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chrysalis
5章
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起床、目元を擦り、わざわざ大きく
勢いをつけて上体を起こす。
平衡感覚がない。一瞬、からだから意識だけが
ベッドから転がり落ちるような滑落。
「っあぁ…何だってこんな…」
自分はここまで朝に弱かっただろうか。
アラームはセットしてない。休日まで
あの電子音に急かされる事はないだろう。
時計に目をやる。8:20を示すインテリア。
昨日あれだけ寝坊したことを、自分のことながら
だらしないと感じていた私は就寝時間を
3時間早い21時にしていた。
「この時間は…」
居間に降りる事を躊躇する。タダでさえ最近の朝は
ドン底に気分が悪いのだ。そんな淀む様な
目覚めでアノ人と顔を合わせるなど、
ここ最近の不運なルーティンに拍車が
かかってしまう。もう一度布団を被って
休日特有の二度寝を決め込んでしまおうか。
「…どうだっていいか。」
昨日、いちにちまわりの午前を思い出す。
「良い一日は良い目覚めから。」
青少年の生活習慣を保全する団体のスローガンは
そう無下にするほど無価値ではないということか。
あの登校が槍玉に挙げられたのも
元を辿れば寝坊してあの見窄らしい貧乏神に
頼ったのが原因なのだ。
それに居間にいるアノ人に気圧されている様で、
流石に普段引きこもりがちな申し訳程度の
私のプライドも我慢がならない。
悪い流れを断ち切るため、
これまでの日常を再び勝ち取るため、
私はフローリングに足を下ろすことを決意した。
「ねぇ水冴綺」
鏡を見ながら化粧をする彼女、
実母、緋翅千冴胡の質問に身構える。
「昨日は学校遅刻したんだって?」
「…別に関係ないでしょ」
そりゃあ関係ないわよ。起こさなかったんだもの。と
娘のつっけんどんな態度に構わず、話を続ける母。
「コッチが聞きたいのはそんな大したこと
じゃないの。アナタ、四輪車で学校まで
登校したそうじゃないの。」
思わず下唇を噛む。
…この女。普段はロクに顔をツッコまないくせに
えらく人の弱点を抉り出すのが得意なのだ。
「もしかしなくても、今時四輪車乗り回してるなんて村岡さんしかいないでしょう?
なぁ~んでこの後に及んで、
それも依頼主の娘が、闇探偵なんかと
連んでるわけ?」
学校側にあの人のこと誤魔化すの
ホンット~にタイヘンだったんだから!と
器用にライターで温めたビューラーを
扱いながらやれやれと言ってみせる。
私、水冴綺の実母、千冴胡。
40に差し掛かると言うのに、その美貌は
衰える事はなく、その流れる様な曲線美も
崩れることがない。
セミロングの髪をブロンドに染め、朝昼晩と、
もはや数える事すら諦める数の男と密会を
繰り返している。
天真爛漫な振る舞いを見せておきながら、
その所作の一つ一つにはどこか上品さを
匂わせる、生粋の美魔女。毒女。ビッcー
「あぁ!もしかしてぇ?」
突然の柏手に娘の品評が遮られる。
かと思えばあの女の右頬の口角がこれでもかと
いうほどグググっと引き上がった。
「水冴綺ってば、あんな人がタイプゥ?
確かに顎髭はそのままで、薄汚いコート
羽織ってるけどぉ。確かに30差し掛かった
ダンディなイケメンってソソるわよねぇ?
ワタシもそこ20年前に通り過ぎたんだけど、
アンタも結構いい趣味してるじゃあないの!」
「…ッッ…最ッ底ぇ!!」
あらあら、少しは成長したかと思ったのに。
と目をパチクリさせるクソアマを置き去りにして
怒り奮闘のいたいけな少女は
低俗なゴシップネタを煮詰めたような
様相をさらす自らの住居を当てもなく飛び出した。
勢いをつけて上体を起こす。
平衡感覚がない。一瞬、からだから意識だけが
ベッドから転がり落ちるような滑落。
「っあぁ…何だってこんな…」
自分はここまで朝に弱かっただろうか。
アラームはセットしてない。休日まで
あの電子音に急かされる事はないだろう。
時計に目をやる。8:20を示すインテリア。
昨日あれだけ寝坊したことを、自分のことながら
だらしないと感じていた私は就寝時間を
3時間早い21時にしていた。
「この時間は…」
居間に降りる事を躊躇する。タダでさえ最近の朝は
ドン底に気分が悪いのだ。そんな淀む様な
目覚めでアノ人と顔を合わせるなど、
ここ最近の不運なルーティンに拍車が
かかってしまう。もう一度布団を被って
休日特有の二度寝を決め込んでしまおうか。
「…どうだっていいか。」
昨日、いちにちまわりの午前を思い出す。
「良い一日は良い目覚めから。」
青少年の生活習慣を保全する団体のスローガンは
そう無下にするほど無価値ではないということか。
あの登校が槍玉に挙げられたのも
元を辿れば寝坊してあの見窄らしい貧乏神に
頼ったのが原因なのだ。
それに居間にいるアノ人に気圧されている様で、
流石に普段引きこもりがちな申し訳程度の
私のプライドも我慢がならない。
悪い流れを断ち切るため、
これまでの日常を再び勝ち取るため、
私はフローリングに足を下ろすことを決意した。
「ねぇ水冴綺」
鏡を見ながら化粧をする彼女、
実母、緋翅千冴胡の質問に身構える。
「昨日は学校遅刻したんだって?」
「…別に関係ないでしょ」
そりゃあ関係ないわよ。起こさなかったんだもの。と
娘のつっけんどんな態度に構わず、話を続ける母。
「コッチが聞きたいのはそんな大したこと
じゃないの。アナタ、四輪車で学校まで
登校したそうじゃないの。」
思わず下唇を噛む。
…この女。普段はロクに顔をツッコまないくせに
えらく人の弱点を抉り出すのが得意なのだ。
「もしかしなくても、今時四輪車乗り回してるなんて村岡さんしかいないでしょう?
なぁ~んでこの後に及んで、
それも依頼主の娘が、闇探偵なんかと
連んでるわけ?」
学校側にあの人のこと誤魔化すの
ホンット~にタイヘンだったんだから!と
器用にライターで温めたビューラーを
扱いながらやれやれと言ってみせる。
私、水冴綺の実母、千冴胡。
40に差し掛かると言うのに、その美貌は
衰える事はなく、その流れる様な曲線美も
崩れることがない。
セミロングの髪をブロンドに染め、朝昼晩と、
もはや数える事すら諦める数の男と密会を
繰り返している。
天真爛漫な振る舞いを見せておきながら、
その所作の一つ一つにはどこか上品さを
匂わせる、生粋の美魔女。毒女。ビッcー
「あぁ!もしかしてぇ?」
突然の柏手に娘の品評が遮られる。
かと思えばあの女の右頬の口角がこれでもかと
いうほどグググっと引き上がった。
「水冴綺ってば、あんな人がタイプゥ?
確かに顎髭はそのままで、薄汚いコート
羽織ってるけどぉ。確かに30差し掛かった
ダンディなイケメンってソソるわよねぇ?
ワタシもそこ20年前に通り過ぎたんだけど、
アンタも結構いい趣味してるじゃあないの!」
「…ッッ…最ッ底ぇ!!」
あらあら、少しは成長したかと思ったのに。
と目をパチクリさせるクソアマを置き去りにして
怒り奮闘のいたいけな少女は
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