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連載
第192話 ルートがない
しおりを挟む翌日、宿の朝食を食べてから再び市場で情報収集をしてきた。
屋台街でお昼ご飯を食べつつ、周囲に人がいないことを確認し、集めた情報について話している。
「スターフェル村へ行くためには森の中を数日間歩かないといけないのか……」
街で集めた情報によると、スターフェル村とロンデル遺跡への道のりには山の間に阻まれた広い森を通らなければいけないことがわかった。先ほど人気のない場所で透明化したキャンピングカーを取り出してカーナビを操作してみたところ、確かにスターフェル村らしき村へ行くためにはその森を横断しなければならないらしい。
今まではカーナビに目的地をセットすれば、キャンピングカーでは通れない道を迂回して道のりを示してくれたのだが、今回は初めて『ルートが見つかりません』という表示が出てきてしまった。
「森の中でもキャンピングカーがあるので、野営をしても大丈夫だと思いますよ」
「僕も森の中なら少しは役に立てるよ」
確かにジーナとコレットちゃんの言う通り、寝る時は車体強化機能で頑丈になったキャンピングカーの中で寝ることができるから比較的安全だし、森の中のように静かな場所ならコレットちゃんの聴力はとても心強い。
「だけど他の場所よりも魔物が多い地域みたいだし、いつも以上に警戒する必要はありそうだ。やっぱりそっちに向かうなら口の堅い冒険者を一人か二人は雇いたいところだな」
戦力を確保できないのなら、米を諦めて別の場所へ向かうとしよう。
……米を諦めるのはものすごく惜しいが、この異世界で米を見つけることができたという事実だけでも一歩前進だ。スターフェル村以外の場所でも米を育てている場所があるに違いない。
みんなは俺のためにスターフェル村へ付き合ってくれるというが、それでみんながいつも以上に危険になるのでは意味がないからな。
昼食を食べたあとは冒険者ギルドへとやってきた。
この辺りは冒険者が多いということもあってか、今までの街で一番でかい建物だった。頑丈な石造りの建物で、この異世界では比較的珍しい3階建てとなっており、横にも縦にも大きい。
全員で入ると目立ってしまうので、いつものように俺とジーナだけで中へと入る。昨日冒険者に絡まれたこともあって、他のみんなには人が多い広場で待っていてもらう。
「護衛依頼はCランクからで5日間で金貨50枚くらいが相場ですか」
「はい。この辺りは危険な魔物が多いので、他の街の相場よりも依頼料が高価になっております」
特に絡まれることはなく、受付嬢さんに護衛依頼の相場を確認できた。昨日絡んできた冒険者に遭うこともなほっとした。
しかしその金額は元の世界の金額に換算すると約50万円となかなかに高額だった。とはいえ、命が懸かっているとなると、依頼料が高額になるのも当然なのか。
「基本的には野営もあるので、2人組で金貨50枚となり、ひとり増えるごとに金貨25枚となります」
「なるほど……」
確かに泊まりでの野営となると、単純に危険なのと夜の見張りが必要になるから2人のパーティに頼まないと駄目か。俺たちの場合はキャンピングカーがあって野営はそこまで気にしなくていいからひとりでいいんだけれどなあ。
一日当たりに換算してひとり2万5千円と考えると、そこまで高額ではないのかもしれない。ただ、それ以上のBランク冒険者に依頼をすると依頼料は倍に跳ね上がるようだ。その分より安全になるので、重要な物を運んだり、より安全な旅をしたい場合にはそちらを頼むようだ。
「そういえば昨日ガレンさんという元Aランク冒険者に助けてもらいました。本当に強くて格好いい方でしたね」
受付嬢さんに護衛依頼の仕組みや依頼料の詳しい話を聞いたあと、ガレンさんのことについて聞いてみた。
「ガレン様ですか。それは運が良かったですね。彼はこの街で長年活動していた有名な冒険者なのですよ。先日引退されてしまわれたのはとても残念です」
受付嬢さんは本気で残念そうな表情をしている。やはりお店の女将さんが言っていた通り、長年この街で活動していただけあって、冒険者ギルドからの信頼もあるようだ。
「ええ、とても運がよかったです。ガレンさんに改めてお礼を伝えたいのですが、連絡を取ってもらうことはできたりしますか?」
「いえ、彼は引退してしまったので、冒険者ギルドの方から連絡を取ることはできませんが……」
そう言いながら俺とジーナを改めて見てくる受付嬢さん。もしかすると俺たちがガレンさんに何かするのか疑っているのかもしれない。
「もしかすると昼間でしたら、この冒険者ギルドの食堂にいるかもしれませんよ」
俺とジーナが問題なさそうと判断したのか、ガレンさんがこの冒険者ギルドの食堂にいることを教えてくれた。まあ、俺はどう見ても一般人にしか見えないからな。
食堂の女将さんからガレンさんの行きつけの店をいくつか聞いていたが、まさかこんな身近な場所にいたとは。
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