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一緒に微睡む
2.
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脱衣所から出ると、リビングの方から何やら話し声が聞こえてくる。
……ああ、お母様がテレビでも見ているのかな。そんな風に思って、リビングの扉を開いた。
すると……
「ただいま、結麻さん」
ここにいるはずのない人が、私を見て優しい顔で笑っていた。
「い、ぶき、さん……?」
なぜ……?
出張から帰ってくるのは、明日の夕方か、夜になるって聞いていた。
「商談が思いのほか上手くいって、あとはトップ同士の親睦を深めるだけだと言うので、先に帰ってきました」
「あ、おかえりなさい、びっくりしました……」
「うん、そうみたいだね。ただいま」
話し声がするのはテレビのせいだと思っていたから、本当にびっくりした。
嬉しいとびっくりが一度に私に押し寄せて、ものすごく変な顔になってしまっているかも知れない。
でも、頬が緩むのを止めることは出来そうになかった。
伊吹さんは目を優しく細めて、私の方へと手を伸ばす。
大きくて優しくて温かい手が私の手を取って、私をゆっくりと近くへ引き寄せた。
少し縮まる距離に、私の心臓はドキドキと急激にうるさくなる。
伊吹さんの長い指が私の指を絡め取り、私の心臓はますます激しく鼓動した。
「昨夜の電話で結麻さんが寂しそうだったので、急いで帰って来ました」
「あ、えっと……」
「俺の方がもっと寂しかったけど」
そんな風に甘く囁かれて、優しく見つめられて、私の心臓はもうとんでもない速さで動き回っている。
それなのに伊吹さんは私のドキドキなんておかまいなしに、柔らかく微笑んでいて。
伊吹さんは、絡ませていた私の手をそっと離した。
伊吹さんの熱が離れるのを寂しく思ってしまう私は、あまりにも愚かだ。
だけど――。
まるで私の思考を読んだかのように、次の瞬間には優しく抱き寄せられて……。
次の瞬間、額に、優しい熱を感じた。
「……っ!」
額に口づけられたのだと気づき、ますます私の鼓動が早くなる。
その熱はゆっくりと私の額から離れ、代わりに、ギュッと抱き締められた。
伊吹さんに与えられる熱は、どうしてこんなにも優しくて、暖かいんだろう……。
そう思ってしまって、切なく胸が痛む。
だって、私は、伊吹さんの何者でもない……。
「いぶき、さん、」
「うん」
伊吹さんに抱き締められている事実に、どうしたって心拍が上がり、息苦しくなる。
呼吸を取り戻そうと息を深く吸い込めば、伊吹さんの匂いがして……私の呼吸は楽になるどころか、更に苦しさが増した。
呼吸ををしたいのに、鼓動が激しすぎて、身体の力が抜けてしまう。
「結麻さん……」
耳元で聞こえる伊吹さんの声が、スマホなんて言う機械を通してではなく、私の鼓膜を直接揺する。
こんなにも近くで。
もう、頭がおかしくなってしまいそうなぐらいの距離で。
「……あらあら。ふふふ……」
すっかり夢見心地で伊吹さんの腕の中にいたけれど……、お母様の声で、私はハッと我に返った。
よく考えたら、今日は伊吹さんのお母様が来ていたのだった。
伊吹さんの想定外のお帰りに、すっかり頭から抜け落ちていて……。
「……っ!」
慌てて伊吹さんの腕の中から抜け出そうと試みるけど、そんなに強く抱き締められているわけではないのに、なぜか伊吹さんの拘束は解けることがない。
それどころか、伊吹さんは私を抱き締めたまま「母さん、来るなら言っておいてくれないと」と私の耳元で話すものだから、私の頭はますますパニックに陥った。
「あ、の、伊吹さん……っ」
「ごめんね結麻さん。母が突然押しかけてきて」
「いえ、とても楽しかったので、それは全然、大丈夫です」
「おまけに、泊まるって……?」
そう言ってようやく腕を緩めた伊吹さんは、私の顔を覗き込んだ。
今までに無いほどの至近距離で目が合い、私のドキドキは更に加速する。
このままでは、そのうち私の心臓は壊れてしまうんじゃないだろうか。
「あの、それは私が、お誘いしました……お話ししていて楽しかったし、それに……」
私もひとりだと寂しかったので、……とは言いづらくて、言葉を切って俯いた。
昨日は少し酔っていたせいで上手く嘘がつけなかったから、伊吹さんにはもうばれてしまっているかも知れないけど……。
……ああ、お母様がテレビでも見ているのかな。そんな風に思って、リビングの扉を開いた。
すると……
「ただいま、結麻さん」
ここにいるはずのない人が、私を見て優しい顔で笑っていた。
「い、ぶき、さん……?」
なぜ……?
