究極のポーター 最弱の男は冒険に憧れる

長野文三郎

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第94話 ラビリンス・イエロー

 サイクロプスの追撃から逃れるためにフルスロットルでバックする。
ふと会社員時代を思い出した。
営業車でバックをしている時に電柱で擦こすったことがあったっけ。
始末書を書いたよな。
切羽詰まっているのにどうでもいいことを思い出す。

 テーラーの時速は約20キロ。
走って逃げるよりはずっと早い。
タッ君に乗っているマリアが軽機関銃を撃ち込んでいるがサイクロプスにはあまり効いていないようだ。
急所を鉄柱で隠しながら追いかけてくる。
サイクロプスとも距離があったことが幸いして比較的楽にまくことができた。
俺はボニーさんに聞いてみる。
「どうして撤退したんですか? 俺たちで奴の注意を引き付けておけば隙が生まれて、ゴブの射撃が決まると思ったんですが」
「アイツは……先を読む」
先を読む? 
スキルか!
「それって近未来予測とか先読みとか言われるスキルですか?」
「そう……アイツ、私が射撃しようとしたら……その数舜前に反応した」
ボニーさんが言うならそうなんだろう。
先読みスキルとは数舜後の敵の行動がわかるという中々チートなスキルだ。
そうでなかったら、ゴブの狙撃を予測して鉄柱で弾を防ぐなんて芸当は不可能だ。
「厄介だな、なんか方法はないのか、おっさん?」
俺は別に倒さなくてもいいのだが、ジャンはやる気だ。
ここは古典に学ぶとするか。
「アイツを倒すには酒だな」
俺の故郷、地球では強い化け物を倒す時は酒が使われることがままある。
ヤマタノオロチ然り、ワインで酔わされて目を潰されてしまうサイクロプスの話もあったはずだ。
西遊記の中にもそんな話があった気がする。
「酒なんて……もってきてない」
「じゃあ作りましょうよ、ボニーさん」
俺たちはその足で、第4階層の密林エリアへ戻った。


 酒になる果物というのは本当にたくさんある。
一番代表的なのはブドウだよね。
言わずと知れたワインの原料だ。
リンゴやサクランボなんかも有名だ。
今回俺が狙っているのはバナナだ。
密林エリアにはバナナがたくさんあるのでこれで酒を造ってみようと考えている。
たしかアフリカの方ではバナナを使った酒があるとテレビで見た気がする。
果実に酵母菌がついているんだろう。
 ミシャカ池によって知り合いの迷宮妖精《ラビリンスフェアリー》のオットーとディナシーを大声で呼ぶ。
「何よ、何よ、その平たい顔はイッペイじゃない」
「おお! マリアさん久しいのぉ」
二人にバナナがたくさん生えている場所を尋ねてみた。
「大量のバナナなんて何に使うの?」
「バナナ酒を造るんだよ。だからいっぱいバナナが欲しいんだ」
オットーとディナシーが顔を見合わせている。
「その酒ができたら儂らにも分けてくれんかの?」
「私もバナナのお酒が飲みたいわ。甘いんでしょ? ねえ甘いんでしょ?」
二人ともバナナ酒に期待している。
手伝ってくれるのなら酒を分けるのも吝かではない。
迷宮妖精の案内でバナナの群生地はすぐに発見できた。
早速収穫開始だ。
ここへ来る途中に倒したゾンビナイトのカイトシールドで大なべを6つ錬成する。
湯を沸かし鍋を煮沸消毒した。
綺麗になった鍋に集めたバナナの皮をむいて実だけをいれる。
次に素材錬成でバナナをペースト状にしたら、果汁だけを鍋に残して、カスは大地へ戻す。
果汁にルガムという実の粉を焙煎したものを加え発酵させていく。
酵母菌に回復魔法をバンバンかけて発酵をうながしてやったぜ。
最終的に酵母のカスなどを取り除き黄色いバナナ酒が出来上がった。
ここまでざっと3時間。
普通なら5日~7日熟成させてつくるところだがかなりの時間短縮だ。
出来たバナナ酒は甘く、軽く発泡していた。
俺たちも味見で一口だけ飲んだが、飲みやすく美味しかった。
「なかなかいいじゃない。美味しいわ。やっぱりイッペイはここで迷宮妖精《ラビリンスフェアリー》をやるべきよ」
「酒はいいのぉ。さあ、マリアさんも一緒に飲みましょう」
妖精たちもバナナ酒を気に入ってくれたようだ。
壺を錬成してバナナ酒を分けてやった。
「7日くらいで飲んでね。それ以上たつとだんだん酸っぱくなると思うから」
「すぐ飲んじゃうわよ。また造りに来て」
「わっはっはっは、美味いのぉ、美味いのぉ」
半分酔っぱらっている迷宮妖精達を置いて、俺たちは再び五層に戻るのだった。

