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いい加減にしろ! 俺を巻き込むな!

赤ずきんRTA神の読書視点

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 何も無い白い空間に、神っぽい男と男子高校生の大林友木は、向かい合っていた。

「やあ――」
「うるせぇ! 神野郎! さっさと物語の世界に送りやがれ! こっちはこれから恋人とデートなんだよ!」
「わかったわかった、赤ずきんの世界にいってらっしゃい」

 2人にとってこのやり取りは当たり前の光景になっていた。
 大林友木は神の指パッチンと共に、光に包まれて消える。
 神は本を開いた、タイトルは『大林友木の赤ずきんRTA』と書いてある。

「さ、読もうか」

 昔々、ある所に可愛い男の子がおりました、男の娘ではありません、男の子です。
 とは言え、彼を見ていると可愛いと言ってしまうほどでした。
 彼のおばあさんが一番可愛がっていました。
 
 ある時彼に、赤い布で作ったずきんをプレゼントしました。
 彼は嫌そうな顔をしましたが、おばあさんの手作りを無下には出来ません。
 お礼と共に、森の中で1人で暮らすなんて不用心と言いました。
 その後、仕方なくずっとかぶっていると、彼は『赤ずきん君』と呼ばれる様になります。

 数ヶ月後、お母さんが赤ずきん君にお願いをします。

『へーい、ボーイ! このワ――』
『ばーさんの所に行きゃいいんだろ? 任せろ!』
『え? あ、そうよ、よろしくねーあ、寄り道は――』
『しねーよ! さっさと帰ってくる!』
『お行儀よ――』
『それもわかってるよ!』

 ぶっきらぼうに赤ずきん君は出かけます。
 おばあさんの家は歩いて30分かかる森の中にありました。
 赤ずきん君は森の中を強歩、つまり早歩きで移動していました。
 そんな赤ずきん君に、悪い狼が近寄ってきました。
 狼は、赤ずきん君の速度に合わせて走っています。

『こんにちは赤ずきん君』
『ちっす、狼さん』
『そんなにあ――』
『お使いだよお使い』
『何処にだい?』
『おばあさんの家に決まってるだろ』
『場所はどこなんだい?』
『大きな木が三本ある下だよ』

 それを聞いた狼はしめしめと考えました。

(そりゃいい事を聞いた、ばあさんを食ってこいつも食ってやろう! 気に食わんし!)

 そこで狼は何とか寄り道させようと考えました。
 
『赤ずきん君――』
『ああ、おばあさん為に花冠を作るから、じゃ、ここで』
『え?』

 狼があっけにとられていると、赤ずきん君は道をそれました。
 そしてテキトーに目に入った花で、冠を作っている時でした。
 しばらくして、大きな銃声が森に響いたのです、赤ずきん君はそれを合図に立ち上がります。
 早歩きをしながら、そこら辺の花をつんでいきます。
 花冠が出来た時には、おばあさんの家に着きました。
 
『ああ赤ずきん! 聞いておくれ! お前の助言を聞いて狩人さんを雇ったんだけど! 本当に良かった!』
『俺は料金分の仕事をしてるまでだ、それに狼の毛皮は高く売れるしな……肉も売るか』
『ああ、狩人さん、私お母さんのお使いで来たんだけど、お酒も持ってきた』
『そりゃばあさんのお見舞いの品だろ?』
『狩人さん、命を助けてもらったんだ、今日はやってくれさね』
『よし、今日は狼の肉パーティーだな!』

 狩人とおばあさんは料理の準備を始めました。
 そして、赤ずきん君は内心思います。

(やっぱり、事前の準備って大事だし、短縮する可能性があるな)

 そんな事を考えていました。

「ほう? 今回もかなり早いね」

 神は本を読み終えると満足していました。
 そして、光に包まれて大林友木が戻って来る。

「さっさと元の場所に戻せ!」
「わかったわかった、君も何時も通りだねぇ」

 大林友木は光に包まれて消え、神は本を見てため息をついた。
 そして、何も無い部屋に突然本棚が現れた。
 本は何千、何万とあるだろう。

「最近はゆっくりと呼んでくれる読者が居ないのだよ、君なら素早く物語を終わらせてくれる、またよろしくね」

 神は満足したように立ち上がって、持っている本を本棚にしまった。
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