某国の皇子、冒険者となる

くー

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第1章 冒険者への道のり

2. 兄と弟

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「でも俺は、どうしても冒険者になりたいのです」
俺は食事をとる手を止めて、兄の青い目をじぃっと見つめる。
「そんな目で見てもダメなものはダメ!」

赤毛で碧眼――俺たち兄弟は髪と目の色こそ似ているが、他はあまり似ていない。
兄は長身で筋肉質な体つきで、頭もよく武芸に秀でている。容姿端麗の若き皇帝は国民の人気も高い。
一方、俺の身長は170㎝くらい。この国の平均よりも10㎝以上低い。筋肉がつきにくく、武芸はからきしだった。
腕っぷしの才能がないのなら魔法使いになってやると、転生してからすぐに魔法の勉強に力を入れたが、俺の目論見は空振りだった。魔法の世界こそ才能がものを言うようで、俺はそちらもぱっとしなかった。さらに残念なことに、俺の異世界転生ではチートスキルは授けられなかったのだった。
だからこそ、冒険者として実地で経験を積み、レベルアップしていきたいと思っているのだが――兄は俺が冒険者となることに、断固として反対のようだ。

「俺の夢を…兄上は叶えてはくださらないのですか?」
「うっ……ルクスよ、そもそもどうしてそんなに冒険者になりたいんだ?そんなことをせずとも、何不自由なく暮らしていけるだろう」
「それは……」

何不自由なく…か。確かに衣食住の心配をしたことは転生してから今まで一度もない。だが、行き先や行動を制限された生活は、籠の中の鳥のようだった。籠ではなく広い庭かもしれないが、俺はもっと広い世界で自由な人生を歩んでいきたい。
「広い世界に出て見聞を広げ、もっと成長したいのです…兄上のお役に立つために」
「わ、私のために?」
「はい…兄上はベルムデウス帝国を統べる皇帝陛下であらせられます。私がもっとしっかりして、兄上の負担を少しでも減らしてさしあげたいのです」
「ルクス…」
兄の目は潤んでいる。そう、この兄は重度のブラコンなのだ。あともう一押し――
「お願いです、兄上…」
「くっ…ルクス!なんて兄想いのいい子なんだ!!」
兄は歯を食いしばって号泣している。長い巻き毛はボサボサで、自慢の容姿はだいぶしょぼくれてしまっている。おおげさだなあ…
「だが…やはりダメだ!」
……ちっ。

「何故なのです兄上?私が弱いからですか?私はそんなに頼りない?」
「そういうことではなく…こんなに可愛いおまえに何かあったらどうする!?私は…ムリだ!心配で…城下を歩かせるのだって本当は心配で…おまえが城の外に出ているときは心配で仕事も手につかないのだ!」
常に完璧な君主然と振る舞う兄だが、俺のこととなると、こんな風に取り乱すことも珍しくはない。
「…心配かけてごめんなさい兄上。私は部屋に下がります」
「ルクス!?すまない…私のほうこそ…え、もう下がってしまうのか?デザートはどうする!?」
部屋に届けさせる!という兄の声に返事をせず食堂を退出する。

できれば許可を取ってからがよかったが、仕方がない。兄を説得して納得させてやるのは、いっぱしの冒険者になってからにしよう。
――決行は今夜だ。


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