『億り人』になって田舎に家を買ったら、異世界と現代日本を行き来できるようになった件。~お金と文明の利器を使ってのんびり生活~

タジリユウ

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第40話 補助輪

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「よし、準備はオッケーだ。いざ、別世界の街へ!」

「キュウ!」

 以前にベリスタ村を訪れた時と同じように防刃素材のベストやグローブ、スネークガードなどを用意した。なにせ異世界の街だからな、何が起こってもいいように準備しておこう。

「こっちも準備が終わった」

 俺とハリーが乗っているのはマウンテンバイクだ。リリスの魔力節約のため、道がなだらかな湖の周りはこのマウンテンバイクに乗っていく。前と同じで、マウンテンバイクの前にはハリーが乗っている。

 前回は小屋から出て右方向へ向かってベリスタ村へと進んでいったが、今回は左方向へ進む予定だ。もちろん事前にドローンで進む道をチェックしてある。

「……今度は私もケンタの世界の自転車に乗っていく」

「そうだね。たぶんすぐに補助輪をとっても走れるようになるよ」

「キュウ」

 俺が乗っているマウンテンバイクを見て、リリスも乗りたそうだったから、練習用に子供用の自転車を買ってきてあげたのだが、さすがにまだ補助輪なしで走ることはできていない。リリスは魔法がすごく得意みたいだけれど、身体を動かすのは少し苦手みたいだ。

 魔法を使えばなんとか走れるらしいけれど、それで魔力をたくさん消費していたら本末転倒である。

 ……リリスが補助輪付きの自転車に乗っている姿はなんだか微笑ましかった。さすがに本人には言えないがな。



「やっぱり湖の周りを走るのは気持ちがいいなあ」

「キュキュ!」

 青く澄んだ湖の周りをマウンテンバイクで走っているだけで気分が良い。ブラック企業と仮想通貨で辛かった気持ちが晴れていくようだ。

「この辺りからは飛行魔法を使う」

「了解だ」

 1時間半ほどマウンテンバイクで走ったところで一度停止する。幸い魔物に遭遇することなくここまでやってきた。ここからは湖を離れて街の方向へ向かう。

「それじゃあ、こいつをお願いするよ」

「任せて」

 リリスが前に出した収納魔法の黒い渦にマウンテンバイクを入れる。結構大きなマウンテンバイクなのに吸い込まれるように消えていく。飛行魔法もそうだが、この収納魔法もいったいどういう仕組み何だろうな?

 ちなみ「魔力とやらは出し入れする時に少しだけ使うらしい。

 そして代わりにハリーのキャリーケースを出してもらい、飛行魔法で移動する準備をした。

「湖の周りも綺麗だったけれど、この広い草原も綺麗だよね」

「キュ!」

 昨日飛んだ湖の周りの景色もよいが、この一面に広がった薄緑色の草原も実にすばらしい。道もなく、人工物が一切ないこんな景色は俺の世界だとなかなかみることができないだろう。

 おっと、綺麗な景色に感動しているだけでなく、一応は道を覚えておかないとな。ないとは思うが、リリスからはぐれてしまったら相当ヤバい……。必要はないと思いつつ、帰り道くらいは自分でも覚えておかなければならない。



「ここで少し休憩する」

「了解。ここまでお疲れさま」

「キュキュ」

 さらに1時間ほど飛行魔法で街へと進んでいくと小さな小川があった。ちょうどお昼時だし、ここで一度休憩する。

 ここなら見晴らしが良いから、魔物が近付いてきたら気付くことができるはずだ。テーブルやイスを出すのは少し面倒なので、シートを敷いてその上に座る。

 危険な魔物がいる世界だと分かってはいるが、なんだかピクニックに来ているみたいだな。

「お昼ご飯はおにぎりだ。ご飯の中にいろんな具材が入っているよ」

 お昼ご飯は手軽に食べられるおにぎりで、早朝に作った物をリリスの収納魔法に入れてもらっていた。

「真っ黒だけれど、これはラーメンに載っていた海苔?」

「ああ、色は少し黒いが海藻を刻んでシート状にしたものだ。ちゃんと巻いたばかりだからパリッとしている」

 昨日のラーメンにも入っていたから、リリスも海苔は知っているようだ。

 子供の頃に遠足とかで食べたあのしっとりとしたおにぎりの海苔も悪くはないのだが、やはり巻いたばかりのぱりっとした方がうまいのである。

「キュウ、キュウ!」

「ハリーが食べているのは鮭という魚のほぐした身が入っているんだ」

「こっちのもおいしい! 柔らかくて少し甘いご飯に黒くて塩気のある中身がよく合っている」

「そっちは昆布だね。海藻である昆布を刻んでいろんな調味料で煮詰めたものを入れてある」

 定番といえば定番だが、ちょっといいお米だし、高級な炊飯器で炊いたご飯を使ったおにぎりだ。それに出来立ての状態でリリスに収納魔法で保存しておいてもらったおかげで、普通のおにぎりよりもおいしい。

 素朴だが、手軽に楽しめ、多様性のあるおにぎりが廃れることはまずないだろうな。

「他にもいろんな味がある!」

「キュキュウ♪」

「張り切って作ったからな。たくさん食べてくれ」

 余ってもリリスの収納魔法で保存できることと、3人分ということでいろんな具のおにぎりを作ってしまった。

 ハリーも手伝ってくれたし、こういうのも楽しいものだ。おにぎりだけではなく、たくわんと味噌汁があるし、本格的にピクニックの気分だ。
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