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1巻
1-3
朝食を食べ終わって、いろいろと準備をしてからキャンピングカーで出発する。目指すは近くにある村だ。
「ホー! ホー!」
「はは、すごいだろ。フー太が空を飛べるのもすごいけれど、このキャンピングカーはこれくらいのスピードで走れるんだ」
小さな村よりも街の方がいいのかとも思ったのだが、いったん村で街の情報を集めてからにすることにした。街へ入るためにお金が必要な可能性もあるし、この世界の文明レベルやどんな住人がいるかを予め確かめておきたい。
フー太は俺の隣の助手席にちょこんと座っており、しっかりとシートベルトをお腹の部分だけ付けている。
そもそも道が悪くてスピードを出せないとはいえ、障害物などは多いから、俺が急ブレーキを掛ける可能性もあるからな。
「おっと、たぶんこれは道だな。こっちの方へ行ってみよう」
「ホー」
目的地の村に向けてしばらく走っていると、カーナビの画面に道のようなものが見えた。そちらの方向へ少し進むと、そこには地面を踏み固めて作られた道のようなものが見えてきた。
「ふむふむ。カーナビによると、こっちの道を右に進んでいくと目的地の村で、左に進むと街へ通じているらしいな。予定通り右の村に進むか」
カーナビを操作して付近の道を確認すると、どうやらこの道は今から行く村と街をつないでいるらしい。予定通り右に進んで村へと向かっていった。
道のりは今のところ順調で、今朝の野営地から百五十キロほど走り続けてきた。さて、少し遅くなってしまったけれど、そろそろ走るのをやめて昼食にするかな。
「ホー!!」
「んっ、どうした? うわっ!?」
順調に道を走っていたところ、フー太が突然声を上げ、道の先を見ると突然人影が現れた。
すぐにブレーキを掛けて急停車する。
バキンッ!
「うおっ!?」
そして、その人影から何かが放たれたと思ったら、キャンピングカーのフロントガラスへ衝突して弾かれた。
「び、びっくりした! これはナイフか?」
フロントガラスに衝突した物体がキャンピングカーの前に落ちている。どうやら金属製のナイフのようだ。元の世界のように綺麗な形ではなく、少し歪な手作業で作ったような形である。
「危なかった。フロントガラスが割れていたら大変なことになっていたぞ」
キャンピングカーの拡張機能である、『車体強化機能』を昨日の夜に2ポイントで取っておいて正解だったぜ。
危険の多そうなこの世界では、まずは身の回りの安全が求められた。昨日のゴブリンみたいな敵も出てくるかもしれないし、何かに衝突してしまう可能性もあるからな。
それと、本音を言うと自動修復機能も取りたかった。走行には問題ないとはいえ、新車であるキャンピングカーが凹んでいる姿を見るのはきつい……
「フー太、ありがとうな」
「ホー♪」
フー太が気付かなかったら、スピードを落とさずに今の投擲されたナイフに驚いて、急ハンドルを切って横転していた可能性もあった。どうやらフー太の目は俺よりも良いようだな。
そして拡張された車体強化機能のおかげでフロントガラスは傷一つ付いていない。確かフロントガラスは割れても貫通しにくい仕組みのはず……ガラス自体が割れていないということは、しっかりとキャンピングカーの車体が強化されているようだ。
「き、貴様らは何者だ! 魔物なのか!」
「ちょ、ちょっと待って!」
すると、キャンピングカーの前に一人の女性がゆっくりと近付いてきた。
一人の女性――言葉にすればその通りだが、彼女の後ろで一つにまとめられた長い髪は、元の世界では見たことがない美しく輝く白銀色だ。
そして何より、彼女の両耳は長くて先が尖っていた。
透き通った宝石のような髪と同じ白銀色の眼、整った顔立ちをした十代後半から二十代前半の若い女性、彼女の容姿はファンタジーの中でしか見たことがないエルフのそれだった。
「こっ、言葉が通じるのか!? 大きな魔物の中に人が入っているだと……」
白銀色の髪のエルフは驚いた表情を浮かべつつも、先ほどのナイフよりも断然大きなロングソードをこちらに向けて敵意を示している。
そうか、こんな高速で移動する巨大なキャンピングカーは、こちらの世界の人からすれば、大きな魔物に見えるのか。
そりゃ、こんなのが自分の方に向かってきたら、ナイフを投擲して攻撃するのも当然か。
そして、彼女の言葉は普通に日本語として理解できている。キャンピングカーの拡張機能の中に異世界言語などの機能はなかったので心配していたけれど、どうやら言葉が通じるようでほっとした。
こちらには敵意がないことを証明するため、俺は両手を上げて必死にアピールをする。こちらとしては、無駄な争いは避けたい。
「ホー!」
「何っ、森の守り神である森フクロウ様だと!」
おお、どうやらこのエルフの女性はフー太のことを知っているらしい。体のサイズを変えられるようだし、この世界のフクロウがということではなく、フー太が特別な種族だったようだ。
だけど、そのおかげでどうにかこの場を収められそうな――
「貴様、森フクロウ様をどうするつもりだ!」
「いや、どうもしないよ! 家族もいないらしいから、一緒に旅をしているところだって!」
「とぼけるな! ならば、なぜ森フクロウ様を拘束しているのだ! やはり貴様は森の密猟者だな!」
「ちょっ、誤解だって!」
いや、拘束しているって、これはシートベルトだからね!?
