112 / 157
112.王妃の嫉妬(2)
しおりを挟む
「陛下、失礼致します。」
シリウスは陛下のいる部屋へと入る。
「ああ、お前もサラに呼ばれたのか。久しぶりにサラが茶を入れてくれるそうだな。そこに座りなさい。」
「はい。」
シリウスは陛下の向かい側に座った。
「シリウス、『神様の贈り物』を持つ少女が見つかった事は知っているな。」
「はい。」
「心が視える力に加えて魔獣との意思疎通に過去へ遡る力。前例にない『神様の贈り物』を持つ少女をルルドの婚約者として迎え、その力を守って行くと言われ了承した。シリウスもその娘とは仲が良いのではないか?どういう子だ。」
「彼女は…」
シリウスは何かを思い出したようにフッと笑った。
「彼女はとても変わっている女性です。僕は彼女に嫌われるような事をしても彼女は嫌わず向き合ってくれました。この赤い目も綺麗だと言ったり…。どんな事をされても相手を受け入れる事ができる心が広くて穏やかな人です。兄さんが夢中になるのも分かるし僕も…。」
シリウスは喋りすぎてしまったと思いハッとして陛下の顔を見る。
陛下の顔は穏やかな笑顔を見せた。
「なるほど、興味深い娘だな。私の息子達がそこまで夢中になる娘…。」
「陛下…っ!今、息子達・と…」
陛下はシリウスにフッと笑った。
「私はルルドが元王妃、ルナを死なせてしまった時から距離を置き冷遇していた。息子はシリウス1人だともずっと周囲にも言っていた。そうでないと心が安定しなかった。それ程私はルナを愛していたし、愛する者が亡くなる悲しみに耐えられなかった。今では…自分の未熟さを恥ずかしく思うよ。シリウスも王太子になるのだと周りからも言われていたが結局ルルドが王太子にした事でお前もルルドを恨んだだろう。」
「……。」
シリウスは何も答えられなかった。
「昔はお前達は仲が良かったがいつの間にか仲違いするようになったのは、私のせいだな。」
「そんな事は…!!」
「ルルドには王になる厳格さ、魔力に武力、才能が私以上にある。この国を統べる者として相応しい人材に育っていく姿を見て如何に私が幼稚だったのかを思い知らされたよ。…ところでシリウス、お前は最近ルルドと仲は悪くないと聞いている。」
「はい。きっと…スレイ嬢のおかげです。彼女がいなかったらこんな風に兄さんと話す事なんて出来なかったと思います。」
「そうか…彼女は力だけでなく存在自体が『神様の贈り物』なのかもしれないな。」
陛下はシリウスの顔を見てフッと笑った。
「彼女の存在が『神様の贈り物』…そうかもしれませんね。」
シリウスも陛下に笑い返した。
「陛下、息子の他愛ない話を聞いてくださいますか?」
「なんだ?」
「陛下と母上との馴れ初めを聞きたいのです。いつもお2人は仲が良くて憧れているので…。」
(この国は側室を持つ事は稀にあるくらいで殆どの国王は側室を持たなかった。元王妃が亡くなった時にあの陛下が耐えられない程に愛していた存在がいるのに何故母上を側室にしたのか…)
シリウスは陛下のいる部屋へと入る。
「ああ、お前もサラに呼ばれたのか。久しぶりにサラが茶を入れてくれるそうだな。そこに座りなさい。」
「はい。」
シリウスは陛下の向かい側に座った。
「シリウス、『神様の贈り物』を持つ少女が見つかった事は知っているな。」
「はい。」
「心が視える力に加えて魔獣との意思疎通に過去へ遡る力。前例にない『神様の贈り物』を持つ少女をルルドの婚約者として迎え、その力を守って行くと言われ了承した。シリウスもその娘とは仲が良いのではないか?どういう子だ。」
「彼女は…」
シリウスは何かを思い出したようにフッと笑った。
「彼女はとても変わっている女性です。僕は彼女に嫌われるような事をしても彼女は嫌わず向き合ってくれました。この赤い目も綺麗だと言ったり…。どんな事をされても相手を受け入れる事ができる心が広くて穏やかな人です。兄さんが夢中になるのも分かるし僕も…。」
シリウスは喋りすぎてしまったと思いハッとして陛下の顔を見る。
