闇油へ全力直進。僕の接近に気付いた闇油が移動と蠕動を止め、静止状態へ移行。攻撃を予測した僕は20メートル後方の末吉を信じて、火花を発動した。
以前の僕は闇油へ、螺旋を描いて接近していた。だが大抵のモノには、長所と短所が併存しているもの。螺旋もその例に漏れず、敵の攻撃を回避しやすいという長所を持つと同時に、斬撃の速度と精度を下げてしまうという短所も持っていた。高精度の高速斬撃は、螺旋より一直線に接近した方が、やはり繰り出しやすいのである。
とはいえバカ正直に直進するだけでは、ただの的になってしまう。ゴールデンウイーク初日の特闇戦のような一世一代の陽動をする場面でない限り、バカ正直な直線攻撃など愚の骨頂。あんなのをいつもしていたら、命が幾つあっても足りはしないのだ。然るにこの、「火花」が必要なのである。
火花とは、百圧を0.2秒間だけ発動し敵の攻撃を回避する、僕の最新習得技術だ。でも正直いうと、昨日までの僕はこれが苦手だった。ひとたび百圧状態になったら戦闘終了までそれを維持する方が、不器用な僕には楽だったのである。よってこんなふうに火花が冴えまくっているのは、今日が初めての事。放電現象を昨日経験したからこそ、僕は今日これを自在に使いこなせているのだ。輝夜さん、重ね重ねありがとう!
もっとも、火花にも短所はある。それは、火花終了のタイミングを敵に見極められやすい事だ。火花を発動する0.2秒という時間は、実は一歩にかかる時間。全速の僕は一秒間に五歩進むから、一歩に0.2秒を費やす。この0.2秒を利用し火花を発動するということは、裏を返せば、一歩進んだら火花は終了するという事に他ならない。これじゃあタイミングを見極められやすくなって、当然だよね。
でもまあ、そんな芸当のできる魔想は魔邸だけ。百圧中は時間の速度が十分の一になるなら、翔人にとっての0.2秒は、実際は0.02秒でしかない。五十分の一秒を見極めるのは特闇にすら不可能なので今戦っている並闇にはまず大丈夫なのだけど、100%安全とも言い切れない。よって末吉の雷が、必要になるのだった。
火花を発動した僕は闇油が繰り出す触手攻撃を、それぞれ0.02秒で躱してゆく。するとその都度、僕の20メートル後方を翔ける末吉が、闇油の視界に入る。複数箇所の同時集中がまだできない闇油と言えど、僕の後ろに見え隠れする末吉に気付かないなんてことは無い。というか末吉は生命力操作で盛大に輝きつつ翔けているから、嫌がおうにも目に入ってくる。それが闇油の意識を攪乱し、火花終了のタイミングを見誤らせ、そして闇油にこう錯覚させる。
「後ろに隠れて接近してくる猫こそが、本命なのではないか」と。
錯覚状態の闇油に僕は急接近。そしてタイミングを計り、闇油の真正面へ火花で針路変更。真正面から斬り込んでくる僕を「こっちが本命か!」と闇油は凝視。と同時に二百圧の火花で僕は左へ飛び、駆け抜けながら猫丸を横なぎに一閃。地球に喩えるなら赤道で、闇油を真っ二つにする。それに合わせ末吉が、四百倍に圧縮した生命力を雷の如く周囲へ放った。
「ニャーーー!!!」
雷帝と化した末吉に闇油が本能的な恐怖を覚え意識を向ける。それを逃さず僕は四百圧で北極方向へ跳躍、そして猫丸を、北極から南極へ一気に切り下げた。
カッッ!