外そうと思えばすぐに外せるからな!
「問答無用、覚悟!」
「うわっ!?」
目の前にいるエルフの女性が両手でロングソードを持って、さらにこちらへ近付いてきた。
くそっ、キャンピングカーのギアをバックに準備しておくべきだった!
あんな大きな剣が相手では車体強化機能があっても駄目かもしれない。こうなったら、こちらも前に急発進して向こうが逃げるのを期待するしかない!
「うっ……」
「え!?」
こちらがアクセルを踏んで急発進しようとしたところ、エルフの女性が突然倒れた。慌ててアクセルから足を離す。
彼女はそのまま一向に起き上がってこない。倒れた際に手放した彼女のロングソードがキャンピングカーの前に転がっている。
いったい何が起きたんだ?
「……とりあえず、ここから逃げるか」
「ホー?」
フー太が首を傾げている。
うん、俺も正直に言うと何が起こったのかわからないが、向こうは俺を密猟者だと誤解しているようだったし、何かの罠かもしれない。ここは今のうちに逃げよう。
ぎゅるるるるるる~。
「お……お腹が……」
「………………」
ギアをバックに入れて来た道を引き返そうとしたその時、倒れていたエルフの女性からものすごい腹の虫の音が聞こえてきた。窓を少し開けているとはいえ、フロントガラス越しに聞こえてくるとは、かなり大きな音だ。
どうしたらいいんだよ、これ……
「おい、落ち着いて話を聞けよ。この森フクロウは、森で怪我をしていたところを治療してあげたら懐かれたんだ。ほら、拘束していないのに逃げ出さないだろ」
「ホー!」
このまま放置して逃げようとも考えたが、このエルフの女性を放っておくわけにもいかず、助けることにした。
というのもカーナビによると、まだ村までは距離があり、この女性は武器以外に何も持っていないため、このままにしておけば死ぬことはほぼ間違いないからだ。
こちらに剣を向けてきたとはいえ、どう見ても勘違いのようだし、死にそうな人を見捨てるのはさすがに気分が悪い。
もちろん彼女が盗賊で、お腹をすかせて倒れたのは演技という可能性もあるため、最大限の警戒はしている。彼女が手放したロングソードは回収してあるから、大丈夫だとは思うが。
……あと、腹の虫の音までは演技ではできないだろうという推察もあった。
「うう……」
返事がないし、顔も伏せたままだ。もしかしたら、本当に危険な状態なのかもしれない。
「ほら、水とお粥だ。まずはゆっくりとこれを食え」
エルフの女性の少し手前に水とお椀に入れたお粥を置いて距離を取る。さすがに相手に食べさせてあげるようなことはせずに、自分で食べるのを待った。
幸いなことに、このキャンピングカーには何かあった時のために非常食を積んである。その中にレトルトのお粥があった。まさかこんなにすぐに使うことになるとは思わなかったけれどな。
確か極限の飢餓状態で普通の食事を取ると体に悪いというのを聞いたことがある。まずは温めた消化の良いお粥を食べてから栄養のある食事を取らせてあげた方がいい。
「水……食べ物……」
エルフの女性が目の前に置かれた水とお粥に気付いたようで、ゾンビのように前へ這いずっている。
極限の空腹状態でナイフを投擲したり、あんなに大きなロングソードを構えたりしたから、一気に体力を消耗したのかもしれない。
そしてゆっくりとだが、水を口に含み、お粥を食べていった。
「この度は本当に失礼しました!」
「……」
俺の目の前には、それはそれは綺麗な土下座を惜しげもなく披露している白銀色の髪をしたエルフさんがいた。
差し出した水とお粥を食べた後、追加でオレンジジュースとレトルトのお粥に卵を加えたものをペロリと平らげたエルフさん。フー太が自由に飛び回っているのを見て、ようやく俺が密猟者ではないことをわかってくれたようだ。
というか、なんで異世界に土下座の文化があるんだよ……
「とりあえず、まずは顔を上げてくれ。あまり女性がそういうことをしているのは見たくないんだ」
「わ、わかりました」
そう言いながら顔を上げるエルフの女性。こちらの世界だと、リアルに土の上での土下座になるから見ていて気持ちの良いものじゃない。
……それにしても、この白銀色の髪をしたエルフさんは本当に綺麗だ。やはりエルフという種族は美形のチート種族なのだろうか。
「私はジーナです。あなた方のおかげで命拾いをしました。本当にありがとうございます!」
「俺は……シゲトだ。こっちの森フクロウはフー太と呼んでいる」
「ホー♪」