 一つの鍋には120リットルのバナナ酒が入っている。
鍋の数は合計6つだ。
「イッペイさん、この量でサイクロプスを酔っぱらわせることができるでしょうか?」
クロの心配はもっともだ。
我々にとったら大量のバナナ酒だが、あの巨体にしてみればショットグラス6杯分みたいなものだろう。
しかもバナナ酒のアルコール度数はあまり高くない。
「そうだよな、アルコール度数も4%くらいか。蒸留すれば濃度はあげられるけど……」
更にバナナ酒を作るのは面倒だ。
俺は飽きっぽい! 
いっそ毒を混ぜるか。
二層のネピア・サイドワインダーから取れた神経毒が残っている。
こいつを酒に混ぜれば巨大サイクロプスでも酩酊状態になる気がする。
小瓶の毒をトクトクと鍋に入れてぐるぐるとかき混ぜた。
このカクテルは「ラビリンス・イエロー」と名付けよう。
さあ皆、準備は整った。
ジャイアントキリングを始めようじゃないか!

 スパイ君の情報通り巨大サイクロプスが歩いてくる場所で、俺たちはバナナ酒の入った鍋を降ろして奴を待つ。
曲がり角からぬっとサイクロプスが現れた。
最高の演技を頼むぜ。
「きゃあ……サイクロプスがあらわれたわぁ……」
ボニーさん棒読みですよ。
「逃げるぞみんな!」
いいぞジャン君。
「いやよ、荷物を置いて逃げるなんて絶対にいや!!」
メグちゃん迫真の演技だよ。
演技だよね?
 俺たちはバナナ酒をおいて逃げ出す。
巨大サイクロプスは途中まで俺たちを追いかけてきたがバナナ酒に興味を持ったようだ。
追いかけるのをすぐにやめ、バナナ酒の入った鍋の方へ戻っていった。
これだけ大量の酒を見るのは初めてだろう。
そもそも迷宮に酒はないかもしれない。
お、鍋を指でつまんでクンクンと匂いを嗅いでいるぞ。
甘党なら絶対に飲むはずだ。
カモン! 
みんな固唾をのんでモニターを凝視する。
お! 
おお! 
一杯目を飲んだぞ。
奴の口角がぐっと上がり、凶悪なニヤケ顔になる。
どうやらお気に召したようだ。
巨大サイクロプスは床に座り込み、次々と鍋の酒を飲みほしていく。
そしてそのまま目を閉じてしまった。
ひょっとして死んじゃった? 
いや、いびきが聞こえてきた。
さすがにネピア・サイドワインダーの毒くらいじゃ死なないか。
それじゃあ、ゴブゴさんお願いします。
今回の弾は今のところ一番強力なFランク魔石で作った徹甲弾だ。
さて、奴が危険を察知して起きるか、それとも酔っぱらっていて起きないかどちらに転ぶかな? 
サイクロプスまでの距離は100メートルくらい。
ドエム82にはかなりの近距離だが確実に倒すにはこれを使うほかない。
ゴブは慎重に照準を合わせ、引き金に指を置く。
銃弾は巨大サイクロプスの斜め前方から瞼《まぶた》を突き破り後頭部から飛び出した。
瞼の傷より後頭部の傷の方が大きい。
いろんなものが一緒に出ちゃってます。
例によって詳細は避けるね。
俺も実況したくない。

 こうして第五階層を騒がせていた巨大サイクロプスは『不死鳥の団』が討ち取った。
そして何と巨大サイクロプスからEランク魔石が出てきましたよ! 
このEランク魔石、攻撃に使うか防御に使うか、はたまた新型車両に使うべきか、非常に悩むところだな。
俺としてはずっと欲しかったアレを作りたい。
あれさえあれば再び俺が活躍できる道が開けるというものだ。
その前にこの魔石を使わせてもらうようにみんなに了承をとらないといけないな。
さっそく基地に帰って会議だ。
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