究極のポーター 最弱の男は冒険に憧れる

長野文三郎

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第12話 初めての迷宮

 ネピアは大きな街だ。
王国西部最大の都市というのは伊達じゃない。
人口16万5千人。
広さは市街地だけでおよそ65k㎡ある。
迷宮はそんなネピアの街の真下にあったが、その広さは102k㎡と市街地を越える広さを誇っていた。

 ついに俺は迷宮に入った。
緊張で押しつぶされそうだがパーティーはベテラン3人に新人7人の大所帯だ。
これだけの数がいると多少は安心できる。
やはり初心者講習まで迷宮に入るのを待ってよかった。
こんな暗いところに一人で入るとかあり得ない。
そう、迷宮の中は暗いのだ。
それぞれがカンテラや光魔法で光源を作り出して進んでいる。
ゴブのスキルの「灯火」も大活躍だ。
眼が光って通路を照らしてくれている。
だが少しばかり光量が足りない。
自動車のハイビームくらいの光量があればいいのに。
スキルレベルが上がればもっと明るくなるのだろう。

 迷宮の壁にクライドの声が反響している。
「先ほど配った地図で常に現在地を確認しておけ。ただし地図を見ている間でも周囲への警戒を怠るな。これからは自分が探索する階層の地図は頭に入れておくこと。こいつが迷宮で生き残るコツだ」
 先行していたボニーが戻ってきた。
彼女は斥候役のようだ。
「この先の小部屋にスライムが沸いてるそうだ。初心者の戦闘訓練にはちょうどいいだろう」
俺たちはクライドたちの後をゾロゾロと移動した。
部屋の前につくと再びクライドが口を開く。
「ここがスライムの沸いている小部屋だ。中には10匹以上のスライムがいる。スライムというのは迷宮のどの階層にもいる魔物でな、迷宮の掃除屋と呼ばれている。死体、糞、あらゆる生ごみを食べるのがスライムという魔物だ」
益虫みたいだな。
「それはさておき、迷宮で扉を開ける時は気を付けることだ。魔物がいてすぐに戦闘になることもあれば、罠が張られていることもある。ボニーは斥候のスペシャリストだ。偵察や罠の解除、鍵開けなどもできる。戦闘要員だけでなくこういった人材も迷宮では必要になって来る」
あ、ボニーさんが照れてる。
「若いうちはとかくパーティーメンバーを戦闘力重視で選ぶが、どのような場合でも対応できる柔軟性も大事だぞ。それでは扉を開けるが、ロットさんよろしいですか?」
クライドに促されてずっと黙っていたロットが皆をジロリとみまわす。
「お前ら、死ぬんじゃねぇぞ」
迷宮内でロットさんの命令は絶対である。
「はい!」
ボニーが扉を開いた。

 30畳ほどの部屋にスライムが十数体いる。
スライムに機動性はなくこちらから近づかなければ奇襲をかけられることはない。
その姿は陸にあがったクラゲを思わせる。
「まずは我々が少し間引くので、お前たちは見学していてくれ。後でお前らにも闘ってもらうからな」
教官たち3人はそれぞれ武器を手にした。
クライドもボニーも手慣れていて、なかなか強かったが、ロットは格が違った。
彼の剣の一振りでスライムが真っ二つになったのだ。
まさに刹那の出来事だった。
俺たち新人は声も出せずにそれを見ていた。

興奮したようにメグが話しかけてくる。
「見ました?! ロットさんの戦い。凄かったですね!!」
「ああ、見てたけど見えなかったよ」
「そうですよねぇ。離れて見てるから、まだ動きを目で追えますが、対峙していたら知らない内に切られちゃってるんでしょうねぇ」
いや、離れて見てたけど動きがわからなかったぞ。
ロットさんを鑑定したかったが堪えた。
最近知ったのだが人間を鑑定することは違法なのだそうだ。
もしばれたら鑑定した当人に殺されても文句は言えない。
普通は衛兵に引き渡されて、3年間の強制労働を強いられる。

 残り七匹になったところでクライドが声をあげた。
「よし。次はお前たちの番だ。一人ずつやってもらうからな」
一名ずつ前に出て戦闘を開始する。
みな緊張しているようだったが、たいした怪我もなくスライムを倒していく。
「次、ジャン。前に出ろ」
「よし。やっと俺の番か」
ジャンが嬉しそうに前に出る。
あいつは見た目通りの脳筋だな。
だが、剣を構えた姿は様になっていた。
日本の剣術で言うところの八双の構えというやつだ。
剣を立てて右手側に寄せ、左足は前に出ている。
構えた腕が正面から見ると「八」の字の形をしている。
ジャンはそのままスライムの方へ素早く踏み込むと、右上から斜めに切り下げた。
他の新人と比べると腰が少しも引けていない。
その証拠にジャンの剣はスライムを深く切り下げ、一撃で絶命させていた。
「へへっ、どうよ!」
意気揚々とジャンが引き上げてきた。
次はメグの番だ。
メグの武器は巨大なメイスだ。
華奢な体のどこにそんな力があるのか、メグはメイスを大きく振りかぶって力任せに打ち付けた。
グシャッと音がしてスライムがつぶれる。
ミンチにされたスライムがあたりに飛び散っていた。
「最後にイッペイ。前に出ろ」
言われてつい前に出てしまった。
ここはゴブにやらせるべきだった。
だが今更後ろに下がるのはちょっとみっともない。
ちらっと振り返ったときワクワクした瞳のメグに手を振られてしまった。
ここは引けないところだ。
 俺はホルスターからハンドガンを抜き両手で構えた。
無反動なのでそんな必要はないのだが演出は大切だ。
動きはかつて映画で見た特殊部隊の隊員を参考にしている。
腰を落として3mの距離まで近づく。
この距離なら絶対にはずだない。
切り替えレバーは3点バーストにしてある。
一回トリガーを引くと弾が3発発射される仕様だ。
俺はゆっくりと引き金をひいた。
「ズババッ!」
うん、死んでるな。鑑定で確認して俺は踵を返した。
「おっさん、あれでおしまいか?」
ジャンがおっさん呼ばわりしてくる。
他の新人も何が起こったのかわからない様子だ。
俺のハンドガンは火薬を使わないせいで音が小さいし火も吹かないから派手さがまるでない。
弾はスライムを貫通していたのでスライムが破裂することもなかった。
何が起こったか理解できなくても仕方ないだろう。
「なんというか、地味な魔法だな」
クライドがこういって、みんなはあれが魔法だったのかと納得する。
魔力は使うが魔法かと言われれば違うと言わざるをえない。
だが説明するのは面倒なので、ここもあいまいな笑顔でやり過ごした。
「実用的な武器だ」
ロットさんがボソッと呟いた。
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