キャンピングカーで往く異世界徒然紀行

タジリユウ

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第193話 冒険者ギルドの食堂

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「ありがとうございます、このあと寄ってみますね。ちなみに『銀狼の刃』という冒険者パーティはこの辺りでは有名な冒険者なんですか?」

 ついでといってはなんだが、昨日絡んできたパーティについても聞いてみた。

「銀狼の刃ですか……いえ、彼らは最近Cランク冒険者になったばかりで、知名度はないと思いますよ。むしろトラブルを起こした報告も多いので、冒険者ギルドとしてはあまりおすすめできませんが、彼らを依頼に指名することも可能です」

「「………………」」

 ジーナと顔を見合わせた。

 酔っ払って一般市民に絡んでくるような冒険者だし、そんなことだろうと思ったよ。

 もちろん、あいつらに指名依頼をするわけもなく、あいつらに絡まれてガレンさんに助けてもらったことをしっかりと報告しておいた。俺たちだけでなく、他の一般人も絡まれてしまう可能性もあるから、こういうのはしっかりと報告しておかないとな。

 そういったことをちゃんと教えてくれるこの街の冒険者ギルドの信用度が少しだけ上がった。



「ええ~と、ここが冒険者ギルドの食堂か」

 いろいろと話を聞いてだいぶ時間がかかってしまったこのもあったので、一度冒険者ギルドを出て広場にいたみんなへ報告をしてからジーナと一緒にまた冒険者ギルドへ戻ってきた。もしもガレンさんがいたら、時間がかかるかもしれないので、みんなには先に宿へ戻ってもらうことにした。

 まだ昼過ぎだというのに食道には結構な人がいて、この時間帯からお酒を飲んでいる人も結構いた。冒険者には決まった定休日なんかもないだろうし、今日休みの冒険者やすでに午前中で依頼を達成した冒険者が集まっているのかもしれない。

「シゲト、いましたよ」

「あっ、本当だ」

 目のいいジーナが早速ガレンさんを見つけた。

 食堂の隅っこで、ひとりでお酒を飲んでいる。昨日も結構飲んでいたのに、本当にお酒が好きなんだな。

「ガレンさん、昨日は本当にありがとうございました」

「うぃ~。おっ、昨日の兄ちゃんとエルフの嬢ちゃんじゃねえか」

 ガレンさんも俺たちのことを覚えてくれていたみたいだ。

「改めてシゲトと申します、おかげさまで助かりました」

「ジーナです。昨日はありがとうございました」

「昨日のお礼を持ってきたので、受け取ってくれませんか?」

「律儀な兄ちゃんだねえ~。大したことなんてしてねえし、気にする必要ねえんだけどよ」

「お礼といっても俺の故郷のお酒とちょっとしたツマミくらいなんですが」

「おっ、それならありがたくもらうぜ!」

 お礼はお酒と伝えると、いきなり目を輝かせるガレンさん。予想通りお礼はお金よりもお酒の方がよかったみたいだ。

 背負っていたリュックから容器を移し替えたお酒を取り出す。

「こちらから順にビール、ウイスキー、日本酒です」

「ほう、どれも初めて聞く酒だな。シゲトの故郷はどこなんだ?」

「俺の故郷は日本と言います」

「冒険者になってからいろんな話を聞いてきたつもりだが、初めて聞く国の名前だな」

 さすがに日本は異世界だからそれも当然だ。

「そんじゃあ早速いただくぜ。シゲトたちも座ったらどうだ?」

「持ち込みは大丈夫なんですね。それでは失礼します」

 ジーナと一緒にガレンさんの正面の席に座る。

 どうやら冒険者ギルドの食堂は食べ物や飲み物は持ち込み自由らしく、ガレンさんは早速この場で飲むつもりらしい。屋台街もそうだったが、こっちの世界だと持ち込み自由な場所が多かったりする。

「むっ、この酒だけ冷てえぞ!」

「それはビールです。この酒は冷やして飲むのがおいしいので、普段は魔道具を使って冷やしているんですよ。そうですね、先にこのお酒から飲むのをおすすめします」

 ガレンさんが冒険者ギルドの食堂にいると聞いて、キャンピングカーからお酒やつまみを持ってきたため、冷蔵庫に入っていたビールはまだ冷えている。

「そいつは贅沢な魔道具だな。ふむ、色はエールみてえだ」

「俺の故郷のエールみたいなものです。エールも少し冷やすとおいしいんですよね。あっ、すみません。エールと果汁ジュースをお願いします」

「は~い!」

 さすがに食堂に来てなにも頼まないのはよくないので、俺とジーナの分の飲み物を注文する。今日もこの街に泊まる予定なので、俺も一杯くらい飲んでしまおう。お腹の方はさっきお昼を食べたばかりだからまだ空いていない。

「そんじゃあ、乾杯だ」

「「乾杯!」」

 俺たちの飲み物が届き、ガレンさんと乾杯をする。出会ったばかりの俺たちといきなり乾杯をしてくれるとはガレンさんは人見知りしない性格らしい。

「ぷはあ~なんだこの酒は! めちゃくちゃ飲みやすくてうめえぞ!」

「エールとは違った味でおいしいですよね」

 どうやらビールの味を気に入ってくれたようで、一気にビールを飲み干してしまうガレンさん。それにしてもいい飲みっぷりだ。
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