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chrysalis
8章
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…ベットの上で追憶に浸って数十分。
らしくもなくアツくなった身体の熱を
寝返りで逃す。
ヘンなカンジ…
可奈子とは変えがたい友情で繋がっている。
ソレは揺るがない、譲れない事実。でも…
「普段なら知らないフリして流しそうなものだけど」
私自身、ましてや第三者に対して、
強い意識を抱くほどの感情の起伏が
あることに内心驚いていた。
手の甲を額に当て、自己反省。
「なんでもないっての…」
まあ、きっと今までにない「依頼」の内容に
引っ張られただけだろうと結論づけて、
話の本題を片付けることにした。
机についてありふれた風景写真と
殴り書きのメモを閲覧する。
「AUV、起動。」
昨日から妙にORTICAの同期が浅い。
演算領域のセットアップを待つあいだ
「書類整理」の内容を再確認する。ーー
アイツの依頼内容は殆ど人間関係のいざこざ。
人の足跡を嗅ぎ回り下世話な勘を働かせる
探偵は第三者であるが故にその
足りないピースに気づきやすい。
同業者の間でもこの事件にはノータッチで
意見が一致しているようだった。
「話は少し逸れたがまあ、そういうこった。
メトロフォリア未曾有のERROR。
そしてソレを利用できる犯人グループの
存在に、廃棄区画の空気はピリピリしてるンだよ。」
ようやっと100年保ってきた勢力図の均衡を
崩しかねない大事件だからな。とコーヒーを一口。
小休止、ということなのだろう。
そら、猫舌なミサキチャンでも飲める温度だろ?
とこちらのココアを指差す。
村岡の言うとおり、温かな甘味は、
激情の逃げ場を無くして今にも
飛び掛からんとする身体を落ち着けてくれた。
「客観的な評価?でしたっけ。
ともかく気づけないのね。そんな大事なこと。」
このままでは話が進まない。
いったん村岡の言うとおり、それを事実として
受け入れて本題に入ることにした。
「ああそうだ。加えてなんだが今回の依頼は
その失踪事件の関係でな。
何が何だかわからず気分も優れない様子で
「自分の身元を洗って下さい」
なんて依頼者本人も首を傾げてやってきやがる。
そんな冷やかしとしか思えない内容、
それこそ場末の探偵にしか頼めないんだろうよ。」
とたん、二口目のココアを吹き出す。
遠くから此方を眺めていた緑さんが、
急いで駆けつけテーブルを綺麗にし、その台拭きで
村岡の顔に浴びせられたココアを
ゴシゴシと拭き取った。
「っ…!ゴホッ!アンタねえ!自分でさっき
メトロフォリア未曾有のERRORぁ~って
雄弁に講釈垂れてたじゃないの!
こんな小汚いハイエナと女子高生に
解決できるわけないでしょう?!」
汚したのはキミなんだがなぁ…と
止まらない台拭きを制止して話を続けた。
「何も解決しようだなんていってねぇ。
…俺たち探偵の仕事はその違和感を取り除くこと。
テキトーにソレっぽい現場写真でっち上げて
調査内容(偽)をミサキチャンがいつも通りまとめる。
「違和感とはなんのことでしょう。
依頼通り調査しましたが、
特筆すべき点は見当たりません。」
それで終わりなンだよ。事件解決なんぞ
管理層の人間と保安警察に任せとけ。
探偵稼業としちゃ、こんな簡単そうな依頼、
「出来ません。」で突き返す方が大問題だ。」
これじゃあクリーニングコースだねと
大きなシミのついたコートを眺めながら
笑う緑さん。
いいから下がってろ、絢香。と素っ気ない
態度をしめす村岡。
はーいと拗ねた顔をして緑さんはまた
カウンターに戻っていった。
set-up completed.
ORTICA, mode Calculation be ready.
村岡の用意した材料に目を通し、
思わずためいきをつく。
「これは…無用心にすぎるんじゃあないの…」
存在しない「誰か」の違和感。
此れはその是非を、一昨日から過去1週間に渡って
依頼主の足跡を辿って証明している。
木曜日a.m8:00
第二居住区から第二商業区へ
高校に登校。
p.m6:00
高校を出る。
p.m7:00
帰宅
金曜日a.m8:00
第二居住区から第二商業区へ
高校に登校。
p.m6:00
高校を出る。
p.m6:20
商業区での散策を確認。
p.m7:45
帰宅
土曜日自宅外への動き確認なし。
日曜日a.m10:00
第二商業区に外出。
p.m4:00
帰宅。
月曜日a.m8:00
第二居住区から第二商業区へ
高校に登校。
p.m6:00
高校を出る。
p.m6:30
廃棄区画内に入る。
p.m6:40
ミエーレストラーダ
香水店に入店。
p.m8:30
帰宅。
火曜日自宅外への動き確認なし。
水曜日a.m8:00
第二居住区から第二商業区へ
高校に登校。
p.m4:00
高校を出る。
p.m5:00
帰宅
依頼主は18歳の女生徒、大河内智鶴。
みればその所属は私の通う商業区第2区高等高校。
「同じ学年…ねぇ。」
そっと目を閉じる。
肉体を弛緩させ、質量の枷から解き放つ。
意識を実像から切り離し、脳裏に投射される虚像へ。
in-put optimized.
「Onsite verification start!」
らしくもなくアツくなった身体の熱を
寝返りで逃す。
ヘンなカンジ…
可奈子とは変えがたい友情で繋がっている。
ソレは揺るがない、譲れない事実。でも…
「普段なら知らないフリして流しそうなものだけど」
私自身、ましてや第三者に対して、
強い意識を抱くほどの感情の起伏が
あることに内心驚いていた。
手の甲を額に当て、自己反省。
「なんでもないっての…」
まあ、きっと今までにない「依頼」の内容に
引っ張られただけだろうと結論づけて、
話の本題を片付けることにした。
机についてありふれた風景写真と
殴り書きのメモを閲覧する。
「AUV、起動。」
昨日から妙にORTICAの同期が浅い。
演算領域のセットアップを待つあいだ
「書類整理」の内容を再確認する。ーー
アイツの依頼内容は殆ど人間関係のいざこざ。
人の足跡を嗅ぎ回り下世話な勘を働かせる
探偵は第三者であるが故にその
足りないピースに気づきやすい。
同業者の間でもこの事件にはノータッチで
意見が一致しているようだった。
「話は少し逸れたがまあ、そういうこった。
メトロフォリア未曾有のERROR。
そしてソレを利用できる犯人グループの
存在に、廃棄区画の空気はピリピリしてるンだよ。」
ようやっと100年保ってきた勢力図の均衡を
崩しかねない大事件だからな。とコーヒーを一口。
小休止、ということなのだろう。
そら、猫舌なミサキチャンでも飲める温度だろ?
とこちらのココアを指差す。
村岡の言うとおり、温かな甘味は、
激情の逃げ場を無くして今にも
飛び掛からんとする身体を落ち着けてくれた。
「客観的な評価?でしたっけ。
ともかく気づけないのね。そんな大事なこと。」
このままでは話が進まない。
いったん村岡の言うとおり、それを事実として
受け入れて本題に入ることにした。
「ああそうだ。加えてなんだが今回の依頼は
その失踪事件の関係でな。
何が何だかわからず気分も優れない様子で
「自分の身元を洗って下さい」
なんて依頼者本人も首を傾げてやってきやがる。
そんな冷やかしとしか思えない内容、
それこそ場末の探偵にしか頼めないんだろうよ。」
とたん、二口目のココアを吹き出す。
遠くから此方を眺めていた緑さんが、
急いで駆けつけテーブルを綺麗にし、その台拭きで
村岡の顔に浴びせられたココアを
ゴシゴシと拭き取った。
「っ…!ゴホッ!アンタねえ!自分でさっき
メトロフォリア未曾有のERRORぁ~って
雄弁に講釈垂れてたじゃないの!
こんな小汚いハイエナと女子高生に
解決できるわけないでしょう?!」
汚したのはキミなんだがなぁ…と
止まらない台拭きを制止して話を続けた。
「何も解決しようだなんていってねぇ。
…俺たち探偵の仕事はその違和感を取り除くこと。
テキトーにソレっぽい現場写真でっち上げて
調査内容(偽)をミサキチャンがいつも通りまとめる。
「違和感とはなんのことでしょう。
依頼通り調査しましたが、
特筆すべき点は見当たりません。」
それで終わりなンだよ。事件解決なんぞ
管理層の人間と保安警察に任せとけ。
探偵稼業としちゃ、こんな簡単そうな依頼、
「出来ません。」で突き返す方が大問題だ。」
これじゃあクリーニングコースだねと
大きなシミのついたコートを眺めながら
笑う緑さん。
いいから下がってろ、絢香。と素っ気ない
態度をしめす村岡。
はーいと拗ねた顔をして緑さんはまた
カウンターに戻っていった。
set-up completed.
ORTICA, mode Calculation be ready.
村岡の用意した材料に目を通し、
思わずためいきをつく。
「これは…無用心にすぎるんじゃあないの…」
存在しない「誰か」の違和感。
此れはその是非を、一昨日から過去1週間に渡って
依頼主の足跡を辿って証明している。
木曜日a.m8:00
第二居住区から第二商業区へ
高校に登校。
p.m6:00
高校を出る。
p.m7:00
帰宅
金曜日a.m8:00
第二居住区から第二商業区へ
高校に登校。
p.m6:00
高校を出る。
p.m6:20
商業区での散策を確認。
p.m7:45
帰宅
土曜日自宅外への動き確認なし。
日曜日a.m10:00
第二商業区に外出。
p.m4:00
帰宅。
月曜日a.m8:00
第二居住区から第二商業区へ
高校に登校。
p.m6:00
高校を出る。
p.m6:30
廃棄区画内に入る。
p.m6:40
ミエーレストラーダ
香水店に入店。
p.m8:30
帰宅。
火曜日自宅外への動き確認なし。
水曜日a.m8:00
第二居住区から第二商業区へ
高校に登校。
p.m4:00
高校を出る。
p.m5:00
帰宅
依頼主は18歳の女生徒、大河内智鶴。
みればその所属は私の通う商業区第2区高等高校。
「同じ学年…ねぇ。」
そっと目を閉じる。
肉体を弛緩させ、質量の枷から解き放つ。
意識を実像から切り離し、脳裏に投射される虚像へ。
in-put optimized.
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