2 / 27
勇者と魔王
雨の中、色づく世界
しおりを挟む
たとえ君の心に僕がいなくても……
僕の心に君はずっといるから
だからさみしくない
いつか……また会える日まで
いつか……僕の方からこの想いを君に
♦♦♦
僕には自分の存在すべてをかけても守りたい人がいた。
至同瀬奈。僕の恋人。
そして世界でたった一人、僕の存在を認めてくれた人。
僕の生まれた家は、“炎の精霊”を奉る銘家。
歴代で数々の偉人を生み、そのすべてが“炎の精霊”と契約した者たちであった僕の生まれた家では、それが当たり前であるかのように“時の精霊”と契約してしまった僕を、恥晒しとして追放した。
その時の僕の年齢はたったの10歳。物心がついたばかりの年齢で放り出された僕は、周りの全てが未知であり、そして得体のしれない何かだった。何が危険か分からない。何が安全なのか分からない。
何も信じられなかった。何も信じたくなかった。家族という無条件で一番信用できる者に捨てられた僕には”信じる”ことに意味を見出すことを本能で否定していたのかもしれない。
神様は何もしてくれない。
この世界で弱い者、才能のない者は死ぬだけ。
失意のまま森を彷徨い、魔物や動物から逃れながら食いつないでただただ生きて、気づいた時には10年ほどの時間がたっていた。
そんな時出会った。
雨で視界も体調も悪く、動く気力が無いまま森の入り口にある木の下で座り込んでいた時だった。身に降りかかる雨の水滴が何かに遮られた。
「君、こんなところで何してるの?風邪引いちゃうよ?」」
「誰?」
「ああ、自己紹介してなかった。ごめんね!私の名前は瀬奈っていうの。姓は士同だよっ。よろしくね。あなたの名前も教えてほしいな?」
僕を傘の中に入れてくれた女性から、見た目通りの活発で元気な声が僕の鼓膜を揺らしてくる。他人の声を聴くなんて一体何年ぶりだろうか?
「僕は……僕の名前は……ごめん、忘れちゃった。人と……話すのも……ずいぶん久しぶりで。
こんな…風に…片言でしか……話せなくって……」
嘘。最初から僕に意味のある名前なんて無かった。悲鳴以外の声を出すなんて久しぶり過ぎて、上手く話せない。
「そうなんだ。でも名前が思い出せないって不便だね。君のこと、なんて読んだらいいか分からないよー!」
「そんなこと突然、僕に言われても……困っちゃうな」
「親は?お父さんとかお母さんからつけてもらったんじゃないの?」
その言葉を聞いて僕は苦笑することしかできなかった。
だってその人たちに捨てられたのだから。
でも今更、憎もうなどとは思わなかった。
ただ少し悲しい気持ちになった。
「僕は、捨てられたんだ。5歳の時に。出来損ない……だからね」
忘れられない思い出が脳裏に浮かび上がる。家族から向けられる失望の顔は幼い心に大きな傷跡を残していった。今までどうやって生きてきたのかもわからない。草花を食べて、魔物の死体らしきものを食べて、そして体に合わなかったモノは吐いて。それから、どうしてきたんだっけ?一番良かった思い出は……何も起きなかった日だ。怪我もなく、逃げる必要もなかった日。
自分のことながら笑えてくる。こんな惨めな僕を誰にも見てほしく無くて、視線を地面に投げる。
「そんなっ、どうして!?出来損ないなんて理由で自分の子を捨てるなんて信じられない……。そんなの親がしていいことじゃない!どんな理由があっても親だけは、親だけは自分の子を信じてあげなくちゃダメなのに!」
一際大きな声を出されて僕は驚き、思わず俯けていた顔を上げる。
彼女は心の底から本気で怒ってくれた。そして感じる人のぬくもり。
僕の汚くて臭い体なんか触りたくないだろうに。そんな僕の想いを否定するかのように彼女は小さな僕の体を強く抱きしめ続けた。傘がずれて少し雨が当たるけど、とても暖かかった。
耳元で感じる呼吸とドクンッ、ドクンッと伝わってくる心音。
ああ。僕って生きているんだなぁ……。
他人のためにこんな風に怒ってくれる人がいるなんて初めて知った。
僕はこの世界が嫌いだ。僕の運命を捻じ曲げた、僕の存在が否定されるこの世界が。
そこでふと思った。この人はどうなんだろう?