どうやら異世界だと苗字なんかは持たないようだ。俺も変に思われないよう、この世界ではシゲトと名乗ることにしておこう。
「シゲト殿にフー太様ですか。水と食料をありがとうございました」
「……ああ、どういたしまして」
フー太だけは様付けなんだな。とりあえず彼女はこちらの世界で初めて会った人物だ。いろいろと情報を聞いておきたい。
「それで、ジーナさんはどうして水や食料を持たずにあんなところへいたんだ?」
「私のことは呼び捨てで大丈夫です。実は数日前に森で狩りをしていたところ、道に迷ってしまいました。そして魔物と戦闘になり、運悪く荷物を失ってしまいました。なんとか森の外に出て村までの道を見つけることができたのですが、そこに得体の知れない魔物が高速で近付いてきたので、とっさにナイフを投げてしまい……本当に申し訳ありません!」
「なるほど、そういう事情だったのか。確かにいきなりあんなのが目の前に出てきたら驚くよな。それにお腹がすいて冷静な判断もできていなかったのかもな。とりあえずジーナの事情はわかったよ。こちらに攻撃してきたことはもう気にしなくていい」
どうやらこのジーナというエルフさんは、俺がこれから行こうとしていた村の住人らしい。
森で狩りをしていたら、道に迷って数日間を森の中で過ごしたようだ。人は飢餓状態になるとまともな判断ができないと聞いている。
そんな中でキャンピングカーが突然目の前に現れたら、いきなり攻撃を仕掛けてくる気持ちもわかる。もしかしたら食べることができる魔物かもしれないしな。
「それで、その……この見たことがない巨大な魔物はシゲト殿が召喚した魔物なのでしょうか?」
ジーナの視線の先にはキャンピングカーがある。さて、こいつをどう説明すればいいものか。
「……ああ、その通りだよ。これは俺が召喚したキャンピングカーという魔物なんだ!」
「や、やはりそうでしたか!」
信じてくれた。
とりあえずそういうことにしておこう。少なくとも今出会ったばかりの人に、別の世界から来たことやキャンピングカーの能力のことを話すつもりはない。まあ、フー太は普通のフクロウだと思っていたからノーカンだな。
「その証拠に……ほら、これでどうだ!」
「きっ、消えた!? す、すごい! これが召喚魔法なのですね、初めて見ました!」
俺がキャンピングカーに手を触れると、キャンピングカーの車体が一瞬で消えた。
これは2ポイントで拡張した『車体収納機能』である。朝出発をする前にいろいろと試してみたのだが、この機能は予想通りキャンピングカーを収納できる機能だった。
異世界の村や街へ行く時にこんなに大きな車体があると目立つからな。いや、目立つどころかそもそも村や街に入れない可能性が高いから、これも必須の機能と言えるだろう。
俺がキャンピングカーに触れている最中に『収納』と念じると、キャンピングカーを自在に収納できる機能らしい。
ただし、キャンピングカーを出す際には何もない空間にしか出せず、地面にタイヤが付いた状態でしか出すことができない。
空中にキャンピングカーを出して、下にいる魔物を攻撃するなんてことはできないようだ。
さすがに俺やフー太が車内にいる間に収納ができるかは試していない。その場合に収納された俺やフー太がどうなるかがわからなくて怖いからな。
これで使用したポイントはナビゲーション、燃料補給、水補給がそれぞれ1ポイント、車体強化と車体収納が2ポイントずつで合計7ポイントになった。
残りの3ポイントは緊急時に使う予定だ。
「あれほどの召喚魔法を使えるなんて、シゲト殿はさぞ名のある魔法使いなのですね!」
ジーナが尊敬の眼差しで俺を見てくる。
本当は魔法使いというわけではないんだけれどね。というか、この世界には魔法があるのか。
「いや、この魔法しか使えないから、そんなに大した者じゃないよ。ジーナは何か魔法を使えたりするの?」
「はい、シゲト殿には遠く及びませんが、風魔法を使うことができます。こんな感じで風を集めて攻撃魔法として放つことができます」
ジーナが右手を前に出すと、周囲の風がそこに集まり、俺の目でも見えるくらいの渦となっていった。
「おお、すごい!」
「ホー!」
これには俺もフー太もとても驚いている。どうやらこの世界に魔法があるというのは本当のようだ。フー太が体のサイズを変えられるのも、もしかしたら魔法なのかもしれない。
「うっ……」
「ちょっ!? 大丈夫?」
ジーナが突然片膝をついた。いったいどうしたんだ?
