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第13話 解体作業
しおりを挟む「さて、俺のことはどう説明したものか……」
「キュウ?」
ハリーがクマもどきを倒してくれたあと、ザイクと一緒にクマもどきを解体するため湖まで運んだ。
そのあと治療道具を持ってくると伝えて、ハリーと小屋まで戻ってきた。鏡を通って家の防災バッグから救急道具を持ち出し、ネットで応急処置方法を調べた。
「前に聞いた通り、ハリーは俺の言葉だけであの人の言葉はわからないんだよな?」
「キュ!」
俺の問いにハリーが頷く。
なぜかザイクの声が俺には日本語に聞こえたし、俺の言葉だけがこの世界の者に理解できると考えるのが自然か?
そしてザイクからこちらの世界の情報を得られるチャンスでもあるが、この小屋と俺のことについてはどう説明するべきか迷うところだ。
なにはともかく傷の治療だな。
「これでよし。少しの間はこいつを外さず、安静にしていてくれ」
「おう、わかったぜ。それにしても治療方法まで知っているなんて、ケンタは医者なのか?」
「……いや、ただの一般人だよ」
ネットの情報に従ってしっかりと患部を水で洗い、傷口を消毒してからガーゼと包帯を巻いてあげた。
そこまで大きな切り傷じゃなかったのは幸いだ。いくらネットで調べられるとはいえ、さすがに傷口を縫うことなんてできないからな。
「ザイクの方こそこんな大きなクマを解体できるなんてすごいよ」
「確かにダナマベアなんて強い魔物はめったに見ないよな。こいつは最近近くの森で暴れ回っていた危険なやつだ。村の仲間と一緒に狩りをしていたら、いきなりこいつが現れちまってな。負傷した仲間はなんとか逃がしたが、俺一人じゃ逃げられなかった。ケンタとハリーが助けてくれて本当に助かったぜ」
「俺は何もしていないからハリーのおかげだな」
「キュウ!」
話題を変えるようにザイクに現在解体中のクマのことを尋ねた。どうやらこのクマもどきはダナマベアという魔物らしい。魔物は動物となにか違うのだろうか?
というか、そんな危険な魔物と初っ端から遭遇する俺の運がヤバい……。そしてそんなダナマベアとやらを一瞬で倒したハリーは本当に強いんだな。
湖のほとりで解体用のナイフを使ってテキパキと解体作業を進めるザイク。もちろんリアルの解体なんてやったことも見たことはない。本来ならば俺も手伝いたいところだが、やり方はわからないし、初めて見る内臓があまりにもグロテスク過ぎるのと、思ったよりも血の匂いがすごくて近付いて手伝いすらできなかった。
この付近には村があるらしい。もしかすると以前にハリーから聞いた村なのかもしれない。
「そういえばケンタは見たこともない服を着ているし、黒い髪だし、この辺りの者じゃないみたいだな」
「ああ、いろんな場所を旅しているんだよ。今はあっちにある小屋を使わせてもらっているんだ」
一旦そういうことにしておいた。さすがに初対面で別の世界から来たことや鏡のことを教えるつもりはない。
「この湖の周りに小屋なんてあったかな?」
「何を言っているんだ? すぐそこに……いや、なんでもない」
あったも何もすぐそこに例の鏡のある小屋があり、ここからも視認できるのだが、途中で言葉を止めた。
まさか、あの小屋が見えていないのか? この湖の近くに住んでいて、ホコリをかぶるほど古くからあったあの小屋の存在を把握していない。そういえば長年人の立ち入った形跡がなかった。もしかすると見えない壁が何か関係あったりするのだろうか?
「んっ? まあ、普段は湖の反対側にまで来ることはないからな。すまん、命の恩人のことを詮索するつもりはなかったんだ」
「別に気にしていないよ。それよりもこの辺りに来たばかりで本当に何も知らないんだ。この辺りのことをいろいろと教えてくれないか?」
「おう、もちろんだぜ!」
「なるほど……。ありがとう、助かったよ」
「ああ、お安いご用だ」
ザイクはダナマベアの解体作業を進めながら俺の質問に答えてくれた。
この湖のちょうど反対側辺りに村があり、作物を育てたり、狩りをしたりして生活をしているらしい。この国はラノテア国という名前で、この国や付近の国では共通語という言葉が使われているようだ。俺の言葉はなぜかその共通語とやらに変換されて会話ができているらしい。
他にも通貨のことや街のことなどを聞いた。ザイクのおかげで多少なりともこの世界のことが分かってきた。
「よし、こっちも大雑把にだが、解体が終わったぞ。全部持ちきれるか? それとも運ぶのを手伝った方がいいか?」
「えっ、俺にくれるのか?」
てっきり解体した一部をくれるのかと思ったが、全部くれるつもりだったらしい。
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