いじめられて死のうとしていた俺が大魔導士の力を継承し、異世界と日本を行き来する

タジリユウ

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第158話 クソ大魔導士

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 ……世界最強の力の証明。この人はそのためだけに何十年もの時を己の研鑽に費やしてきたんだ。たった1日程度の苦痛で大魔導士の力を継承した俺とはまったく違う。

 というかアンデが力を求め続けてサーラさん達の敵になったのは、ある意味大魔導士が最強を目指せとか言ったせいなんじゃ……

「……それがまさかこんなところで師匠の弟子に出会うというのだからな、運命とは本当に面白いものだ。さあ、そろそろ決闘を再開するとしよう」

「ちょ、ちょっと待ってくれ! エドワーズ国の王族にはその大魔導士の子孫がいるんだ! アンデは大魔導士の弟子なんだろ? それなら大魔導士の子孫が処刑される姿なんて見たくないだろう!」

「……そうか、そちらの王族には師匠の子孫がいるのか。だが、それも仕方がない。こちらが決闘を止めてまで助ける義理はないな」

「そんな!」

「……貴様は師匠の子孫がどれほどいるか知っているのか?」

「いや知らない。100人くらいはいるのか?」

 ジーナさんからもらった大魔導士の資料でも80人くらいはいたと思うが……

「……少なく見積もっても1000人以上はおると思うぞ」

「多いな!?」

「……あのバカ師匠は行く先々の村や街で毎日のように別の女を抱いていたからな。我が止めようとしても無駄であった。

 それ以外は尊敬できる師匠であったが、女癖に関してだけは最悪であったからな。それに後先も考えずに種もばら撒いていたから、数えきれぬほどの子孫がいるはずだぞ。

 悪いがそれだけ存在する師匠の子孫にいちいち気を使ってはいられん。そもそもそれだけ子孫がいれば、本当に師匠の子孫なのかも怪しい」

 あんのクソ大魔導士! ハーレムの嫁だけでは飽き足らずに、行く先々の村や街で何やってんだ!

「……我が世界最強になるためには同じ師匠の弟子である貴様を倒さねばならんようだな。だが安心しろ、貴様は我が弟弟子であるみたいだからな、貴様の命までは取る気はない。まだいろいろと聞きたいことがあるからな」

「それじゃあ意味がない!」

 たとえ俺が生かされたとしても、この勝負で俺が負ければサーラさんの命はない。それじゃあ駄目なんだ!

「……ならば精々本気でくるがいい! いくぞ!」

 くそっ! 引く気はないのか!

「アースニードル!」

「ぐっ!?」

 俺の周囲の地面から尖った土の槍がいきなり出現して俺を狙う。しかも全方位から攻撃がきているために、高速で左右に移動しても回避することができない。そしてアンデ自身も、先程と同じように超スピードで俺のほうへ突っ込んでくる。

 くそ、何が命まで取る気はないだ! 先程の攻防でお互いに障壁魔法を全身に纏っていることがわかっているからといい、やりすぎだろ!

 ダンッ

 四方から迫ってくる土の槍を大きく跳躍してかわす。

「ファイヤーランス!」

 だが、俺が空中に回避することが分かっていたように、更なる追撃の魔法を撃ってくる。

「くそ!」

 俺は飛行魔法を使えない。なんとか風魔法で空中に足場を作り、無理やり空中で軌道を変え、なんとか炎の槍をかわす。

「……甘い! ファイヤーイグニション!」

 しかしそこに更にアンデの追撃が入る。今の攻防で一瞬俺の目がアンデから離れた隙に、すでにかなりの距離を詰められていた。体勢も悪く、先程のように回避することができない。

 バキンッ

 近距離での巨大な炎の爆発が、先程張り直した俺の障壁魔法を再び叩き割る。

「くそ! エアブラスト!」

「……ぬっ!?」

 俺とアンデの間に風の暴風を発生させて無理やり距離を取る。

 くそ、魔法の一発一発の威力が高い! 普通の魔法使いの上級魔法ならば防げるほどの強度を、この障壁魔法は持っているはずなのに。

 それに最初の攻防でも、お互いにスピードが乗っていた状態とはいえ、拳でお互いの障壁魔法が割れた。大魔導士の弟子と言っているのに何でこんなに身体能力が高いんだよ!

 少なくとも空中に回避するのはやめたほうがいいな。しっかりとした足場もないし、相手の攻撃をかわすのが難しい。防戦ではいずれやられる、こちらから攻撃を仕掛けなければ駄目だ!

「ストーンバレット!」

 先程撃った魔法よりも力を込めて魔法を撃つ。アンデがやっていたように、全方位とまではいかないが、できる限り逃げ場をなくしつつ、20前後の巨大な岩の礫がアンデを襲う。

「……やる気になったようだな」

「何!?」

 だがアンデは俺のストーンバレットにまったく怯むことなく、一直線にこちらに走って向かってきた。最小限の動きで俺のストーンバレットをかわし、避けられない場合は拳で殴って岩の礫の軌道を変えていく。そんなのありかよ!?

「ライトニング!」

「くっ!?」

 バチリと目の前で閃光が弾けた。威力はない、しかし速度が速く見切りスキルを持ってしても捉えられない。閃光が俺の障壁魔法に弾かれるが、その一瞬でアンデの姿を見失う。アンデの狙いは俺の視界を一瞬でも奪うことだった。

「エアバレット、ファイヤーランス、アースニードル!」

「ぬおっ! ストーンバレット、ウォーターウォール!」

 全方位から様々な属性の中級~上級魔法が飛んでくる。ちくしょう、さっきまでは全然本気じゃなかったのかよ!

 バキンッ、バキン

 高速で走り回りながら、こちらも魔法を撃ちアンデの魔法を相殺していくが、相殺しきれずに被弾し障壁魔法が剥がれていく。

「サンダーランス、エクスプロージョン、アイスバーン!」

 畳みかけるように更に追撃がくる。もうめちゃくちゃだ! 強力な魔法を絶え間なく撃ち続けてくる。

 くそったれ! とにかく一度距離を取らないとまずい!

「エアブラストオオオオオ!!」

「……ちっ!」

 無我夢中で魔力を込めた風魔法を自らの目の前に撃ち、アンデの魔法ごと吹き飛ばして無理やり距離を取る。

「痛っ……」

 なんとか一旦距離を取ることには成功したが、俺の障壁魔法はすべて剥がれた。さらにそれだけではなく大魔導士が作った最高の硬度を誇る鎧がひしゃげ、左腕からは血が流れていた。
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