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第16話 みんなで温泉
しおりを挟む『本来ならばこのまま村を去りたいところだが、例の森の件がある。ソラ、すまないが森の様子が落ち着くまで、少しこの村に滞在してもよいだろうか?』
「うん、もちろんだよ」
おそらく森の魔物が暴れているのはクロウと戦った大きな魔物が近くに現れたことが原因かもしれないということは村のみんなに伝えた。
クロウはちゃんとこの村のみんなのことも考えてくれている。
『クロウだけで手こずる相手なら、私も手伝ってあげるわよ』
『我だけで問題ない。……ただ他の者まで危険に晒すつもりはないゆえ、万一危険な状態に陥った際には頼む』
『ええ、任せて!』
僕にはいつも優しいって言うけれど、クロウやシロガネだってすっごく優しいよね。
「村長さん、アリオさん。しばらくの間、この村にいても大丈夫?」
「ああ、もちろんじゃ。ソラくん、本当に村の者を救ってくれてありがとう」
「うおっ、すげえ気持ちが良いな!」
「すごい、疲れが消えていくようだぜ!」
村長さんたちと話が終わって、もうしばらくの間この村に滞在をさせてもらうことになった。もう万能温泉のことは隠す必要がないから、村の端っこの場所に移動して、みんなで温泉に入っている。今回はちゃんと裸だ。
万能温泉に村の人全員は入れないから、まずは男の人たちで交代して温泉へ入っていく。小さくなったクロウは一緒だけれど、シロガネはローナちゃんと一緒に入るみたいだ。
「怪我を治すだけじゃなくて、こんなに気持ちが良いのか! それにずっと温かくてお湯がなくならないなんてすごいな!」
「……むっ、それに日々痛かった腰の痛みまで和らいでいくようじゃ!」
「温泉って気持ちが良いよね!」
今のところ万能温泉の能力は怪我を治したり、呪いを解除したり、汚れを綺麗にしてお湯も自動で補充されるみたいだ。それに村長さんの腰の痛みなんかにも効くのかも。
『人族は温泉というものによく入るのか?』
「いえ、大きめの桶に湯を張る風呂という文化が貴族にはありますが、このような大きな風呂というものは初めて聞きました。もちろん儂らも入るのは初めてですな」
クロウの質問に村長さんが答えてくれる。
どうやらこの辺りだとお風呂はあるけれど、温泉はないらしい。もしかすると温かいお湯が流れる場所はあっても、そこでお湯を溜めて入るって発想はないのかも。それに温泉は少し変な臭いもするもんね。
「火山とかがあるところに湧き出るお湯って聞いたことがあるよ」
僕も詳しい温泉の仕組みは知らないけれど、火山とかがある場所にあるイメージかな。
「よく知っているな、ソラ。確かにこの近くにそういった火山とかはねえ。それにしても、湯に浸かるってのはこんなに気持ちがいいことだったんだな。貴族様も大量の水と薪を使って風呂へ入るわけだぜ」
『ふむ、確かにこの心地良さはそういった手間をかける価値があるのかもしれぬな。我も川や湖に入ったことはあるが、湯に入ったことは初めてだ』
あんまりこっちの世界のみんなに温泉は知られていないみたいだ。
「う~む、他の者も入るゆえ、そろそろ交代しなければならぬのだが、これは湯の外に出たくないのう……」
「ああ。ずっと湯の中にいたいぜ~」
村長さんもアリオさんもとても気持ち良さそうにしている。
万能温泉の大きさは変えることができない。無理に詰めれば男性陣は1回で入れると思うけれど、やっぱり温泉は伸び伸び入りたいもんね。この村の男の人のだと2回に分かれて、そのあとに女性の人が入るみたいだ。
確かにみんなの言う通り、温泉って一度入ると外に出られなくなるよね。今日はまだ外がそんなに寒くないからいいけれど、寒い日は本当に温泉から出られなくなりそうだ。でも、そろそろ出ないと温泉の外で待っている次の人たちがすごく羨ましそうにこっちをみているから出ないとね。
「大きなおうちだね」
『うむ、これなら我もそのまま寝られるな』
『ふふ、ローナちゃんには泣かれちゃったけれどね』
温泉に入った後はご飯を食べて、僕たちが泊まる家を案内してくれた。僕たちがしばらくこの村に滞在するのと、クロウとシロガネの身体が本当は大きいからアリオさんたちとは別の家を用意してくれたみたいだ。
アリオさんやエマさんはそのままアリオさんの家にいてくれていいって言われたけれど、さすがにずっとお世話になるにはいかないもんね。ローナちゃんはシロガネと一緒にいたいって泣かれちゃったけれど、また朝になったらすぐに会える。
2日ぶりにクロウとシロガネと3人で横になった。やっぱり大きくなったクロウとシロガネと横になった方が気持ち良いなあ。
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