六畳半のフランケン

乙太郎

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宇宙人?の奇跡

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………なびく。
…………なびいている。
風が。光が。
蒼ヶ峰聡の接地面をなびいていく。
始点も。終点も。
今の彼にはおおよそ関連がない。
此処に只有るのは流れ。
flow. flow. flow. flow.
在ることが許される簡略化された概念が
軌跡で結ぶ流曲線でもってして
かろうじて彼はその自認を楔留トドめている。

………それが?
枠、枠なのだ。
言うなればそれはフレームであり、
同様に、ジグソーパズルのスプリット。
ハマればそろうだろう。
カメればうごくだろう。

………だから?
しかして、その用意された空席に
漫然と着くことを記憶ココロが受け入れない。

手放したのだ。
手放したのだ。
戻ってくる。追いすがる。
蒼ヶ峰聡がボクに絡みつき、
その生命を滲ませるように脈動する。

どこまで救いようのない。
それじゃあダメなんだもの。
俯瞰私ふかんしの幽体ならありありとわかる。
アレを蒼ヶ峰聡と銘打つのなら
彼の隣には。
彼女がいなくては
その生命はヒト足りえないのだから。

……………
…………
………
……

neutralized沈黙
意気揚々と綴られていた打鍵音。
意匠を含んだテンポでもって
辿るゆるやかな安行が停止する。

……………………………

silence静寂
silence静寂
silence静寂

平静は変わらない。
閑静も止まるまい。
されど二度にたびのfermata
繰り返された間隙。不明瞭なるカテゴライズ。
虚無を識る奏者見えずとも
明確なりし微かなイロが
その幕間に含有ふくまれていた。

チィン
跳ねる金属器。

しばし、ーーー
         暗転。








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