46 / 110
第46話 冒険者ギルドマスター
しおりを挟む「食べられる部分はすべてこっちで引き取る。角以外は全部売却で」
「クラウドワイバーンだと、爪や牙はかなり貴重な素材になるけれど、本当にいいのか?」
「問題ない」
「了解だ。今日中には終わらせる。久しぶりの大物だし、腕が鳴るぜ」
そう言いながら腕をまくるノコギリを持ったおっちゃん。やはり大きさが大きさだけに結構な時間がかかるようだ。明日の朝以降にもう一度ここまで来ればいいらしい。
「あの、リリス様。少しだけお時間をいただけないでしょうか?」
先ほどからどこかへ走っていなかった職員さんがこちらに戻ってくる。
「なに?」
「その、当ギルドマスターがご挨拶をさせていただけないかと……」
「今は連れもいる」
「ほ、ほんの少しだけでも大丈夫です! ぜひともよろしくお願いします」
「俺たちは大丈夫だよ、リリス」
「キュ?」
ギルド職員の女性が必死にリリスや俺たちに向かって頭を下げる。
さすがにこの状況でノーといえないのは気の弱い俺の良くないところだ。まあ、挨拶だけと言っているし、そこまで時間は取られないだろう。
「……わかった」
「ありがとうございます」
職員さんに案内されて、先ほどまでいた冒険者ギルドへ戻って来て、2階のとある部屋へと案内された。
「初めまして、リリス殿。ギルドマスターのセレナだ」
その部屋にいたのは細身で長身の紫色の髪をした女性だった。下にいた女性の冒険者とは異なり、こちらの世界のスーツのような服装をしていた。
……意外だ。冒険者のギルドマスターというからにはもっとムキムキのマッチョだと思っていたけれど、そんなことはなかった。リリスもAランク冒険者だし、どうやらこっちの世界では腕力や性別などの外見はあまり関係ないらしい。
「リリス。こっちは連れのケンタとハリー」
「ケンタです」
「キュウ」
「初めまして、セレナだ。おや、こっちの魔物は……」
「えっと、俺の友人なんです。いきなり人を襲ったりはしませんので」
「……いや、失礼した。なんでもないよ」
セレナさんがハリーさんを見て少し言いよどむ。そういえばリリスもハリーは見たことがない種類の魔物みたいだったし、この付近には生息していない魔物なのかな?
「それで、用件は?」
「ああ、いきなり呼び出してしまってすまなかった。実はリリス殿にひとつお願いがあるんだ」
「今は忙しいから無理」
セレナさんのお願いの内容を聞く前にバッサリと断るリリス。
ギルドマスターを相手にしてそんな対応でいいのかな……。
「いや、お願いというよりは聞きたいことがあるというべきか。正確に言えばリリス殿の師匠のことなんだ」
「師匠の?」
「ああ、リリス殿は彼女が今いる場所を知らないだろうか? 実は彼女宛の国からの依頼と彼女からの被害報告がいくつか上がっていてね。早急に連絡を取りたいところなんだ」
リリスの師匠? あの鏡を一緒に作ったという人物か。まだリリスからそこまで詳しく聞いていなかったけれど、どうやら女性だったらしい。
……というか、国からの依頼とか被害報告ってなんなんだ?
「私も知らない。むしろ師匠を見つけたら私にも知らせてほしい」
「そうか、リリス殿も知らないのか。わかった、どこかの街で見つかったらこの冒険者ギルドへ連絡が入るよう手配しておこう。その代わりにリリス殿も彼女の居場所が分かったら、こちらにも教えてくれないだろうか?」
「そういうことなら了解。そちらへの連絡手段を渡しておく」
「助かるよ。魔法使いとしての腕は本当にすばらしいのに、いつもどこかをふらついていて……おっと、弟子のリリス殿の前で失礼した」
「気にしていない。それは私も常々そう思っている」
「そうか……」
……セレナさんとリリスが2人でため息を吐いている。というか、本当にどんな人物なんだろうな?
「キュウ?」
ハリーは2人の言葉がわかっていないから不思議がっているけれど、俺もあまり詳しいことは聞くのが怖い気もする。
セレナさんがリリスを呼んだ理由は本当にそれだけだったみたいで、俺たちは冒険者ギルドから出た。
連絡についてはリリスが鳥の模型みたいな魔道具をセレナさんに渡していた。手紙を持たせて飛ばせると、リリスが指定した座標である湖の小屋まで運んでくれるらしい。さすがに電話やメールまではいかないが、便利な魔道具があるものだ。
解体所に預けたクラウドワイバーンは明日の朝までに解体を終わらせてくれるらしい。買い取ったお金もその際に渡してくれるそうだ。
「まずは宿を確保する」
「了解だよ」
冒険者ギルドを出てそのまま市場へ向かいたいところだったけれど、先に宿を確保するらしい。
確かに旅をする時は宿の確保は必須だ。特に事前に予約ができないこの世界ではリリスの言う通り先に確保しておいた方がいいだろう。漫画喫茶とかもないだろうし、宿を取れなかったら街の中で野宿とか最悪だからな。
171
あなたにおすすめの小説
【完結】スーパーの店長・結城偉介 〜異世界でスーパーの売れ残りを在庫処分〜
かの
ファンタジー
世界一周旅行を夢見てコツコツ貯金してきたスーパーの店長、結城偉介32歳。
スーパーのバックヤードで、うたた寝をしていた偉介は、何故か異世界に転移してしまう。
偉介が転移したのは、スーパーでバイトするハル君こと、青柳ハル26歳が書いたファンタジー小説の世界の中。
スーパーの過剰商品(売れ残り)を捌きながら、微妙にズレた世界線で、偉介の異世界一周旅行が始まる!
