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第九話
私だけのリク ―背徳の施術室で溺れる夜―
しおりを挟む彼の指が、熱を含んだまま奥を探る。
柔らかく、でも逃げ場を許さない圧で。
身体の奥から、じわじわと熱が逆流してくる。
「……もっと……っ……」
小さな声が漏れたのに、リクは何も言わずに指を動かすだけだった。
それが、逆にたまらなく苦しい。
私の願いも、欲望も、全部彼の掌に握られている。
「柚希さん、可愛い……」
耳元でささやかれた言葉に、思わず背筋が震えた。
リクの唇が、首筋に触れそうで触れない。
わずかな息がかかるだけで、全身が電流を流されたみたいに震える。
「……特別に、してほしいんですよね……?」
確かめるように、くすぐるように。
指がわざと一度抜かれ、また深く沈む。
声を殺せなくて、喉の奥で啼いてしまう。
何度も、何度も。
「……あ……や……だめ……っ……」
言葉と裏腹に、身体は必死に彼を受け止める。
冷静な自分が奥にいる。
「ダメだよ」って、ずっと囁いてるのに。
「……お願い……もっと……壊して……」
もう何を口走っているのか、自分でも分からなかった。
彼の息が首筋に触れる。
そして——
熱い吐息と一緒に、柔らかな唇が、そこに落ちる。
一瞬で、身体の奥が弾けた。
甘く、切なく、胸の奥を抉るみたいな幸福感。
「……リクさん……っ……」
名前を呼ぶ声が震える。
彼の指が抜けて、代わりに背中を抱かれる。
施術室の淡い灯りが、二人を優しく包んでいた。
だけど。
その温もりが終われば、
私はまた“お客さま”に戻るだけ。
それが怖くて、私はリクの背中に腕を回した。
「……このまま……終わりにしないで……」
小さく漏れた声に、リクは何も答えなかった。
ただ、少しだけ強く、私を抱きしめてくれた。
——それだけが、せめてもの救いだった。
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