二百圧と四百圧の高速斬撃で瞬時に四等分された闇油の輪郭が、ぼやけて行く。その数瞬後、闇油怨想は霧散し、消えていった。
「消滅確認、戦闘領域に魔想無し」
僕らは静止し精神集中。生命力1000を1秒で補充し、声を揃える。
「「補充完了!」」
末吉が右前足を掲げる。
僕も右手を掲げる。
パシッ
僕らはハイタッチし、ハモって言った。
「「お疲れ~~」」
初任務を終え、僕と末吉は並んで空を翔けながら、恒例の友達話に勤しんでいた。
「日曜日の討伐は今日が初めてだったけど、何とかなったな」
「何とかなったにゃ。終了時刻も目安通りだったから、今日の討伐は上出来だったと思うにゃ」
「ん? 終了時刻の目安って、なに?」
「今日は久しぶりに、大吉兄者から終了時刻の目安を出されていたにゃ。普通に移動し普通に戦闘して四時前後に終われば、上々だってにゃ」
初めて聴く話だったので末吉に詳しく説明してもらった。それによると大吉は、駆け出し翔人や初任務に赴く翔人が無事に帰ってこられるよう、様々な配慮をすると言う。終了時刻の目安もその一つで、普通に移動し普通に戦闘すれば何時何分ごろ討伐を終えるという目安を、翔猫へ伝えるそうなのだ。
「おいら達が駆け出し組だったころは、目安を毎回出されていたにゃ。最近は無かったけど、今日は初めての日曜討伐だったから、久しぶりに出されたのにゃ」
「へ~、そんなのがあったんだね。もっと早く教えてくれれば良かったのに」
「ペーペー翔人に終了時刻の目安を明かすのは、禁止されているにゃ」
「えっ、どうして?」
「時刻を守ろうとする余り無謀な討伐に走る。それが、ペーペー翔人だからにゃ」
「み、耳が痛いっす」
末吉の言うとおり、禁止されて当然だと思った。慢心していた頃の僕が終了時刻の目安なんて知ったら、それより一秒でも早く討伐を終わらせようと躍起になっていただろう。あのころは末吉に苦労をかけていたんだろうな、悪いことしたなあと、僕は肩をガックリ落とした。
「眠留、そんなの気にしないでいいにゃ」
「末吉、お前ってなんて・・・」
「神社に来たころ小吉姉さんに、若いうちは苦労を買ってでもするのですよって、よく言われたにゃ。猫は買うということを知らないから姉さんの言葉がオイラにはイマイチ理解できなかったけど、今はわかるにゃ。若いうちの苦労は本当に大切だ、眠留のお陰で沢山成長できたもんなってにゃ」
「あのさあ末吉」
「何かにゃ」
「お前さっきから、そこに何を付けてるの?」
僕は末吉の、尻尾の付け根の右部分へ右手を伸ばした。末吉も振り帰り、尻尾の付け根を右側から覗きこんだ。すかさず僕は左手で、死角となった左側から末吉を押さえ込み、脇腹をくすぐりまくってやった。
「じゃあ好きなだけ苦労させてやる。ほら末吉、僕が手伝うから、弱点の脇腹くすぐりで苦労しよう」
「にゃはははは、それは苦労じゃなくて、くすぐったいだけにゃ、眠留止めるにゃにゃはははは~~」
五月十六日、午前四時。
僕らは初の日曜討伐を終え、笑いながら神社へ帰投したのだった。
翔体を肉体と重ね合わせ、翔化中の戦闘経験が肉体に馴染むのを見計らい、瞼を開ける。日曜日の討伐は普段と異なり、帰投後の訓練を義務づけられていない。時計に目をやり、二時間ほど寝ていられることを確認した僕は、体を包むパジャマの心地良さにウットリしつつ、夢の世界へ旅立って行った。
ピピピピ、ピピピピ、ピピピピ
朝六時を告げるアラームが鳴る。上半身を起こし、う~んと伸びをする。それを合図に、HAIがアラームを消してくれた。