冒険者じゃない! 勇者じゃない! 俺は商人だーーー! だからハル君、お願い! 俺を戦わせないでください!
家ごと異世界転移〜異世界来ちゃったけど快適に暮らします〜
奥野細道
ファンタジー
都内の2LDKマンションで暮らす30代独身の会社員、田中健太はある夜突然家ごと広大な森と異世界の空が広がるファンタジー世界へと転移してしまう。
パニックに陥りながらも、彼は自身の平凡なマンションが異世界においてとんでもないチート能力を発揮することを発見する。冷蔵庫は地球上のあらゆる食材を無限に生成し、最高の鮮度を保つ「無限の食料庫」となり、リビングのテレビは異世界の情報をリアルタイムで受信・翻訳する「異世界情報端末」として機能。さらに、お風呂の湯はどんな傷も癒す「万能治癒の湯」となり、ベランダは瞬時に植物を成長させる「魔力活性化菜園」に。
健太はこれらの能力を駆使して、食料や情報を確保し、異世界の人たちを助けながら安全な拠点を築いていく。
辻ヒーラー、謎のもふもふを拾う。社畜俺、ダンジョンから出てきたソレに懐かれたので配信をはじめます。
月ノ@最強付与術師の成長革命/発売中
ファンタジー
ブラック企業で働く社畜の辻風ハヤテは、ある日超人気ダンジョン配信者のひかるんがイレギュラーモンスターに襲われているところに遭遇する。
ひかるんに辻ヒールをして助けたハヤテは、偶然にもひかるんの配信に顔が映り込んでしまう。
ひかるんを助けた英雄であるハヤテは、辻ヒールのおじさんとして有名になってしまう。
ダンジョンから帰宅したハヤテは、後ろから謎のもふもふがついてきていることに気づく。
なんと、謎のもふもふの正体はダンジョンから出てきたモンスターだった。
もふもふは怪我をしていて、ハヤテに助けを求めてきた。
もふもふの怪我を治すと、懐いてきたので飼うことに。
モンスターをペットにしている動画を配信するハヤテ。
なんとペット動画に自分の顔が映り込んでしまう。
顔バレしたことで、世間に辻ヒールのおじさんだとバレてしまい……。
辻ヒールのおじさんがペット動画を出しているということで、またたくまに動画はバズっていくのだった。
他のサイトにも掲載
なろう日間1位
カクヨムブクマ7000
【完結】うちの孫知りませんか?! 召喚された孫を追いかけ異世界転移。ばぁばとじぃじと探偵さんのスローライフ。
かの
ファンタジー
孫の雷人(14歳)からテレパシーを受け取った光江(ばぁば64歳)。誘拐されたと思っていた雷人は異世界に召喚されていた。康夫(じぃじ66歳)と柏木(探偵534歳)⁈ をお供に従え、異世界へ転移。料理自慢のばぁばのスキルは胃袋を掴む事だけ。そしてじぃじのスキルは有り余る財力だけ。そんなばぁばとじぃじが、異世界で繰り広げるほのぼのスローライフ。
ばぁばとじぃじは無事異世界で孫の雷人に会えるのか⁈
精霊さんと一緒にスローライフ ~異世界でも現代知識とチートな精霊さんがいれば安心です~
舞
ファンタジー
かわいい精霊さんと送る、スローライフ。
異世界に送り込まれたおっさんは、精霊さんと手を取り、スローライフをおくる。
夢は優しい国づくり。
『くに、つくりますか?』
『あめのぬぼこ、ぐるぐる』
『みぎまわりか、ひだりまわりか。それがもんだいなの』
いや、それはもう過ぎてますから。
異世界に転移したら、孤児院でごはん係になりました
雪月夜狐
ファンタジー
ある日突然、異世界に転移してしまったユウ。
気がつけば、そこは辺境にある小さな孤児院だった。
剣も魔法も使えないユウにできるのは、
子供たちのごはんを作り、洗濯をして、寝かしつけをすることだけ。
……のはずが、なぜか料理や家事といった
日常のことだけが、やたらとうまくいく。
無口な男の子、甘えん坊の女の子、元気いっぱいな年長組。
個性豊かな子供たちに囲まれて、
ユウは孤児院の「ごはん係」として、毎日を過ごしていく。
やがて、かつてこの孤児院で育った冒険者や商人たちも顔を出し、
孤児院は少しずつ、人が集まる場所になっていく。
戦わない、争わない。
ただ、ごはんを作って、今日をちゃんと暮らすだけ。
ほんわか天然な世話係と子供たちの日常を描く、
やさしい異世界孤児院ファンタジー。
異世界転生したので森の中で静かに暮らしたい
ボナペティ鈴木
ファンタジー
異世界に転生することになったが勇者や賢者、チート能力なんて必要ない。
強靭な肉体さえあれば生きていくことができるはず。
ただただ森の中で静かに暮らしていきたい。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる