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1章
僕のヒーローは翠くんなんですけど……
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えっ……誰!?
開いた扉から入ってきたのは、銀縁の眼鏡をかけた一見、冷たそうな目をした人だった……
えぇ~、普通こういう時って扉バーンして翠くんが助けに来てくれて、楓だいじょうぶ?って言われるまでが、お約束だと思っていたから……ガチで萎える……。
「君たち、これは……同意が有っての事なんだろうな。」
話し方は丁寧だけど眼鏡を指で上げる姿に凄みを感じて居ると、そばで見ていた2人はスミマセンと言うなり凄い勢いで教室から飛び出していった。
その場に残っている、ゆう君と呼ばれた人は僕の顎を掴んでいる手を震わせていた。
「かなめ、悪気はなかったんだよ」
ヘラヘラしながら僕から手を離してくれたけれど、悪気が無かったと言えば、何をしても良いとは限らないからね……
さっき掴まれた腕は痛い……助けに来たのは翠くんじゃない……僕は引きづられただけじゃないか……マジでありえない……
翠くん、もう帰っちゃったかな……
翠くんに、楓って名前呼ばれたいな……
「君、大丈夫?」
そう言って、手を差し伸べてもらったので遠慮なく手を取らして貰った。
この人ぱっと見は真面目そうに見えるけどツーブロの刈り上げ部分がエグいし首元には赤い印付いているのを隠す気も無い所を見るとチャラいな……。
外向きの笑顔を作って、お礼をすると名前を聞かれたので普通に答えると眼鏡の奥の目が細められた気がした。
「なるほど……君があの楓かえでちゃんか……」
どうして他人のバース性に、こんなに興味を持つ人が多いんだろう……
家に居ると絶対に感じる事は無いのに……一歩家の外に出るとΩに対しての他人からの扱いが酷いと感じるのは僕だけなんだろうか……。
メガネに、お礼を言ってその場を離れながら、ふいに昔のことが脳裏に浮かんだ……
✽✽✽✽
僕がαだと敢えて明言しないのには、遥の存在が大きい。
まだ僕が幼い頃……その頃までは遥の事を普通にママと呼ぶことができていた。
僕にとっては優しくて、笑顔で見守ってくれる友達のママに負けないぐらい可愛くて大好きなママだった。
「ママ!みてみて、ありさんが何かを運んでいるよ」
普段は、あまり行く事の無い少し大きな公園で発した僕の言葉で、遙が悲しい顔をするなんて思っても見なかった。
ねぇ、今の聞いた?あの子ママって言ったわよね……
でも見て、顔は綺麗だけど……どうみても男よね?
男性でママって事はΩって事よね……
初めて悪意を感じるヒソヒソを聞いたのは、この時が初めてだった。
僕がママと呼んだからママが悪く言われたの?
とっさに出た言葉に遥は泣きそうな笑顔を浮かべながら僕の耳を両手で塞いだ。
その時に聞こえた言葉は今でも忘れることが出来なかった。
「Ωの子とは遊んではいけません。」
変なものを見るような目をして、口元を歪ませながら楽しそうに話をしている大人達。
悲しそうな表情をしながらも、僕を見つめる目は優しかった……今なら分かる遥は悲しかったんじゃなくて悔しかったんだ。
そしてこの頃の僕は、僕がママって呼んだから遥を悲しませたんだ……そう思い込んでしまった。
その時、僕の元へと笑顔で近づいて話かけてくれたのが翠くんだった。
「なんでΩだと遊んではダメなの?」
ヒソヒソと醜い笑みを浮かべながら話をしていた大人達にも聞こえたのか、その人達はバツが悪そうに自分たちの子供を連れて公園から逃げるように帰っていった。
ママが僕の耳から手をした時、その子が話しかけてくれた。
「ねぇ!きみ名前はなんて言うの?俺は翠!年長だよ、向こうに兄ちゃんも居るから一緒に遊ぼう!」
翠くんの笑顏に安心してママの方を見ると柔らかな笑顔を浮かべながら頷いていた。
「僕は楓、年少さんです。」
翠くんは、楓は男の子だったんだと目をパチクリさせて、いたけれど直ぐに僕の手を取ると、翠くんの、お兄ちゃんのいる方へと向かっていつた。
この時から僕の中では翠くんはヒーローだった。
そして、この日を境に僕はママと呼ぶことが出来なくなり、初めて遥ちゃんと、呼んだときに凄く悲しそうに顔歪めていたのを今でもハッキリと、覚えていた。
あの時は子ども心に辛かったな……。
でも、あの事が有ったから翠くんと出会え、遥も翠くんのママと仲良くなり、僕たち家族に新しい風が吹いたのも確かだった。
翠くんは僕だけでなく僕の家族にとってもヒーローなんだ。
だからこそ、助けに来てくれるのが翠くんだったら……と、淡い夢をみてしまった。
僕がΩと言われても否定も肯定もしないのは、そのままの僕を見てくれる人たちが居るから、敢えて言う必要性が分からないから。
幼い頃を思い出しながら、散々な目にあったと窓の外に目を向けると翠くんの姿が見えた。
「はぁ~遠目で見ても格好良すぎてヤバすぎる……」
見つからないように、窓から目だけを出して翠くん鑑賞していると、後から声がかかった。
