「魔力ゼロの穀潰し」と実家を追い出されましたが、冷徹公爵様と3人の義理の子に溺愛されているので、今さら「帰ってこい」と言われても困ります

メルファン

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1章 辺境伯編

15 永遠に続くダンスと、愛の言葉

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 結婚式の後は、城の大広間と庭園を開放しての、盛大な披露宴が行われました。

 そこには、堅苦しい貴族の儀礼はありませんでした。領民たちが持ち寄った自慢の料理や、私が監修した薬膳酒が振る舞われ、楽団の演奏に合わせて、誰もが手を取り合って踊っています。

 「ママ、見て見て! お肉おいしい!」  

 「子狼ちゃんも踊ってる!」

 子供たちは、口の周りにソースをつけながら、領民の子供たちと混じって走り回っています。かつて「悪魔の子」と恐れられ、城の奥に隠されていた彼らが、今、こんなにも自由に笑っている。その光景だけで、私の胸はいっぱいでした。

 「エルナ。……私とも、踊ってくれるか」

 ジークフリート様が、少し照れくさそうに手を差し伸べてきました。かつて「人食い公爵」と呼ばれ、誰からも恐れられていた彼が、今はこんなにも穏やかな顔で、私を求めている。

 「喜んで、旦那様」

 私たちがホールの中央に進み出ると、人々は道を開け、温かい手拍子を送ってくれました。ゆったりとしたワルツの調べに乗せて、ジークフリート様が私をリードします。彼の大きな手は温かく、力強く、私を支えてくれます。

 「……夢のようだ」  踊りながら、彼がぽつりと呟きました。

 「前妻を亡くし、子供たちとも心が離れ、ただ死に場所を探して魔物を狩るだけだった私が、こんな温かい場所にいるなんて。……全て、君がくれたものだ」

 「いいえ、ジークフリート様。わたくしこそ、あなたに救われたのです。『魔力ゼロ』と罵られ、誰からも必要とされなかったわたくしに、生きる意味と、愛する喜びを教えてくれたのは、あなたと子供たちです」

 私たちは、互いの瞳の中に、自分自身の幸せな姿を見つけました。

 「愛している、エルナ。……もう、片時も離したくない」  

 「ふふ。わたくしもです。……覚悟してくださいね? わたくしの『子育てスキル』と『健康管理』は、これからはあなた様にも全力で向けられますから」

 「……お手柔らかに頼む」

 彼が苦笑したその瞬間、会場から一層大きな歓声が上がりました。私たちのダンスに合わせて、私の魔力に呼応した床の石畳から、小さな白い花々が一斉に芽吹き、開花したのです。まるで、大地そのものが私たちを祝福しているかのように。

 この日、北の辺境伯領は「聖女の奇跡」と「領主の愛」に包まれ、王国で最も幸福な土地として、その名を歴史に刻むことになりました。
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