『億り人』になって田舎に家を買ったら、異世界と現代日本を行き来できるようになった件。~お金と文明の利器を使ってのんびり生活~

タジリユウ

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第12話 戦闘

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 双眼鏡を通して見えた光景、激しい動きで見えにくいが、俺がこの異世界へ来て初めて遭遇したあのクマもどきが剣を持った誰かと戦っている!

「キュウ!」

「あっ、ハリー! ちょっと待てって!」

 俺が止める間もなく、なぜかハリーがそちらの方向へ駆け出していく。

「くそっ!」

 正直に言ってあのクマもどきに近付きたくなんてないが、ハリーを放っておくわけにもいかない!

 クマ撃退スプレーと薪割り用の斧を持ってハリーの跡 あとを追った。



「ガアアア!」

「ちっ、強え!」

 クマもどきと誰かが戦っている姿がようやく肉眼で見えてきた。

 額に一本の角の生えた巨大なあいつはおそらく俺を襲ってきたクマもどきと同じ個体で、それと戦っているのは大きな剣を持った30代くらいの男だ。遠目から見ても日本人には見えないが、なぜかその声は日本語で聞こえる。

 理屈はわからないが、言葉が通じるのならやりようはある。幸い例の見えない壁までそれほど距離はないから、そこまで逃げ込んでくれればどうとでもなる!

「おい、加勢する! こっちまで来てくれ!」

「っ!? お、おう!」

 剣を持った男も俺の日本語が理解できるようで、俺に気付いてくれた。突然現れた俺に戸惑いながらもクマもどきの爪を弾いて、俺の方へ後退してくれている。

 よし、ここまで来れば壁がある。それにクマ撃退スプレーの準備もバッチリだ。

「キュウ!」

「ちょっ、ハリー!」

 俺と一緒に見えない壁の目印にしてあったロープの内側にいたハリーが再びクマもどきの方へ走り出した。

 さっきもそうだったが、あのクマもどきの殺気に当てられたのか!? 背中の針も逆立ち、完全に戦闘態勢に入っている。

 まずい、クマ撃退スプレーは間に合うのか! いや、あのクマもどきは前回クマ撃退スプレーを受けてこちらを警戒しているはずだ。遠くから撃つそぶりを見せるだけでも牽制となるに違いない。たとえ当たらなくても今回はもう一本ある!

「なっ!?」

「キュキュキュウ!」

「えっ!?」

 クマもどきの方向へ走っていたハリーが剣を持った男の脇をすり抜けて跳躍した。そして空中でクマもどきに対して背を向けたと思ったら、背中にある無数の針が発射され、同時にその針一本一本が巨大化していった。

「ガアアアアアア!」

 ドスンッ

 ハリーの撃ち出した無数の巨大な針がクマもどきの身体に突き刺さる。大きな断末魔の叫びが周囲に響き渡り、そのままクマもどきは地面へ崩れ落ちてそのまま動かなくなった。

「キュウ♪」

「ハリーは強かったんだな……」

 クマもどきを一瞬で倒したハリーが俺の方へ近寄ってきたので、右手を差し出すといつものように俺の右肩まで駆け上がってきた。

 ハリネズミの針は完全に防御のためだと思っていたら、どうやら異世界のハリネズミは巨大な針を攻撃に使えるらしい……。なんじゃ、そりゃ!

「あ、あんたたちのおかげで助かったぜ! その魔物は初めて見るが、小さいのにすごいんだな」

 なにはともあれハリーのおかげで助かった。そして改めてこの男性の様子を見てみる。

 くすんだ緑と茶を基調とした服を着ており、簡易な防具を身に着けている。両手で持ったそのロングソードは無骨だが十分過ぎるほどの殺傷能力がありそうだ。

 茶色い短髪と瞳、無精ひげの目立つ30代くらいの男性は明らかに日本人ではない。それなのに会話は日本語で聞こえるのだから不思議だ。まあ、異世界へ繋がる鏡、角の生えたクマや俺の言葉を理解できるハリー、もはや何が起こっても不思議ではないか。

「無事で良かったよ。俺は何もしてないから礼ならこの子に言ってくれ」

「ああ。君のおかげで助かったよ、ありがとう。俺はザイクだ、よろしくな」

「キュ?」

 男はハリーに向かって頭を下げたが、ハリーは不思議そうな顔をしている。やっぱり俺以外の言葉は理解できないようだ。

「俺はケンタで、この子はハリーと言うんだ。いろいろとあって一緒にいるが、人には危害を加えないから安心してくれ。それよりも怪我をしているじゃないか。血も出ているぞ」

「ああ、大した怪我じゃない。こんなもんはツバでも付けておけば治るさ」

「………………」

 ザイクと名乗る男の肩とわき腹からは真っ赤な血が流れていた。さっきのクマもどきにやられたのだろう。

 そして今の会話から、この世界はあまり文明レベルが高くないことがわかった。確かに傷は浅いかもしれないが、きちんと消毒をしなければ、破傷風や感染症などのリスクがあると聞いたことがある。

「とりあえず応急処置だけでもしておいたほうがいい。湖で傷口を洗おう」

「大袈裟だな……。いや、心配してくれてすまない。どうせこいつを解体する必要もあるからな」

「あ、ああ……」

 どうやら本当にそこまで大した怪我ではないらしい。とはいえ、消毒くらいはしておいた方がいいだろう。確か家にある防災リュックの中に救急箱のようなものがあったはずだ。

 というか、このクマもどきを解体するということは食べるということか……。
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