「楓ちゃんも、やっぱり翠を狙ってるの?」
振り返った僕の目に映ったのは……。
開いた扉から入ってきたのは、銀縁の眼鏡をかけた一見、冷たそうな目をした人だった……
えぇ~、普通こういう時って扉バーンして翠くんが助けに来てくれて、楓だいじょうぶ?って言われるまでが、お約束だと思っていたから……ガチで萎える……。
「君たち、これは……同意が有っての事なんだろうな。」
話し方は丁寧だけど眼鏡を指で上げる姿に凄みを感じて居ると、そばで見ていた2人はスミマセンと言うなり凄い勢いで教室から飛び出していった。
その場に残っている、ゆう君と呼ばれた人は僕の顎を掴んでいる手を震わせていた。
「かなめ、悪気はなかったんだよ」
ヘラヘラしながら僕から手を離してくれたけれど、悪気が無かったと言えば、何をしても良いとは限らないからね……
さっき掴まれた腕は痛い……助けに来たのは翠くんじゃない……僕は引きづられただけじゃないか……マジでありえない……
翠くん、もう帰っちゃったかな……
翠くんに、楓って名前呼ばれたいな……
「君、大丈夫?」
そう言って、手を差し伸べてもらったので遠慮なく手を取らして貰った。
この人ぱっと見は真面目そうに見えるけどツーブロの刈り上げ部分がエグいし首元には赤い印付いているのを隠す気も無い所を見るとチャラいな……。
外向きの笑顔を作って、お礼をすると名前を聞かれたので普通に答えると眼鏡の奥の目が細められた気がした。
「なるほど……君があの楓かえでちゃんか……」
どうして他人のバース性に、こんなに興味を持つ人が多いんだろう……
家に居ると絶対に感じる事は無いのに……一歩家の外に出るとΩに対しての他人からの扱いが酷いと感じるのは僕だけなんだろうか……。
メガネに、お礼を言ってその場を離れながら、ふいに昔のことが脳裏に浮かんだ……
✽✽✽✽
僕がαだと敢えて明言しないのには、遥の存在が大きい。
まだ僕が幼い頃……その頃までは遥の事を普通にママと呼ぶことができていた。
僕にとっては優しくて、笑顔で見守ってくれる友達のママに負けないぐらい可愛くて大好きなママだった。
「ママ!みてみて、ありさんが何かを運んでいるよ」
普段は、あまり行く事の無い少し大きな公園で発した僕の言葉で、遙が悲しい顔をするなんて思っても見なかった。
ねぇ、今の聞いた?あの子ママって言ったわよね……
でも見て、顔は綺麗だけど……どうみても男よね?
男性でママって事はΩって事よね……
初めて悪意を感じるヒソヒソを聞いたのは、この時が初めてだった。
僕がママと呼んだからママが悪く言われたの?
とっさに出た言葉に遥は泣きそうな笑顔を浮かべながら僕の耳を両手で塞いだ。
その時に聞こえた言葉は今でも忘れることが出来なかった。
「Ωの子とは遊んではいけません。」
変なものを見るような目をして、口元を歪ませながら楽しそうに話をしている大人達。
悲しそうな表情をしながらも、僕を見つめる目は優しかった……今なら分かる遥は悲しかったんじゃなくて悔しかったんだ。
そしてこの頃の僕は、僕がママって呼んだから遥を悲しませたんだ……そう思い込んでしまった。
その時、僕の元へと笑顔で近づいて話かけてくれたのが翠くんだった。
「なんでΩだと遊んではダメなの?」
ヒソヒソと醜い笑みを浮かべながら話をしていた大人達にも聞こえたのか、その人達はバツが悪そうに自分たちの子供を連れて公園から逃げるように帰っていった。
ママが僕の耳から手をした時、その子が話しかけてくれた。
「ねぇ!きみ名前はなんて言うの?俺は翠!年長だよ、向こうに兄ちゃんも居るから一緒に遊ぼう!」
翠くんの笑顏に安心してママの方を見ると柔らかな笑顔を浮かべながら頷いていた。
「僕は楓、年少さんです。」
翠くんは、楓は男の子だったんだと目をパチクリさせて、いたけれど直ぐに僕の手を取ると、翠くんの、お兄ちゃんのいる方へと向かっていつた。
この時から僕の中では翠くんはヒーローだった。
そして、この日を境に僕はママと呼ぶことが出来なくなり、初めて遥ちゃんと、呼んだときに凄く悲しそうに顔歪めていたのを今でもハッキリと、覚えていた。
あの時は子ども心に辛かったな……。
でも、あの事が有ったから翠くんと出会え、遥も翠くんのママと仲良くなり、僕たち家族に新しい風が吹いたのも確かだった。
翠くんは僕だけでなく僕の家族にとってもヒーローなんだ。
だからこそ、助けに来てくれるのが翠くんだったら……と、淡い夢をみてしまった。
僕がΩと言われても否定も肯定もしないのは、そのままの僕を見てくれる人たちが居るから、敢えて言う必要性が分からないから。
幼い頃を思い出しながら、散々な目にあったと窓の外に目を向けると翠くんの姿が見えた。
「はぁ~遠目で見ても格好良すぎてヤバすぎる……」
見つからないように、窓から目だけを出して翠くん鑑賞していると、後から声がかかった。
「楓ちゃんも、やっぱり翠を狙ってるの?」
振り返った僕の目に映ったのは……。
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