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第14話 泥棒対策
しおりを挟む「何を言っているんだ、当たり前だろう? 命を救われて怪我まで治療してもらったんだぞ。本当は金も渡したいんだが、すまんが今は持っていないんだ」
「いや、そこまで気にしなくていいよ。さっきこの国について教えてもらったしな」
本音を言えばこの世界の通貨は少し欲しかった気もするが、解体までしたものを全部くれると言ってくれている。それに俺にとっては先ほど聞けたこの世界の情報は非常に価値がある。
「それに俺たちだけじゃこんなにたくさん食べられない。ザイクも持っていてくれ」
「キュウ!」
ハリーも頷いてくれた。
ダナマベアは2メートル以上もあった。解体をして不要な部分を取り除いても結構な量だ。たとえ肉だけだとしても、うちの冷蔵庫に入りきらない。
「本当にいいのか? うちの村としてはとても助かるが……」
「そうだな、もしかするとザイクの村にお邪魔させてもらうかもしれないから、その時はよろしく頼むということでどうだ?」
「もちろん大歓迎だぜ。わかった、ありがたくケンタの厚意に甘えよう」
そのあとザイクと話し、ダナマベアで一番価値のある角と一部の牙と肉の部位をもらい、残りは毛皮に包んでザイクが村まで持って帰った。それでも結構な量なのにザイクは軽々と持ち運んでいった。
怪我をしているし、俺も手伝いたいところだが、何の準備もなくザイクの村まで行くことはできない。それにこの辺りにはあのダナマベア以外だとゴブリンくらいしかいないそうで、大した脅威にはならないらしい。
……俺にとってはだいぶ脅威だったけどな。
「はあ~なんだか一気に疲れたよ……」
「キュキュウ?」
「ありがとうな、ハリー。本当に今日は助かったよ」
「キュ!」
鏡を通ってまずはベッドに横たわった。枕元にハリーがやってきて俺をいたわってくれる。
のんびりと過ごしていたはずなのにいきなりダナマベアが現れ、初めてあちらの世界の住民と接触した。いろんな情報も集められたし、なにより近くの村との接点もできた。肉の大半を持って帰ってもらったし、これで俺が村へ行っても悪い印象は持たれないはずだ。
「異世界の村かあ。様子を見てからだけれど、行ってみてもいいかもしれないな」
湖のそばにいたあの危険だったクマを排除できたのがなにより大きい。ハリーがあんなに強いこともわかったし、少しだけならあの見えない壁の外に出てみてもいいかもしれない。
そういえばザイクにはあの小屋が見えていなかったみたいだな。確かにそれなら湖の反対側に村があるのに、これまであの小屋に人の立ち入った形跡がなかったことも頷ける。
まだまだ分からないことがいっぱいあるな。
「キュウ……」
「ああ、お腹が空いたのか。クマの肉をもらったけれど、さすがに今日は作る気がしないから、昼に買った総菜で我慢してくれ」
「キュキュウ♪」
2人分にしてはかなりの量の肉を受け取ったけれど、今日は精神的にとても疲れた。思った以上に初めて出会った異世界の住人と話すことに緊張していたのかもしれない。
ダナマベアの肉の味も気になるところだが、今日は昼間買った総菜をレンチンして間に合わせるとしよう。
◆ ◇ ◆ ◇ ◆
「さて、今日はいろいろと届いたことだし、まずは鏡周りをなんとかしよう」
「キュ!」
そして翌日、簡単な朝食をとって午前中に届いた物と前に買ってきた物をいろいろと用意した。
「まずはこっちからだな。大丈夫だとは思うけれど、少しずつ鏡を移動していこう」
異世界へ行くことができる不思議な鏡。今はそのまま納屋に置いてあるけれど、うちに泥棒が入ってきたりするとまずい。まあ、ぶっちゃけこんな郊外の家を狙う泥棒はいないと思うが、用心するに越したことはない。
こっちの鏡を移動すると向こうの世界へ移動できなくなるのではと思いつつ、鏡を少し移動しても問題なく異世界へ行けることを確認しながら納屋にあった鏡を家の中に持ち込んだ。
そして俺の寝室の隣の部屋へ運び、ドアには頑丈な鍵を取り付ける。さらに念のため鏡を置いた部屋にはこれ見よがしに大きな金庫を設置した。
「次は向こうの小屋だな」
「キュ!」
同様に湖畔の小屋の部屋にも頑丈な鍵を設置した。そしてこちらも鏡は部屋の端に設置し、机の上に木の小箱を置く。中身は模造品の宝石だ。昨日のザイクの服装や村の話を聞いたところ、俺のいる世界ほど文明は発展していなさそうだし、これでも価値があるように見えるだろう。
仮に俺の家かこの部屋へ泥棒が入ったとしても、金庫や模造品の宝石の方に目がいき、鏡には目もくれないはずだ。大切な物のそばには餌を置いておく作戦である。
勝手に小屋のドアにカギを取り付けてしまって申し訳ないとは思うが俺の身の安全を優先させてもらおう。いきなりハリーが俺の部屋に現れた時も驚いたが、誰かがいきなり入ってきたら困るからな。
この小屋の持ち主についても気になるところだ。もしもザイクのいる村へ行くとしたら、あの本棚にあった本の文字が読めないか聞いてみるとしよう。
「よし、軽く昼ご飯を食べたら次はこいつの出番だ」
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