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第125話 救出
しおりを挟む「ん、暗いぞ。電気くらい付けておけ」
「おい、何をしているんだ?」
「バインド!」
「んなっ!? 何だこれは!」
のこのこと部屋に入ってきた2人を拘束魔法で即座に拘束する。女の子をここに連れてきた下っ端の男はすでに眠らせて拘束してある。拘束した2人を部屋の中に押し込み、電気をつける。
「な、なんだ貴様は! 何をしやがった!?」
「き、貴様は少し前に動画で騒ぎになっていたやつか!」
どうやら社長のほうは俺のことを知っているようだった。例の工場爆発事故かテロ事件の動画を見たのだろう。
「女の子はすでに安全な場所に避難させた。おまえ達にはいくつか聞きたいことがある」
こいつらが下らないことを話している間、女の子と下っ端の男がこちらの部屋に移動してすぐ、男を魔法で眠らせて女の子を助け出した。その間、聞き耳スキルでこいつら話は聞かせてもらったよ。本当に救いようのないクズ集団だ。
「スリープ!」
「ふにゃら……」
ドサッ
「うう!? う~う!」
「し、静かに! あなたを助けに来ました。今から拘束を解きます。隣の部屋にまだやつらがいるから静かに!」
「うう!」
あの社長と呼ばれていた男達をぶん殴りたい気持ちを何とか抑えて、まずは女の子の保護を最優先にした。
口に巻かれていた布を外し、後ろ手につけられていた金属製の手錠を大魔導士から継承した力で無理矢理ねじ切る。激しく抵抗したためか、手錠をかけられていた手首の皮が破れ血が滲み出ている。本当に酷いやつらだ。最後に女の子の目隠しを取ってあげる。
「あ、あの、本当にありが……きゃっ!!」
「しっ! え~と、怪しい格好をしているけど、怪しい者じゃないです。あなたを助けに来ました」
「あ、は、はい! わ、私あなたを見たことがあります! 確か前に動画で上がっていた不審……いえ、ヒーローの方ですよね!」
……この際もう俺の格好のことは置いておこう。
「はい、一応人助けをしています。ヒール!」
腕の他には大きな傷はないようなので、手首の部分に回復魔法をかける。
「えっ、傷が!?」
「今からあなたを近くの駅まで送ります。何かあいつらに取られた物とかはないですか?」
「あ、えっと、カバンと携帯はそこにあって……あ、生徒手帳をたぶんこの人に取られました!」
「了解、ちょっと待ってて」
眠らせた男のポケットを漁り、この子の生徒手帳を見つける。ついでに後ろポケットの財布から1万円札を抜き取った。
「はい、生徒手帳。それとこれは電車代に使って」
「あ、はい! あの、本当にありがとうございます!」
「うん、それにしても本当に災難だったね。この犯罪者集団は俺がきっちりと潰して、君に迷惑はかけないから。それじゃあ飛ぶよ」
「え、飛ぶって? き、きゃあ!?」
転移魔法で駅から少しだけ離れたビルの屋上に転移する。
「こ、これって瞬間移動!?」
「それじゃあ俺は君を下まで降ろしたら、さっきの場所にもう一度戻るから。それとできれば俺のことは他の人に話さないでほしいかな」
「は、はい! 絶対に誰にも話しません! あの、本当に……あ……ありがどゔ、ご……ござい……」
女の子の目からポロポロと涙が溢れてくる。それと同時に身体中が震え出し始めた。
……そりゃ怖かっただろうな。いきなり男達に攫われて目隠しや手錠までされて。その上、家族や友人を害すると脅されて何人もの男達に乱暴されるところだった。やつらのビルから離れることができてようやく安心したのだろう。
「もう大丈夫。本当によく我慢したね。君は頑張った、本当に頑張ったよ。あとは俺に任せてくれ、あいつらには地獄を見せてやるから!」
泣きじゃくる女の子の頭を優しく撫でてあげる。俺も昔はよく母さんに優しく頭を撫でてもらったっけな。この子を助けることができて本当によかった。さあ犯罪者集団をぶっ潰してやるとしよう!
というわけで現在、俺の目の前には拘束魔法により鎖でぐるぐる巻きに拘束された男どもがいる。
「おい、さっさとこの鎖を外しやがれ!」
「くそ、離せ!」
本当は守さんが詐欺の証拠やお金のありかを調べ切ってから、こいつらを捕まえたいところだった。だが、目の前で何の罪もない女の子が危なかったので、急遽こいつらを全員捕まえたあとで、尋問してすべて吐かせることにした。一度守さんに連絡をして、これからどうするかを確認しよう。
「……はい、そういうわけでとりあえずビルにいるやつらを全員拘束して尋問しようと思います。ええ、なのですみませんが、証拠集めの続きをお願いします。何かあればすぐにこいつらに聞くので。はい、勝手に動いてしまってすみません。いえ、はい、よろしくお願いします」
よし、これで守さんのほうはオッケーだ。次はこのビルにいる全員を拘束するとしよう。
ビー、ビー
うお、なんだ!? いきなり大きなブザーが鳴り響いた。
「5階の調教部屋に侵入者だ! 総員、今すぐ武装して侵入者を殺せ!」
ビル中に社長の大声が鳴り響いた。いつの間にか拘束していたはずの社長が指先だけ拘束を外し、スマホを操作していたようだ。
「バカが、油断したな! ふざけやがって、絶対に殺してやるからな!」
「ちょうどいい。こっちから行く手間が省けたよ」
「な、なんだと!」
とりあえず社長のスマホは没収しておく。むしろ他の仲間を呼んでもらったほうが好都合かもしれない。せいぜい煽ってより深く絶望を与えてやるとしよう。
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