ぎゅるるるるるる~。
「す、すみません。魔法を使うと少しお腹が減るのです……」
「……なるほどな」
それならやらなくてもいいのに……
道に迷ったり、空腹状態で魔法を使ったりと、このエルフさんはどこか抜けている気もする。少なくとも、必要以上に警戒する必要はなさそうだな。
「顔色もいいし多少は体調もよくなってきたみたいだし、もう少しまともな食事を取ってもよさそうだな。ちょっと待っていてくれ」
「い、いえ! 先ほどはおいしい料理をいただきましたし、これ以上食事をいただくわけには……」
ぎゅるるるるるる~。
「「………………」」
再びジーナのお腹の虫の音が盛大に鳴った。彼女のお腹は正直だ。
「はうう……」
顔を真っ赤にして、お腹を押さえながら恥ずかしがっているジーナ。
その様子は年相応の可愛らしい女の子だ。なんだか少し抜けているけれど、憎めない子だな。
「こういう時はあまり遠慮するもんじゃないぞ。俺達もちょうど昼ご飯を食べるところだから、あまり気にするな」
「……はい、それではお言葉に甘えさせてもらいます」
「さてと、何を作ってあげようかな」
「ホー」
改めてキャンピングカーを出して、フー太と一緒にキャンピングカーの中へ入る。大丈夫だとは思うが、一応ジーナにはキャンピングカーの外で待ってもらっている。
「よし、野菜が取れて体も温まるアレにするか」
そしてキャンピングカー内で調理をして、外にアウトドアチェアとテーブルをセットする。アウトドアチェアはキャンピングカーを購入した際に三つほど余分に買っておいた。
……ぼっちにそんなにアウトドアチェアが必要か、という疑問は置いておけ! 俺だって元の世界で一緒にキャンプをする友人くらいはいたぞ! まあ数人だけれど……
「お待たせ。ジーナもフー太もゆっくりと食べるんだぞ。それとこれは俺の故郷の料理だから、口に合わなかったら無理はしないで遠慮なく言ってくれ」
「とても良い香りですね!」
「ホー♪」
俺が作った料理はコンソメスープパスタだ。
作り方は実に簡単。沸騰したお湯に塩を入れてパスタを茹でる。その間に別の鍋で野菜やキノコなどを茹でておき、そこにハムとコンソメを投入。
パスタが茹で終わったら、それを鍋に入れてもうひと煮立ちさせて、塩とアウトドアスパイスで味を付けたら完成だ。アウトドアスパイスはこんなものにまで使えるから優秀だよな。
簡単に作れるうえに栄養も取れて体も温まるという、まさに今欲しい料理だ。ハムをベーコンに代えても旨いのだが、今回はホットサンド用のハムしか購入していなかった。
多少食材は使ってしまったが、ジーナからこの世界の情報を得られるのなら安いものだ。うまくいけば村で野菜なんかを購入できるかもしれない。
「んん! スープに入った長くてモチモチとしたものが、スープと一緒に口の中で合わさってとてもおいしいです!」
「これはパスタっていう麵料理なんだけれど、麺は食べたことがないの?」
「はい! 私は初めて食べました! それにこのスープがとても濃い味でおいしいです。複雑な味と香りをしていて……もしかして塩だけではなくて香辛料などが使われているのではないでしょうか!?」
「ああ、塩と一緒にコンソメという調味料とアウトドアスパイスという香辛料が入っているよ」
「そ、そんな高価なものを……本当にありがとうございます!」
……ジーナの様子を見ると、この世界の食文化はそれほど豊かではないように思えるな。
味が濃いと言っていたが、ジーナの体調を考えて、味付けは少し薄くしている。この世界では塩以外の調味料や香辛料が手に入りにくいのかもしれない。
「ホー♪ ホホー♪」
フー太も器用にパスタをちゅるちゅると食べている。フー太を見ているとこちらまで癒されるなあ。ジーナも微笑ましい様子でフー太を見ている。
「本当にご馳走さまでした、シゲト殿。このご恩は決して忘れません!」
俺達はコンソメスープパスタを綺麗に平らげて一息ついた。そのままキャンピングカーの横に設置したテーブルとアウトドアチェアでジーナの話を聞く。
「これだけおいしそうに食べてくれれば、俺の方も作った甲斐があるよ。そうそう、俺のことは呼び捨てで呼んでくれていいからな」
殿なんて付けられると、なんだかむずがゆい。異世界ものの漫画や小説では名前を呼び捨てで呼ぶのが普通だったし、ジーナにもそうしてもらおう。
「わかりました。本当にありがとうございました、シゲト」
「………………」
自分で言っておいてなんだが、若干――いや、かなり恥ずかしい。綺麗な女性に苗字ならともかく名前呼びされた経験なんて、彼女がいなかった俺には小学生以来のことだ。
いかん、いかん。あまり意識しないことにしよう。
「それでジーナ。さっきも言ったけれど、俺はかなり遠くの国からやってきたんだ。いろいろとこの国のことや魔法のことなんかを教えてほしい」
「はい、私が知っていることなら喜んで。シゲトは遠くの国から来たのですね。なるほど、それでこちらのテーブルやイスなどは見たことのない構造となっているのですね」
そう言いながら、キャンプギアのテーブルやアウトドアチェアを不思議そうに眺めるジーナ。やはりこれらのキャンプギアはジーナからすると珍しい物のようだ。
