双子の姉が王子に見初められましたがそれは身代わりで女装した弟の俺です

葉月くらら

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8話 ジェラルドの怒り

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「やあリリアーナ。おはよう、今日も美しいな」
「おはようございますジェラルド様。そういう賛辞は不要ですので」

 翌日も相変わらずジェラルドが朝からリリアーナにまとわりついていた。そしてリリアーナにあっさり袖にされるのが最近の朝の日課のようになっている。さすがにこれも何日も続けば気位の高いジェラルドは面白くない。リリアーナの態度に眉をぴくりと動かす。

「……この第一王子である私が声をかけているというのにずいぶんとじゃじゃ馬だな」
「声をかけていただかなくて結構です。行こうエミリオ、アル!」

 周囲がひやひやするほどはっきりと告げたリリアーナが校舎の中に入っていく。名前を呼ばれて初めて存在に気がついたのかジェラルドがエミリオとアルフィオを睨む。リリアーナの弟であるエミリオはともかく腹違いの自分の弟がリリアーナと仲が良いのが気に入らないのだろう。

「ああ、たしかエミリオと言ったか。リリアーナの双子の弟か。彼女によく似ているな」
「はあ……」

 急に表情を変えて猫なで声で近づいてきたので思わず後ずさる。後ろにいたアルフィオにぶつかってしまった。アルフィオの方には冷ややかな視線を向ける。

「アルフィオ、貴様何かリリアーナ嬢に告げ口しているんじゃないだろうな。たかが幼馴染だからといって余計なことをするなよ」
「別に俺は何もしてない」
「ふん、どうだかな。エミリオ、君にはリリアーナ嬢との橋渡しを頼みたいんだ。彼女はどうもつれなくてね」
「……姉には姉の気持ちがありますから。俺にはどうもできません」
「そうか……君も私の邪魔をするか」

 すっとジェラルドの表情が消える。
 当然橋渡しをしてくれると思っていたのだろう。あきらかに敵認定されてしまったけれどそんなことはどうだっていい。エミリオはリリアーナに手を出そうとしクロエを傷つけるジェラルドが嫌いだった。

「オクタヴィア家がどうなってもいいのかな?」
「御心配にはおよびません。父は国王陛下の信頼も厚いですから」

 家まで出して脅してきた。エミリオは怒りは表に出さずむしろにこやかに答えてやった。事実だからだ。エミリオの父であるオクタヴィア侯爵は現国王の右腕と言われているのだ。第一王子とはいえその立場を脅かすことは難しいだろう。

「そうか、残念だ!」

 あからさまに面白く無さそうな顔をしたジェラルドは取り巻きを引き連れその場から去っていった。
 その取り巻きの一人であるバルドの指に包帯がまかれているのを見つけ、疑いが確信になる。

「悪いな、兄貴が」
「いいよ、アルのせいじゃないだろ。それにしても腹立つ~」
「あいつは昔からなんでも自分の思い通りにしてきたからな。きっと今回もそうしようとしてるんだろう」

 アルフィオが呟いた。
 だからリリアーナを手に入れるのにも手段を択ばないということだ。
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