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第26話 金貨
しおりを挟む「これが金貨か……」
村で聞いた話からすると金貨は日本円に換算すると1万円くらいとなるので、食事の対価としてはさすがにもらいすぎな気もしたけれど、こちらの世界でのお金を持っておきたいこともあってありがたくもらうことになった。
ベリスタ村でも街へ入るために必要な銀貨をもらったけれど、この世界の金貨は初めて見る。見たところ金ぴかだし、翻訳魔法によって金貨と日本語で聞こえるということは本物の金でできているのだろう。
「ケンタの世界では貨幣は金貨じゃない?」
「ああ、昔は金を使っていたけれど、今では銀と銅を使っている国が多いんだ。あとは紙を使った紙幣というものを使っているね。あとで持ってくるよ」
「わかった。別の世界のお金、少し興味がある」
金は昔から加工しやすくて錆びにくいという特徴があったから、いろんな国で貨幣として使われていたはずだ。日本も小判として使われていたし、異世界でも同じような理由から貨幣として使われているのだろう。
こちらの世界では金の高騰や金本位制度の廃止で紙幣に移行したんだっけ。昔学校で習った気がする。……というか、この金貨を元の世界で換金すると間違いなく1万円を超えるだろう。貨幣を両替するだけで大儲けできそうな気がする。
だけどその行為は非常に目立つ行為だからもちろんやらない。お金に困っているならともかく、今の俺は大金を持っているので、面倒ごとを起こすのはごめんだ。
「それで今後についてだけれど、俺としてはこの鏡を使ってこちらの世界へ遊びに来させてもらいたいんだけれどいいかな?」
この鏡はリリスとその師匠が作り上げたもので、俺はこの鏡を貸してもらっている立場だ。ちゃんと所有者に許可を取らなければならない。
そしてまだ出会ってから間もないが、少なくともリリスがこちらの世界を攻め滅ぼそうとか危険なことを考えてはいないということはわかった。それなら俺たちは協力関係になれるはずだ。
「もちろん構わない。その代わり私にも協力してほしい」
どうやらリリスも同じことを考えていたようだ。
「ああ、俺にできる範囲でだけれどな」
そのあとリリスと簡単な取り決めをした。
俺からの条件としてはリリスが鏡に対してできる限りいじらないようにしてもらい、何か実験などを行う時は必ず事前に教えてもらい、俺が元の世界にいる時にしてもらう。俺が異世界にいる時にリリスが鏡をいじって元の世界に戻れなくなったら困るからだ。
リリスもせっかく実験が成功して異なる世界と繋がったのにそれが閉じてしまっては困るから、その点についてはすぐに了承してくれた。今ある鏡ではなく、新しい鏡を作って実験したいとも言っていたな。
リリスからの条件としては俺の世界のいろんな物を見せてほしいようだ。先ほどのドローンなんかもそうだけれど、俺の世界の技術にとても興味があるらしい。とりあえずこちらの世界にはなさそうで興味のありそうなライトと時計を持ってきた。案の定、俺が元の世界に戻っている間にいろいろと調べてみるそうだ。
「ケンタ、これからよろしく」
「ああ、こちらこそよろしく。それじゃあまた明日」
「キュキュウ!」
リリスと別れて鏡を通って元の世界へと戻ってきた。
「ふう~まさかあの鏡を作った人が現れるとはなあ……」
「キュ」
元の世界へ戻ってきて、ベッドの上に横たわる。一気に緊張の糸が切れたみたいだ。
いきなりあの鏡を作った本人が現れるとは思ってもいなかった。悪そうな人ではないのは幸いだったな。それにあっちの世界の情報や結界の仕組みなんかが分かったのはとてもありがたい。リリスとは今後とも良い関係でいられるといいのだが。
「キュウ~」
「ああ、お風呂か。そうだな、一緒に入ろうか」
ハリーと一緒にお風呂へと入る。そういえば、なんで俺やハリーは鏡を通れるのにリリスは通れないんだろうな? リリス本人も不思議がっていた。まだまだ分からないことは山ほどありそうだ。
ちなみにあの鏡をリリスと一緒に作ったという師匠だが、今はどこにいるのか不明だそうだ。リリスから聞いた話では元々放浪癖があるらしく、魔法の研究をしながら各地をふらふらしているらしい。……それもそれですごいよな。
しばらくしたら戻ってくるかもしれないそうだ。まあ、あんな感じで研究をほったからかしにして、何年も小屋を放置していたようだし、当分は戻ってこないかもな。
俺としてはあの美しい湖のほとりでのんびりとできればそれで満足だ。明日からはリリスにあちらの世界の話を詳しく聞き、それが終わったら本格的にのんびりと過ごす道具を持ちこもうかとも思っている。
なんにせよ、これからが楽しみだ。
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