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2章
翠くんの巣作り
何かを言いたいのに、言葉が出てこない……
体から体温が無くなっていくような感覚が怖くなった。
けど僕の腰に回された腕から伝わるぬくもりと翠くんの重さになぜだか、安心している自分がいた。
βからΩにって……
本当にそんなことがあるの?
Ωへの当たりの強さを知っていたのに。
僕が大好きな翠くんをΩにしてしまった……
事実を理解したとき、こぼれ落ちる涙を止める事ができず。
翠くん、ごめんなさい……
僕の声を聞いて、顔を上げた翠くんは目が大きく見開かれると腰に回されていた腕が離れ、僕の頬に手がのびる。
「誰に泣かされた!?」
さっきまでの、どこか虚ろな目ではなくて僕をしっかり見据えている。
説明をしたいのに、うまく言葉が出てこない。
――翠くんをΩにしてしまって……
ごめんなさい……
苦しそうに顔を歪ませた翠くんが、入り口に立っている緑兄に気付いた時、聞いたことがない声色を発した。
「兄さんが……楓を、泣かしたの?」
穏やかな翠くんからは想像ができない冷たい声……
兄弟とは言え、αに対しての態度とは思えない。
緑兄はチッと舌打ちの後に消え入りそうな声で、そうかもしれないなと投げやり気味に言った。
体感では、長く感じた時間の後に緑兄は僕に言葉をなげる。
「――無知は罪だ……αだと分かった時に何故、何故……楓は学ばなかった?お前の家にはエリートαが居るのに……誰かに相談する事ができたのに、なんで……ちゃんとしてくれなかったんよ……」
顔を伏せた緑兄が肩を震わせている。
「楓が……もっとバースの事を知っていてくれたら……こんな事にならなかったのに……15才の楓に言っても仕方ないと分かっては居るのに……楓の姿が見えないからと、楓が使っていた服やタオルで巣作りしてる姿をみても、俺たち家族はΩのフェロモンに当てられそうで、近づけない……なにも出来なかった……」
そう言うと床へと座り込んだ。
遠目でも分かる、緑兄は翠くんの事を思い泣いている。
おじさんが、緑兄の肩にてを乗せて名前を呼ぶまで、僕はおじさんの気配を感じなかった。
「緑、何度も話したけれど誰か1人が悪い訳ではないんだ父さんも母さんも実際には起こらないと思っていたのだから、まだ幼い楓くんや翠が分からなかったのも仕方がない、誰かに責任を押し付けたくなるのも分かる、けれどそれでは解決できない。」
おじさんの、穏やかな口調は同じαの父さんとは違う。
「おじさん、ごめんなさい……」
おじさんは頷くと何かを考えているようだった。
「楓くんは、翠とどうしていきたい?」
僕は考えるよりも先に言葉が出る。
【翠くんと、ずっと一緒に居たい】
僕の答えを聞いた、おじさんの表情が緩んだ時、翠くんが俺も楓と離れるつもりはないと言った。
おじさんは一瞬、驚いたようだったけど声を出して笑だした。
「そっか……そうなんだな……まさか、こんなに早く親元を離れることになるとは思わなかったけどな……」
そう話す目元が潤んでいるように見える。
「相模さん……やはり、予想通りになりましたね……翠の事をお願いしてもよろしいですか?」
えっ……僕たちの視界に入らない場所に難しい顔をした父さんが立っていた。
「小野寺さんの大切な翠くんを、不自由なく過ごせるようにサポートさせて頂きます、このたびは本当に楓がご迷惑おかけして申し訳ありませんでした。」
そう言うと頭を下げた父さん。
いつもヘラヘラとしている父さんが僕の為に頭を下げた。
父さんの姿を見て息が苦しくなるのは初めてだ。
「楓のお父さん、それってどういう意味ですか?」
さっきまでの、ふにゃふにゃとした翠くんとは違い、いつもの翠くんらしい話し方に戻り少しだけ安心する。
「そうだね……君たちの意見を聞かずに決めたことは悪いけど、今日から翠くんは家で暮らす事になる。」
おじさんも、緑兄も驚いた素振りはない。
きっと、大人達で話が決まっていたのかもしれない。
「これから、楓と暮らす……」
そう言いながら、嬉しそうな翠くんを見ると僕も嬉しかった。
「詳しくはリビングで話をしよう、翠くん部屋から出れるかい?」
翠くんは僕の腕に腕を絡ませたまま、笑顔で頷いた。
体から体温が無くなっていくような感覚が怖くなった。
けど僕の腰に回された腕から伝わるぬくもりと翠くんの重さになぜだか、安心している自分がいた。
βからΩにって……
本当にそんなことがあるの?