伸びをした際、パジャマの肌触りの素晴らしさにウットリし、もっと寝ていたいという欲求に駆られるも、心を決めてベッドから降りた。その途端、ビックリした。体が、信じられないほど軽かったのである。パジャマの心地良さが熟睡を促し、それが新陳代謝を大幅に活性化させたから、僕は今これほどの快適さを味わえているのだろう。「輝夜さん、ありがとう」 そう呟き、僕はパジャマを脱いだ。
再度ビックリした。一晩着ていたはずなのに、皺が一つも付いていなかったのである。着崩れすら無い、包みから取り出した直後の形状をそのまま保つパジャマに僕は思わず、「これは何の魔法ですか」と問いかけた。すると、
『そのパジャマは毎日洗濯しても一年ゆうに保つから、どんどん洗ってね』
という、輝夜さんの去りぎわの言葉が蘇ってきた。それを言われた時は残り香など惜しまずしっかり洗いなさいと釘を刺された気がしたが、このパジャマの実力を知った今は、あれは文字通りの意味だったのではないかと思えてくる。毎日洗濯してもこの極上の肌触りが失われないなら、彼女の指摘どおりじゃんじゃん洗濯して、清潔さを保った方が断然いいからだ。僕はパジャマを丁寧にたたみ、洗濯ネットに入れた。
が、巨大な喪失感に襲われ、僕は洗濯ネットを洗濯機に入れる事ができなかった。洗ってしまったら、輝夜さんの残り香が消えてしまうじゃないか! 世界一好きな人の香りに包まれて眠るという、あの甘美な時間をもう過ごせないと思うだけで、僕は狂おしいほどの喪失感に押しつぶされてしまったのである。けどその時、
『そのパジャマは毎日洗濯しても一年ゆうに保つから、どんどん洗ってね』
彼女の言葉が再度胸を打った。
喪失感を上回る羞恥心が湧き起こり、確信する。
輝夜さんはやはりあの時、僕に釘を刺したのだ、と。
大きな溜息をひとつ付き、洗濯ネットを洗濯機に入れ目を閉じる。そして、
「輝夜さんごめんなさい。もう二度と、こんな変態じみた思いは抱きません」
洗濯機に両手を合わせ、僕はそう誓ったのだった。
「任せろにゃ」
輝夜さんを思い出しボ~ッとしてた僕を糾弾しなかった末吉の男気に応えるためにも、最後はきちんと決めよう。僕はそう、自分で自分に喝を入れた。
前方に闇油怨想を捕捉。七尺、四倍、十六圧を実行し闇油へ全力直進。僕の接近に気付いた闇油が移動と蠕動を止め、静止状態へ移行。攻撃を予測した僕は20メートル後方の末吉を信じて、火花を発動した。
以前の僕は闇油へ、螺旋を描いて接近していた。だが大抵のモノには、長所と短所が併存しているもの。螺旋もその例に漏れず、敵の攻撃を回避しやすいという長所を持つと同時に、斬撃の速度と精度を下げてしまうという短所も持っていた。高精度の高速斬撃は、螺旋より一直線に接近した方が、やはり繰り出しやすいのである。
とはいえバカ正直に直進するだけでは、ただの的になってしまう。ゴールデンウイーク初日の特闇戦のような一世一代の陽動をする場面でない限り、バカ正直な直線攻撃など愚の骨頂。あんなのをいつもしていたら、命が幾つあっても足りはしないのだ。然るにこの、「火花」が必要なのである。
火花とは、百圧を0.2秒間だけ発動し敵の攻撃を回避する、僕の最新習得技術だ。でも正直いうと、昨日までの僕はこれが苦手だった。ひとたび百圧状態になったら戦闘終了までそれを維持する方が、不器用な僕には楽だったのである。よってこんなふうに火花が冴えまくっているのは、今日が初めての事。放電現象を昨日経験したからこそ、僕は今日これを自在に使いこなせているのだ。輝夜さん、重ね重ねありがとう!
もっとも、火花にも短所はある。それは、火花終了のタイミングを敵に見極められやすい事だ。火花を発動する0.2秒という時間は、実は一歩にかかる時間。全速の僕は一秒間に五歩進むから、一歩に0.2秒を費やす。この0.2秒を利用し火花を発動するということは、裏を返せば、一歩進んだら火花は終了するという事に他ならない。これじゃあタイミングを見極められやすくなって、当然だよね。
でもまあ、そんな芸当のできる魔想は魔邸だけ。百圧中は時間の速度が十分の一になるなら、翔人にとっての0.2秒は、実際は0.02秒でしかない。五十分の一秒を見極めるのは特闇にすら不可能なので今戦っている並闇にはまず大丈夫なのだけど、100%安全とも言い切れない。よって末吉の雷が、必要になるのだった。
火花を発動した僕は闇油が繰り出す触手攻撃を、それぞれ0.02秒で躱してゆく。するとその都度、僕の20メートル後方を翔ける末吉が、闇油の視界に入る。複数箇所の同時集中がまだできない闇油と言えど、僕の後ろに見え隠れする末吉に気付かないなんてことは無い。というか末吉は生命力操作で盛大に輝きつつ翔けているから、嫌がおうにも目に入ってくる。それが闇油の意識を攪乱し、火花終了のタイミングを見誤らせ、そして闇油にこう錯覚させる。
「後ろに隠れて接近してくる猫こそが、本命なのではないか」と。
錯覚状態の闇油に僕は急接近。そしてタイミングを計り、闇油の真正面へ火花で針路変更。真正面から斬り込んでくる僕を「こっちが本命か!」と闇油は凝視。と同時に二百圧の火花で僕は左へ飛び、駆け抜けながら猫丸を横なぎに一閃。地球に喩えるなら赤道で、闇油を真っ二つにする。それに合わせ末吉が、四百倍に圧縮した生命力を雷の如く周囲へ放った。
「ニャーーー!!!」
雷帝と化した末吉に闇油が本能的な恐怖を覚え意識を向ける。それを逃さず僕は四百圧で北極方向へ跳躍、そして猫丸を、北極から南極へ一気に切り下げた。
カッッ!
二百圧と四百圧の高速斬撃で瞬時に四等分された闇油の輪郭が、ぼやけて行く。その数瞬後、闇油怨想は霧散し、消えていった。
「消滅確認、戦闘領域に魔想無し」
僕らは静止し精神集中。生命力1000を1秒で補充し、声を揃える。
「「補充完了!」」
末吉が右前足を掲げる。
僕も右手を掲げる。
パシッ
僕らはハイタッチし、ハモって言った。
「「お疲れ~~」」
初任務を終え、僕と末吉は並んで空を翔けながら、恒例の友達話に勤しんでいた。
「日曜日の討伐は今日が初めてだったけど、何とかなったな」
「何とかなったにゃ。終了時刻も目安通りだったから、今日の討伐は上出来だったと思うにゃ」
「ん? 終了時刻の目安って、なに?」
「今日は久しぶりに、大吉兄者から終了時刻の目安を出されていたにゃ。普通に移動し普通に戦闘して四時前後に終われば、上々だってにゃ」
初めて聴く話だったので末吉に詳しく説明してもらった。それによると大吉は、駆け出し翔人や初任務に赴く翔人が無事に帰ってこられるよう、様々な配慮をすると言う。終了時刻の目安もその一つで、普通に移動し普通に戦闘すれば何時何分ごろ討伐を終えるという目安を、翔猫へ伝えるそうなのだ。
「おいら達が駆け出し組だったころは、目安を毎回出されていたにゃ。最近は無かったけど、今日は初めての日曜討伐だったから、久しぶりに出されたのにゃ」
「へ~、そんなのがあったんだね。もっと早く教えてくれれば良かったのに」
「ペーペー翔人に終了時刻の目安を明かすのは、禁止されているにゃ」
「えっ、どうして?」
「時刻を守ろうとする余り無謀な討伐に走る。それが、ペーペー翔人だからにゃ」
「み、耳が痛いっす」
末吉の言うとおり、禁止されて当然だと思った。慢心していた頃の僕が終了時刻の目安なんて知ったら、それより一秒でも早く討伐を終わらせようと躍起になっていただろう。あのころは末吉に苦労をかけていたんだろうな、悪いことしたなあと、僕は肩をガックリ落とした。
「眠留、そんなの気にしないでいいにゃ」
「末吉、お前ってなんて・・・」
「神社に来たころ小吉姉さんに、若いうちは苦労を買ってでもするのですよって、よく言われたにゃ。猫は買うということを知らないから姉さんの言葉がオイラにはイマイチ理解できなかったけど、今はわかるにゃ。若いうちの苦労は本当に大切だ、眠留のお陰で沢山成長できたもんなってにゃ」
「あのさあ末吉」
「何かにゃ」
「お前さっきから、そこに何を付けてるの?」
僕は末吉の、尻尾の付け根の右部分へ右手を伸ばした。末吉も振り帰り、尻尾の付け根を右側から覗きこんだ。すかさず僕は左手で、死角となった左側から末吉を押さえ込み、脇腹をくすぐりまくってやった。
「じゃあ好きなだけ苦労させてやる。ほら末吉、僕が手伝うから、弱点の脇腹くすぐりで苦労しよう」
「にゃはははは、それは苦労じゃなくて、くすぐったいだけにゃ、眠留止めるにゃにゃはははは~~」
五月十六日、午前四時。
僕らは初の日曜討伐を終え、笑いながら神社へ帰投したのだった。
翔体を肉体と重ね合わせ、翔化中の戦闘経験が肉体に馴染むのを見計らい、瞼を開ける。日曜日の討伐は普段と異なり、帰投後の訓練を義務づけられていない。時計に目をやり、二時間ほど寝ていられることを確認した僕は、体を包むパジャマの心地良さにウットリしつつ、夢の世界へ旅立って行った。
ピピピピ、ピピピピ、ピピピピ
朝六時を告げるアラームが鳴る。上半身を起こし、う~んと伸びをする。それを合図に、HAIがアラームを消してくれた。
伸びをした際、パジャマの肌触りの素晴らしさにウットリし、もっと寝ていたいという欲求に駆られるも、心を決めてベッドから降りた。その途端、ビックリした。体が、信じられないほど軽かったのである。パジャマの心地良さが熟睡を促し、それが新陳代謝を大幅に活性化させたから、僕は今これほどの快適さを味わえているのだろう。「輝夜さん、ありがとう」 そう呟き、僕はパジャマを脱いだ。
再度ビックリした。一晩着ていたはずなのに、皺が一つも付いていなかったのである。着崩れすら無い、包みから取り出した直後の形状をそのまま保つパジャマに僕は思わず、「これは何の魔法ですか」と問いかけた。すると、
『そのパジャマは毎日洗濯しても一年ゆうに保つから、どんどん洗ってね』
という、輝夜さんの去りぎわの言葉が蘇ってきた。それを言われた時は残り香など惜しまずしっかり洗いなさいと釘を刺された気がしたが、このパジャマの実力を知った今は、あれは文字通りの意味だったのではないかと思えてくる。毎日洗濯してもこの極上の肌触りが失われないなら、彼女の指摘どおりじゃんじゃん洗濯して、清潔さを保った方が断然いいからだ。僕はパジャマを丁寧にたたみ、洗濯ネットに入れた。
が、巨大な喪失感に襲われ、僕は洗濯ネットを洗濯機に入れる事ができなかった。洗ってしまったら、輝夜さんの残り香が消えてしまうじゃないか! 世界一好きな人の香りに包まれて眠るという、あの甘美な時間をもう過ごせないと思うだけで、僕は狂おしいほどの喪失感に押しつぶされてしまったのである。けどその時、
『そのパジャマは毎日洗濯しても一年ゆうに保つから、どんどん洗ってね』
彼女の言葉が再度胸を打った。
喪失感を上回る羞恥心が湧き起こり、確信する。
輝夜さんはやはりあの時、僕に釘を刺したのだ、と。
大きな溜息をひとつ付き、洗濯ネットを洗濯機に入れ目を閉じる。そして、
「輝夜さんごめんなさい。もう二度と、こんな変態じみた思いは抱きません」
洗濯機に両手を合わせ、僕はそう誓ったのだった。
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