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究極のセックスって知ってる?
次は二人でセックスについて研究する。先日そう言った渡瀬は、今まさにセックスの方法について菊池に熱くプレゼン中である。
「だから、ポリネシアンセックスが究極のセックスらしい。精神的にも深く繋がれて、身体も心も気持ちいいとか、そんなの気になんだろ?」
「まぁ……」
そう、渡瀬はどこで聞いてきたのか、ポリネシアンセックスの素晴らしさを熱弁していたのだ。これまで菊池の勝手に付き合ってばかりだった渡瀬がここまで言うなんて、気にならないとは言えば嘘だった。
てっきり、セックスの研究とは四十八手だとか、お互いに性感帯を見つけるとか、そういう話だと思っていたのに、のっけから随分とディープでマニアックなものを選んだものだ。
「ちょうどもうすぐ夏休みだし、大会明けでお互い部活も休みになるだろ?せっかくだし5日間かけてじっくりやろうぜ。な?」
「いいけど、俺らそんな我慢できんのかよ」
「がんばろ!」
かくして、二人は夏休みに究極のセックス、ポリネシアンセックスを試すことになったのだった。
1日目。
渡瀬が調べたところによると、ポリネシアンセックスを行う5日間、食事は量を少なめにし、一緒に摂るのだと言う。元々これまでも一緒に食事をしていたし、普通にセックスする時も食事を抑えめにしていたから、これは特に困らない。
風呂に入り、念のためベッドにペットシーツを引いて、二人で裸のまま向き合う。初日の今日は、30分間、触れ合わずに互いの裸を見て褒め合うのだそうだ。聞いているだけでセックスするより恥ずかしい。
渡瀬がスマートフォンのタイマーをセットしているのを、三角座りでもじもじと脚を擦り合わせながら待つ。
「ヒロ、恥ずかしい?身体まで赤くなってんぞ」
「恥ずかしいに、決まってんだろ」
「もっと恥ずかしいことしてきたのに」
スマートフォンを脇に置き、渡瀬が菊池の全身をじっとりと見つめる。なぜかそれだけでぞくぞくと背筋に電流が走った。
「ヒロ、筋肉もちゃんとついてて、かっけぇ身体だよな。腹筋は綺麗だし」
「ぅ゙……あ、りがと?」
つい褒められた箇所を意識してぐっと力が入る。綺麗に縦に筋が通っている腹筋が、その溝を濃くした。
「ちょっと濃い色の乳首も敏感で可愛いし、鎖骨もエロくて舐めたくなる。あーー、触りてぇ」
「ゔぅ゙……」
言われて、胸の突起が嬉しそうにツンと尖る。このまま言われっぱなしでは分が悪い。そう思って改めて目の前の男の身体に視線を向けた。薄く均等についた筋肉に、上気した肌。そして既に腹に付くほど立派に反り返った陰茎は、根本から先端にかけて濃い桃色から赤色に美しいグラデーションになっている。ぷっくりと腫れた亀頭から零れる透明の涎は、浮いた血管を辿ってふっくらとした陰嚢を濡らしていた。
「うわ、ヒロ、エッチな顔してる」
「う、るさいっ!イオがエロいのが悪いっ!」
「俺のどこがエロいって?」
挑発するような視線に負けて、菊池がこくりと唾を飲み下す。
「うっすい唇、とか」
ああ、キスしたい。
渡瀬が見せつけるようにぺろりと舌で唇を濡らす。その口で、その舌で、陰茎を咥えて舐めしゃぶられたい。
「二の腕も細マッチョでカッケェし、」
その腕に包まれたい。渡瀬のぬくもりを感じたい。その匂いでいっぱいになりたい。
「指、細くて長くて羨ましいし、」
その指で、敏感で苦手な亀頭をしつこく磨かれたい。割れ目を抉って、尿道の入り口を嬲られたい。
「ち、ちんこ、も……」
「ちんこも?」
「でっかくて、固くて、好き……」
ああ、今すぐに挿れてほしい。その大きくエラの張ったもので後孔の粘膜全部を擦って、大好きなしこりを突き上げて、最奥を犯してほしい。
「ヒロ、何想像した?触ってないのにもうとろとろ」
「はぁ……ぅ……」
渡瀬の言うとおり、菊池の身体は完全にスイッチが入っていた。陰茎は真っ赤に膨れて先走りをあふれさせ、陰嚢だけでなく下に敷いたペットシーツをぐっしょりと濡らしている。後孔は物欲しげにきゅんきゅんと収縮し、腰が勝手にカクカクと揺れていた。
「ぁ、イオ……っ、エッチしたいっ」
「初日から何言ってんの」
「ああ、無理だって、マジで……っ」
セックスできるのが4日も先だなんて信じられない。なんとか流されてくれないかと、必死に腰を揺らし、舌を覗かせ、渡瀬を誘惑する。彼もまた欲求と戦っているらしく、苦しげに眉根を寄せ、唇を噛んで荒い息を殺していた。
「なぁ、やっぱり我慢はよくねぇって……イオもしたいだろ?俺のこと、好きなだけ抱いていいから……っ!一緒に気持ちよく、なろ?」
「ぐ、ぅ」
渡瀬が低い呻き声を漏らした途端、かけていたアラームが鳴る。二人してびくりと身体を揺らし、安堵なのか失望なのかわからない息を吐いた。
「あぶねー。お前、誘惑すんなって」
「なぁ……ほんとに、あと4日もやんの?」
「やる」
「ゔ~~……」
不満たっぷりに唸り声をあげる菊池を、渡瀬がそっと抱きしめる。火照る身体は、触れたところからびりびりと薄く電流が走るようだった。渡瀬の背中に腕を回し、自分からも抱きつきながら、菊池は無理やり目を閉じた。
あと4日だって?全く耐えられる気がしない。
2日目。
既に視界に渡瀬が入るだけで陰茎が上を向き始め、そわそわと落ち着きがなくなってしまう。どれだけねだっても渡瀬は頑なに触れてくれないせいで、菊池はなんとか夏休みの宿題を進めて気を紛らわせていた。
「あ、そうだ。ポリネシアンセックスのこと高嶋に教えてやったら、あいつもやってみるらしいぜ」
同じく机に向かっていた渡瀬が唐突に切り出す。
「マジ?じゃあムラムラしてそうなやつが相手だな」
「はは、そうだな。まだ2日目なのに、ヒロもすげぇムラムラした顔してるもんな」
「しょうがねぇだろ。これでもがんばって耐えてんだぞ」
「えらいえらい」
だめだ。渡瀬の笑顔を見ただけで身体が熱を持つ。堪らなくなって椅子から立ち上がり、渡瀬を後ろから抱きしめた。
「思い出させるから勃った」
「あはは。ヒロ、可愛いー」
「なあ、今日の分、もうシようぜ……」
首筋に鼻を埋め、渡瀬の匂いをスンスンと嗅ぐ。鼻腔いっぱいに広がる彼の香りが、ジンと腰に響いた。汗ばんでしっとりした肌に舌を這わせると、少しだけしょっぱい。菊池は夢中になってぺろぺろと舐め続けた。
「コラ。まだ昼なんだから落ち着けって」
「無理。シたい。ちんこ勃ちすぎて痛い」
「だめだって。ほら離れろ。俺だって我慢してんだぞ」
「我慢すんなよぉ……」
縋り付く菊池に困ったように笑うと、渡瀬はくしゃっと髪を撫で、頬にキスをした。口にしてくれなかったことに拗ねつつも、渡瀬が一向に乗ってこないために渋々諦める。そして、もう一度机に向かい、水を飲んで乾いた喉を潤した。夜になったら改めてアタックすると心に決めながら。
結局、触れ合えたのは寝る前になってからだった。2日目は性器、胸以外への軽いキスと愛撫だけが許される。あまり長く触れ合うと我慢ができなくなるからと、渡瀬がまた30分のアラームをかけた。いっそ我慢できなくなればいいのに、と菊池は恨めしげにスマートフォンを見つめる。
全裸になって抱き合い、ふやけるかと思うほどキスをした二人は完全に出来上がっていた。渡瀬はまるで新しい性感帯を探すように身体中にキスをしてくる。
「ヒロ……ヒロ……」
「は、っあ、あ……」
「耳弱い?」
「ぅ、ッん」
手つきはまさにフェザータッチ。擽ったいのと気持ちがいいのとが混ざり合って、全身に鳥肌が立つ。
耳を縁から裏までキスされた後は、首筋、鎖骨、脇腹、と下っていく。決して強い刺激は与えず、指でなぞり、軽く吸うようにキスされた。たまに舌でツツーっと撫でられるのが特にまずい。全身が性感帯と化したように、触れられるたびに腰にびりびりと直撃する。
「あっ……あっ……あっ……」
「鳥肌すご。めっちゃ敏感になってんね」
「は、は、イオ、やばいぃ……」
「まだあと20分あるからがんばれ」
「俺、俺も、する」
自分ばかり責められるのはずるいと潤んだ瞳で渡瀬を睨めば、彼は息を乱しながら菊池の腕を取り、抱き寄せた。
「じゃ、ヒロも触って」
「ん……覚悟、しとけ、よ」
未だ全身を微弱な電流が包んでいる感覚に晒されながら、横になった渡瀬に跨る。人を組み敷くなんて初めてだ。緊張しながら、そろそろと手を伸ばす。柔らかさのカケラもない、ごつごつした男の身体。前まで女の子が好きだったはずなのに、もうこの身体が欲しくて欲しくて涎があふれて止まらなかった。
欲のまま、綺麗に縦線の入った腹を、その線に合わせて舌を這わせる。すぐに力が入って固くなるのが嬉しくて、脇腹も擽るように撫でた。
後は渡瀬がしてくれたのを思い出しながらゆっくりと触れていく。手が鼠蹊部に辿り着くと、彼の腰がかくんと突き上がった。陰茎が揺れて、腹との間に先走りの糸が引く。渡瀬が感じてくれていると思うと、菊池の腰もずくんと重くなった。
「ヒロ、ちょ、やばいから……っ」
「ん、もうちょい……」
遮ろうとしてくる手を握り、内腿にもキスを落とす。堪らないというように、渡瀬が何度も腰を振り上げた。彼は自分を抱く時、こんな風に中を突き上げているのだ。そう思うだけで後孔が激しく収縮する。
もう無理やり跨って、挿れてしまおうか。
ごくんと喉を鳴らして、陰茎に手を伸ばそうとした時、けたたましくアラームの音が鳴り響いた。
「も、終わり、な!」
「うわ!」
渡瀬が慌てて身を起こし、アラームを止めて菊池を抱きしめる。乱れた息が耳にかかって、燻った熱が胎の奥で渦巻いていた。
抱き合ったままベッドで布団にくるまる。今日は攻める側に回ったおかげで、菊池は辛いながらもまだ耐えられそうだった。対して、煽られた渡瀬は辛そうだ。お互いになかなか寝付けないまま、夜が更けていく。
3日目。
ここまでくると、休みであることが恨めしい。いっそ授業や部活動で気を紛らわせたかった。残念ながら、菊池がどれだけ誘惑しようとも渡瀬は折れてくれそうにないし、なのに部屋でずっと二人きりだし、と、ただただムラムラと欲求不満が募っていく。
「はぁ~~……」
ため息を吐きながら、ちら、と渡瀬に視線を向ける。勉強机に向かって宿題をしている彼も、どこか集中できていない様子だ。
それもそうである。健康優良男子高校生なんて毎日ヌいても足りないくらいなのに、ただ我慢するどころか、くっついて抱き合ってキスをして、散々煽られておいて、何もしないのだ。到底耐えられるわけがない。
しかも日に日に触れ合い方が深くなる。3日目の今日はディープキスが解禁らしい。前まで普通にしてきたその行為だが、禁欲中の今考えてみれば、互いの舌を絡め合うなんて、目が眩みそうなほど淫靡だと思えた。そんなことをして、とてもじゃないが耐えられる気がしない。夜への期待に、胸も陰茎も膨らんだ。
「じゃ、今日はディープキスするから。あと、昨日みたいに、ちんことか乳首とか以外なら触ってもいいけど、あくまでイかないように、優しくな」
「わかってる」
待ちに待った30分間の触れ合いの時間。
裸で抱き合うだけで、皮膚がびりびりと痺れる。菊池は座ったまま、無意識にかくかくと腰を揺らしていた。陰嚢がシーツに軽く擦れるだけで先端から蜜がとろりと垂れる。
「は、は……イ、イオ……っ」
「フー……フー……」
軽いキスだけで二人の息が荒くなる。唇を重ねたまま、どちらからともなく相手の身体に触れ、縁をなぞっていた。
「イオ……は、は、んんっ」
名前を呼んだ隙に、渡瀬の舌が入ってくる。あたたかくて柔らかい舌が絡まると、快感が腰に直撃した。びくん!と、身体が大きく戦慄き、ぴゅっと細く我慢汁が飛び出す。
「ん゙ん゙ッ……!はあっ、イオ、や、やばい、俺……ッ」
慌てて唇を離し、陰茎の根本を手で戒めながら渡瀬に助けを求める。もうキスだけで射精しそうだった。涙目でぶるぶると震えながら、解放を求めるように腰をくねらせる。
「な、なんかもう、出そう、なんだけどっ」
「はあっ、はあっ、可愛いッ、ヒロ……!」
「ああっ、だめだって……!ん゙ん゙ぅ!」
渡瀬が耐えられないというように、低く唸りながらまたキスしてきた。侵入を拒む唇を割り開き、乱暴に舌を絡め取られる。縛っている陰茎の奥で、ぐるぐると精液が渦を巻き、解放を今か今かと待ち望んでいた。
こんなにもがんばって耐えているのに、渡瀬の手が敏感な腰から内腿までを妖しく撫でてくる。なんとか陰茎は押さえているが、本能でかくんかくんと振り上げてしまう。
「イオっ!マジで、もう、無理、出るっ!」
「はぁっ、ヒロ、撫でてるだけで……?」
渡瀬の手は止まらない。もういいだろうか。だってこんなに我慢して、出そうだと言っているのに、止めないのは渡瀬の方なのだ。
陰茎を絞っていた指が少しだけ緩む。
「出して、いい?!も、出す……!」
陰茎から手を離すと、急激に血液が巡る。亀頭がパンパンに張り、カウントダウンのように激しく脈を打つ。射精直前の切なくてじんわりとした快感に菊池がたまらず天を仰いだ。
「ゔッ、出る、ぅ……っ」
「だめ、だ!」
息を詰めて腰を振り上げた瞬間、渡瀬が陰茎の根本をきつく締めた。そこまで来ていた精液が勢いよく逆流する。菊池は苦しさで狂ったように腰を振り乱した。
「嫌ッ!!もう、来てるっ、ザーメン来てる、ってぇ!!」
「ごめん、ヒロ、我慢……っ」
「嫌っ、嫌ああ!離せ、離せよぉ!俺、出るって言った!出したいぃ!もう無理、出る、出す、っ!」
「ヒロ、ごめん……ごめん……!」
必死に渡瀬の指を解こうと藻搔く。身体はなにがなんでも射精しようとしているのか、陰嚢が上がりきっていた。渡瀬は陰茎を締め上げつつ、陰嚢を優しく転がして押し下げる。ぽたぽたと菊池が涙と涎を零していた。
「ゔ~~~っ!ひどい、イオ、ひど、ぃ……っ」
「ごめん、煽りすぎたな。俺も、ヒロが可愛すぎて止まんなくて……」
「俺、何回も、無理って、出るって、言った、のに」
「うん、ごめん。残りの時間は抱きしめるだけにするから」
言っているうちに悲しくなってきて、ぽろぽろと涙が止まらない。渡瀬がふんわりと抱きしめ、宥めるように頭を撫でてくる。幸か不幸か、射精の波は治まってしまった。しばらく抱き合いながら、3日目の触れ合いは終わった。くたりと下を向いた陰茎からとろとろと我慢汁だけが漏れ続けていた。
4日目。
朝起きて身支度を整えた後、菊池は湧き上がってくる性欲を誤魔化すためにランニングをした。夏真っ只中にランニングは止めた方がいいと渡瀬に言われたが、部屋で二人でいると我慢ができる気がしなかった。
案の定汗だくになり、早々に切り上げた菊池は寮のシャワー室へと向かう。さっきまで暑さと疲労ですっかり消え失せていた欲求は、シャワーのお湯が肌に触れる感覚だけであっという間にぶり返した。
——今なら渡瀬にバレないのではないか。
そんな狡い考えが浮かんでくる。思わず陰茎を握りそうになる右手をなけなしの理性で押さえつけ、ぐっと拳を作り、ほぼ水のシャワーを浴びて身体を冷やした。
部屋に戻ると、ベッドに腰掛けている渡瀬が見えた。菊池が帰ってきた物音でゆっくりと顔を上げるが、どこか陶然としている。
「イオ……?」
「ヒロ……ごめん、俺、もう無理かも」
そう言って自身の下肢を見遣る。視線に釣られて菊池もそこを覗き込めば、激しく屹立した陰茎が部屋着のズボンを押し上げ、頂点は色を変えていた。ぬめって光っているようにも見える。
菊池はごくりと生唾を飲み込んだ。渡瀬も限界なのだ。もう菊池を視界に入れなくても、こんな風になるくらいに。
その光景と、欲に濡れた渡瀬の瞳を見ただけで、菊池のものも痛いほど勃起していた。
「なぁイオ、俺も夜まで待てねぇよ。今からシようぜ」
「でも、俺……」
「いいから」
理性と本能がせめぎ合っているらしい渡瀬を、ゆっくりと押し倒す。跨ったままシャツを脱ぐと、痛いほどの視線が突き刺さった。見れば、渡瀬の喉が何度も上下している。その目はもう本能に支配されていた。
喰らい尽くされそうな視線に、菊池のうなじがぞわりと総毛立つ。ピンと尖った乳首に伸びてくる渡瀬の手を遮り、見せつけるように下も脱いだ。下着と陰茎の間に我慢汁の糸が数本引いていた。二人の呼吸が大きく乱れ始める。
「ヒ、ロ……っ」
「イオも、脱げ」
服をもつれさせながら焦ったように脱ぐ渡瀬を見て、少しだけ平静を取り戻した。
今日は遂に性器や乳首への愛撫が解禁となる。が、まずはハグ。濡れた瞳でじっとこちらを見つめる渡瀬を、優しく抱きしめる。ドクドクと、壊れそうなほどの心臓の音が響いていた。
「はあっ、はあっ……あ、アラーム……」
震える指で、渡瀬がスマートフォンを操作しようとする。その手を絡め取り、驚いた顔をする彼の唇を奪った。
「ヒロ、ちょ、んん……っ」
何か言おうとする口を塞ぎ、舌の先端をチロチロと舐める。上顎を擽り、歯列をなぞる。あふれた唾液を流し込む。
最初こそ抵抗していた渡瀬は、すぐにくったりと力を抜いた。菊池の舌に応えるように絡ませ、こくこくと唾液を飲み下していく。そして、ぬかるんだ陰茎を菊池の下腹に擦り付け始めた。
「んん、イオ、そこはまだ我慢、だろ……?」
「ぁ、ごめ、ッ」
指摘をすれば、渡瀬は唇を噛んで腰の動きを止めた。しかしキスを再開するとまた揺れ始めてしまう。
仕方なく菊池が身体を起こし、震える身体に指を這わせ始めた。首、胸、腹、腿、足の指。ゆっくりと、触れるか触れないかの力でなぞっていく。
敏感なところを通るたび、陰茎はぴくぴくと震え、まるで泣いているかのように我慢汁を噴き出していた。
そして遂に菊池がそこに手を伸ばす。くちゅ、と手のひらが亀頭を包んだ瞬間、跳ねるように渡瀬が飛び起きた。
「あ゙……!ヒロ、だめだ!」
「だって、今日はここ、触っていい日なんだろ?」
「あ、待て、離せ、ッ!だめだめだめ!」
口はだめだと言っているが、身体は嬉しくてたまらないというように震えていた。ベッドに後ろ手を付いて、くん、くん、と腰を振り上げる。
「あ゙ーーー、やばい、待って!ゔー!」
「ゆっくりするから……」
「ん゙ん゙ん゙!!」
手の筒をそっと根本に向けて滑らせる。それだけで渡瀬は震える声で鳴き、悶えた。気持ちよさそうで羨ましい。早く自分もそうなりたい。でも、まだ我慢だ。もう少し。もう少しだけ渡瀬を追い込んで——。
「ん゙ーーーっ!」
手をゆっくりと動かしながら胸の突起を含む。頂点を舌全体で擦ると、手の中の陰茎が激しく脈打ち始めた。
「ヒロ、やばい、から、交代して!も、出そう!」
「ん、もうちょい……」
「無理だって、ほんと……っ、ゔあ゙っ」
渡瀬は口では抵抗しながらも、もう菊池の手を振り解こうとはしなかった。気持ち良さげに腰をゆるく振りながら、ただ菊池の手に手を重ねている。
先端から新しい先走りがこぷりとあふれた。渡瀬の腰の動きが速くなる。解放を求めて陰茎がビンっと膨らんだ。
「ぁ゙、イく……っ」
「だめなんだろ?」
寸前で手を離す。渡瀬は信じられないものを見るように目を見開いて菊池を見つめたが、すぐに泣きそうな顔に変わった。
「ゔ~~~!」
「お前が言ったんだぞ、明日までだめだって」
「ゔ、ぅ゙……」
俯いて黙り込んでしまった彼の手を取り、自分の腹に当てる。
「イオも、触れよ」
「ん……」
誘われるがまま渡瀬が起き上がり、恐る恐る身体に触れてくる。その手つきは徐々に激しくなり、キスも深くなっていった。
「はあっ、ヒロ、ヒロ……っ」
ローションを纏った指が、後孔に触れる。そこは待ちきれないと言わんばかりにひくつき、指に吸い付いた。蜜壺の中が期待でうねっている。
「イオ、挿れて、ぇ」
「……ッ!」
上目遣いでそうねだり、自分から後孔を指に押し付けると、つぷりとそれが押し入ってきた。瞬間、菊池の全身が総毛立ち、ぞわぞわとした快感が全身を駆け巡る。
「あぁぁ……っ!」
ぎゅっと身体が丸まり、ガクガクと痙攣する。たった指一本で、おかしくなりそうだった。
渡瀬の指がくいっと曲がる。狙っているのは当然、菊池の弱点である前立腺で。今そんなところを触られたら——。
「だめだめだめだめ、イくぅ……ッ!」
大きく腰を反らせて絶頂寸前の痙攣が始まった時、渡瀬は勢いよく指を抜いた。それにすら感じて身悶える菊池を、血走った目で見ている。
後孔は快感を取り上げられて狂ったように収縮していた。もうだめだ。もう我慢できない。
「ぁ、イオ、ちんこ挿れて……っ!イオのちんこで、イきたいッ」
「ヒ、ロ……!」
「ね、お願い、ここ、ここ挿れて……イオのちんこで俺のまんこ、ぐちゃぐちゃにして」
「ッぐ!」
一瞬渡瀬の瞳が揺れた。もう本能に染まっているはずなのに、まだ躊躇うのか。
「ごめん、俺、もうイオが欲しくて、我慢できねぇ……」
「はあっ、はあっ、ヒロ、ヒロ……っ!」
「イオ、好き、好き、大好き……愛してる」
「……ゔ、ゔぅ゙!」
我慢できないほどの快感と、渡瀬への愛情で感極まり、菊池がぽろぽろと涙を零しながら触れるだけのキスをした。
渡瀬が唸り、後孔にぐちゅりと熱いものが触れる。菊池が息を呑んだ瞬間、どろどろに滾ったそれが遂に捩じ込まれた。
「あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙!!」
「ゔ、お゙ぉ゙……っ」
まだ挿入されただけだ。それだけで、全身を電流が包んでいる。蜜壺が歓喜に痙攣し、渡瀬のものに絡みついて離そうとしない。
「ぁ゙、俺、イッて、る……?」
「は、は、ヒロ……っ」
どくん、と、中で弾けた感覚がした。ぽたりと頬に雫が降ってきて、何かと見上げれば、渡瀬の汗だった。苦しげに眉根を寄せ、薄く開いた口から何度も短い呻き声が漏れる。確かめるように後孔に力を入れると、隙間からぶちゅっと音を立てて何かが逆流してきた。
「イオ、も、イッた……?」
「ゔ、ゔ、ごめ、まだ、出てる……ッ」
ぎゅっと抱きしめられ、最奥に亀頭を押し付けるように深く埋められる。たしかに射精は続いているようで、中の陰茎も、身体もびくびくと跳ねていた。
好きな人が自分の中で達していると思うと、そのささいな脈動すらも気持ちがいい。抱きしめられてさらに多幸感が増す。
「はあっ、イオ、熱いの、いっぱい、出てる……」
「バカ……っ、煽んな、マジで、止まん、ねぇ!」
渡瀬が熱い息を吐きながら、ゆっくりと半分ほど陰茎を抜いていく。敏感な粘膜を彼のカリがじっくりと抉る。
ぞわぞわぞわ。
「ひ、んんーーッ!」
感じたことのない気持ちよさに、脳内がパチパチと弾ける。下肢が溶けそうな、身体がバラバラになるような、快感。菊池は自分でもわからないうちに達していた。
ぎゅうっと締まった蜜壺を、今度はゆっくりとこじ開けられていく。気持ちいい。気持ちいい。嵐のような快感がずっと続いている。自分の身体がどこかにいってしまいそうで、渡瀬に腕と脚を絡め、引き寄せた。
「イオ、イオ、イ゙ッ゙でる゙!俺、あ゙あ゙っ、ずっと、イッ、てる!!」
「俺、も……ずっと、出てるみてぇ……ッ」
「あ゙あ゙あ゙っ、ゆっくりだめ、ゆっくり、キツい……ッ、あ゙あ゙だめ、イく、イクイク……っ!ん゙ん゙ん゙!」
「はあっ!ゔーーーっ!」
とん、とん、と、軽く最奥の肉壁をノックされただけで絶頂の波が次々と押し寄せてくる。ゆっくり動かれると絶頂に達するのもゆっくりで、あまりの深い快感に意識が朦朧とする。渡瀬も何度も達しているらしく、ピストンのたびに後孔がぶちゅぶちゅと空気の混ざった音を立てながら精液を漏らしていた。
渡瀬のストロークが徐々にスピードを上げていく。後孔がぐちゃぐちゃに掻き回されて、視界が白んだ。
「ヒロ……ああっ、ヒロ……っ」
「イ、オ……!あ゙あ゙、ん゙ッ!」
これまで感じたことのない快感に、渡瀬も自分を制御できていないらしかった。菊池を労わる余裕もないだろうに、本能に任せて腰を使いながらも、瞳は真っ直ぐに菊池を見つめ、愛おしくてたまらないという顔を向けてくる。
「あ゙あ゙っ、ヒロ、好き、好きだ!ん゙ん゙ゔ!」
「イオ、俺、も、好きっ!あ゙ぁ゙ッ、だめだ、また……っ!」
二人してぶるり、と大きく身体を震わせる。心も身体も、溶け合ってしまったような気がした。
昼前に始まった情事は、意識を手放して中断し、取り戻してまた交わるというのを繰り返して、終わった頃にはもう日が沈み始めていた。
身体は鉛のように重く、色んな体液でぐっしょりと濡れたシーツが気持ち悪い。
「あっちぃ……」
いくら日が落ちてきたといっても真夏である。カラカラの喉からそれだけを絞り出した菊池に、渡瀬が頷いた。そう言いながらも、二人は抱き合ったまま離れようとしない。
