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第114話 フー助の力
しおりを挟む「それじゃあこれで決まりですね。そうと決まったらすぐにこのダンジョンから出て、弟さんの場所へ向かいましょうか」
「すまねえ、感謝する」
「解体作業のほうも終わったようだな。とりあえず奥の部屋に行ってみるか。ボスは多少面倒だったとはいえ、15階層くらいのダンジョンの報酬だからあまり期待はしないほうがいいけどな」
全員で開かれた奥の部屋に入る。中にはルルネさんが言っていた通り、大きな宝箱と魔法陣があった。
「すごいな、まるでゲームみたいだ!」
「げえむ?」
「あ、いえ、なんでもありません」
感動のあまりつい口に出してしまったようだ。このダンジョン自体もそうだが、石造りの大きなフロアの中に美しい装飾の入った宝箱、謎の光を放っている大きな魔法陣。今更ながらゲームの中の世界みたいだ。
「さてこの宝箱はどうすっかな?」
「あんたらでもらってくれ。俺達は大丈夫だ」
「うまい飯も食わせてもらったし、ダンジョンにも付き合ってもらってんだ。マサヨシ、もらってくれ」
ここで遠慮するのは逆に無粋だろうな。
「それではありがたくいただきますね」
初めてのダンジョン攻略の記念にもらっておこう。そのかわりに依頼料のほうは俺以外のみんなで分けてもらうとするか。
「これは腕輪かな?」
中にはふたつの石でできたような緑色の腕輪が入っていた。
「なんらかの魔道具っぽいな。戻ったら冒険者ギルドで鑑定してもらうといい。とはいえそれほど難易度の高いダンジョンじゃないから、あまり期待はしないほうがいいぞ」
ふむ、なんの魔道具だろうな。たとえ使えないとしても初めてのダンジョン攻略の良い記念になる。
そしてアレックさんの弟を助けるために急いで転移の魔法陣の上に乗ってダンジョンの入り口まで戻ることになった。
「すごい、本当にダンジョンの入り口まで一瞬で移動できた」
ダンジョンのボス部屋にあった魔法陣。魔法陣の上に乗ると一瞬だけ奇妙な感覚がした後、気付けばダンジョン一階層目の入り口まで来ていた。あとは長い廊下を進み、階段を登ればもう出口だ。
「相変わらずこの魔法陣の仕組みはよくわかりませんわね。マサヨシ様が使っている転移魔法とは少し違うようですし」
ふむ、どうやらあの魔法陣と転移魔法の仕組みは多少異なるようだ。あの魔法陣の解析ができればものすごく便利そうなんだけどな。まあ俺には転移魔法があるから関係ないか。
「さあ、アレックさんの弟がいる村まで急ぎましょうか」
「ああ!」
「みなさん、ご無事でしたか!」
「はい、無事にダンジョンを攻略することができましたよ。結局こちらのパーティと共闘することになりまして、全員無事にボスを倒すことができましたわ」
「さすが高ランクの冒険者パーティですね! これでこの街も救われました。本当にありがとうございます!」
入り口にいたダンジョンを守っていた人達にリリスさん達や疾風迅雷のリーダーのボリスさんが状況を説明している間に、俺達は少し離れた森の中に入る。辺りはもうだいぶ暗くなりかけていた。
「それじゃあフー助、頼むな」
「ホー!」
俺の肩にいたフー助が地面を降りる。そしてみるみるうちにその姿が大きくなっていった。そう、フー助は大きさを自由に変えられる。普段は小さくなっていることばかりだったが、こうして大きくなることもできたのだ。
これを知ったのは先程ダンジョンの中でどうやってアレックさんの村に行くかを考えていた時のことだった。
「弟は今、俺達の故郷の村にいる。だいぶ田舎で山の上にある村だから馬車も出ていないんだ。最速で行くにはブラッドリーの街まで馬車で行き、そこから歩いて行くしかない」
「……う~ん、もう夜ですし馬車も出てないですよね。それに歩いて行くと結構時間もかかってしまいそうです」
弟さんの容体を聞くに、あまりのんびりと移動していては、間に合わない可能性もある。転移魔法でひとっ飛びできればいいのだが、俺はその村に行ったことがないから転移魔法を使うことはできない。
今のところ最速での移動は自分自身に風魔法をぶつけての無理矢理な高速移動だが、俺がアレックさんの村を知らないし、アレックさんを抱えて風魔法をぶつけるというのは危険すぎる。さてどうするかな……
「ホー!!」
「ん、ごめんなフー助。もう少しだけ待っていてくれ」
「ホー! ホー!」
なんだろう、首を振って違うとでも言いたそうにしたあとに翼で胸を叩いて、自分に任せとけとでも言いたそうだ。
「んなっ!?」
「フ、フー助ちゃん!?」
「フ、フクロウが大きくなりやがった!?」
目の前でフー助がどんどん大きくなっていく!? なるほど身体のサイズを小さくすることもできるし、大きくなることも可能だったのか!?
「もしかして背中に乗せて運んでくれるのか?」
「ホー!」
今のフー助の大きさは3~4m近くある。これなら背中に数人を乗せて、空を飛んで移動することができるかもしれない。
「それではアレックさん、ダンジョンを出たら弟さんのいる場所まで案内をお願いします」
「あ、ああ……」
「あと俺は魔法は使えるのですが、怪我とか魔法とかの知識が少し怪しいので、ルルネさんも一緒に来てもらっても大丈夫ですか?」
「ええ、助けになれるかわかりませんが、ご一緒させていただきますわ」
たとえ大魔導士の力が使えても、怪我や魔法の知識は全然ないからな。そのあたりに詳しそうなルルネさんにも一緒に来てもらうとしよう。
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