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第50話 星空の下で
しおりを挟む『ふう~やはりソラの温泉は最高に気持ちが良いものだ』
『本当ね。今日の疲れがなくなっていくわ~』
「ええ、とても素晴らしいですね。まさか野営をしながら温泉に入れるとは思ってもいなかったです」
「………………」
満天の星空の下、僕たちは万能温泉へ入っている。
だけどそれはいつも通りじゃなかった。僕の隣には小さくなったクロウとシロガネの他にセリシアさんも一緒だ。
いつもアゲク村で温泉に入っている時は男性と女性で分かれて温泉に入っているから少しだけ恥ずかしい。元の世界で病院に入院していた時、看護師さんに身体を洗ってもらうくらいの恥ずかしさがあるかも……
「これなら今日はぐっすりと寝られそうです。反対に熟睡しすぎないように気をつけなければなりませんが」
『気持ちは分かるわね~でも私たちもいるから、ちゃんと身体を休めないと駄目よ』
『うむ。我から振り落とされればいくらセリシアとはいえ、怪我をしてしまうだろう。まあ怪我をしたところでこの温泉があれば問題はないのだがな』
「でも痛みはあるんだから、怪我をしないのが一番だよ」
万能温泉は身体を癒してくれるけれど、その前に受けた怪我の痛さをなかったことにはしてくれない。元の世界で病気だった時はすごく胸が痛かったし、たとえその後で怪我が治るとしても、怪我はしない方が良い。
『むっ、確かにソラの言う通りではあるか』
『そうね、誰も怪我をしないのが一番よ』
「ソラくんは本当に優しいですね」
「そっ、そんなことないよ! あっ、すごく綺麗な星空だね!」
セリシアさんから褒められて嬉しいけれど、ちょっとだけ恥ずかしかったからすこしだけ話を逸らした。
でも本当に綺麗な星空だ。元の世界だと電灯がいっぱいあって全然見えなかったし、村では焚き火で明かりをつけていたからあんまり気にならなかったけれど、今は焚き火からも少し離れていて温泉の上にはものすごい数の星が瞬いている。こんなに綺麗な星空を見たのは初めてだ。
「そうですね、今日は雲がないので星空がとても綺麗に見えます」
『うむ。たまにはこういった星空を見ながら寝るのもわるくはないな』
『ええ。家に屋根があって雨に降られないのはいいけれど、この景色を見ながら寝るのもいいわね』
帰る家があって、屋根で雨風を防げるのはとても良いことなんだけれど、それだけだとこの星空を見ながら寝ることはできないもんね。
温泉で身体をしっかりと休めたあと、身体を拭いて服を着てからシートを敷いてその上にみんなで横になった。街から村へ帰って来る時はクロウとシロガネだけと一緒に寝たけれど、今日はシロガネの隣にセリシアさんがいる。
今では村のみんなやセリシアさんは大切なお友達だ。ほんの少しずつだけれど、みんなと仲良くなることができてすごく嬉しい。そんなことを考えながら、頭上に輝く美しい星空を見ていると、いつの間にか僕のまぶたは閉じていた。
◆ ◇ ◆ ◇ ◆
『ソラ、起きられる?』
「ふあ~あ。うん、おはよう、シロガネ」
眩しい光が差し込んできたのと、肩を揺すられて目が覚めた。
目の前には白銀色のモフモフとした羽で僕の肩に触れているシロガネがいる。
『ゆっくりと寝させてあげたいところではあるが、日中は移動時間が限られているからな。すまないが起こさせてもらったぞ』
「すみません、本当は気持ちよさそうに寝ているソラくんを起こしたくなかったのですが……」
「ううん、気にしないで! それよりも朝ご飯のお手伝いをしたかったから、明日からは僕も一緒に起こしてね」
僕が体を起こすと、すでに朝ご飯の準備ができていた。どうやら僕がまだ寝ている間にセリシアさんが作ってくれたらしい。
日が暮れてしまうと視界が悪く、日が出ている間に移動するよりもとっても危険だから、アレンディールの森までの道のりは朝早くから移動しようって話していた。
『うむ、承知した。えらいぞ、ソラ』
「……本当にソラくんは気遣いのできる優しい子供ですね」
う~ん、どちらかというと僕だけ最後まで寝ていて悪い気がするんだけれどなあ……
そうえいえば元の世界では病気で周りの人にいっぱい迷惑を掛けていたから、年の割に大人っぽいってよく言われていたかも。
「やっぱりパンはルナベリーの実を入れた方がおいしいね」
『ええ、あのふわふわとしたパンの食感で味がだいぶ変わるものね』
「少し酸味が加わって味も良くなりますからね。ただ、ルナベリーの実を入れると数日しか持たなくなってしまうのが難点です」
今日の朝ご飯はパンと干し肉と野菜のサラダだ。パンは昨日食べたふわふわのパンじゃなくて、平べったくて硬いパンだった。
ルナベリーの実を加えずに焼いたパンを初めて食べたけれど、ボソッとした食感で硬かった。すごくまずいっていう訳じゃないけれど、ルナベリーの実を加えたパンとは比べるまでもなかった。
だけどこっちのパンは一週間以上食べられるそうだから、旅をしたり長時間移動する場合にはこっちのパンが良いらしい。元の世界で言うと保存食みたいになるのかな。
僕たちが以前に作った干し肉はコショウを少し振りかけるだけで、パンとよく合う。サラダの味付けも塩コショウだけだったけれど、野菜自体がおいしいからそれだけでも十分においしかった。
今日もいっぱい移動するから頑張ろう。
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