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桃栗三年人一年
しおりを挟む──────60年ってどれだけ長いのだろうか
私は今年の春、高校生になった。
所詮はみんな数ヶ月前まで中学校に通っていた子供なわけで、突然大人っぽくなるなんて事はあるはずがなかった。
少し背伸びをした私は、友達と小洒落たレストランに行くことにした。
どうやら想像より人気があるらしく、30分待ちの行列ができていた。
友達は言った。
まだ60年以上も生きるのって果てしないね、と。
確かに、数十分後の食事すら待ち遠しい私たちにとって、残りの寿命の長さは検討もつかなかった。
その後は各々のエピソードを披露して時間を潰していた。
ようやく案内された席に着いて私は思った。
これまでの人生で思い出せるものを全て繋げたとしても、ほんの数ヶ月分くらいにしかならないのではないかと。
歩いてきた道は一瞬の景色として捉えており、頭の中では決して上手く歩けない。
話してきた言葉は必要最低限に抜粋して、表情や仕草は切り捨てられた。
この塵のような記憶の欠片が私の生きた記憶だった。
あと60年生きたところで、記憶なんて1年分の時間に収まる程度だろう。
残り数ヶ月の命だと怯えた私は、友達から溢れていた記憶のスープをすすって、ナイフとフォークで器用に死んだ。
──────60年ってどれだけ短いのだろうか
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