「なんか……凄かったな」
「ん」
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「そんなの、俺もだし」
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「イオ……」
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「ふはっ……あんだけシたのに」
「俺もう金玉空っぽだ」
「俺も」
上になったり下になったり、ベッドの中で転がりながらじゃれ合う。
「さすがに勃たねぇだろ?」
「どうだろ。やってみる?」
「あっ、バカ……」
渡瀬の指が腰をなぞり始め、菊池がぶるりと身体を震わせた。中からどろりと渡瀬の精液が漏れる。
「う、ぁ、ザーメンが……すげぇ出したな、お前」
「そうだ、頭バグってゴムつけ忘れたんだ。ごめん」
「いいって。俺も、その、早く欲しかったし……」
「やべ、勃ったわ」
「勃つんかい」
しかしさすがにこれ以上は無理で。しばらくキスしたり抱きしめあったりして過ごした。
その後は、そのままにしておくとお腹が痛くなるからと言って、重い身体に鞭打って二人でシャワー室に向かった。案の定立てなくて、半分渡瀬に支えてもらいながら移動する。誰もいないのを確認して一緒に狭いスペースに入ったが、後孔に指を入れられて掻き出されるのが、恥ずかし過ぎて死にそうだった。
ポリネシアンセックスは、究極のセックスなのだという。「究極」とは快感が大きいということだけでなく、精神的な交わりが深くなるという意味でもあるらしい。
自分たちは最終日まで辿り着けなかったが、それでも心が溶け合ったような感覚があった。言葉、視線、表情、指の動き、キス。そしてタガが外れた時の貪るようなセックス。その全てで渡瀬の愛情を感じたし、渡瀬への愛情も深くなったと思う。
渡瀬にお姫様抱っこで自室へと運んでもらいながら、菊池はこの4日間を反芻していた。
「なぁ、イオ。いつか、またリベンジしような」
「え?マジ?」
「おう!5日我慢したらどうなるのか、興味あるしな!」
その言葉に、渡瀬がぷっと吹き出す。菊池の興味は尽きないらしい。渡瀬が頷くと、「でもしばらく我慢はいい」という菊池の声が聞こえた。
「……夏休み、毎日シたいし」
「反動エグいじゃん」
「いいだろ~!せっかく休みなんだからさぁ」
「勿論、よろこんで」
二人は笑って自室へと戻る。しばらくリベンジはできそうにない。
終わり。
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ヤられて不幸になる妹のハッピーエンドのため、リバース転生し続けている兄は我が身を犠牲にする。妹が飲むはずだった惚れ薬を代わりに飲んで。
ブラコンすぎて面倒な男を演じていた平凡兄、やめたら押し倒されました
あと
BL
「お兄ちゃん!一肌脱ぎます!」
完璧公爵跡取り息子許嫁攻め×ブラコン兄鈍感受け
可愛い弟と攻めの幸せのために、平凡なのに面倒な男を演じることにした受け。毎日の告白、束縛発言などを繰り広げ、上手くいきそうになったため、やめたら、なんと…?
攻め:ヴィクター・ローレンツ
受け:リアム・グレイソン
弟:リチャード・グレイソン
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