僕の名前は、猫将軍眠留

初山七月

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四章

3

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 それから僕らは二階堂のカレーで盛り上がった。漢のメガ盛りカレーには、牛肉ハンバーグと、豚の生姜焼きと、鶏の唐揚げがトッピングされていたのだ。
「すごいねそれ。僕も今度、それに挑戦してみるよ」
「挑戦なんて身構えなくていい。猫将軍も今度、サークルでズタボロになったとき食べてみろ。きっと、大盛りでも足りねえって思うぞ」
「う~ん眠留はともかく、野菜好きの俺にはサークル後でも厳しそうだな。それはそうと二階堂。大盛りで足りない時は、どうするんだ?」
「今はスープを追加して誤魔化してるが、そろそろ兄貴達をまねて、一つ上の漢のギガ盛りカレーを食ってみようと思ってるんだ」
「「メガの上はギガかよ!」」
 僕らはゲラゲラ笑った。頭の回転の速い北斗がすかさず問う。
「ならその上に、オメガ盛りがあるとか」
「おう、よくわかったな。メガ、ギガ、と来れば次はテラが順当だが、それだと音のつながりがイマイチだから、究極という意味も持つオメガをこの店では使っている。ハンバーグと生姜焼きと唐揚げに、メンチカツとエビフライとソーセージの天ぷらを追加した、伝説のオメガ盛りがな」
「「伝説かよ!!」」
 僕と北斗はカレーを吹き出しそうになり口を両手で押えた。しかし二階堂は大まじめでオメガ盛りについて語る。
「大学時代の親父は、オメガ盛りじゃないと食った気がしなかったらしい。上の兄貴が来年大学に行く予定だから、俺もようやく伝説に名を連ねられるって、兄貴は楽しみにしているよ」
 二階堂によるとおじさんは若いころ、ラグビーの全日本チームで主将を務めるほどの名選手だったそうだ。ちなみにおばさんは、女子レスリングのオリンピック銅メダリスト。お兄さん達は僕の見立てどおり柔道をしていて、二人とも将来を嘱望される有力選手だと言う。そのサラブレッドぶりに、僕と北斗は驚嘆の声を上げた。
「それは凄い。二階堂お前、これからどこまで伸びるかわからんぞ」
「うん、僕もそう思うよ。さっきプロレスをした時、二階堂とお兄さん達は筋肉の質がそっくりだって、僕感じたんだ」
「ははは、だといいんだがな」
 二階堂は少し影のある表情をした。けどそのあと「お前らがそう言うなら、俺はそれを信じるよ」と、穏やかな笑みを浮かべた。
 それから二階堂は、自分についてぽつりぽつり話した。家族の中で自分が一番、運動能力に劣る事。そのせいで父親のラグビーにも、母親と兄達の格闘技にも熱が入らず、途中で止めてしまった事。兄達は湾岸学園都市内の研究学校に入学したが、なぜか自分は湖校が気になり湖校を第一希望にした事。だから忍術部で行き詰った時、酷く落ち込んだ事。でも今は、あれほど湖校が気になった理由を、体の芯で感じている事。それらのことを二階堂は、カレーを食べながらまるで独りごとを言うように、僕らに話してくれた。入学したてのころ、忍術のお試し選択授業で「僕はちょっと前まで運動音痴だったんだ」「俺は今でも似たようなものだ」と告白し合ったことが二階堂との友情の始まりだったことが思い出され、僕はスプーンの柄が曲がるほど手を握りしめた。すぐ隣の北斗も、僕と同じような状態だ。それを察知したのだろう、二階堂は最後まで残しておいたハンバーグを勢いよく口に放り込んだ。
「たぶん夕飯後、誰かが今の話をお前らにするだろう。みんなお前らに、すげえ会いたがっていたからな」
 二階堂はそう言い、顎をことさら動かしてハンバーグを咀嚼する。これは告白タイム終了の合図だと感じた僕も、最後のおでんを口に放り込んだ。「お勧めが、おでん?」と最初は首を傾げたものだが、おでんから染み出る和風だしがカレーと絶妙なハーモニーを奏でることを教えてくれたこのお店に、今は深い感謝を捧げている。
「「ごちそうさまでした」」
「「またぜひお越し下さい」」
 三人のウエイトレスさんに見送られ、僕らはカレー屋を後にしたのだった。
 
 初めて訪れた聖地は想像以上に素晴らしい場所だった。僕らは目を輝かせて見本を手に取りまくり、しゃべりまくり、そして固まりまくった。棚にずらりと並ぶ何十ちょうもの各種モンスター専用銃に目を輝かせ、手に取った感動を皆としゃべりまくり、そしてその銃と共にモンスターと戦う自分を想像して固まりまくったのだ。しかも、その感覚を共有しあえる仲間が二人もそばにいてくれるのだから、喜びは何倍にも膨れ上がるというもの。銃の他にも盾やカートリッジや戦闘服等々を見て、触り、それを実装した自分をイメージしながら、僕らは大興奮の時間を過ごしていった。
 装備の違いによるステータス変化を実感できるシミュレーションも非常に楽しく、そして勉強になった。3DGは、現代科学を越える架空の武器の使用を禁じている。現存する武器のスペックを忠実に模したものだけが、使用を許可されるのだ。それ故、高価な素材と高度な技術を投入し小型軽量化した最新装備を身に付けた時と、入門者用の低価格装備を身に付けた時では、隠密性や回避率に明白な差が出たのである。
「高価な最新装備の方がモンスターに発見され難く、かつモンスターの攻撃も回避し易い。そんなの当然だと頭では理解していたが、まさかこれほど違うとはな」
 作戦立案の大家である北斗は特にその差が気になるらしく、モンスターと戦う毎に装備を替えていた。新忍道の部活やサークルに所属している学生は、学生割引と新忍道割引を併用できるので、シミュレーション代が三分の一になる。さっき食べたカレーの三分の一に満たない低料金に助けられ、僕らは幾度もシミュレーションに臨んだ。その甲斐あって、僕はあることに気づいた。
「貧乏サークル用の装備でも、高価な装備と同じくらい静かに素早く動けば、両者の差は無視できるくらい小さくなるんだね」
 僕の発見に北斗と二階堂は色めき立った。そして数々の試みをした結果、僕らは一つの結論に至った。
『目立ちやすく騒がしく動きにくい低価格装備は、基本中の基本である静けさと素早さと滑らかさの重要性を、気づきやすくしてくれる。つまり基本を磨いている最中の一年生トリオには、低価格装備の方がありがたいのだ』
 装備の性能に頼らず、今は基礎技術を愚直に磨いていくことを、僕ら三人は誓い合ったのだった。
 勉強になった事はもう一つあった。それは、興味を持つ対象は一人一人異なり、そしてそれで良いと解ったことだ。例えば北斗は、戦術に直結する装備の性能差に最大の興味を示していたが、二階堂は銃や盾の造形そのものが好きらしく、3Dアイテムを含む関連グッズ全般にコレクター的興味を示していた。僕は二人のこの違いに、湖校新忍道サークルの輝ける未来を見た気がした。備品全般への二階堂の幅広い知識を基に、北斗が最高の作戦を立案してゆくような、そんな協力体制を確立した未来のサークルを、ちらりと見た気がしたのだ。楽しみだな、早くそうならないかなあと、僕は終始頬を緩ませていた。
 が、最後に訪れた一番大きな店舗でとある武器を目にした途端、僕はすべてを忘れてそれに見入ってしまった。僕の目をそれほど釘付けにした武器。それは陳列棚中央最上部の手が届かない場所に掛けられた、

 試作品
 対モンスター専用高周波刀、
 出雲
 
 という、一振りの刀だった。
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