さて、まずは何から聞いてみようか。
「ホー! ホー!」
「はは、すごいだろ。フー太が空を飛べるのもすごいけれど、このキャンピングカーはこれくらいのスピードで走れるんだ」
小さな村よりも街の方がいいのかとも思ったのだが、いったん村で街の情報を集めてからにすることにした。街へ入るためにお金が必要な可能性もあるし、この世界の文明レベルやどんな住人がいるかを予め確かめておきたい。
フー太は俺の隣の助手席にちょこんと座っており、しっかりとシートベルトをお腹の部分だけ付けている。
そもそも道が悪くてスピードを出せないとはいえ、障害物などは多いから、俺が急ブレーキを掛ける可能性もあるからな。
「おっと、たぶんこれは道だな。こっちの方へ行ってみよう」
「ホー」
目的地の村に向けてしばらく走っていると、カーナビの画面に道のようなものが見えた。そちらの方向へ少し進むと、そこには地面を踏み固めて作られた道のようなものが見えてきた。
「ふむふむ。カーナビによると、こっちの道を右に進んでいくと目的地の村で、左に進むと街へ通じているらしいな。予定通り右の村に進むか」
カーナビを操作して付近の道を確認すると、どうやらこの道は今から行く村と街をつないでいるらしい。予定通り右に進んで村へと向かっていった。
道のりは今のところ順調で、今朝の野営地から百五十キロほど走り続けてきた。さて、少し遅くなってしまったけれど、そろそろ走るのをやめて昼食にするかな。
「ホー!!」
「んっ、どうした? うわっ!?」
順調に道を走っていたところ、フー太が突然声を上げ、道の先を見ると突然人影が現れた。
すぐにブレーキを掛けて急停車する。
バキンッ!
「うおっ!?」
そして、その人影から何かが放たれたと思ったら、キャンピングカーのフロントガラスへ衝突して弾かれた。
「び、びっくりした! これはナイフか?」
フロントガラスに衝突した物体がキャンピングカーの前に落ちている。どうやら金属製のナイフのようだ。元の世界のように綺麗な形ではなく、少し歪な手作業で作ったような形である。
「危なかった。フロントガラスが割れていたら大変なことになっていたぞ」
キャンピングカーの拡張機能である、『車体強化機能』を昨日の夜に2ポイントで取っておいて正解だったぜ。
危険の多そうなこの世界では、まずは身の回りの安全が求められた。昨日のゴブリンみたいな敵も出てくるかもしれないし、何かに衝突してしまう可能性もあるからな。
それと、本音を言うと自動修復機能も取りたかった。走行には問題ないとはいえ、新車であるキャンピングカーが凹んでいる姿を見るのはきつい……
「フー太、ありがとうな」
「ホー♪」
フー太が気付かなかったら、スピードを落とさずに今の投擲されたナイフに驚いて、急ハンドルを切って横転していた可能性もあった。どうやらフー太の目は俺よりも良いようだな。
そして拡張された車体強化機能のおかげでフロントガラスは傷一つ付いていない。確かフロントガラスは割れても貫通しにくい仕組みのはず……ガラス自体が割れていないということは、しっかりとキャンピングカーの車体が強化されているようだ。
「き、貴様らは何者だ! 魔物なのか!」
「ちょ、ちょっと待って!」
すると、キャンピングカーの前に一人の女性がゆっくりと近付いてきた。
一人の女性――言葉にすればその通りだが、彼女の後ろで一つにまとめられた長い髪は、元の世界では見たことがない美しく輝く白銀色だ。
そして何より、彼女の両耳は長くて先が尖っていた。
透き通った宝石のような髪と同じ白銀色の眼、整った顔立ちをした十代後半から二十代前半の若い女性、彼女の容姿はファンタジーの中でしか見たことがないエルフのそれだった。
「こっ、言葉が通じるのか!? 大きな魔物の中に人が入っているだと……」
白銀色の髪のエルフは驚いた表情を浮かべつつも、先ほどのナイフよりも断然大きなロングソードをこちらに向けて敵意を示している。
そうか、こんな高速で移動する巨大なキャンピングカーは、こちらの世界の人からすれば、大きな魔物に見えるのか。
そりゃ、こんなのが自分の方に向かってきたら、ナイフを投擲して攻撃するのも当然か。
そして、彼女の言葉は普通に日本語として理解できている。キャンピングカーの拡張機能の中に異世界言語などの機能はなかったので心配していたけれど、どうやら言葉が通じるようでほっとした。
こちらには敵意がないことを証明するため、俺は両手を上げて必死にアピールをする。こちらとしては、無駄な争いは避けたい。
「ホー!」
「何っ、森の守り神である森フクロウ様だと!」
おお、どうやらこのエルフの女性はフー太のことを知っているらしい。体のサイズを変えられるようだし、この世界のフクロウがということではなく、フー太が特別な種族だったようだ。
だけど、そのおかげでどうにかこの場を収められそうな――
「貴様、森フクロウ様をどうするつもりだ!」
「いや、どうもしないよ! 家族もいないらしいから、一緒に旅をしているところだって!」
「とぼけるな! ならば、なぜ森フクロウ様を拘束しているのだ! やはり貴様は森の密猟者だな!」
「ちょっ、誤解だって!」
いや、拘束しているって、これはシートベルトだからね!?