出張から帰ってくるのは、明日の夕方か、夜になるって聞いていた。
「商談が思いのほか上手くいって、あとはトップ同士の親睦を深めるだけだと言うので、先に帰ってきました」
「あ、おかえりなさい、びっくりしました……」
「うん、そうみたいだね。ただいま」
話し声がするのはテレビのせいだと思っていたから、本当にびっくりした。
嬉しいとびっくりが一度に私に押し寄せて、ものすごく変な顔になってしまっているかも知れない。
でも、頬が緩むのを止めることは出来そうになかった。
伊吹さんは目を優しく細めて、私の方へと手を伸ばす。
大きくて優しくて温かい手が私の手を取って、私をゆっくりと近くへ引き寄せた。
少し縮まる距離に、私の心臓はドキドキと急激にうるさくなる。
伊吹さんの長い指が私の指を絡め取り、私の心臓はますます激しく鼓動した。
「昨夜の電話で結麻さんが寂しそうだったので、急いで帰って来ました」
「あ、えっと……」
「俺の方がもっと寂しかったけど」
そんな風に甘く囁かれて、優しく見つめられて、私の心臓はもうとんでもない速さで動き回っている。
それなのに伊吹さんは私のドキドキなんておかまいなしに、柔らかく微笑んでいて。
伊吹さんは、絡ませていた私の手をそっと離した。
伊吹さんの熱が離れるのを寂しく思ってしまう私は、あまりにも愚かだ。
だけど――。
まるで私の思考を読んだかのように、次の瞬間には優しく抱き寄せられて……。
次の瞬間、額に、優しい熱を感じた。
「……っ!」
額に口づけられたのだと気づき、ますます私の鼓動が早くなる。
その熱はゆっくりと私の額から離れ、代わりに、ギュッと抱き締められた。
伊吹さんに与えられる熱は、どうしてこんなにも優しくて、暖かいんだろう……。
そう思ってしまって、切なく胸が痛む。
だって、私は、伊吹さんの何者でもない……。
「いぶき、さん、」
「うん」
伊吹さんに抱き締められている事実に、どうしたって心拍が上がり、息苦しくなる。
呼吸を取り戻そうと息を深く吸い込めば、伊吹さんの匂いがして……私の呼吸は楽になるどころか、更に苦しさが増した。
呼吸ををしたいのに、鼓動が激しすぎて、身体の力が抜けてしまう。
「結麻さん……」
耳元で聞こえる伊吹さんの声が、スマホなんて言う機械を通してではなく、私の鼓膜を直接揺する。
こんなにも近くで。
もう、頭がおかしくなってしまいそうなぐらいの距離で。
「……あらあら。ふふふ……」
すっかり夢見心地で伊吹さんの腕の中にいたけれど……、お母様の声で、私はハッと我に返った。
よく考えたら、今日は伊吹さんのお母様が来ていたのだった。
伊吹さんの想定外のお帰りに、すっかり頭から抜け落ちていて……。
「……っ!」
慌てて伊吹さんの腕の中から抜け出そうと試みるけど、そんなに強く抱き締められているわけではないのに、なぜか伊吹さんの拘束は解けることがない。
それどころか、伊吹さんは私を抱き締めたまま「母さん、来るなら言っておいてくれないと」と私の耳元で話すものだから、私の頭はますますパニックに陥った。
「あ、の、伊吹さん……っ」
「ごめんね結麻さん。母が突然押しかけてきて」
「いえ、とても楽しかったので、それは全然、大丈夫です」
「おまけに、泊まるって……?」
そう言ってようやく腕を緩めた伊吹さんは、私の顔を覗き込んだ。
今までに無いほどの至近距離で目が合い、私のドキドキは更に加速する。
このままでは、そのうち私の心臓は壊れてしまうんじゃないだろうか。
「あの、それは私が、お誘いしました……お話ししていて楽しかったし、それに……」
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