陛下の顔は穏やかな笑顔を見せた。
「なるほど、興味深い娘だな。私の息子達がそこまで夢中になる娘…。」
「陛下…っ!今、息子達・と…」
陛下はシリウスにフッと笑った。
「私はルルドが元王妃、ルナを死なせてしまった時から距離を置き冷遇していた。息子はシリウス1人だともずっと周囲にも言っていた。そうでないと心が安定しなかった。それ程私はルナを愛していたし、愛する者が亡くなる悲しみに耐えられなかった。今では…自分の未熟さを恥ずかしく思うよ。シリウスも王太子になるのだと周りからも言われていたが結局ルルドが王太子にした事でお前もルルドを恨んだだろう。」
「……。」
シリウスは何も答えられなかった。
「昔はお前達は仲が良かったがいつの間にか仲違いするようになったのは、私のせいだな。」
「そんな事は…!!」
「ルルドには王になる厳格さ、魔力に武力、才能が私以上にある。この国を統べる者として相応しい人材に育っていく姿を見て如何に私が幼稚だったのかを思い知らされたよ。…ところでシリウス、お前は最近ルルドと仲は悪くないと聞いている。」
「はい。きっと…スレイ嬢のおかげです。彼女がいなかったらこんな風に兄さんと話す事なんて出来なかったと思います。」
「そうか…彼女は力だけでなく存在自体が『神様の贈り物』なのかもしれないな。」
陛下はシリウスの顔を見てフッと笑った。
「彼女の存在が『神様の贈り物』…そうかもしれませんね。」
シリウスも陛下に笑い返した。
「陛下、息子の他愛ない話を聞いてくださいますか?」
「なんだ?」
「陛下と母上との馴れ初めを聞きたいのです。いつもお2人は仲が良くて憧れているので…。」
(この国は側室を持つ事は稀にあるくらいで殆どの国王は側室を持たなかった。元王妃が亡くなった時にあの陛下が耐えられない程に愛していた存在がいるのに何故母上を側室にしたのか…)
85
あなたにおすすめの小説
【完結】乙女ゲーム開始前に消える病弱モブ令嬢に転生しました
佐倉穂波
恋愛
転生したルイシャは、自分が若くして死んでしまう乙女ゲームのモブ令嬢で事を知る。
確かに、まともに起き上がることすら困難なこの体は、いつ死んでもおかしくない状態だった。
(そんな……死にたくないっ!)
乙女ゲームの記憶が正しければ、あと数年で死んでしまうルイシャは、「生きる」ために努力することにした。
2023.9.3 投稿分の改稿終了。
2023.9.4 表紙を作ってみました。
2023.9.15 完結。
2023.9.23 後日談を投稿しました。
【完結済】私、地味モブなので。~転生したらなぜか最推し攻略対象の婚約者になってしまいました~
降魔 鬼灯
恋愛
マーガレット・モルガンは、ただの地味なモブだ。前世の最推しであるシルビア様の婚約者を選ぶパーティーに参加してシルビア様に会った事で前世の記憶を思い出す。 前世、人生の全てを捧げた最推し様は尊いけれど、現実に存在する最推しは…。 ヒロインちゃん登場まで三年。早く私を救ってください。
見た目の良すぎる双子の兄を持った妹は、引きこもっている理由を不細工だからと勘違いされていましたが、身内にも誤解されていたようです
珠宮さくら
恋愛
ルベロン国の第1王女として生まれたシャルレーヌは、引きこもっていた。
その理由は、見目の良い両親と双子の兄に劣るどころか。他の腹違いの弟妹たちより、不細工な顔をしているからだと噂されていたが、実際のところは全然違っていたのだが、そんな片割れを心配して、外に出そうとした兄は自分を頼ると思っていた。
それが、全く頼らないことになるどころか。自分の方が残念になってしまう結末になるとは思っていなかった。
【完結】姉は聖女? ええ、でも私は白魔導士なので支援するぐらいしか取り柄がありません。
猫屋敷 むぎ
ファンタジー
誰もが憧れる勇者と最強の騎士が恋したのは聖女。それは私ではなく、姉でした。
復活した魔王に侯爵領を奪われ没落した私たち姉妹。そして、誰からも愛される姉アリシアは神の祝福を受け聖女となり、私セレナは支援魔法しか取り柄のない白魔導士のまま。
