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君を想い
四話
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「縁談?」
麻衣は目を瞬く。
「ああ、オレにじゃない。お前にだ」
「え」
「高原の本家から、美柳から連絡が来たと。二人とも呆れていた、麻衣を闇市に出して。何を今更と、父が憤慨していた」
「お義父様が」
ほっと、胸を撫で下ろす。
「心配するな。家の両親は、お前が好きだ」
「はい」
陽仁と麻衣が結ばれた日から二ヶ月が過ぎたが、麻衣はまだ行為に慣れずにいた。
「んぅ・・っ」
「キツいか?」
痛くないことを、陽仁も知っているはずなのだが。なぜか、陽仁は訊ねた。
「大丈夫、で・・・あっ」
「なら、動いても平気だな」
下から突き上げられ、自重で奥まで挿れられたモノに、麻衣は背中を震わせた。
「やだぁ、深・・・」
「一気に入ったな」
「言わないでぇ・・大っき」
ずちゅ・・ずちゅと、水音が大きくなる。口からは甘い声が漏れ、麻衣は消えたくなる。
いや・・硬くしないでぇ
絶頂を迎えたばかりの身体を、陽仁は容赦なしに突き上げる。卒業するまでは、と陽仁は必ず避妊薬を飲ませた。
「やだって、言った」
「はは」
「何で、そんな」
元気なんだろうと、麻衣は恨めしく見やる。
「元気なのよ」
小さく呟く。
「鍛えてるからな」
「!」
「あと」
背後から抱きしめ、肩口に額を当てる。
「愛、の力かな?」
「恥ずかしいコト、言わないでぇ!」
麻衣の喚きのあと、二人は笑い出す。
「学徒動員」
黒板に書かれた文字に、生徒達が押し黙る。
「残念ですが、皆さんが授業を受けられるのは、今日が最後となりました。戦争で働き手がなく、それぞれの班で分担していただきます」
昭和十七年十月、ついに麻衣達にも学徒動員の要請がかかった。
「では、美柳さん、菱沼さん、宮野さん・・」
麻衣は兵舎での掃除洗濯が仕事となった。
「生き神様のお世話です。大変な、名誉ですよ」
「はい」
学校に通学する際、何人もの走る豫科練生を見かけた。零が一ヶ月前に比べ、飛ぶ機会が増えた。
「麻衣」
食事中の会話が減り、陽仁は麻衣の額に触れる。
「大丈夫か。熱は、ないな?」
「大丈夫です」
「なら、どうした?今日は妙子さんはおとなしいのか?」
「え」
菱沼妙子は麻衣の友人だ。
美人で男勝りで、麻衣とは水と油の差がある。
「妙子さんの騒動は、今や食卓の娯楽だからな」
「ぷ」
「裁縫の米田と言い合うとか、なかなか強烈じゃないか」
陽仁はよく笑う。
「何もしないとはらしくない」
「いえ、おとなしいとかじゃ」
「なら、なぜ話さないんだ?」
麻衣は学徒動員の要請を話した。
「授業も一時間で終わって、あとは人形を作ったり・・ハチマキを」
「なるほど、特攻兵に渡す人形か」
あとは何をした?
陽仁は麻衣の話を、飽きることなく聞いた。
麻衣は目を瞬く。
「ああ、オレにじゃない。お前にだ」
「え」
「高原の本家から、美柳から連絡が来たと。二人とも呆れていた、麻衣を闇市に出して。何を今更と、父が憤慨していた」
「お義父様が」
ほっと、胸を撫で下ろす。
「心配するな。家の両親は、お前が好きだ」
「はい」
陽仁と麻衣が結ばれた日から二ヶ月が過ぎたが、麻衣はまだ行為に慣れずにいた。
「んぅ・・っ」
「キツいか?」
痛くないことを、陽仁も知っているはずなのだが。なぜか、陽仁は訊ねた。
「大丈夫、で・・・あっ」
「なら、動いても平気だな」
下から突き上げられ、自重で奥まで挿れられたモノに、麻衣は背中を震わせた。
「やだぁ、深・・・」
「一気に入ったな」
「言わないでぇ・・大っき」
ずちゅ・・ずちゅと、水音が大きくなる。口からは甘い声が漏れ、麻衣は消えたくなる。
いや・・硬くしないでぇ
絶頂を迎えたばかりの身体を、陽仁は容赦なしに突き上げる。卒業するまでは、と陽仁は必ず避妊薬を飲ませた。
「やだって、言った」
「はは」
「何で、そんな」
元気なんだろうと、麻衣は恨めしく見やる。
「元気なのよ」
小さく呟く。
「鍛えてるからな」
「!」
「あと」
背後から抱きしめ、肩口に額を当てる。
「愛、の力かな?」
「恥ずかしいコト、言わないでぇ!」
麻衣の喚きのあと、二人は笑い出す。
「学徒動員」
黒板に書かれた文字に、生徒達が押し黙る。
「残念ですが、皆さんが授業を受けられるのは、今日が最後となりました。戦争で働き手がなく、それぞれの班で分担していただきます」
昭和十七年十月、ついに麻衣達にも学徒動員の要請がかかった。
「では、美柳さん、菱沼さん、宮野さん・・」
麻衣は兵舎での掃除洗濯が仕事となった。
「生き神様のお世話です。大変な、名誉ですよ」
「はい」
学校に通学する際、何人もの走る豫科練生を見かけた。零が一ヶ月前に比べ、飛ぶ機会が増えた。
「麻衣」
食事中の会話が減り、陽仁は麻衣の額に触れる。
「大丈夫か。熱は、ないな?」
「大丈夫です」
「なら、どうした?今日は妙子さんはおとなしいのか?」
「え」
菱沼妙子は麻衣の友人だ。
美人で男勝りで、麻衣とは水と油の差がある。
「妙子さんの騒動は、今や食卓の娯楽だからな」
「ぷ」
「裁縫の米田と言い合うとか、なかなか強烈じゃないか」
陽仁はよく笑う。
「何もしないとはらしくない」
「いえ、おとなしいとかじゃ」
「なら、なぜ話さないんだ?」
麻衣は学徒動員の要請を話した。
「授業も一時間で終わって、あとは人形を作ったり・・ハチマキを」
「なるほど、特攻兵に渡す人形か」
あとは何をした?
陽仁は麻衣の話を、飽きることなく聞いた。
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