「ねえ。瀬奈……さんは、この世界が……好きですか?」
思いつきで発せられた脈絡のない言葉。それでも目の前の人は迷わず答えてくれた。僕の望んでいない答えを。
「好きだよ。私はこの世界が好き」
その言葉を聞いてやっぱり、と思った。僕とは違って、両親もいて楽しく暮らしてるんだろうな、と。
僕とは住む世界が違うと思った。
「私、両親2人とも病気で死んじゃったんだ。その点でいえば君と同じだね。でも私はこの世界が好き。人の笑顔を見るのが好き。1日1日を精一杯生きている人を見るのが好き。だから私も負けないくらい精一杯生きることにしてるの。私が生きている証をこの世界に刻みたい!だから旅をしているんだ。君はどう?この世界は好き?」
僕は衝撃を受けた。瀬奈さんも両親いなかったんだ。
それなのに生きることに絶望してない。
ただただ生きるのではなく、自分の存在を1日1日この世界に刻きざみ込んでいるんだ。
こんな人がこの世界にいるのなら、僕の生きてきた道は一体何だったのだろう?僕の生きた証は?生きている意味は?あるわけがない。僕を覚えている人は誰もいない。僕は誰とも繋がっていない。当たり前だ。その繋がりを持とうとしなかった。怖かったから。周りはみんな敵だった。だから逃げて逃げて逃げて……そんな自分が惨めでどうしようもなくて。
そんな僕でも、今からでもこの人みたいに生きられるのだろうか?
「一人は……つらかった、んです。道端で、楽しそうに……親子で手を、繋いでいる人たちを見る度に……胸のあたりが、苦しくなって」
ずっと我慢してきた。
「僕の隣には……誰もいなく、て。誰にも見てもらえない、誰の役にも立てないなら……僕はっ……!!なんの、ために」
生まれてきたのだろうか?
泥水を啜っている時、魔物や動物の死体を漁っている時、ふと我に返るのだ。こうまでして生きてゆく意味があるのかって。
こんな僕でも
「僕も、この世界が……好きになれるかな?瀬奈さんみたく、胸張って……この世界で、生きられるかな?」
瀬奈さんは目を見開いて笑いながら言った。
僕の運命を変える一言を。
「なら私が好きにさせてみせる。世界は君が考えているよりもっと君にやさしいはずなんだっ!私と一緒にいこ?」
今までずっと、モノクロだらけの世界だった。恐怖と否定と疑心だらけの”僕の世界”。そんな薄っぺらい壁なんか容易く破ってきた彼女は、とても眩しかった。改めて見るととてもきれいな人だ。
つやのある黒い髪を腰まで垂らして、眼は赤と青という左右で違った色合い。
差し伸べられた手を僕は力強く握った。
それから僕は世界中を瀬奈と旅をした。知らないことがたくさんあって、いろんな人と出会って、別れて。僕は世界の美しさを知った。
僕は誓った。僕のすべてをかけて瀬奈を守ると。
故に鍛錬をすることも忘れなかった。契約した、“時の精霊”にはアイオーンと名付けた。彼女は20歳くらいの女性の姿をしていて、髪はつやのある灰色、眼はきれいな青色をしていた。
彼女は刀に姿を変え、僕の武器になる。彼女にもずいぶんと助けられた。
僕は自分の世界が広がっていくのを感じた。幸せだった。瀬奈と過ごす時間がとても楽しかった。いつまでも続いてほしいと願った。だが瀬奈と出会ってから毎日が楽しくて楽しくて、僕は忘れていたんだ。この世界はきれいな一面も持っていればどうしようもなく残酷な一面を持っていることを。
しばらく何年か旅をしているとき、ある町に行く途中の道で僕たちはいかにも無害で大人しそうな青年に話しかけられた。
「あの、町が魔物に襲われていて。助けてください、旅の方!」
根っから優しい瀬奈は青年の声に真剣な顔をして詳しい事情を聞き出そうとする。
「場所はどこですか?魔物の規模は?」
「ここから半日ほど離れたところにある町です。400ほどの魔物が人を襲っています。俺はそこから逃げてきたんです!そっちのお兄さんは強いんでしょう?さっきの戦闘見てたんです。彼女は俺が後から町に連れていきますから、お兄さんは今すぐ向かってくれませんか?頼みます!俺の家族もいるんです!」
僕は、青年の切羽詰まった声を聴きながらも、瀬奈をここにおいていくのにも不安があった。僕が迷っていると瀬奈も懇願するように僕に頼んでくる。
「私は大丈夫だから!この人たちの町を救ってあげて?」
瀬奈は優しいから。こう頼んでくるのも1度や2度ではなかった。だけど今回はなにか胸騒ぎがする。だが戦う力があまりない瀬奈を一緒に連れていけるわけもなく、頼みを断れるわけでもない僕はうなずくしかない。
「わかった。すぐに戻ってくる。…………瀬奈のこと頼みます」
そう言って僕はすぐ例の町に向かって走った。青年の顔に浮かぶ残虐な笑みに気づかずに。
いつまでたっても町が見えてこない。それにおかしい、かなり速い速度で走っているのに一体のモンスターすら感知できない。それにまだ胸騒ぎがする。一度、瀬奈のところに戻るか、そう思い青年と出会った場所まで戻るが誰もいない。慌てて知覚範囲を伸ばすが見つからない。そして僕は気づく。あの青年に騙されたことに。自分の浅慮さにあきれる。いつも瀬奈と一緒だったから、そばで守っていたから油断していた。いや、これも言い訳か。僕は忘れていただけだ。この世界がいかに残酷であるか。瀬奈と過ごすことが当たり前になっていて楽しいことばかりだったから。僕は強くなったはずだったから。後悔しても遅く時間ばかりが過ぎていく。“時の精霊”の力も借りて数日かけて瀬奈の生命力を感知した僕は、その生命力がだんだんとなくなっていくのを感じながら全力で向かった。彼女の命が消えていくのを感じ、首筋を這う冷や汗に焦燥感が募っていく。杞憂ならいい。でも……
間に合ってくれ。彼女を僕から奪わないでくれ。頼むよ。僕の唯一の大切なヒトなんだ!
「……!!?」
目の前に広がる光景はすぐにぼやけて見えなくなった……。
僕の心に君はずっといるから
だからさみしくない
いつか……また会える日まで
いつか……僕の方からこの想いを君に
♦♦♦
僕には自分の存在すべてをかけても守りたい人がいた。
至同瀬奈。僕の恋人。
そして世界でたった一人、僕の存在を認めてくれた人。
僕の生まれた家は、“炎の精霊”を奉る銘家。
歴代で数々の偉人を生み、そのすべてが“炎の精霊”と契約した者たちであった僕の生まれた家では、それが当たり前であるかのように“時の精霊”と契約してしまった僕を、恥晒しとして追放した。
その時の僕の年齢はたったの10歳。物心がついたばかりの年齢で放り出された僕は、周りの全てが未知であり、そして得体のしれない何かだった。何が危険か分からない。何が安全なのか分からない。
何も信じられなかった。何も信じたくなかった。家族という無条件で一番信用できる者に捨てられた僕には”信じる”ことに意味を見出すことを本能で否定していたのかもしれない。
神様は何もしてくれない。
この世界で弱い者、才能のない者は死ぬだけ。
失意のまま森を彷徨い、魔物や動物から逃れながら食いつないでただただ生きて、気づいた時には10年ほどの時間がたっていた。
そんな時出会った。
雨で視界も体調も悪く、動く気力が無いまま森の入り口にある木の下で座り込んでいた時だった。身に降りかかる雨の水滴が何かに遮られた。
「君、こんなところで何してるの?風邪引いちゃうよ?」」
「誰?」
「ああ、自己紹介してなかった。ごめんね!私の名前は瀬奈っていうの。姓は士同だよっ。よろしくね。あなたの名前も教えてほしいな?」
僕を傘の中に入れてくれた女性から、見た目通りの活発で元気な声が僕の鼓膜を揺らしてくる。他人の声を聴くなんて一体何年ぶりだろうか?