やがてヴァルミエール国王の王命により結成された勇者パーティは、
勇者、騎士、聖女、エルフの弓使い――そして“おまけ”の私。
過去の恋、未来の恋、そして政略婚に揺れ動く姉を見つめながら、ようやく私の役割を自覚し始めた頃――。
魔王城へと北上する魔王討伐軍と共に行動する勇者パーティは、
四人の魔将との邂逅、そして試練を迎え――。
輝く三人の恋と友情を“すぐ隣で見つめるだけ”の「聖女の妹」でしかなかった私が、
魔王討伐の旅路の中で、“本当の自分”を見つけていく――。
そんな、ちょっぴり切ない恋と友情と姉妹愛、そして私の成長の物語です。
※「小説家になろう」にも掲載。(異世界転生・恋愛12位)
※ アルファポリス完結ファンタジー8位。応援ありがとうございます。
「白い結婚最高!」と喜んでいたのに、花の香りを纏った美形旦那様がなぜか私を溺愛してくる【完結】
清澄 セイ
恋愛
フィリア・マグシフォンは子爵令嬢らしからぬのんびりやの自由人。自然の中でぐうたらすることと、美味しいものを食べることが大好きな恋を知らないお子様。
そんな彼女も18歳となり、強烈な母親に婚約相手を選べと毎日のようにせっつかれるが、選び方など分からない。
「どちらにしようかな、天の神様の言う通り。はい、決めた!」
こんな具合に決めた相手が、なんと偶然にもフィリアより先に結婚の申し込みをしてきたのだ。相手は王都から遠く離れた場所に膨大な領地を有する辺境伯の一人息子で、顔を合わせる前からフィリアに「これは白い結婚だ」と失礼な手紙を送りつけてくる癖者。
けれど、彼女にとってはこの上ない条件の相手だった。
「白い結婚?王都から離れた田舎?全部全部、最高だわ!」
夫となるオズベルトにはある秘密があり、それゆえ女性不信で態度も酷い。しかも彼は「結婚相手はサイコロで適当に決めただけ」と、面と向かってフィリアに言い放つが。
「まぁ、偶然!私も、そんな感じで選びました!」
彼女には、まったく通用しなかった。
「なぁ、フィリア。僕は君をもっと知りたいと……」
「好きなお肉の種類ですか?やっぱり牛でしょうか!」
「い、いや。そうではなく……」
呆気なくフィリアに初恋(?)をしてしまった拗らせ男は、鈍感な妻に不器用ながらも愛を伝えるが、彼女はそんなことは夢にも思わず。
──旦那様が真実の愛を見つけたらさくっと離婚すればいい。それまでは田舎ライフをエンジョイするのよ!
と、呑気に蟻の巣をつついて暮らしているのだった。
※他サイトにも掲載中。
家ごと異世界転移〜異世界来ちゃったけど快適に暮らします〜
奥野細道
ファンタジー
都内の2LDKマンションで暮らす30代独身の会社員、田中健太はある夜突然家ごと広大な森と異世界の空が広がるファンタジー世界へと転移してしまう。
パニックに陥りながらも、彼は自身の平凡なマンションが異世界においてとんでもないチート能力を発揮することを発見する。冷蔵庫は地球上のあらゆる食材を無限に生成し、最高の鮮度を保つ「無限の食料庫」となり、リビングのテレビは異世界の情報をリアルタイムで受信・翻訳する「異世界情報端末」として機能。さらに、お風呂の湯はどんな傷も癒す「万能治癒の湯」となり、ベランダは瞬時に植物を成長させる「魔力活性化菜園」に。
健太はこれらの能力を駆使して、食料や情報を確保し、異世界の人たちを助けながら安全な拠点を築いていく。
辺境のスローライフを満喫したいのに、料理が絶品すぎて冷酷騎士団長に囲い込まれました
腐ったバナナ
恋愛
異世界に転移した元会社員のミサキは、現代の調味料と調理技術というチート能力を駆使し、辺境の森で誰にも邪魔されない静かなスローライフを送ることを目指していた。
しかし、彼女の作る絶品の料理の香りは、辺境を守る冷酷な「鉄血」騎士団長ガイウスを引き寄せてしまった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる