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1章ー記憶の旋律ー
突然
しおりを挟むそれは突然やってきた。
「パス! こっち!」
「あがれー!」
「今日もすごかったな! さすが隼人、次期エース!」
俺は昔から、サッカーが大好きだった。
ただ走って、ボールを蹴って、チームと一緒に点を取る。それがたまらなく楽しかった。
「次期エース」と呼ばれるのも嬉しかったし、俺もチームのためにできることを精一杯やってきた。
でも――ある日。
「隼人いけー!」
試合中、連携がばっちり決まりボールをゴールへ蹴り込もうとしたその瞬間。
嫌な音がして、激しい痛みが体を貫いた。
気づけば俺は地面に倒れていた。
「痛い」
その言葉以外、何も考えられなかった。
チームメイトが駆け寄ってくるのが見えたのを最後に、意識が遠のいた。
目を覚ますと、そこは病院のベッドだった。
足には包帯が巻かれていた。痛みはだいぶ引いていて、「少し休めばまたサッカーができる」と本気で思っていた。
し
「……え? 今、なんて?」
「非常に残念ですが、もう二度とサッカーはできないでしょう」
できない? ……何を?
意味が分からなかった。
医者の言葉を理解するのに、かなり時間がかかった。
それは深刻な怪我で、手術をしても軽く走るのがやっとだという。
――何がいけなかったんだろう。
俺は何か間違ってたのか?
手術前、チームメイトや顧問の先生が見舞いに来てくれた。
みんな、俺がもう走れないことを知っていたからか、「またサッカーやろう」なんて誰も言わなかった。
サッカーができない人生なんて、意味がない。
いっそのこと
─────歩けなくなってしまえばいいのに。
それでもリハビリを終えて、なんとか「普通に歩ける」くらいには回復した。
久しぶりに登校した学校は、以前と変わらず賑やかで……まるで、何もなかったかのように思えた。
でも、ホームルームが終わると、同じ部活の仲間がユニフォームを手に教室を出ていく。
その背中を見ると、胸の奥がぐっと締めつけられた。
窓の外に見えるグラウンド。
ほんの少し前まで、俺はあの場所にいたはずなのに
今ではまるで、別の世界みたいだった。
「……帰るか」
気が抜けたように教室を出て、下駄箱へ向かっていると、ふと耳に音が届いた。
ギター、ピアノ、そして――ドラム?
最初はバラバラだった音が、次第にひとつの音楽になっていく。
……と思ったら、急にドラムが変な音を出しはじめた。
素人の俺にもわかる。これは――下手くそだ。
「どこからだろ」
なぜだか気になって、音のする方へと歩き出す。
辿り着いたのは、学校の端にある第2音楽室だった。ほとんど使われていない場所で、幽霊話まであるような部屋だ。
「まさか幽霊……なわけないよな」
そう思いながらドアに手をかけた、まさにその瞬間。
「わっ!」
突然ドアが開き、中から同い年くらいの女の子が飛び出してきた。
ーーこれが俺の人生を変える大きな出会いだった。
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