外そうと思えばすぐに外せるからな!
「問答無用、覚悟!」
「うわっ!?」
目の前にいるエルフの女性が両手でロングソードを持って、さらにこちらへ近付いてきた。
くそっ、キャンピングカーのギアをバックに準備しておくべきだった!
あんな大きな剣が相手では車体強化機能があっても駄目かもしれない。こうなったら、こちらも前に急発進して向こうが逃げるのを期待するしかない!
「うっ……」
「え!?」
こちらがアクセルを踏んで急発進しようとしたところ、エルフの女性が突然倒れた。慌ててアクセルから足を離す。
彼女はそのまま一向に起き上がってこない。倒れた際に手放した彼女のロングソードがキャンピングカーの前に転がっている。
いったい何が起きたんだ?
「……とりあえず、ここから逃げるか」
「ホー?」
フー太が首を傾げている。
うん、俺も正直に言うと何が起こったのかわからないが、向こうは俺を密猟者だと誤解しているようだったし、何かの罠かもしれない。ここは今のうちに逃げよう。
ぎゅるるるるるる~。
「お……お腹が……」
「………………」
ギアをバックに入れて来た道を引き返そうとしたその時、倒れていたエルフの女性からものすごい腹の虫の音が聞こえてきた。窓を少し開けているとはいえ、フロントガラス越しに聞こえてくるとは、かなり大きな音だ。
どうしたらいいんだよ、これ……
「おい、落ち着いて話を聞けよ。この森フクロウは、森で怪我をしていたところを治療してあげたら懐かれたんだ。ほら、拘束していないのに逃げ出さないだろ」
「ホー!」
このまま放置して逃げようとも考えたが、このエルフの女性を放っておくわけにもいかず、助けることにした。
というのもカーナビによると、まだ村までは距離があり、この女性は武器以外に何も持っていないため、このままにしておけば死ぬことはほぼ間違いないからだ。
こちらに剣を向けてきたとはいえ、どう見ても勘違いのようだし、死にそうな人を見捨てるのはさすがに気分が悪い。
もちろん彼女が盗賊で、お腹をすかせて倒れたのは演技という可能性もあるため、最大限の警戒はしている。彼女が手放したロングソードは回収してあるから、大丈夫だとは思うが。
……あと、腹の虫の音までは演技ではできないだろうという推察もあった。
「うう……」
返事がないし、顔も伏せたままだ。もしかしたら、本当に危険な状態なのかもしれない。
「ほら、水とお粥だ。まずはゆっくりとこれを食え」
エルフの女性の少し手前に水とお椀に入れたお粥を置いて距離を取る。さすがに相手に食べさせてあげるようなことはせずに、自分で食べるのを待った。
幸いなことに、このキャンピングカーには何かあった時のために非常食を積んである。その中にレトルトのお粥があった。まさかこんなにすぐに使うことになるとは思わなかったけれどな。
確か極限の飢餓状態で普通の食事を取ると体に悪いというのを聞いたことがある。まずは温めた消化の良いお粥を食べてから栄養のある食事を取らせてあげた方がいい。
「水……食べ物……」
エルフの女性が目の前に置かれた水とお粥に気付いたようで、ゾンビのように前へ這いずっている。
極限の空腹状態でナイフを投擲したり、あんなに大きなロングソードを構えたりしたから、一気に体力を消耗したのかもしれない。
そしてゆっくりとだが、水を口に含み、お粥を食べていった。
「この度は本当に失礼しました!」
「……」
俺の目の前には、それはそれは綺麗な土下座を惜しげもなく披露している白銀色の髪をしたエルフさんがいた。
差し出した水とお粥を食べた後、追加でオレンジジュースとレトルトのお粥に卵を加えたものをペロリと平らげたエルフさん。フー太が自由に飛び回っているのを見て、ようやく俺が密猟者ではないことをわかってくれたようだ。
というか、なんで異世界に土下座の文化があるんだよ……
「とりあえず、まずは顔を上げてくれ。あまり女性がそういうことをしているのは見たくないんだ」
「わ、わかりました」
そう言いながら顔を上げるエルフの女性。こちらの世界だと、リアルに土の上での土下座になるから見ていて気持ちの良いものじゃない。
……それにしても、この白銀色の髪をしたエルフさんは本当に綺麗だ。やはりエルフという種族は美形のチート種族なのだろうか。
「私はジーナです。あなた方のおかげで命拾いをしました。本当にありがとうございます!」
「俺は……シゲトだ。こっちの森フクロウはフー太と呼んでいる」
「ホー♪」
どうやら異世界だと苗字なんかは持たないようだ。俺も変に思われないよう、この世界ではシゲトと名乗ることにしておこう。
「シゲト殿にフー太様ですか。水と食料をありがとうございました」
「……ああ、どういたしまして」
フー太だけは様付けなんだな。とりあえず彼女はこちらの世界で初めて会った人物だ。いろいろと情報を聞いておきたい。
「それで、ジーナさんはどうして水や食料を持たずにあんなところへいたんだ?」
「私のことは呼び捨てで大丈夫です。実は数日前に森で狩りをしていたところ、道に迷ってしまいました。そして魔物と戦闘になり、運悪く荷物を失ってしまいました。なんとか森の外に出て村までの道を見つけることができたのですが、そこに得体の知れない魔物が高速で近付いてきたので、とっさにナイフを投げてしまい……本当に申し訳ありません!」
「なるほど、そういう事情だったのか。確かにいきなりあんなのが目の前に出てきたら驚くよな。それにお腹がすいて冷静な判断もできていなかったのかもな。とりあえずジーナの事情はわかったよ。こちらに攻撃してきたことはもう気にしなくていい」
どうやらこのジーナというエルフさんは、俺がこれから行こうとしていた村の住人らしい。
森で狩りをしていたら、道に迷って数日間を森の中で過ごしたようだ。人は飢餓状態になるとまともな判断ができないと聞いている。
そんな中でキャンピングカーが突然目の前に現れたら、いきなり攻撃を仕掛けてくる気持ちもわかる。もしかしたら食べることができる魔物かもしれないしな。
「それで、その……この見たことがない巨大な魔物はシゲト殿が召喚した魔物なのでしょうか?」
ジーナの視線の先にはキャンピングカーがある。さて、こいつをどう説明すればいいものか。
「……ああ、その通りだよ。これは俺が召喚したキャンピングカーという魔物なんだ!」
「や、やはりそうでしたか!」
信じてくれた。
とりあえずそういうことにしておこう。少なくとも今出会ったばかりの人に、別の世界から来たことやキャンピングカーの能力のことを話すつもりはない。まあ、フー太は普通のフクロウだと思っていたからノーカンだな。
「その証拠に……ほら、これでどうだ!」
「きっ、消えた!? す、すごい! これが召喚魔法なのですね、初めて見ました!」
俺がキャンピングカーに手を触れると、キャンピングカーの車体が一瞬で消えた。
これは2ポイントで拡張した『車体収納機能』である。朝出発をする前にいろいろと試してみたのだが、この機能は予想通りキャンピングカーを収納できる機能だった。
異世界の村や街へ行く時にこんなに大きな車体があると目立つからな。いや、目立つどころかそもそも村や街に入れない可能性が高いから、これも必須の機能と言えるだろう。
俺がキャンピングカーに触れている最中に『収納』と念じると、キャンピングカーを自在に収納できる機能らしい。
ただし、キャンピングカーを出す際には何もない空間にしか出せず、地面にタイヤが付いた状態でしか出すことができない。
空中にキャンピングカーを出して、下にいる魔物を攻撃するなんてことはできないようだ。
さすがに俺やフー太が車内にいる間に収納ができるかは試していない。その場合に収納された俺やフー太がどうなるかがわからなくて怖いからな。
これで使用したポイントはナビゲーション、燃料補給、水補給がそれぞれ1ポイント、車体強化と車体収納が2ポイントずつで合計7ポイントになった。
残りの3ポイントは緊急時に使う予定だ。
「あれほどの召喚魔法を使えるなんて、シゲト殿はさぞ名のある魔法使いなのですね!」
ジーナが尊敬の眼差しで俺を見てくる。
本当は魔法使いというわけではないんだけれどね。というか、この世界には魔法があるのか。
「いや、この魔法しか使えないから、そんなに大した者じゃないよ。ジーナは何か魔法を使えたりするの?」
「はい、シゲト殿には遠く及びませんが、風魔法を使うことができます。こんな感じで風を集めて攻撃魔法として放つことができます」
ジーナが右手を前に出すと、周囲の風がそこに集まり、俺の目でも見えるくらいの渦となっていった。
「おお、すごい!」
「ホー!」
これには俺もフー太もとても驚いている。どうやらこの世界に魔法があるというのは本当のようだ。フー太が体のサイズを変えられるのも、もしかしたら魔法なのかもしれない。
「うっ……」
「ちょっ!? 大丈夫?」
ジーナが突然片膝をついた。いったいどうしたんだ?
ぎゅるるるるるる~。
「す、すみません。魔法を使うと少しお腹が減るのです……」
「……なるほどな」
それならやらなくてもいいのに……
道に迷ったり、空腹状態で魔法を使ったりと、このエルフさんはどこか抜けている気もする。少なくとも、必要以上に警戒する必要はなさそうだな。
「顔色もいいし多少は体調もよくなってきたみたいだし、もう少しまともな食事を取ってもよさそうだな。ちょっと待っていてくれ」
「い、いえ! 先ほどはおいしい料理をいただきましたし、これ以上食事をいただくわけには……」
ぎゅるるるるるる~。
「「………………」」
再びジーナのお腹の虫の音が盛大に鳴った。彼女のお腹は正直だ。
「はうう……」
顔を真っ赤にして、お腹を押さえながら恥ずかしがっているジーナ。
その様子は年相応の可愛らしい女の子だ。なんだか少し抜けているけれど、憎めない子だな。
「こういう時はあまり遠慮するもんじゃないぞ。俺達もちょうど昼ご飯を食べるところだから、あまり気にするな」
「……はい、それではお言葉に甘えさせてもらいます」
「さてと、何を作ってあげようかな」
「ホー」
改めてキャンピングカーを出して、フー太と一緒にキャンピングカーの中へ入る。大丈夫だとは思うが、一応ジーナにはキャンピングカーの外で待ってもらっている。
「よし、野菜が取れて体も温まるアレにするか」
そしてキャンピングカー内で調理をして、外にアウトドアチェアとテーブルをセットする。アウトドアチェアはキャンピングカーを購入した際に三つほど余分に買っておいた。
……ぼっちにそんなにアウトドアチェアが必要か、という疑問は置いておけ! 俺だって元の世界で一緒にキャンプをする友人くらいはいたぞ! まあ数人だけれど……
「お待たせ。ジーナもフー太もゆっくりと食べるんだぞ。それとこれは俺の故郷の料理だから、口に合わなかったら無理はしないで遠慮なく言ってくれ」
「とても良い香りですね!」
「ホー♪」
俺が作った料理はコンソメスープパスタだ。
作り方は実に簡単。沸騰したお湯に塩を入れてパスタを茹でる。その間に別の鍋で野菜やキノコなどを茹でておき、そこにハムとコンソメを投入。
パスタが茹で終わったら、それを鍋に入れてもうひと煮立ちさせて、塩とアウトドアスパイスで味を付けたら完成だ。アウトドアスパイスはこんなものにまで使えるから優秀だよな。
簡単に作れるうえに栄養も取れて体も温まるという、まさに今欲しい料理だ。ハムをベーコンに代えても旨いのだが、今回はホットサンド用のハムしか購入していなかった。
多少食材は使ってしまったが、ジーナからこの世界の情報を得られるのなら安いものだ。うまくいけば村で野菜なんかを購入できるかもしれない。
「んん! スープに入った長くてモチモチとしたものが、スープと一緒に口の中で合わさってとてもおいしいです!」
「これはパスタっていう麵料理なんだけれど、麺は食べたことがないの?」
「はい! 私は初めて食べました! それにこのスープがとても濃い味でおいしいです。複雑な味と香りをしていて……もしかして塩だけではなくて香辛料などが使われているのではないでしょうか!?」
「ああ、塩と一緒にコンソメという調味料とアウトドアスパイスという香辛料が入っているよ」
「そ、そんな高価なものを……本当にありがとうございます!」
……ジーナの様子を見ると、この世界の食文化はそれほど豊かではないように思えるな。
味が濃いと言っていたが、ジーナの体調を考えて、味付けは少し薄くしている。この世界では塩以外の調味料や香辛料が手に入りにくいのかもしれない。
「ホー♪ ホホー♪」
フー太も器用にパスタをちゅるちゅると食べている。フー太を見ているとこちらまで癒されるなあ。ジーナも微笑ましい様子でフー太を見ている。
「本当にご馳走さまでした、シゲト殿。このご恩は決して忘れません!」
俺達はコンソメスープパスタを綺麗に平らげて一息ついた。そのままキャンピングカーの横に設置したテーブルとアウトドアチェアでジーナの話を聞く。
「これだけおいしそうに食べてくれれば、俺の方も作った甲斐があるよ。そうそう、俺のことは呼び捨てで呼んでくれていいからな」
殿なんて付けられると、なんだかむずがゆい。異世界ものの漫画や小説では名前を呼び捨てで呼ぶのが普通だったし、ジーナにもそうしてもらおう。
「わかりました。本当にありがとうございました、シゲト」
「………………」
自分で言っておいてなんだが、若干――いや、かなり恥ずかしい。綺麗な女性に苗字ならともかく名前呼びされた経験なんて、彼女がいなかった俺には小学生以来のことだ。
いかん、いかん。あまり意識しないことにしよう。
「それでジーナ。さっきも言ったけれど、俺はかなり遠くの国からやってきたんだ。いろいろとこの国のことや魔法のことなんかを教えてほしい」
「はい、私が知っていることなら喜んで。シゲトは遠くの国から来たのですね。なるほど、それでこちらのテーブルやイスなどは見たことのない構造となっているのですね」
そう言いながら、キャンプギアのテーブルやアウトドアチェアを不思議そうに眺めるジーナ。やはりこれらのキャンプギアはジーナからすると珍しい物のようだ。
さて、まずは何から聞いてみようか。
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