15 / 110
第15話 新しいドローン
しおりを挟む「キュキュウ?」
「こいつはラジコンボートというものだ。ドローンに近いけれど、水の上を走れるんだぞ」
通販で届いたこの30センチメートルほどの小さなボート。こいつは水の上を走れるラジコンだ。
最初は水中ドローンを購入しようと思っていたのだが、調べてみるとかなり高額なうえに操作範囲がかなり狭かった。やはり水中では電波がないので有線の物が多いから仕方がないのだろう。
代わりに購入したのがこのラジコンボートだ。これなら水上を走ることができ、なおかつカメラで水の下の様子を探ることができる。元の世界と比べて湖がとても澄んでいるからきれいに映るだろう。
とりあえずあの見えない壁が湖の中でどうなっているのかを調べたいだけだから、一旦はこいつで十分だろう。
「まずは小屋の近くで操作の練習だな。ほら、こうやって水の上を走れるんだぞ」
「キュウ!?」
小屋のすぐそこの湖の近くまで行き、アウトドア用の椅子を準備する。その上に座りながらラジコンボートを操作して湖の上を走らせる。
その様子にハリーが驚いていた。思ったよりも速く動くんだな。
「なるほど、ドローンと違って急な方向転換はできないみたいだ。うん、すごく綺麗だから結構奥まで映っているぞ」
「キュキュ!」
ラジコンボートの船底に付いている水中カメラもばっちり映っている。
透き通った水の向こうに、色とりどりの海藻があった。異世界の海藻は随分とカラフルだ。魚がすいすいと泳ぎ、光のカーテンが水中に差し込んでいて、まるで別の世界を覗いているかのようである。
水の中の世界は本当に美しく、見ているだけで心が弾んできた。
「奥まで行くとさすがに底が深くて映らないか。でもこれなら十分にいけそうだな。ハリー、ちょっと場所を移動しよう」
「キュ!」
小屋の前でしばらくラジコンボートの操作を練習してから、例の見えない壁のある場所に置いたロープのところまでやってきた。
見えない壁の中とはいえ、もちろんクマ撃退スプレーは持ってきている。
今度は見えない壁に沿ってラジコンボートを動かして観察してみるとしよう。
「なるほど、やっぱり湖の中にもあの見えない壁は広がっていそうだ。小さな魚なんかは通れるけれど、大きくて獰猛なやつは通れないのか」
そのあとしばらくの間ラジコンボートを充電して見えない壁があると思われる場所でボートを止め、カメラで水中の様子を窺っていた。
ラジコンボートはそこまで高くはなく、いつくか予備で購入しておいたので入れ替えて充電をしながら湖の底を見ていた。すると見えない壁があると想定される場所へ普通の魚は入ってこられたが、大きな魚が3回ほど壁の近くで引き返したのを確認した。
しかも壁へぶつかる前に自分から向きを変えて去っていったので、魚にはあの壁が見えているのか、あるいはあの壁自体を認識できずに離れたくなるような仕組みが施されているのかもしれない。少しずつだが、見えない壁のこともわかってきた。
「今のところは浅瀬のほうなら大丈夫そうか。奥の方も確認してみたいところだけれど、これ以上はわからなそうだな」
「キュウ!」
とりあえず湖にも見えない壁が存在することはわかったのでよしとしよう。
ラジコンボートも面白いけれど、視点が水面の上からだけなのでどうしても飽きてしまう。やっぱり空を飛ぶドローンのように自由に水中を動かせるほうが面白そうだ。何十万円もするが、ドローンの操作は面白かったし、水中ドローンも買ってしまおうかな。
「さて、今日はこれからが本番だ。前よりも高性能なドローンを買ってきたぞ!」
「キュキュウ!」
ハリーの前に大型のドローンを置く。
このドローンは家電量販店で置いているような一般用の物ではなく、テレビのCMなどで使われる映像を撮れる空撮用のドローンだ。値段はなんと50万円もしたのだがその分性能もレベルが違い、なんと数キロメートルの距離が離れても大丈夫で、バッテリーも1時間近くもつのだ。
映像も綺麗だし、スピードも速い。今日はこのドローンでザイクがいる村を観察してみるつもりだ。ザイクのことを信用していないわけではないが、この異世界の村の文明レベルをこの目で見てみたいと思っている。
それにこの小屋の周囲をもう少し調べてみたい。湖とは反対側の方には森が見えるし、そっちの方も空から観察するつもりだ。
少しお金を使いすぎているような気もするが、安全のための初期投資は大事である。家の家賃なんかはもう払わなくてよくなることだし、後々のことを考えた結果だ。
ちなみにこのレベルのドローンを元の世界で飛ばそうとしたら、場所や高さに制限があり、電波法も関わってくるのでちゃんとした免許や許可が必要だ。……さすがに異世界は適法外ということで。
それでは初飛行といこう!
282
あなたにおすすめの小説
【完結】スーパーの店長・結城偉介 〜異世界でスーパーの売れ残りを在庫処分〜
かの
ファンタジー
世界一周旅行を夢見てコツコツ貯金してきたスーパーの店長、結城偉介32歳。
スーパーのバックヤードで、うたた寝をしていた偉介は、何故か異世界に転移してしまう。
偉介が転移したのは、スーパーでバイトするハル君こと、青柳ハル26歳が書いたファンタジー小説の世界の中。
スーパーの過剰商品(売れ残り)を捌きながら、微妙にズレた世界線で、偉介の異世界一周旅行が始まる!
冒険者じゃない! 勇者じゃない! 俺は商人だーーー! だからハル君、お願い! 俺を戦わせないでください!
家ごと異世界転移〜異世界来ちゃったけど快適に暮らします〜
奥野細道
ファンタジー
都内の2LDKマンションで暮らす30代独身の会社員、田中健太はある夜突然家ごと広大な森と異世界の空が広がるファンタジー世界へと転移してしまう。
パニックに陥りながらも、彼は自身の平凡なマンションが異世界においてとんでもないチート能力を発揮することを発見する。冷蔵庫は地球上のあらゆる食材を無限に生成し、最高の鮮度を保つ「無限の食料庫」となり、リビングのテレビは異世界の情報をリアルタイムで受信・翻訳する「異世界情報端末」として機能。さらに、お風呂の湯はどんな傷も癒す「万能治癒の湯」となり、ベランダは瞬時に植物を成長させる「魔力活性化菜園」に。
健太はこれらの能力を駆使して、食料や情報を確保し、異世界の人たちを助けながら安全な拠点を築いていく。
辻ヒーラー、謎のもふもふを拾う。社畜俺、ダンジョンから出てきたソレに懐かれたので配信をはじめます。
月ノ@最強付与術師の成長革命/発売中
ファンタジー
ブラック企業で働く社畜の辻風ハヤテは、ある日超人気ダンジョン配信者のひかるんがイレギュラーモンスターに襲われているところに遭遇する。
ひかるんに辻ヒールをして助けたハヤテは、偶然にもひかるんの配信に顔が映り込んでしまう。
ひかるんを助けた英雄であるハヤテは、辻ヒールのおじさんとして有名になってしまう。
ダンジョンから帰宅したハヤテは、後ろから謎のもふもふがついてきていることに気づく。
なんと、謎のもふもふの正体はダンジョンから出てきたモンスターだった。
もふもふは怪我をしていて、ハヤテに助けを求めてきた。
もふもふの怪我を治すと、懐いてきたので飼うことに。
モンスターをペットにしている動画を配信するハヤテ。
なんとペット動画に自分の顔が映り込んでしまう。
顔バレしたことで、世間に辻ヒールのおじさんだとバレてしまい……。
辻ヒールのおじさんがペット動画を出しているということで、またたくまに動画はバズっていくのだった。
他のサイトにも掲載
なろう日間1位
カクヨムブクマ7000
精霊さんと一緒にスローライフ ~異世界でも現代知識とチートな精霊さんがいれば安心です~
舞
ファンタジー
かわいい精霊さんと送る、スローライフ。
異世界に送り込まれたおっさんは、精霊さんと手を取り、スローライフをおくる。
夢は優しい国づくり。
『くに、つくりますか?』
『あめのぬぼこ、ぐるぐる』
『みぎまわりか、ひだりまわりか。それがもんだいなの』
いや、それはもう過ぎてますから。
異世界に転移したら、孤児院でごはん係になりました
雪月夜狐
ファンタジー
ある日突然、異世界に転移してしまったユウ。
気がつけば、そこは辺境にある小さな孤児院だった。
剣も魔法も使えないユウにできるのは、
子供たちのごはんを作り、洗濯をして、寝かしつけをすることだけ。
……のはずが、なぜか料理や家事といった
日常のことだけが、やたらとうまくいく。
無口な男の子、甘えん坊の女の子、元気いっぱいな年長組。
個性豊かな子供たちに囲まれて、
ユウは孤児院の「ごはん係」として、毎日を過ごしていく。
やがて、かつてこの孤児院で育った冒険者や商人たちも顔を出し、
孤児院は少しずつ、人が集まる場所になっていく。
戦わない、争わない。
ただ、ごはんを作って、今日をちゃんと暮らすだけ。
ほんわか天然な世話係と子供たちの日常を描く、
やさしい異世界孤児院ファンタジー。
【完結】うちの孫知りませんか?! 召喚された孫を追いかけ異世界転移。ばぁばとじぃじと探偵さんのスローライフ。
かの
ファンタジー
孫の雷人(14歳)からテレパシーを受け取った光江(ばぁば64歳)。誘拐されたと思っていた雷人は異世界に召喚されていた。康夫(じぃじ66歳)と柏木(探偵534歳)⁈ をお供に従え、異世界へ転移。料理自慢のばぁばのスキルは胃袋を掴む事だけ。そしてじぃじのスキルは有り余る財力だけ。そんなばぁばとじぃじが、異世界で繰り広げるほのぼのスローライフ。
ばぁばとじぃじは無事異世界で孫の雷人に会えるのか⁈
異世界転生したので森の中で静かに暮らしたい
ボナペティ鈴木
ファンタジー
異世界に転生することになったが勇者や賢者、チート能力なんて必要ない。
強靭な肉体さえあれば生きていくことができるはず。
ただただ森の中で静かに暮らしていきたい。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる