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番外編:ポリネシアンセックスのススメ(導入〜4日目)
しおりを挟むいわゆる優等生。クラス委員長である西義行の評価は概ねこれである。
運動は少し苦手だが、真面目で成績優秀。艶のある黒髪と、凛と鼻筋の通った顔立ちは禁欲的で、全寮制の男子校に咲いた一輪の花のよう、なんて言われてもおかしくない。しかし、神経質そうに眼鏡を上げる仕草や、あまり動かない表情、そして何よりどんな生徒にももの応じせず注意する性格のせいで近寄りがたい雰囲気が漂っており、あまり周囲には溶け込めていないのが実のところだ。
周囲のイメージとは裏腹に、当然西も無欲というわけではない。理性を働かせているだけで、本当は友達と夜更かしだってしてみたいし、一日中ゲームをしたり、おかしをたらふく食べたりしてみたい。そして——恋人とエッチなことも、してみたい。
西に恋人ができたのは数ヶ月前だ。相手は同室の高嶋光春といって、性別は男。それまでゲイである自覚はなかったが、入学してしばらくしてから隣のクラスの彼を自然と目で追っている自分に気づいた。
一見チャラく見える高嶋。しかしよく観察してみると、ノリが良いだけで、皆が敬遠するような仕事をそれとなく引き受けるような、心優しい男であることがわかった。
それまで強いと思っていた西の理性は、所詮恋愛の前では無力だった。高嶋と付き合いたい。キスしたい。触れたい。触れられたい。セックスしたい。
2年生になって、高嶋と同じクラスどころか、寮の部屋まで同じだとわかった時は、心臓が止まるかと思った。喜びに緩みそうになる顔をどれだけ我慢したか。
どうしても視界に入りたくて、話したくて、必要以上に口うるさく接してしまう。これでは高嶋に鬱陶しいと思われるとわかっていても、彼を見ると止められない。
止められなかったことは、他にもある。それは、高嶋が部活に行っている隙を狙って、彼のベッドでするオナニーだ。彼の枕に顔を埋め、布団を股に挟んで擦り付ける。持ち前の熱心さで色々と勉強し、後ろも開発した。
同室なのを利用して、使用済みの下着を勝手に借りたりもした。その下着、枕、布団まで、全て彼の匂いが濃く漂っている。それを鼻腔いっぱいに吸い込みながら行うオナニーの快感に、西は狂っていった。毎日毎日、高嶋を思い浮かべて、精液を吐き出し続けた。
そんな日々を送り始めてしばらく経ったある日、遂に恐れていたその時はやってきた。そう、本人に見つかったのだ。忘れ物を取りにきた高嶋に、彼の下着を嗅ぎながら、ベッドで腰を揺らしているところを、見られてしまった。
軽蔑されて当然だった。なんなら、彼にひどいトラウマを植え付けたとしてもおかしくない。なのに、彼は西のことを可愛いと言って、優しく触れてくれた。二人で触れ合う快感は、オナニーのそれとは比べ物にならなかった。
終わってから、「好きになっちゃったかも。付き合って」と言われた時は、やっぱり夢だったのかと思ったけれど、何度頬をつねっても目の前には高嶋がいて。人生でこんなに嬉しかったことなんてなかった。
そうして二人のお付き合いは始まった。誰にも言えない、秘密の、二人だけの関係。
「ごめん。今日吉澤らにバレちった」
「……え?!」
食事も風呂も歯磨きも、もちろん宿題も全て終わらせてから、二人で一つのベッドに入る。毎日の甘い時間。
「いや、相手が義行ってのは言ってないけど、彼氏いるってバレた。もしかしたら渡瀬あたりは義行のことも察してるかも。アイツ勘がいいから」
「ま、待って……それ、大丈夫?」
「まぁ、あいつらそういうのだけは口硬いし、大丈夫でしょ」
あっけらかんとそう言う高嶋。吉澤や渡瀬というのは、高嶋が普段クラスでつるんでいる友達だ。もう一人、菊池という男を入れて4人でよく話している。
この様子だと、高嶋が心無いことを言われたり疎遠にされたりすることはなかったようだ。だが、正直西は一抹の不安を覚えた。いくら口が硬いと言っても、どこから噂が広まるかわからない。自分たちの関係が大々的に知られてしまうと、さすがに同室を解消されてしまうだろう。秘密にしているのは、他でもなく二人が一緒にいられる時間を増やすためなのだ。
しかし西の不安をよそに、しばらく経っても二人の秘密は広まらなかった。なんなら、高嶋に男がいるという話すらも聞こえてこない。本当に彼らは他言しなかったらしい。
自分の中にある高嶋の友人達のイメージを更新しなければならないな、なんて思いながら日々を過ごし、学校は夏休み期間に入った。
「なぁ義行、ポリネシアンセックスって、スゲェらしいんだけど」
「な、なに……?」
夏休みに入ってしばらくしてから、唐突に高嶋がそう言った。
「ポリネシアンセックスって、究極のセックスなんだって」
「ポリネシアって、ポリネシア地域の?」
「多分そう。めっちゃ気持ちよくて、愛情も深まるって。俺ら別に今もラブラブだけど、そんな話聞いたら気になるじゃん?」
「……っ?!」
ニヤリと笑う高嶋。付き合い始めて数ヶ月、まだ視線が合うだけで頬が熱くなるのに、甘い高嶋なんて心臓に悪すぎる。
「5日かかるから、夏休みちょうどいいなって思って。なんか、友達のカップルもチャレンジするらしいし」
友達、と聞いて吉澤らの顔が浮かぶ。さすがに、違うだろうか。
いや、待て。今何か、大事なことを——。
「5日っ?!」
「あ、うん、5日」
5日かけてするセックス?そんなもの聞いたことがない。頭の上にハテナマークを飛ばしている西に、高嶋が自分のスマートフォンを操作して、その画面を見せた。
——————————
1日目。
まずは裸の状態で30分間見つめ合います。30分経ったら相手の身体の体温を感じながら抱きしめ合い、1日目は終了です。
ここではただ抱きしめ合うのではなく、お互いの温もりを感じ気持ちを通わせることが大切です。
2日目。
2日目にはキスが解禁!性器、乳首以外で脇や耳、背中など相手の身体全体に軽いキスをしていきましょう。身体に触れる際はキスと同様、性器を避けた素肌へのフェザータッチと愛撫を徹底してください。
3日目。
この日はよりディープなキスが許される日です。1、2日目より深く触れ合える喜びを感じながら、激しく舌を絡ませ合ってみましょう。
4日目。
ここにきてようやく性器や乳首への愛撫が解禁されます。とはいえすぐに性器を触り始めるのではなく、耳や足などの性器から離れた場所から徐々に時間をかけて触っていくことが重要です。
もちろん挿入やフェラなどは絶対我慢。焦らしに焦らしを重ねたボディタッチに、お互い生殺し状態になること間違いありません。
5日目。
ついに挿入日がやってきました。しかし、焦ってはいけません。ここでもグッとこらえて、4日間行ってきた愛撫をたっぷり1時間行います。その後、我慢してきた性器への愛撫も解禁します。
しっかりと事前準備ができたら、いよいよ挿入です。ゆっくりとナカへ挿入したら、相手に自分の形を覚えさせるように30分間はピストン運動を我慢します。この時、ディープキスを交わしたり、肌に触れあってより性感を高めてください。
30分が経過し、興奮がピークを迎えたところでゆっくり動きます。ゆっくりしたピストン運動と休憩とを交互にはさみながら、40分間ほど行為を行いましょう。体位は、キスや抱擁、ペッティングがしやすい座位や、激しい動きがしにくい側位がオススメです。激しい動きをせずとも、十二分に高まったカラダによって、とてつもない多幸感と快感に包まれ満たされることでしょう……。
——————————
「ふ、あ……」
文章を追っていくだけで、胎の奥がじゅんと湿った気がした。
「な?めっちゃ気持ちよさそうだろ?」
ニコニコと笑う高嶋を見て、俯く。つまり、ポリネシアンセックスとは、究極の焦らし、スローセックスというわけだ。
「……や、やる」
「ふふ。委員長のエッチ」
「~~~~~っ!」
高嶋は、あえて西に羞恥心を抱かせたい時に「委員長」と呼ぶ。狙いどおり一層恥ずかしくなって、両手で顔を覆った。
その話をした翌日からポリネシアンセックスを開始し、今日で2日目である。
初日の昨日は、30分のタイマーをかけて、調べたとおり見つめあった。高嶋が、「肌が透き通ってる」とか、「乳首ピンクでツヤツヤしてて美味そう」とか言ってくるのが本当に恥ずかしかった。
仕返しに、「腹筋割れててかっこいい」「笑ってる顔が好き」「唇もエッチで好き」「腕も筋肉ついててかっこいいから抱きしめられるとドキドキする」などと立て続けに言ってやったのだが、少し照れたくらいで、西ほどダメージは受けていないようだった。
最後に抱きしめあって二人で寝たのだが、お互いに裸でくっついているのに、キスもセックスもしないのが不思議だった。でも確かに今まで裸でじっくり見つめあうことなんてなかったから、恥ずかしかったけれど、また改めて高嶋に恋をしてしまったような、変な高揚感があったと思う。
そして今日はキスができる。全身に軽く触れることもできる。
「じ、時間はまた30分でいいのか……?」
「んー、確かに書いてなかったな。でもまあ我慢できなくなったらヤだし、今日も30分にしとくか」
「そ、うだな」
高嶋のベッドに二人で座り、見つめ合う。高嶋の視線が、いつもより熱い気がした。
ゆっくりと近づき、どちらからともなく唇を重ねた。ちゅ、ちゅ、と、もどかしいほど軽いキス。だんだんと余裕がなくなってきて、もっと深く絡めたいと勝手に唇が開こうとする。必死に堪えるが、キスの間隔がどんどん短くなってきて、息継ぎをするのも忙しい。
「んっ、んっ」
身体の縁を高嶋の指がなぞる。耳を触られて、ぴくりと身体が跳ねた。高嶋の唇の端が上がる。
「んんっ」
笑うな、と、少し睨めば、高嶋の目が細くなった。どうやら興奮しているらしい。彼はぺろりと自分の唇を舐めた後、敏感な耳にもキスしてくる。その間も手は脇腹の際どいところを撫でていて、びくびくと身体が震えた。
「委員長の気持ちいいところ、いっぱい見つけような」
「はあっ……バカ、光春、ぅ!」
身を捩っても、簡単に押さえ込まれてしまう。彼の手は、言葉どおり西の性感帯を見つけようと隅々まで撫でた。腰に近い脇腹、臍の下、太腿の外側、足首……自分でも知らなかった敏感なところを見つけて、甘く優しくしつこく触れる。
「ひゃっ、あぁ……っ!」
「二の腕の内側も好きなのかぁ。かわい……」
「知らな、知らないっ」
こんなの、責められる側が不利すぎる。西はイヤイヤと頭を振り、高嶋の手から逃れようと藻搔いた。
「暴れんなって……ほら、キスしよ、キス」
「んん……」
たったキス一つで全てを許してしまう自分が嫌だ。深くしたいのを堪えながらおままごとのようなキスに夢中になる。
もっと。もっと触ってほしい。
さっきまで逃げようとしていたことも忘れ、うっとりと高嶋を見つめる。彼もまた熱に浮かされた瞳を西に向けていた。
ピピピピピピ……。
「あ……」
「残念。今日は終わり」
タイマーの音がして、高嶋の身体が離れた。物足りなくて、肌がじりじりと焦げ付くようだった。
「はい、ぎゅー」
「んん」
両手を広げた高嶋の腕に身を寄せ、優しく抱きしめ合う。これが触れ合いの終わりの合図だ。寂しい。口では言えないそんな想いを、彼の胸にすり寄せた頬で表した。高嶋は後頭部を撫でながら西の顔をそっと掬い上げ、もう一度ちゅっとキスしてくれた。
「光春……」
「そんな顔で見るなよ……最後までしたくなるだろ」
「俺も、したい、のに……」
「あーークソ。だめ、我慢我慢」
「うん……」
せめて同じベッドで寝たい、と俯いて言うと、高嶋の喉からぐぅっという不思議な音が聞こえた後、掛け布団をかけてくれた。二人でそれにすっぽりと収まり、目を閉じる。身体の芯は火照ったままだが、前より高嶋との距離を近く感じて、なんだかとても幸せだった。
3日目。
昨日したくてたまらなかったディープキスができる。そう思うと、一日中高嶋の唇から目が離せなかった。
「義行、ちゅーしたい?」
「……したい」
そんな西の視線などバレバレだったようで、夜布団に入った途端に濃厚なキスが始まった。西は頭ごと抱え込まれ、舌を吸い上げられる。その性急な様子は、余裕そうに見えた高嶋もこの時間を待ち侘びていたことを示していた。
歯列をなぞられ、上顎を撫でられる。西の舌が快感に驚いて奥に縮こまってしまうと、まるであやすように優しく唇を食まれた。
「ん……っ、う」
「はぁ、義行、義行……」
口の端から唾液を零しながら、西も熱いキスに応える。くちゅくちゅと濡れた音が頭に響いて、茹ってしまいそうだ。
そうしているうちに、高嶋の手が動き始める。幾分昨日より力が入ったその手が、胸の危ういところを掠めた。
「ぁ、だめだ……っ」
「うん、うん、わかってるから」
わかっていると言いながらも、何度も何度も突起の周りをくるくると撫でる。そんなことをされれば、焦れておかしくなりそうだ。その指で摘まれたい。思いきり転がしてほしい。
「あ~、義行の乳首、ピンピンで可愛い……」
「だめ、あんま、強くするな……っ」
「うん……クッソ、早く触ってやりたい」
色気を孕み、低く掠れた声が耳にこだまする。それだけでぶわりと全身に熱が広がった。
高嶋はなんとか胸への執着を抑えたのか、昨日見つけたばかりの西の性感帯を辿っていく。その手が動くたびに、優等生という殻が剥け、西の本性が露わになっていくようだった。
「ゔ~~~!はああっ」
「撫でられるだけでイイ?腹、力入ってる」
「ん゙ん゙ッ、耳っ、声、きもち……ッ」
「何しても気持ちいいんだ。委員長、やらし」
「うああぁぁ……っ」
高められたまま焦らされたせいで、昨日より遥かに敏感になっている。どれだけ軽いタッチでも、四肢は引き攣り、シーツに深い皺を寄せた。
腰を撫でられながら脇腹や臍の下を舐められると、痛いほど勃ち上がった陰茎からぴゅっぴゅっと我慢汁が噴き出て、高嶋の顔にかかる。彼はそれを嫌がることもなく、むしろ指で掬って美味しそうに舐め取られた。そのまま陰毛にまで舌を這わされる。
「はあっ、義行、ぬるぬる……」
「ぁ、そ、なとこっ」
止めさせたくて西が高嶋の髪を掴むと、顔を上げた彼の鋭い視線が全身を貫いた。その目が、手が、西を食い荒らしたいと言っている。その姿を見ただけで、絶頂しそうだった。
「あぁぁぁ……っ、光春、みつ、はるっ」
「んー?委員長、たまんなくなってきた?」
「んぅ!ぁ、も、ちんち、ん、さわってぇ」
「だめでしょ」
「やぁぁぁっ」
とにかく頭の中は高嶋でいっぱいで、全身が快感を欲して焼け焦げそうだった。何も取り繕えない。剥き身の西は、高嶋の手を陰茎に引き寄せ、腰をくねらせてねだった。
「俺の、ここ、ちんちんっ、先っぽくちゅくちゅして、ぇ」
「だめだって。ちんちんは明日」
「やだぁぁ!光春、光春、んん、触って、触ってっ」
「だーめ。真面目な委員長はどこいっちゃったの」
「も、我慢できないぃ……」
高嶋もすっかり勃起して、先端をぬるつかせているのに、西がどれだけねだってもキスしかしてくれなかった。せめて、と、必死に高嶋の身体に陰茎を擦り付けようと腰を突き上げるが、上手く押さえ込まれてしまう。次第に西の目は虚ろになり、腰を振ることしかできなくなった。
「義行、エッチだなあ……っ」
「んっ、んっ、光春、好き、好きッ」
「俺も好き」
「んんんんッ」
耳元で囁かれて、陰茎からまたぴゅっと先走りが飛び散った。陰嚢がきゅんきゅんと上がって、精液を送り出そうと意気込んでいる。
「は、ぁ、光春、イき、そぉ……っ」
「んー?!ああだめだめ、コラ」
「んぃぃぃっ」
正直に申告すれば、高嶋が陰茎の根本をきつく絞り、もう一方の手で陰嚢をぎゅっと押し下げた。とろりと溜まっていた我慢汁があふれるが、鈍い痛みで射精感が引いてしまう。西が腰を振りながら泣き喚いた。もう本当に限界なのだ。
「イくーーーっ、もうイく、イクイクっ」
「だめだって。じゃあ今日はここまでな」
「嫌だぁぁッ!光春の、バカぁ!もう、挿れていいから!好きなだけヤッていいからぁ!」
「あーー、そのおねだりはたまんねぇけど、言われなくても最終日にぐちゃぐちゃにしちゃうと思うから」
「うぁぁぁ……っ」
最後に耳にちゅっとキスを落とされた。そのまま熱の籠る身体を拭かれ、抱き込まれる。まだ敏感なままの肌を、高嶋の匂いとあたたかさに包まれて寝るなんて、多分無理だ。先にすうすうと彼の寝息が聞こえてきて、西は不貞腐れたのだった。
4日目。
朝イチで走りに行くと言って出て行った高嶋を見送り、西は夏休みの宿題を片付けようと机に向かっていた。が、一夜明けても身体はまだ燻ったままで、座っている椅子に陰嚢を擦り付けるように腰が揺れてしまう。
「はあっ、光春っ、光春……っ」
椅子がガタガタと鳴る。とてもじゃないが勉強なんてできそうになかった。
「おーい、義行」
「ふあ……っ?!」
夢中になりすぎて、高嶋が帰ってきたことにも気づかなかったらしい。後ろから羽交締めされて動きを封じられる。
「俺はランニングで一生懸命気を紛らわせてんのに、何一人でオナってんの」
「ぁ、でも、ちんちんは、さわってな……」
「バーカ、今の義行ならタマだけでもイけるかもしんないだろ」
先程までの余韻で、陰嚢がじーんと痺れている。確かに、このまま続けていれば達していたかもしれない。高嶋の顔を見て少しだけ冷静になった西が、羞恥心に顔を俯けた。
「夜になったらいっぱい触ってやるから、今は俺の宿題手伝って」
「お、おい……宿題は自分で……」
「やるやる。やるけど、わかんねぇとこは教えて、な?」
「……うん」
あまりにも普通な様子の高嶋にちらりと目を遣ると、下肢にはテントができていた。高嶋も素知らぬ顔をして欲情しているのだ。西はこくりと生唾を飲み込んだ。
そして夜。高嶋から「今日は中も触るから綺麗にしてきて」と言われ、念入りに準備をしたために、何もしていないうちから西の身体はすっかり仕上がっていた。
高嶋と付き合うまで、排泄でしか意識したことのなかったそこは、今やすっかり性器となっている。
「は、は……」
「お尻でイかなかった?」
「う、ん……っ」
褒めて褒めて、と、まるで尻尾を振っているような表情の西に、高嶋がクスリと笑って頭を撫でた。
「準備してくれてありがと。がんばったな」
「ん……!」
褒められるだけで胸から全身に喜びが広がっていく。後孔にもうずうずと響いて、自分が女だったら愛液を垂らしていたと思う。
「んじゃ、やるか」
「んん、はやく……」
今日は性器にも触れてもらえる。だが、高嶋が与えてくれるのは軽いキスと、性器以外への戯れのような愛撫。しかも動きは相変わらずスローで、手も唇も優しく柔らかだった。
「んん、ぅ……っ」
もっともっとと、西の身体がくねり始める。高嶋の手に押し付けるように胸を反らせては、突起の周りをゆっくりなぞられただけで腰を震わせた。
「光春……もっと、ちゃんと……」
「んー……もうちょい」
「や、ぁ」
焦れて焦れてたまらない。自分でも怖いぐらいに敏感になっているのがわかる。早く、早く、触ってほしい。
肌に当たる高嶋の吐息は熱かった。間違いなく彼も興奮しているはずだ。西は早々に理性を手離し、高嶋の首に腕を回した。そして、潤んだ瞳で顔を見上げる。
「光春……おっぱい舐めて、ちんちん、触って」
「はぁっ……俺がその顔に弱いってわかってやってんだろ」
「だ、め?」
「もー……暴走しないように、セーブしながらやってんのにさぁ」
「やだ、セーブ、するな」
ダメ押しとばかりに顔を引き寄せ、西からキスをすると、高嶋がぐうっと呻いた。彼の腰も、くん、くん、と揺れているのが見える。
西は首に回していた腕を外し、目の前の高嶋の身体をそっと撫でた。自分がしてほしいように、焦らすことなく、胸の突起をさすり、腹筋を辿って、下生えに指を絡める。高嶋は息を呑んで身を震わせた。
そして、熱く滾っているそこに手を伸ばす。優しく包むと、くちゅっという濡れた音と、高嶋の呻き声が上がった。
「あんま、強く、すんな……ッ」
「うん、うん。ゆっくり、する」
「はああぁぁ……うわこれ、や、べぇ……っ」
ゆっくりと亀頭を撫で、緩い指の輪でカリ首をひっかける。高嶋はたまらなさそうに首を反らし、唇を噛み締めていた。
高嶋が西の作った手の筒に腰を打ちつけ始める。ローションもつけていないのに、手の中は彼の先走りでぬかるんでいた。激しく腰を振りたいのを堪えるように、ぐっちゅ、ぐっちゅ、とゆっくり腰を振る。
「あぁっ、義行、きもちい、はあっ、やばい」
「光春、光春、ッ、おれも、ぉ」
「ん……イくのは、我慢、な」
「うん……ッ」
やっと、やっと、触ってもらえる。待ち侘びたと震えているとろとろの陰茎を、高嶋がそっと握った。瞬間、稲妻が落ちたかのような衝撃に襲われる。脳みそからつま先まで、びりびりと快感が走り、思い切り弓形にのけ反った。
「ああぁぁぁッ!!」
「うわ、あ!」
思わず高嶋の陰茎を包んでいる手にも力が入って、彼もびくびくと身体を痙攣させる。
はふ、はふ、と浅い呼吸を繰り返し、西もなんとか射精をやり過ごした。しかし、すぐそこに絶頂が見えている。
「み、光春、動かさない、で……っ」
「動かしたらイッちゃう?」
高嶋の問いに必死に頷く。
「そう言われると動かしたくなるけど……」
「だめ、出る、ほんとに、出ちゃうっ!」
「ん、わかった。じゃあこっちな」
そう言って、彼は尻の割れ目に指を這わせた。びくっと身体が震え、期待に後孔がきゅんと収縮する。
「はは、ひくひくしてる」
「んぅ……っ」
西はねだるように手に包んだ高嶋の陰茎を撫でた。気持ちよくするから、気持ちよくしてほしい。そんな想いを込めて、優しくくちゅくちゅと揉んだ。
「ゔ、ッあ゙」
「光春も、きもちい?」
「すっげー、きもちい……腰震える、わ……っ」
「んん、可愛い、光春……」
眉根を寄せて快感に耐えている高嶋が愛おしくて唇に吸い付いた。また彼の腰が揺れ始める。鈴口を割り、我慢汁を指で掬って亀頭に塗りつける。苦しげな呻き声を飲み込み、そのまま裏筋と亀頭を指で磨いた。
「ゔ、ッく、そ……っ」
反撃とばかりに、高嶋の指がつぷりと蜜壺に沈んだ。一気にぞわぞわとした快感が背中を駆け上ってくる。
「義行、緩められる?」
「ぁ、無理、無理だ……っ」
「ん、じゃ、キスしよ」
「ん、んん」
蜜壺はとろとろに蕩けているが、待ち望んでいた侵入を逃すまいと絡みついて離さない。たった指一本なのに、まるで処女のようにきつく締め付け、絞り上げていた。
そんな西の意識を逸らすためだろう。高嶋が軽いキスをしてくれる。何度も繰り返すうちに、少しずつ緩んだ後孔を彼の指が進んでいく。
「は、ッあ、ああぁ……」
「前立腺は、触んねぇように、ッするな?」
「ゔぅ……」
高嶋が危ぶんでいるとおり、きっとそこに触れられれば一瞬で達してしまうだろうと思う。それでも触れられたかった。思い切り揺すって、抉って、捏ねて欲しかった。
その気持ちを表すように西の腰が揺れ、高嶋の指をイイところに当てようとする。しかし高嶋は頑なにそこを避けた。辛くて辛くて、思い切り後孔をぎゅっと引き締める。そうすれば少しだけ圧迫されるのだ。
「ふ、ああぁぁ……っ」
「義行、緩めて。イッたらダメ」
「ゔゔぅ゙……っ」
頭を撫でながらそう言われて、必死に力を抜こうと深呼吸をする。どれだけ理性を繋ぎ止めても、身体は快感に貪欲で、なおも高嶋の指に柔肉を纏わり付かせていた。
イッたらだめだと言うくせに、彼の指は蜜壺をほぐし始める。にち、にち、と中を抉る音が響いた。
「ゔ~~~!」
「気持ちいいよな、けど、がんばれ」
「ゔっ、ゔぅ゙ッ!あぁっ、光春、みつはる、ッ!」
「ん、よしよし」
焦れた身体を、まだ燻される苦しみに、西の目からぽろぽろと涙があふれる。もっとぐちゃぐちゃにしてほしいと思う反面、そんなことをしたらこんなに二人でがんばった4日間が無駄になってしまう、という気持ちもあった。
ずっと目の前に絶頂がチラついているのが辛い。どうせそれに手が届かないのなら、いっそ刺激しないでほしいとさえ思う。それでも高嶋の指は止まらない。ゆっくり、ゆっくり、蜜壺を捏ねる。
「みつは、る……っ、も、もう、終わり、終わりっ」
「んー……」
高嶋の吐息が頬を掠め、また唇が重なった。途端、燻っていた熱が一気に迫り上がってくる。西は口を離し、必死に頭を横に振った。
「無理ッ、だめ、だめだめッ!イく、イくッ、ん゙ぅぅぅッ!」
「ん、抜くぞ」
抜かれる刺激も西の背中を押した。身体が絶頂に向けて走り出す。なんとか堪えようと、何度も足でシーツを蹴った。
「義行、我慢できるよな?」
「ぐぅぅぅぅ……っ」
滲む視界で、高嶋がじっと見つめてくる。ずるい。こんなに限界なのに。こんなに追い詰めたのは、高嶋なのに。
それでも西は大好きな高嶋の言うことを聞いてしまう。両手で枕を握りしめ、背筋を反らし、腹に力を入れてやり過ごす。そして、ぴゅくっと細く我慢汁を噴き出しただけで、なんとか波を超えた。
「はっ、はあっ、はあっ!」
「我慢できたな、えらいえらい」
「ふぅぅっ、も、無理、ぃ」
「ん。もう時間だと思うけど、最後にもっかいキスしよ」
震える身体を優しく抱きしめられ、吐息ごと唇を奪われた。角度を変え、何度も何度も軽いキスを重ねる。積もった欲望を吐き出したいと、二人は無意識に互いの身体をずっとまさぐっていた。
そうして、熱の籠った身体を持て余しながら4日目の夜が更けていく。明日、目が覚めれば、ついに念願の5日目、最終日だ。
番外編、前編終わり。つづく。
ポリネシアンセックスの手順の説明については、以下のページの一部を引用しました。(半角から全角への変換、絵文字の省略を行なっています。)
快楽のさらに向こう側へ……!ポリセクの魅力を徹底調査!!【BL】ちるちる【腐女子】 https://blnews.chil-chil.net/newsDetail/25298/
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