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透明になったら
しおりを挟む———透明になったら、何をしようね。
私の母は4年前から自暴自棄になりました。父の表の顔はまともですが、家では乱暴ばかりです。中学2年生の私にとって、両親は世界で1番残念な大人でした。当たり前のように飛んでくる空きビンや暴言、そして母の叫び声。悪い空気の漂うこの家で何も出来ず、私はただ、2人が眠りにつくのをじっと待っていました。
ある日の授業で映画鑑賞をすることになりました。そこには、透明になれる薬を飲んだ主人公と、それを利用した殺人犯が主人公に冤罪をかけるという、2人の長い戦いを描いた物語が映し出されていました。
私は透明人間に憧れました。
透明になったら何をしよう。ひとまず、家で無理に黙る必要はなくなる。怪奇現象を起こして両親を追い出してしまおうか。父がこれまでしてきた暴力はどう復讐しよう。別に私の前からいなくなればなんでもいいのだが。クラスのみんなにいたずらしてみようかな。隣の席の加藤くんとかはパッとしないけど、くすぐってみたら面白いかな。
まぁそれは透明になってから考えるとして、重要なのは方法だ。
授業で見た映画とインターネットを参考に私は準備を進めた。予想以上に薬の開発と量産化が進んでいるらしく、ネット通販から安価で手に入れることができた。
数日後、家に届いた薬は1回分。水をコップに注ぎ、手元に薬を用意した。薬を口に含んだ私は、水の勢いを借りてお腹に流し込んだ。数分もかからないうちに効果が出るらしい。
5分後、ワクワクの止まらない私の心臓は止まった。
———透明になっても、何も出来なかった。
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