究極のポーター 最弱の男は冒険に憧れる

長野文三郎

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第65話 釣りキチ一平

 時間が経過するごとに、狩場は人が多くなってきた。
みんな考えることは同じだ。
第二階層でFランクの魔石が手に入るなら挑戦してみようと、中級未満のパーティーが集まってきている。
騒然としてきたエリアの中で、俺は素材錬成と道具錬成にいそしんでいた。
地表から鉄を集め巨大な釣り針を作っているのだ。
これに先ほど獲ったウサギ肉の余りをつける。
釣り針にロープを結び付けて準備は完了だ。
「よしジャン、その棒で肉を巣穴の奥に押し込んでくれ」
「こんなので蛇が釣れるのか?」
みんな懐疑的《かいぎてき》だ。
「他に手もないですからやってみましょうよ」
「そうだ、そうだ! クロはわかってるねえ!」
他の三人は時間の無駄的なオーラを出しつつ、釣りのセッティングに入った。
巣穴の奥に餌を押し込んで五分が経過したが何の反応もない。
「全然ダメじゃねえか!」
最初にジャンが飽きた。
六分経過。
「寒い…」
ボニーさんは焚火の所へ移動してしまった。
おかしい、餌に気が付いてないのか? 
そんなことはあるまい。
奴らの嗅覚は犬以上だ。
餌には絶対に気が付いているはずだ。
七分経過。
「お茶を淹れてきますね」
メグも戦線を離脱した。
残るは俺とクロだけだ。
クロの優しさが身に染みるぜ。
8分を経過して俺もだんだん焦ってくる。
「くそ、ポイントを変えるか……」
「まだです。ここは我慢比べですよ……」
あれ? 
クロの目が爛々と輝いている。
この子、優しさで付き合ってくれてるんじゃなくて、普通に釣りが好きなのね。
その時、犬人族のクロの鋭敏な鼻がひくりと動いた気がした。
手に持つロープに振動が伝わってくる。
一拍おいた次の瞬間、ものすごい勢いでロープが引っ張られた。
「ヒット!」
クロの美しいボーイソプラノが響き、仲間たちが慌てて駆け出してくる。
大蛇も逃げようと必死でもがいているらしい。
ものすごい力だ。
「メグさんは待機して下さい。奴の頭が出たらメイスで攻撃を!」
「わかったわ!」
うん、クロちゃんナイス仕切りだ。
いつもは見せないアグレッシブさがある。
眠れるオーガが目を覚ましたのか!? 
ちらっとクロのズボンに目をやったが平常運転だった。
そりゃそうか。
狩りをしながらおっきくしてたらかなりやばいよな。
俺、クロ、ジャン、ボニーさん、ゴブの5人で引っ張る。
ほどなく出てきたネピア・サイドワインダーの頭をメグが一撃で粉砕した。
ついに一匹目ゲットだぜ。
 残念なことだが、こいつは魔石をドロップはしなかった。
さすがにそこまで運がいいと、かえって怖くなってしまうからオッケーだ。
この調子で狩りを続ければいつか魔石は手に入るだろう。
「うし! 次やるぞ次!」
一番に飽きたジャンもやる気を見せている。
「イッペイさん。釣り針の形を変えてもらえませんか? こんな風にここをもう少し大きなカーブにして」
地面に図を書いて説明するクロの目が真剣だ。
「それと餌になる肉はもう少し小さい方がいいと思います」
この子は本当に釣りが好きなのね。
俺はクロに言われるまま、釣り針を改良し、ロープに細いワイヤーを入れて強度を上げたりした。
 いくつかの試行錯誤《しこうさくご》の後、クロが選ぶポイントに餌を突っ込むとまさに入れ食い状態になった。
普通に戦闘するよりずっと楽だ。
穴から引き出したところへ、頭蓋《ずがい》に渾身《こんしん》の一撃を叩き込むだけなんだから。
襲われたらもっと大変だったと思う。
動きが早いので俺の銃弾は当たらなそうだし、自由に動かれたら急所を狙うのは難しい。
毒の心配だってある。
俺たちはこの釣り出し方式で次々とネピア・サイドワインダーを狩っていった。
そしてついに9匹目にして魔石がドロップする。
Fランクの魔石は濃い緑色をしたエメラルドのようだ。
大きさはGランクと大差ないが、そこに籠っている魔力量がまるで違っている。
「それじゃあ、この魔石は俺が買い取らせてもらうよ」
俺は間違いがないようにその場でメグに支払いを済ませる。
「三万リム確かに受領《じゅりょう》しました。イッペイさん、すぐにそれを錬成しますか?」
「うん。ちょっと待ってもらっていいかな。材料は用意してきてあるんで、5分くらいで錬成できるから」
俺は皆に待ってもらって錬成を開始した。
作るのは新型ゴーレムだ。
俺は魔石と素材に手をかざし魔力を込めていく。
さすがFランクの魔石だいつもより大量の魔力がスムーズに入っていく。
新型ゴーレムが青白く発光し、迷宮の床の上にあらわれた。
「それって指輪か?」
背中の後ろから覗き込んでいたジャンが尋《たず》ねてくる。
「ああ。だがこれは装備品じゃないんだ。こいつはゴーレムだ」
「これがゴーレム!?」
「その通り。防御特化型魔法ゴーレム。名付けて『マモル君』だ!」

鑑定
【名前】 マモル君
【年齢】 0歳
【Lv】 -
【HP】 62/62
【MP】 280/280
【攻撃力】0
【防御力】87
【体力】 -
【知力】 -
【素早さ】-
【魔法】シールドLv.10
【備考】敵の攻撃を感知して防御力180のシールドを自動発生する防御特化型ゴーレム。装備者の命令で任意の場所にシールドを張ることも可能。シールドを張るためには1回70MPが必要になる。攻撃を感知するためには1MP/分が必要。内部MPを280チャージできるが、基本的に装備者のMPを消費する。
【次回レベル必要経験値】 -(レベルアップはない)

さっそく実験してみよう。
「ジャン、小石を俺に投げつけてみてくれ」
「おう。いくぞ!」
正面から飛んできた小石は俺に当たる直前に、発生したシールドにはじかれた。
よし、ここまではいい。
俺はジャンに背中を向ける。
「今度は背中に向かって投げてくれ」
今度も小石はシールドにはじかれた。
前後左右、上から下からいろいろ試したが問題はなかった。
方向による死角はないようだ。
次に俺はゴブのタワーシールドを構える。いよいよ本番だ。
「クロ、ハンドガンでラージシールドを撃ってくれ」
「だ、大丈夫なんですか?」
「ハンドガンの攻撃力は211だ。マモル君が作るシールドの防御力は180。防ぎきることはできないが、数値的にはタワーシールドなしでも大丈夫なはずなんだ」
「わ、わかりました。いきますよ!」
「まった! クロ、3点バーストにしてないだろうな?」
「あっ! ……これで大丈夫です。いきます!」
みなが固唾かたずをのんで見守る中、ハンドガンのくぐもった発射音が迷宮に響く。
銃弾は魔法シールドを貫通してタワーシールドに当たったが、ほとんど衝撃を感じなかった。
「成功のようだな」
「きょええええ!」
突然ジャンが奇声《きせい》をあげながら俺を殴りつけてきたが、マモル君のシールド魔法に阻まれる。
「痛あああ。……岩を殴ったみたいな感覚だ。なかなかすごいけど、もっと強いシールドは張れないのかよ?」
「魔石がたくさんあればできるけど、問題もあるのさ」
「魔石ぐらいこの調子ならもう少し出るだろう?」
「そうなんだけど、俺が操れるゴーレムは魔石20個分なんだよ。既にゴブで10個、ヒカル君で1個、バリで3個使ってるんだ。今回マモル君が加わったから既に15個だ」
「じゃあ残りは5個分のゴーレムしか操れないわけだ」
「そういうこと。実は乗り物型のゴーレムを作りたいんだよ。自走する小さい荷車みたいなやつな。それの分の魔石を残しときたくてさ」
「なるほどな~」
「他のゴーレムに眠っててもらえば20個分の魔石を丸々投入できるけど、こいつを眠らせておくのは忍びなくてさ」
俺はゴブの頭に手を置く。
「うが!」
なんとなくゴブが嬉しそうだ。こいつはただのゴーレムじゃない。既に俺たちの仲間であり『不死鳥の団』の一員だ。
「それじゃあ仕方ねえよな!」
ジャンもゴブと肩を組む。
「うが!」
ゴブの元気な声が響いた。
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