50 / 51
2章
翠くんの卒業
しおりを挟む
「俺たちが知らないうちに色んな事が有ったんだな……」
そう話しながら、なぜか空くん泣きそうな顔をしている。
「言えなくてゴメン……」
空くんは僕を抱き締めると、俺……楓の親友なのに何もできなくてマジでゴメンと呟く。
――空くんはそんな風に思ってくれていたんだ……
僕がΩだと思われていた時から変わらずに一緒に居て支えてくれていた。
「空くんには色々と支えてもらってたよ。だから……これからもよろしくね。」
翠くんが卒業するまでは僕たちの関係は他言しないこと。
それが父さんとの約束だった。
Ωになった翠くんは、まだ不安定な事もあり大人のフォローは必要不可欠だったから、先生達には話が通されている。
そして、今日は翠くん達3年生が卒業する。
おめでたい日なのは分かっているのに、素直に喜べない。
翠くんと一緒に暮らしてはいるけれど、もう一緒の学校で過ごすことは今日で最後。
同じ学校で学生でいられるのは、あと数時間……
改めて自覚をすると胸が締め付けられるように苦しい。
そんな僕に、空くんが心配そうに声をかけてくれて今に至る。
「楓くん、僕はビッチングって都市伝説だと思ってた、それほどまでに2人の気持ちが強いのは、2人が運命の番だって事だったんだね。」
えっ?運命の番?
僕の反応に、光くんは驚きを隠せないのか、僕の顔をまじまじと見上げている。
「えっ?楓くんマジで分かってないの?」
冷やかな目をした光くん……
光くんはΩなのに、なんでこんなに怖いのか意味が分からない。
助けを求めるように空くんに目をむけると、空くんも信じられないといった表情を浮かべている。
背中がゾクゾクする。
光くんは、僕の胸ぐらを掴むと聞いたことがない声色で僕に話しかけた。
「さすがにそれは、翠先輩が可哀想だ……運命の番は僕らΩにとっては唯一の希望なんだよ、それなのに楓くんは何も分かっていないしΩの事を分かろうとしない……楓くん、そんなの怠慢だよ……」
なんで……
なんで光くんが泣いてるの……
光くんが怖くて泣きそうなのは僕だよ。
僕たちの、やり取りを見ていた空くんが僕を掴んでいる光くんの手を取りながら、楓はまだ勉強中だからと諭すように声をかける。
重々しい空気を変えたのは、全てを終えて僕を迎えにきてくれた翠くんと先輩達だった。
「光くんはなんで泣いてるの?」
翠くんの質問に、光くんは答えなかった。
「僕が卒業するのが、そんなに悲しいのかい?」
要先輩の自意識過剰な質問、それは重い空気を変えたかったのかもしれない。
そんなに事に気付いていない光くんは、ありえませんと即答すると、要せんぱいはそれは残念とケラケラと笑っていた。
「翠先輩は、こんな何も分かってないαの楓でいいんですか?」
翠くんはにこりと笑った。
「光くんも空くんも俺の事を聞いたんだね……。う~ん、そうだね俺は昔から楓の事が好きで……でもバースの事があったから自分に自信がなくて楓の事を諦めていたんだ。楓がΩと偽っていた時から俺の心には楓しか居なかった、別の誰かを作っても楓の変わりにはならなかった……あたりまえだよね、僕の心は既に楓だけのモノだったから。だからこそ今、俺は経験したことがないほどに心は満たされて穏やかな気分なんだよ、もちろんΩになったばかりで戸惑う事は沢山あるけどね。」
その言葉を聞いた光くんは大きく深呼吸をすると翠にたずねた。
「翠先輩、いま幸せですか?」
翠くんは、僕を引き寄せると。
「凄く幸せだよ。」
そうキラキラと眩しすぎる表情で答えた。
「運命の番なのが明らかなのに全然わかっていない。そんな楓くんの態度が、あまりにもバースを理解していなくてΩとして生きてきた僕は凄く苦しくなってしまい、楓くんに対して凄く嫌な態度をとってゴメンね」
そう話す光くんが凄く大人に見えた。
光くんだけが悪い訳では無いそれこそ誰も悪くない……。
バース関係なく、空くんと光くんとは仲良くなった。
僕たちが高校を卒業したとしても僕たちの関係は切れることはないと確信を持っている。
僕はまだまだαとして未熟だ、きっと周りにも危なっかしく見られる事も有るとおもう。
それでも翠くんを好きなことは誰にも負けないし負ける気もしない。
卒業後に翠くんは教育学部のある大学に進学が決まっている。
幼稚園の先生を目指すと聞いた時は驚いたけれど、翠くんなら子供達に寄り添える優しい先生になれそうだ。
僕が大学を卒業して就職が決まるまでは入籍はできないけれど、それまでは父さんに色々な事を教えてもらいながら翠くんの婚約者として恥ずかしくない自分でいたい。
「楓」
翠くんに名前を呼ばれて、みんなと別れると一気に寂しさが襲ってくる。
これからは本当にもう学校で僕の名前を呼んで貰える事が無くなると思うと、抑えていたものが溢れ出そうで気づかれないように青く広がる空を見上げる。
「卒業しても俺たちの関係は変わらない……むしろ、もっと仲良くなれそうだよな、これからもよろしくな楓。」
そう言って、翠くんが自分のネクタイを外し僕の首へと巻いてくれた。
うちの学校の伝統、好きな人にネクタイを贈るまたは、ネクタイを貰うと2人はいつまでも幸せで居られる。
僕は翠くんの熱がまだ残るネクタイをギュッと握りしめながら、抑えようとしても溢れるものを止めることは僕には出来なかった。
声にらならないかもしれない。
それでも、翠くんに伝えたい……
「翠くん卒業おめでとう!」
「ありがとう!」
そう言って、翠くんが僕だけに見せる顔は可愛すぎる。
~Fine~
そう話しながら、なぜか空くん泣きそうな顔をしている。
「言えなくてゴメン……」
空くんは僕を抱き締めると、俺……楓の親友なのに何もできなくてマジでゴメンと呟く。
――空くんはそんな風に思ってくれていたんだ……
僕がΩだと思われていた時から変わらずに一緒に居て支えてくれていた。
「空くんには色々と支えてもらってたよ。だから……これからもよろしくね。」
翠くんが卒業するまでは僕たちの関係は他言しないこと。
それが父さんとの約束だった。
Ωになった翠くんは、まだ不安定な事もあり大人のフォローは必要不可欠だったから、先生達には話が通されている。
そして、今日は翠くん達3年生が卒業する。
おめでたい日なのは分かっているのに、素直に喜べない。
翠くんと一緒に暮らしてはいるけれど、もう一緒の学校で過ごすことは今日で最後。
同じ学校で学生でいられるのは、あと数時間……
改めて自覚をすると胸が締め付けられるように苦しい。
そんな僕に、空くんが心配そうに声をかけてくれて今に至る。
「楓くん、僕はビッチングって都市伝説だと思ってた、それほどまでに2人の気持ちが強いのは、2人が運命の番だって事だったんだね。」
えっ?運命の番?
僕の反応に、光くんは驚きを隠せないのか、僕の顔をまじまじと見上げている。
「えっ?楓くんマジで分かってないの?」
冷やかな目をした光くん……
光くんはΩなのに、なんでこんなに怖いのか意味が分からない。
助けを求めるように空くんに目をむけると、空くんも信じられないといった表情を浮かべている。
背中がゾクゾクする。
光くんは、僕の胸ぐらを掴むと聞いたことがない声色で僕に話しかけた。
「さすがにそれは、翠先輩が可哀想だ……運命の番は僕らΩにとっては唯一の希望なんだよ、それなのに楓くんは何も分かっていないしΩの事を分かろうとしない……楓くん、そんなの怠慢だよ……」
なんで……
なんで光くんが泣いてるの……
光くんが怖くて泣きそうなのは僕だよ。
僕たちの、やり取りを見ていた空くんが僕を掴んでいる光くんの手を取りながら、楓はまだ勉強中だからと諭すように声をかける。
重々しい空気を変えたのは、全てを終えて僕を迎えにきてくれた翠くんと先輩達だった。
「光くんはなんで泣いてるの?」
翠くんの質問に、光くんは答えなかった。
「僕が卒業するのが、そんなに悲しいのかい?」
要先輩の自意識過剰な質問、それは重い空気を変えたかったのかもしれない。
そんなに事に気付いていない光くんは、ありえませんと即答すると、要せんぱいはそれは残念とケラケラと笑っていた。
「翠先輩は、こんな何も分かってないαの楓でいいんですか?」
翠くんはにこりと笑った。
「光くんも空くんも俺の事を聞いたんだね……。う~ん、そうだね俺は昔から楓の事が好きで……でもバースの事があったから自分に自信がなくて楓の事を諦めていたんだ。楓がΩと偽っていた時から俺の心には楓しか居なかった、別の誰かを作っても楓の変わりにはならなかった……あたりまえだよね、僕の心は既に楓だけのモノだったから。だからこそ今、俺は経験したことがないほどに心は満たされて穏やかな気分なんだよ、もちろんΩになったばかりで戸惑う事は沢山あるけどね。」
その言葉を聞いた光くんは大きく深呼吸をすると翠にたずねた。
「翠先輩、いま幸せですか?」
翠くんは、僕を引き寄せると。
「凄く幸せだよ。」
そうキラキラと眩しすぎる表情で答えた。
「運命の番なのが明らかなのに全然わかっていない。そんな楓くんの態度が、あまりにもバースを理解していなくてΩとして生きてきた僕は凄く苦しくなってしまい、楓くんに対して凄く嫌な態度をとってゴメンね」
そう話す光くんが凄く大人に見えた。
光くんだけが悪い訳では無いそれこそ誰も悪くない……。
バース関係なく、空くんと光くんとは仲良くなった。
僕たちが高校を卒業したとしても僕たちの関係は切れることはないと確信を持っている。
僕はまだまだαとして未熟だ、きっと周りにも危なっかしく見られる事も有るとおもう。
それでも翠くんを好きなことは誰にも負けないし負ける気もしない。
卒業後に翠くんは教育学部のある大学に進学が決まっている。
幼稚園の先生を目指すと聞いた時は驚いたけれど、翠くんなら子供達に寄り添える優しい先生になれそうだ。
僕が大学を卒業して就職が決まるまでは入籍はできないけれど、それまでは父さんに色々な事を教えてもらいながら翠くんの婚約者として恥ずかしくない自分でいたい。
「楓」
翠くんに名前を呼ばれて、みんなと別れると一気に寂しさが襲ってくる。
これからは本当にもう学校で僕の名前を呼んで貰える事が無くなると思うと、抑えていたものが溢れ出そうで気づかれないように青く広がる空を見上げる。
「卒業しても俺たちの関係は変わらない……むしろ、もっと仲良くなれそうだよな、これからもよろしくな楓。」
そう言って、翠くんが自分のネクタイを外し僕の首へと巻いてくれた。
うちの学校の伝統、好きな人にネクタイを贈るまたは、ネクタイを貰うと2人はいつまでも幸せで居られる。
僕は翠くんの熱がまだ残るネクタイをギュッと握りしめながら、抑えようとしても溢れるものを止めることは僕には出来なかった。
声にらならないかもしれない。
それでも、翠くんに伝えたい……
「翠くん卒業おめでとう!」
「ありがとう!」
そう言って、翠くんが僕だけに見せる顔は可愛すぎる。
~Fine~
0
あなたにおすすめの小説
胎児の頃から執着されていたらしい
夜鳥すぱり
BL
好きでも嫌いでもない幼馴染みの鉄堅(てっけん)は、葉月(はづき)と結婚してツガイになりたいらしい。しかし、どうしても鉄堅のねばつくような想いを受け入れられない葉月は、しつこく求愛してくる鉄堅から逃げる事にした。オメガバース執着です。
◆完結済みです。いつもながら読んで下さった皆様に感謝です。
◆表紙絵を、花々緒さんが描いて下さいました(*^^*)。葉月を常に守りたい一途な鉄堅と、ひたすら逃げたい意地っぱりな葉月。
地味メガネだと思ってた同僚が、眼鏡を外したら国宝級でした~無愛想な美人と、チャラ営業のすれ違い恋愛
中岡 始
BL
誰にも気づかれたくない。
誰の心にも触れたくない。
無表情と無関心を盾に、オフィスの隅で静かに生きる天王寺悠(てんのうじ・ゆう)。
その存在に、誰も興味を持たなかった――彼を除いて。
明るく人懐こい営業マン・梅田隼人(うめだ・はやと)は、
偶然見た「眼鏡を外した天王寺」の姿に、衝撃を受ける。
無機質な顔の奥に隠れていたのは、
誰よりも美しく、誰よりも脆い、ひとりの青年だった。
気づいてしまったから、もう目を逸らせない。
知りたくなったから、もう引き返せない。
すれ違いと無関心、
優しさと孤独、
微かな笑顔と、隠された心。
これは、
触れれば壊れそうな彼に、
それでも手を伸ばしてしまった、
不器用な男たちの恋のはなし。
ウサギ獣人を毛嫌いしているオオカミ獣人後輩に、嘘をついたウサギ獣人オレ。大学時代後輩から逃げたのに、大人になって再会するなんて!?
灯璃
BL
ごく普通に大学に通う、宇佐木 寧(ねい)には、ひょんな事から懐いてくれる後輩がいた。
オオカミ獣人でアルファの、狼谷 凛旺(りおう)だ。
ーここは、普通に獣人が現代社会で暮らす世界ー
獣人の中でも、肉食と草食で格差があり、さらに男女以外の第二の性別、アルファ、ベータ、オメガがあった。オメガは男でもアルファの子が産めるのだが、そこそこ差別されていたのでベータだと言った方が楽だった。
そんな中で、肉食のオオカミ獣人の狼谷が、草食オメガのオレに懐いているのは、単にオレたちのオタク趣味が合ったからだった。
だが、こいつは、ウサギ獣人を毛嫌いしていて、よりにもよって、オレはウサギ獣人のオメガだった。
話が合うこいつと話をするのは楽しい。だから、学生生活の間だけ、なんとか隠しとおせば大丈夫だろう。
そんな風に簡単に思っていたからか、突然に発情期を迎えたオレは、自業自得の後悔をする羽目になるーー。
みたいな、大学篇と、その後の社会人編。
BL大賞ポイントいれて頂いた方々!ありがとうございました!!
※本編完結しました!お読みいただきありがとうございました!
※短編1本追加しました。これにて完結です!ありがとうございました!
旧題「ウサギ獣人が嫌いな、オオカミ獣人後輩を騙してしまった。ついでにオメガなのにベータと言ってしまったオレの、後悔」
【完結】※セーブポイントに入って一汁三菜の夕飯を頂いた勇者くんは体力が全回復します。
きのこいもむし
BL
ある日突然セーブポイントになってしまった自宅のクローゼットからダンジョン攻略中の勇者くんが出てきたので、一汁三菜の夕飯を作って一緒に食べようねみたいなお料理BLです。
自炊に目覚めた独身フリーターのアラサー男子(27)が、セーブポイントの中に入ると体力が全回復するタイプの勇者くん(19)を餌付けしてそれを肴に旨い酒を飲むだけの逆異世界転移もの。
食いしん坊わんこのローグライク系勇者×料理好きのセーブポイント系平凡受けの超ほんわかした感じの話です。
のほほんオメガは、同期アルファの執着に気付いていませんでした
こたま
BL
オメガの品川拓海(しながわ たくみ)は、現在祖母宅で祖母と飼い猫とのほほんと暮らしている社会人のオメガだ。雇用機会均等法以来門戸の開かれたオメガ枠で某企業に就職している。同期のアルファで営業の高輪響矢(たかなわ きょうや)とは彼の営業サポートとして共に働いている。同期社会人同士のオメガバース、ハッピーエンドです。両片想い、後両想い。攻の愛が重めです。
陰キャな俺、人気者の幼馴染に溺愛されてます。
陽七 葵
BL
主人公である佐倉 晴翔(さくら はると)は、顔がコンプレックスで、何をやらせてもダメダメな高校二年生。前髪で顔を隠し、目立たず平穏な高校ライフを望んでいる。
しかし、そんな晴翔の平穏な生活を脅かすのはこの男。幼馴染の葉山 蓮(はやま れん)。
蓮は、イケメンな上に人当たりも良く、勉強、スポーツ何でも出来る学校一の人気者。蓮と一緒にいれば、自ずと目立つ。
だから、晴翔は学校では極力蓮に近付きたくないのだが、避けているはずの蓮が晴翔にベッタリ構ってくる。
そして、ひょんなことから『恋人のフリ』を始める二人。
そこから物語は始まるのだが——。
実はこの二人、最初から両想いだったのにそれを拗らせまくり。蓮に新たな恋敵も現れ、蓮の執着心は過剰なモノへと変わっていく。
素直になれない主人公と人気者な幼馴染の恋の物語。どうぞお楽しみ下さい♪
【完結】異世界から来た鬼っ子を育てたら、ガッチリ男前に育って食べられた(性的に)
てんつぶ
BL
ある日、僕の住んでいるユノスの森に子供が一人で泣いていた。
言葉の通じないこのちいさな子と始まった共同生活。力の弱い僕を助けてくれる優しい子供はどんどん大きく育ち―――
大柄な鬼っ子(男前)×育ての親(平凡)
20201216 ランキング1位&応援ありがとうごございました!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる