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藤島白兎

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第五章 幸せに向かって

第七話 幕開き 四方の神の長

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 縁と結びに斬銀、そして天空原はとある街に来ていた。
 天空原が地獄谷を守る為に戦った傭兵の会社がここにあるからだ。
 今、目の前には少々さびれたビルが建っている。
 会社名は『傭兵派遣会社四方門』と書かれている。

「おう天空原、そんな緊張しなくてもいいぞ」
「いやしますよ、自分が――」
「ああ、これから会いに行く奴は死んで無いぞ?」
「え? でも確かにあの時」
「あの時は人の姿だったからな」
「別の姿があると?」
「お前が殺したと思っている正体は黄龍こうりゅうだ、元だがな」
「黄龍!?」

 黄龍とは東西南北を守る神々の長である、簡単に言えば物凄い神様という事だ。

「ほえ~四方を守る神様の長じゃん」
「お、俺は……と、とんでもない事をしたのでは」
「いや、話した感じ感心していたぞ?」
「えぇ……なんでですか?」
「ほぼ暴走状態であり、そして油断していたとはいえ……黄龍を殺したんだ」
「え? 死んだんですか? いや……そんなはずは……だって黄龍でしょ?」
「ま、完全には死んでなかったってこった」
「いやそれ死んいないのでは?」
「そうだよな……それが普通の反応だよな」

 命は一つ当たり前の発想だが、縁や結びクラスになると死んでも死なないのが当たり前。
 天空原の当たり前の言葉に、斬銀は今更ながら一般的な考えを改めて認識するのだった。

「ま、そんな緊張するな? むしろ好意的だからよ」
「は、はい……」
「入るぜー」

 斬銀を先頭にずかずかとビルへ入って行く。
 そして特にノックもせずに社長室と書かれた扉を斬銀は開いた。
 社長の椅子には優しそうなおじいちゃんが座っている。

「おお! やっと来おったか!」
「連れて来たぜ、黄龍のじい様よ」
「待て待て斬銀、何度も言うがワシャもう黄龍の座は譲った」
「ああ……そいやずっと黄龍のじい様って呼んでたな」
「無自覚か、まあよい……ワシの名はコウ・リューンだ」
「……明らかに黄龍からとった偽名じゃねーか」
「バカ者! 孫が考えてくれたすんばらしい名前だ!」
「ああ……それは悪かった」
「さてさて、斬銀と遊んでいる場合ではないな」

 コウは椅子から立ち上がり、天空原へと近寄っていく。
 天空原にしてみれば一方的に殺した相手、例え死んでなくとも。
 いや、彼の頭は今何もかんがえられないだろう。
 四方を守る神の長、元とはいえ黄龍を怒らせた――
 色々と考えているが、コウはニコニコと笑っている。

「ほほう、お前さん……前に見た時より力の制御と目的がしっかりとしているの」
「あ、あの――」
「若人よ、謝るな」

 コウはニコニコとしながらも、強い目で天空原を見た。
 天空原はその目をそらせなかった、ワシは許す、そう言っている様に見えたからだ。

「謝るは己の行動を否定する事、若人は誰を守る為に拳を振るったのだろう?」
「……はい」
「なら謝るな、自分の拳に誇りを持て」
「……」
「そう簡単には割り切れんか、悩むというのも若人の特権じゃな」
「でも……」

 天空原が感じているのは、自分がやった事に対して怒られていない事に対してのモヤモヤだ。
 あの時は制御出来ていない、つまりは本能のまま地獄谷を守っていた。
 ここに来る時に縁達から、相手方も被害者の可能性があると聞かされている。
 つまりは目の前のコウも、何かに巻き込まれた可能性という事。
 天空原の考えはまとまるはずがない、何故なら悪い事をしたら怒られたいからだ。

「ふむふむ、納得いかんか?」
「はい」
「ではワシの所でバイトせぬか?」
「……え?」

 予想外の言葉に気の抜けた声を出した天空原に、コウは言葉を続けた。

「老いと油断していたとはいえワシを殺すほどの腕前、遊ばせておくのは勿体無い」
「え? あの――」
「玄武のばあさんや!」

 ドアが開いて、亀の甲羅のガラの着物を着たおばあちゃんが入ってきた。
 物腰柔らかな笑顔をしていて、縁達を見て軽く一礼する。

「はいはい、ちゃんとかめ子と呼んでくださいな」
「おお、すまんすまん……この若人にワシらの仕事内容を教えてくれ」
「わかりました……あらまあ貴女、界牙流?」
「そうです、四代目ですが……知ってるんですか?」
「初代に防御の技を教えた事があってね」
「これはお話を詳しく聞かないと、天空原、このお姉さんから色々と教えてもらうよ~」
「えっ!? ちょ!?」
「ふふ、ついてきてくださいな」

 結びに引っ張られる形で、天空原とかめ子は出ていった。
 それと同時にこの場の空気が変わった、本題はこれからだと言わんばかりに。

「さて……縁殿に見てもらいたい物があってな」
「なんでしょう」
「これじゃ」
「ワシらが受けた依頼じゃ、内容は街で悪さをしている猫娘をこらしめてくれ、とな」
「……んん?」

 コウが差し出した依頼書を見る縁、一瞬でその異常性を見破った。
 依頼内容ではない、その依頼書に込められた術である。

「これは暗示がかけられているあとがありますね」
「やはりそうか……ワシも老いたか」
「これは時間をかけて侵食する術ですね、認識を徐々に変えていきます」
「ふむ……つまりは、捕まえる、拘束、束縛……言葉が思いつかんの」
「まあ徐々に強い言葉になるって事だな? 縁」
「そうです」

 つまりこの依頼書の暗示で、コウが地獄谷を仕留める流れになったのだろう。
 斬銀が続けて発現をした、何やら納得しているようだ。

「……縁、あの猫娘……地獄谷だったか?」
「はい」
「アイツも暗示にかかっていた可能性がある」
「どういう事ですか?」
「地獄谷が居街、グリムアルを傭兵仲間に調べてもらったんだがな」
「何かわかりました?」
「最初にグリムアルに来た時は、今のような明るい感じだった様だ」
「……なるほど、確かに荒れてた頃と印象は正反対だ」

 縁達が知っている最初の地獄谷は、人の大切な物を簡単に燃やす様な性格だった。
 それが今では明るく思いやりのある性格だ、まさに洗脳が解けたような変わりようだ。

「おそらく封印されていた神の力を取り戻した時に、その余波で正気に戻ったのかもしれません、本人にその自覚は多分無いでしょう」
「その封印て誰がしたんだ?」
「父親ですね、おそらく地上で過ごしやすくするためでしょう」
「なるほどな、力は持ち過ぎないほうがいい」

 喧嘩で娘が家出したとはいえ、人の世で過ぎたる力を持てば間違いなく災いが起こる。
 それを考えて娘の力を封印したのだろう、これに関しては良い悪いはわからない。
 そして今はそれよりも大切なことがある。 

「で、縁どうする? 地獄谷の事も今回の事もおそらくだが……」
「ええ、十二支が絡んでいる可能性がありますね」
「嘆かわしい、ちょいちょい耳にするが十二支も堕ちたものよ、昔は誰しもが羨んだ座のだがな」
「……まずは何処の十二支か調べます、次にこれ以上何かしてくるのであれば」
「どうするんだ縁?」
「もちろん滅ぼします」

 縁は笑って斬銀を見た、もちろんその笑顔は狂っていた。
 今まで我慢していたモノを発散出来る、自分の基準で合法的に処せる。
 神の考えの縁がそこにいた、だが斬銀にそんな笑顔は通用しない。
 苦笑いされるだけだ。

「はぁ……昔みたいな目に戻ってるぞ?」
「もちろんです、今は神社無いですし」
「……なぁ、昔みたいに暴れないでくれよ?」
「ちゃんと敵は見定めますよ」
「頼んだぜ」
「ワシからも頼む、今回の件……引退したワシらには重荷じゃ」
「んなバカな、本気出した四神ししんと黄龍に勝てるかよ」
「ワシらは引退したんじゃ、そんな奴らが実は! なんてやったらカッコ悪いじゃろ」
「そんなもんかね」
「ああ……『引退』とはそういうものだ」

 一瞬だけ険しい顔になったコウだったが、直ぐに笑顔に戻った。
 彼の引退という考えは、現役ではない者が必要以上に力を使ってはいけない。
 そんな思いがあるのかもしれない、もちろん考え方はそれぞれだろう。

「まあそれはさておき……来たついでにちょいと仕事を頼まれてくれないか?」
「仕事? 俺はいいが縁達は授業あるんじゃねーか?」
「大丈夫ですよ、おそらく天空原君の情操教育に必要でしょう」
「ふっ、流石は現役の神だ、お見通しか? 実は自然災害が起きた地域の復興支援をしていてな? 白虎と朱雀がそこにいるんだが進まんようだ」
「そりゃ大変だな……場所はどこだ? 現場に向かって状況を見た方が早そうだ」
「ですね、おそらく天空原君も同じ説明を受けているでしょう」

 この後縁達は自然災害が発生した地域へと向かうのだった。
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