Ωへの当たりの強さを知っていたのに。
僕が大好きな翠くんをΩにしてしまった……
事実を理解したとき、こぼれ落ちる涙を止める事ができず。
翠くん、ごめんなさい……
僕の声を聞いて、顔を上げた翠くんは目が大きく見開かれると腰に回されていた腕が離れ、僕の頬に手がのびる。
「誰に泣かされた!?」
さっきまでの、どこか虚ろな目ではなくて僕をしっかり見据えている。
説明をしたいのに、うまく言葉が出てこない。
――翠くんをΩにしてしまって……
ごめんなさい……
苦しそうに顔を歪ませた翠くんが、入り口に立っている緑兄に気付いた時、聞いたことがない声色を発した。
「兄さんが……楓を、泣かしたの?」
穏やかな翠くんからは想像ができない冷たい声……
兄弟とは言え、αに対しての態度とは思えない。
緑兄はチッと舌打ちの後に消え入りそうな声で、そうかもしれないなと投げやり気味に言った。
体感では、長く感じた時間の後に緑兄は僕に言葉をなげる。
「――無知は罪だ……αだと分かった時に何故、何故……楓は学ばなかった?お前の家にはエリートαが居るのに……誰かに相談する事ができたのに、なんで……ちゃんとしてくれなかったんよ……」
顔を伏せた緑兄が肩を震わせている。
「楓が……もっとバースの事を知っていてくれたら……こんな事にならなかったのに……15才の楓に言っても仕方ないと分かっては居るのに……楓の姿が見えないからと、楓が使っていた服やタオルで巣作りしてる姿をみても、俺たち家族はΩのフェロモンに当てられそうで、近づけない……なにも出来なかった……」
そう言うと床へと座り込んだ。
遠目でも分かる、緑兄は翠くんの事を思い泣いている。
おじさんが、緑兄の肩にてを乗せて名前を呼ぶまで、僕はおじさんの気配を感じなかった。
「緑、何度も話したけれど誰か1人が悪い訳ではないんだ父さんも母さんも実際には起こらないと思っていたのだから、まだ幼い楓くんや翠が分からなかったのも仕方がない、誰かに責任を押し付けたくなるのも分かる、けれどそれでは解決できない。」
おじさんの、穏やかな口調は同じαの父さんとは違う。
「おじさん、ごめんなさい……」
おじさんは頷くと何かを考えているようだった。
「楓くんは、翠とどうしていきたい?」
僕は考えるよりも先に言葉が出る。
【翠くんと、ずっと一緒に居たい】
僕の答えを聞いた、おじさんの表情が緩んだ時、翠くんが俺も楓と離れるつもりはないと言った。
おじさんは一瞬、驚いたようだったけど声を出して笑だした。
「そっか……そうなんだな……まさか、こんなに早く親元を離れることになるとは思わなかったけどな……」
そう話す目元が潤んでいるように見える。
「相模さん……やはり、予想通りになりましたね……翠の事をお願いしてもよろしいですか?」
えっ……僕たちの視界に入らない場所に難しい顔をした父さんが立っていた。
「小野寺さんの大切な翠くんを、不自由なく過ごせるようにサポートさせて頂きます、このたびは本当に楓がご迷惑おかけして申し訳ありませんでした。」
そう言うと頭を下げた父さん。
いつもヘラヘラとしている父さんが僕の為に頭を下げた。
父さんの姿を見て息が苦しくなるのは初めてだ。
「楓のお父さん、それってどういう意味ですか?」
さっきまでの、ふにゃふにゃとした翠くんとは違い、いつもの翠くんらしい話し方に戻り少しだけ安心する。
「そうだね……君たちの意見を聞かずに決めたことは悪いけど、今日から翠くんは家で暮らす事になる。」
おじさんも、緑兄も驚いた素振りはない。
きっと、大人達で話が決まっていたのかもしれない。
「これから、楓と暮らす……」
そう言いながら、嬉しそうな翠くんを見ると僕も嬉しかった。
「詳しくはリビングで話をしよう、翠くん部屋から出れるかい?」
翠くんは僕の腕に腕を絡ませたまま、笑顔で頷いた。
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