キャンピングカーで往く異世界徒然紀行

タジリユウ

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第191話 元Aランク冒険者

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「……あの者はかなりの腕前でしたね」

「ああ。Aランク冒険者ってのがどれだけのもんかわからねえが、あのおっさんはまだ全然本気を出していなかったぜ」

「酔っ払っているはずなのに、歩く時もすごく自然な身のこなしだったよ」

「そうなんだ。見た目だけじゃ全然わからなかったよ」

「ホ~」

 どうやらみんなにはガレンさんの強さがわかったらしい。

 俺から見たら、ナイスミドルなおっさんとした思えなかった。

「あんたたち、大丈夫だったかい?」

「はい。ガレンさんという方がこの場を治めてくれました」

 心配したこの店の女将さんがこちらにやってきた。さっきの2人組の冒険者は大きな声だったし、だいぶ注目を集めてしまったようだ。

「助けに行けなくて悪かったね。話が大事になったらガレンさんが入ってくれると思っていたのよ」

 確かにこっちの世界だと武器を持っている人が多くてそう簡単に喧嘩の仲裁にも入れないから、黙って衛兵を呼ぶのが正解なのだろう。

「ガレンさんのおかげで助かりました。ガレンさんは元Aランク冒険者なんですね?」

「ええ、そうよ。歳で最近冒険者を引退してしまったけれど、それまでは本当にすごい冒険者だったんだから。この街にAランク冒険者は何人かいるけれど、彼ほどベテランな冒険者はいないわね。うちの店も10年以上前からご贔屓にしてもらっているわ」

「なるほど。だいぶお酒が好きなんですね」

「冒険者を引退してからはだいぶお酒の量が増えたみたいで、他のお店でもお酒ばかり飲んでばかりいるみたいね。冒険者を引退したばかりの人にはよくあることなのよ。身体にはよくないから、そろそろ止めないといけないんだけれどね」

「ええ、お酒も飲み過ぎたら身体に良くないですからね」

 耳の痛い話である。俺も日々の酒の量は注意しているつもりだ。

 どうやらガレンさんは街の人たちにも心配されているみたいだ。さっき俺たちを助けてくれたことといい、いい人なのは間違いないだろう。



「ふう~とりあえずガレンさんのおかげで助かったよ。この街は冒険者が多いみたいだし、何か相談をする時は宿に戻ってからした方がよさそうだ」

「そうですね。酒を提供する店ではああいった酔っぱらいもいますから、気を付けた方がよさそうです」

 お店をあとにして宿へ戻ってきた。

 市場を歩いている時に絡まれたり、フー太が攫われそうになったことはあったけれど、まさかお店であんな風に絡まれるとは思っていなかったな。

「そういえばまだお礼を伝えていませんでしたね。シゲト、先ほどはかばってくれてありがとうございました」

「みんなの方が強いけれど、そこは男であることと年上の意地としてな。相変わらず逃げることしかできなさそうだったけれど」

 ガレンさんのように酔っぱらいたちを退けられればよかったのだが、相変わらず戦闘面に関してはほとんど役に立たない俺である。

 とはいえ、俺もレッドドラゴンや盗賊たちとの戦いを切り抜けてきたこともあって、武器を抜いていない酔っぱらい2人くらいなら怯えることもなくなってきた。俺もこっちの世界にだいぶ順応してきたらしい。

「格好よかったよ、シゲトお兄ちゃん!」

「まっ、俺の時もそうやってかばってくれよな」

「ホホー!」

「……そうだな、俺も精進するよ」

 みんなに褒められるとなんだか気恥ずかしい。あとはクマ撃退スプレーに頼るだけでなく、もう少しそれに見合う実力もほしいところだ。

「あのおっさんは強かったな。シゲト、護衛を頼むとしたら、あのおっさんみたいなやつにしてくれよ」

「ガレンさんかあ。強かったけれど、それ以上に信用できそうな人だったな。確かに冒険者に依頼をするならああいう人に頼みたいところだ」

 もちろんAランク冒険者で強かったこともあるけれど、それ以上に見知らぬ俺たちを助けてくれたことや長年この街を拠点にして活動してきた信用のある冒険者ということで、キャンピングカーの秘密を守ってくれそうな気がする。

「どちらにせよ今日のお礼を改めて伝えたいところだし、駄目元で頼むだけ頼んでみるか。さすがに元Aランク冒険者だから厳しいだろうけど。明日はまた情報を集めながら、冒険者を雇う時にどれくらいの費用が必要か確認するために冒険者ギルドへ行ってみよう」

 冒険者を引退したばかりだからガレンさんに依頼をするのは無理だろうけれど、試すだけ試してみよう。それに今日は咄嗟の出来事でろくにお礼を伝えていなかったから、改めてちゃんとお礼を伝えなければな。
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