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第88話 リリスだけが頼り
しおりを挟む「もちろんケンタとハリーには戦闘に参加させねえよ。それに2人がこの依頼についてきてくれることにはメリットもあるぞ」
「私がついていくことがすでに確定している……」
「当たり前だ。師匠である俺を置いてケンタの世界へ遊びに行くなんて許すつもりはねえぞ!」
「まあ、師匠がそういう性格なのはわかっている」
なにやら諦めた様子でため息を吐くリリス。うん、短い間の付き合いだけれど、ヴィオラがそういう性格なのは俺にもわかってきた。
「今回の依頼のあった場所はかなり大きな街だ。様々な街からいろんな魔道具やら食材が集まってきている。これまで以上に俺たちの世界でケンタの欲しいものが見つかると思うぜ」
「むむ……」
大きな街か。確かに興味がある。
以前にリリスとレジメルの街へ行った。レジメルの街はそこまで大きな街ではなかったにもかかわらず、興味深いものがいっぱいあったし、気になる食材も数多くあった。
ベリスタ村でもらってきた野菜や魚は俺の世界以上においしかったし、ヴィオラたちの世界の食材には期待できる。
「依頼料も結構な金額になるが、そいつもしっかりと払うぜ。俺たちの世界の金はケンタの世界では結構な大金になるんだろう?」
「う~ん、そっちはあんまり惹かれないかな」
「まあ、そうか」
もちろんお金はあればあった方がいいに決まっているが、仮想通貨で稼いだお金と購入した家もあることだし、そこまで重要ではない。
「あとはそうだな。その街の近くには海があるから新鮮な海鮮料理が食べられるし、海水浴をしに来たちゃんねーが山ほどいるぜ!」
「へえ~」
「……ケンタ?」
「いや、俺が気になっているのは海鮮料理のほうだからね!」
ヴィオラの言葉にリリスがジト目で俺を見てくるのだが、俺が言っているのは海鮮料理の方である。やはり別の世界に来たのなら、海の幸とやらはぜひとも堪能したいと思っていた。
とはいえ海水浴に来ている女性に興味がないと言えば噓になる。男たるもの女性の水着姿にはどうしても惹かれてしまうものなのである。異世界に水着があるのかは知らないが。
……それにしてもちゃんねーとか今時誰も言わないけれど、この翻訳魔法はどうなっているのだろう。
「はあ……わかった。でも戦闘には絶対に参加しないからね。できる限り守ってよ」
「おう、俺に任せておけ!」
「大丈夫、ケンタは私が全力で師匠から守る」
「頼むよ、リリスだけが頼りだから」
「おいこら、どういう意味だ!」
もちろんリスクはあるが、異世界の大きな街へ行ってみたいという好奇心はある。
ヴィオラの暴走とやらは少し怖いが、ヴィオラのことをよく知っている弟子のリリスがいてくれる。ここはリリスを信じるとしよう。
「キュキュウ!」
「……ありがとう、でもハリーも無理はしちゃだめだからな」
ハリーが右手で任せておけとでもいうかのように自分の胸を叩く。
どうやらハリーも一緒についてきてくれて、俺を守ってくれる気満々な様子である。ハリーも俺より強いのは間違いないが、それでも無茶だけはしないでほしい。
どんなに断ったところでヴィオラに強制連行される可能性も高そうだし、俺も覚悟を決めるとしよう。そうと決まれば移動の準備だ。
◆ ◇ ◆ ◇ ◆
「よし、畑の野菜には自動で水を与える装置をおいた。できる限り必要な物は揃えたはずだ」
昨日は今日のためにアウトドアショップなどで買い物をして準備をしてきた。そして数日間は家を空けるため、育てている畑には自動で水をやる散水機を購入した。
ソーラーパネルを電源とし、貯めていた水をタイマーで一定時間ごとに散水する仕組みらしい。今はこんな便利なものがあるんだと驚いた。時間がなかったから初めて特急料金を使って送ってもらったが、あんなに早く来るんだな。
リリスの方はというと、レジメルの街の冒険者ギルドマスターであるセレナさんと目的地である街に連絡をしていた。これで俺たちは直接その街へ向かえばいいことになる。
「さっさと片付けてケンタの世界を楽しむとしようぜ」
「できる限り早く片付けて帰ってくる」
「キュキュキュウ」
みんなやる気は満々のようだな。まあ、早く依頼を片付けて俺の世界を改めて楽しみたいというのが一番の目的のようだけれど。
「そんじゃあ行くぜ」
ヴィオラが右手を前に突き出すと、俺の身体が宙に浮く。以前にリリスと一緒に街へ出掛けた時と同じ移動方法である飛行魔法だ。ただし今回はヴィオラもいるので、ヴィオラが俺を飛ばしてくれて、ハリーのキャリーケースはリリスが抱えて移動することになった。
相変わらず宙に浮いて空を飛ぶという感覚には慣れないものだ。
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