「僕は……僕の名前は……ごめん、忘れちゃった。人と……話すのも……ずいぶん久しぶりで。
こんな…風に…片言でしか……話せなくって……」
嘘。最初から僕に意味のある名前なんて無かった。悲鳴以外の声を出すなんて久しぶり過ぎて、上手く話せない。
「そうなんだ。でも名前が思い出せないって不便だね。君のこと、なんて読んだらいいか分からないよー!」
「そんなこと突然、僕に言われても……困っちゃうな」
「親は?お父さんとかお母さんからつけてもらったんじゃないの?」
その言葉を聞いて僕は苦笑することしかできなかった。
だってその人たちに捨てられたのだから。
でも今更、憎もうなどとは思わなかった。
ただ少し悲しい気持ちになった。
「僕は、捨てられたんだ。5歳の時に。出来損ない……だからね」
忘れられない思い出が脳裏に浮かび上がる。家族から向けられる失望の顔は幼い心に大きな傷跡を残していった。今までどうやって生きてきたのかもわからない。草花を食べて、魔物の死体らしきものを食べて、そして体に合わなかったモノは吐いて。それから、どうしてきたんだっけ?一番良かった思い出は……何も起きなかった日だ。怪我もなく、逃げる必要もなかった日。
自分のことながら笑えてくる。こんな惨めな僕を誰にも見てほしく無くて、視線を地面に投げる。
「そんなっ、どうして!?出来損ないなんて理由で自分の子を捨てるなんて信じられない……。そんなの親がしていいことじゃない!どんな理由があっても親だけは、親だけは自分の子を信じてあげなくちゃダメなのに!」
一際大きな声を出されて僕は驚き、思わず俯けていた顔を上げる。
彼女は心の底から本気で怒ってくれた。そして感じる人のぬくもり。
僕の汚くて臭い体なんか触りたくないだろうに。そんな僕の想いを否定するかのように彼女は小さな僕の体を強く抱きしめ続けた。傘がずれて少し雨が当たるけど、とても暖かかった。
耳元で感じる呼吸とドクンッ、ドクンッと伝わってくる心音。
ああ。僕って生きているんだなぁ……。
他人のためにこんな風に怒ってくれる人がいるなんて初めて知った。
僕はこの世界が嫌いだ。僕の運命を捻じ曲げた、僕の存在が否定されるこの世界が。
そこでふと思った。この人はどうなんだろう?
「ねえ。瀬奈……さんは、この世界が……好きですか?」
思いつきで発せられた脈絡のない言葉。それでも目の前の人は迷わず答えてくれた。僕の望んでいない答えを。
「好きだよ。私はこの世界が好き」
その言葉を聞いてやっぱり、と思った。僕とは違って、両親もいて楽しく暮らしてるんだろうな、と。
僕とは住む世界が違うと思った。
「私、両親2人とも病気で死んじゃったんだ。その点でいえば君と同じだね。でも私はこの世界が好き。人の笑顔を見るのが好き。1日1日を精一杯生きている人を見るのが好き。だから私も負けないくらい精一杯生きることにしてるの。私が生きている証をこの世界に刻みたい!だから旅をしているんだ。君はどう?この世界は好き?」
僕は衝撃を受けた。瀬奈さんも両親いなかったんだ。
それなのに生きることに絶望してない。
ただただ生きるのではなく、自分の存在を1日1日この世界に刻きざみ込んでいるんだ。
こんな人がこの世界にいるのなら、僕の生きてきた道は一体何だったのだろう?僕の生きた証は?生きている意味は?あるわけがない。僕を覚えている人は誰もいない。僕は誰とも繋がっていない。当たり前だ。その繋がりを持とうとしなかった。怖かったから。周りはみんな敵だった。だから逃げて逃げて逃げて……そんな自分が惨めでどうしようもなくて。
そんな僕でも、今からでもこの人みたいに生きられるのだろうか?
「一人は……つらかった、んです。道端で、楽しそうに……親子で手を、繋いでいる人たちを見る度に……胸のあたりが、苦しくなって」
ずっと我慢してきた。
「僕の隣には……誰もいなく、て。誰にも見てもらえない、誰の役にも立てないなら……僕はっ……!!なんの、ために」
生まれてきたのだろうか?
泥水を啜っている時、魔物や動物の死体を漁っている時、ふと我に返るのだ。こうまでして生きてゆく意味があるのかって。
こんな僕でも
「僕も、この世界が……好きになれるかな?瀬奈さんみたく、胸張って……この世界で、生きられるかな?」
瀬奈さんは目を見開いて笑いながら言った。
僕の運命を変える一言を。
「なら私が好きにさせてみせる。世界は君が考えているよりもっと君にやさしいはずなんだっ!私と一緒にいこ?」
今までずっと、モノクロだらけの世界だった。恐怖と否定と疑心だらけの”僕の世界”。そんな薄っぺらい壁なんか容易く破ってきた彼女は、とても眩しかった。改めて見るととてもきれいな人だ。
つやのある黒い髪を腰まで垂らして、眼は赤と青という左右で違った色合い。
差し伸べられた手を僕は力強く握った。
それから僕は世界中を瀬奈と旅をした。知らないことがたくさんあって、いろんな人と出会って、別れて。僕は世界の美しさを知った。
僕は誓った。僕のすべてをかけて瀬奈を守ると。
故に鍛錬をすることも忘れなかった。契約した、“時の精霊”にはアイオーンと名付けた。彼女は20歳くらいの女性の姿をしていて、髪はつやのある灰色、眼はきれいな青色をしていた。
彼女は刀に姿を変え、僕の武器になる。彼女にもずいぶんと助けられた。
僕は自分の世界が広がっていくのを感じた。幸せだった。瀬奈と過ごす時間がとても楽しかった。いつまでも続いてほしいと願った。だが瀬奈と出会ってから毎日が楽しくて楽しくて、僕は忘れていたんだ。この世界はきれいな一面も持っていればどうしようもなく残酷な一面を持っていることを。
しばらく何年か旅をしているとき、ある町に行く途中の道で僕たちはいかにも無害で大人しそうな青年に話しかけられた。
「あの、町が魔物に襲われていて。助けてください、旅の方!」
根っから優しい瀬奈は青年の声に真剣な顔をして詳しい事情を聞き出そうとする。
「場所はどこですか?魔物の規模は?」
「ここから半日ほど離れたところにある町です。400ほどの魔物が人を襲っています。俺はそこから逃げてきたんです!そっちのお兄さんは強いんでしょう?さっきの戦闘見てたんです。彼女は俺が後から町に連れていきますから、お兄さんは今すぐ向かってくれませんか?頼みます!俺の家族もいるんです!」
僕は、青年の切羽詰まった声を聴きながらも、瀬奈をここにおいていくのにも不安があった。僕が迷っていると瀬奈も懇願するように僕に頼んでくる。
「私は大丈夫だから!この人たちの町を救ってあげて?」
瀬奈は優しいから。こう頼んでくるのも1度や2度ではなかった。だけど今回はなにか胸騒ぎがする。だが戦う力があまりない瀬奈を一緒に連れていけるわけもなく、頼みを断れるわけでもない僕はうなずくしかない。
「わかった。すぐに戻ってくる。…………瀬奈のこと頼みます」
そう言って僕はすぐ例の町に向かって走った。青年の顔に浮かぶ残虐な笑みに気づかずに。
いつまでたっても町が見えてこない。それにおかしい、かなり速い速度で走っているのに一体のモンスターすら感知できない。それにまだ胸騒ぎがする。一度、瀬奈のところに戻るか、そう思い青年と出会った場所まで戻るが誰もいない。慌てて知覚範囲を伸ばすが見つからない。そして僕は気づく。あの青年に騙されたことに。自分の浅慮さにあきれる。いつも瀬奈と一緒だったから、そばで守っていたから油断していた。いや、これも言い訳か。僕は忘れていただけだ。この世界がいかに残酷であるか。瀬奈と過ごすことが当たり前になっていて楽しいことばかりだったから。僕は強くなったはずだったから。後悔しても遅く時間ばかりが過ぎていく。“時の精霊”の力も借りて数日かけて瀬奈の生命力を感知した僕は、その生命力がだんだんとなくなっていくのを感じながら全力で向かった。彼女の命が消えていくのを感じ、首筋を這う冷や汗に焦燥感が募っていく。杞憂ならいい。でも……
間に合ってくれ。彼女を僕から奪わないでくれ。頼むよ。僕の唯一の大切なヒトなんだ!
「……!!?」
目の前に広がる光景はすぐにぼやけて見えなくなった……。
0
あなたにおすすめの小説
老衰で死んだ僕は異世界に転生して仲間を探す旅に出ます。最初の武器は木の棒ですか!? 絶対にあきらめない心で剣と魔法を使いこなします!
菊池 快晴
ファンタジー
10代という若さで老衰により病気で死んでしまった主人公アイレは
「まだ、死にたくない」という願いの通り異世界転生に成功する。
同じ病気で亡くなった親友のヴェルネルとレムリもこの世界いるはずだと
アイレは二人を探す旅に出るが、すぐに魔物に襲われてしまう
最初の武器は木の棒!?
そして謎の人物によって明かされるヴェネルとレムリの転生の真実。
何度も心が折れそうになりながらも、アイレは剣と魔法を使いこなしながら
困難に立ち向かっていく。
チート、ハーレムなしの王道ファンタジー物語!
異世界転生は2話目です! キャラクタ―の魅力を味わってもらえると嬉しいです。
話の終わりのヒキを重要視しているので、そこを注目して下さい!
****** 完結まで必ず続けます *****
****** 毎日更新もします *****
他サイトへ重複投稿しています!
攻撃魔法を使えないヒーラーの俺が、回復魔法で最強でした。 -俺は何度でも救うとそう決めた-【[完]】
水無月いい人(minazuki)
ファンタジー
【HOTランキング一位獲得作品】
【一次選考通過作品】
---
とある剣と魔法の世界で、
ある男女の間に赤ん坊が生まれた。
名をアスフィ・シーネット。
才能が無ければ魔法が使えない、そんな世界で彼は運良く魔法の才能を持って産まれた。
だが、使用できるのは攻撃魔法ではなく回復魔法のみだった。
攻撃魔法を一切使えない彼は、冒険者達からも距離を置かれていた。
彼は誓う、俺は回復魔法で最強になると。
---------
もし気に入っていただけたら、ブクマや評価、感想をいただけると大変励みになります!
#ヒラ俺
この度ついに完結しました。
1年以上書き続けた作品です。
途中迷走してました……。
今までありがとうございました!
---
追記:2025/09/20
再編、あるいは続編を書くか迷ってます。
もし気になる方は、
コメント頂けるとするかもしれないです。
クラス転移したら種族が変化してたけどとりあえず生きる
アルカス
ファンタジー
16歳になったばかりの高校2年の主人公。
でも、主人公は昔から体が弱くなかなか学校に通えなかった。
でも学校には、行っても俺に声をかけてくれる親友はいた。
その日も体の調子が良くなり、親友と久しぶりの学校に行きHRが終わり先生が出ていったとき、クラスが眩しい光に包まれた。
そして僕は一人、違う場所に飛ばされいた。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています
藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。
結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。
聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。
侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。
※全11話 2万字程度の話です。
貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。
黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。
この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。
ブラック国家を制裁する方法は、性癖全開のハーレムを作ることでした。
タカハシヨウ
ファンタジー
ヴァン・スナキアはたった一人で世界を圧倒できる強さを誇り、母国ウィルクトリアを守る使命を背負っていた。
しかし国民たちはヴァンの威を借りて他国から財産を搾取し、その金でろくに働かずに暮らしている害悪ばかり。さらにはその歪んだ体制を維持するためにヴァンの魔力を受け継ぐ後継を求め、ヴァンに一夫多妻制まで用意する始末。
ヴァンは国を叩き直すため、あえてヴァンとは子どもを作れない異種族とばかり八人と結婚した。もし後継が生まれなければウィルクトリアは世界中から報復を受けて滅亡するだろう。生き残りたければ心を入れ替えてまともな国になるしかない。
激しく抵抗する国民を圧倒的な力でギャフンと言わせながら、ヴァンは愛する妻たちと甘々イチャイチャ暮らしていく。
クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?
青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。
最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。
普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた?
しかも弱いからと森に捨てられた。
いやちょっとまてよ?
皆さん勘違いしてません?
これはあいの不思議な日常を書いた物語である。
本編完結しました!
相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです!
1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる