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第1章 冒険者への道のり
3. 皇子の従者
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俺は自室の寝室で、この日のためにあつらえた質素な外套を羽織った。これを着れば帝国の皇子だとは誰にもわからないだろう。
箱に衣類や生活必需品など荷物を詰め、掃除のメイドなどに見つからないよう隠していた、魔法陣が書かれた紙を取り出す。
この魔法陣は高位の魔法使いが書いたもので、大金を払って秘密裏に仕入れたものだった。
これを使って首都から離れた土地に転移し、冒険者を始めるのだ。
「ルクス、何してるんだ?」
「なっ…!?」
背後からかけられた声に驚いて振り返る。
「ウィル!どうしてここに」
幼馴染みで従者のウィル・クリスティオが窓辺に腕を組んで立っていた。
「寝室の扉は鍵がかかってたから、なんだか予感がして……窓から入った。君こそ何をしている?その魔法陣…転移魔法か?」
「勝手に人の部屋に入るなよ!君には関係ない!!」
「関係大アリ。俺は君の従者兼、護衛兼、幼馴染みだ。君の安全を守るのが俺の役目」
ウィルと俺は同じ乳母に育てられた。俺が前世の記憶を思い出す前から、ずっと俺の傍にいて一緒に成長してきた。
だが、俺より10㎝は背が高い。さらさらでまっすぐな黒髪を短髪に切り揃えている。瞳の色は緑だ。剣や弓の腕は同年代の騎士たちの中で一番で、帝国全体で見てもトップクラス。頭もいい。俺のコンプレックスを刺激してやまないヤツは、もちろんモテる。ムカつく。
「止めてくれるなよ、ウィル。俺は冒険者になるんだから」
「夕食のとき、皇帝陛下に止められてたよね。ああ…なるほど、魔法陣を使ってこっそり城を抜け出そうってわけか」
……まずいヤツに見つかってしまった。
「ウィル…俺を止めたってムダだから。おまえのせいで今回失敗したって、またやる。ぜったい諦めないからな。」
「…わかった」
「えっ…いいのか!?」
「君が我が儘を言って折れるのは、いつも俺の方。それに、君が誰よりも頑固なのを、俺は誰よりも知ってる」
あまり表情を変えず、淡々としているのがウィルの話し方だ。そして何でも冷静に卒なくこなす。何年も一緒に過ごしているが、俺はウィルが慌てている姿をほとんど見たことがない。
「ただし、ひとつ条件がある」
「な、なんだよ」
「俺も同行するから」
本当は何もかも自分一人の力でやっていきたかったが、しょうがないか……
「わかった…だが兄上には連絡するなよ」
「ルクスは俺がついてるから無事ってことは伝えるよ。そうしないと陛下がどうなるか…君、そこらへんもちゃんと考えてる?」
「む…ちゃんと考えてるさ。置き手紙を残していくから」
第二皇子の紋章で封蝋をした封筒を懐から取り出し、ウィルに見せる。
「手紙だけじゃ…どうかな。誘拐犯がムリヤリ君に書かせたと考えることもできるし、そうなったら大騒ぎだよ」
心配性な兄が半狂乱になる姿がありありと目に浮かぶ。
「はあ…めんどうだな…」
「いまさら」
ブラコンな兄の過保護な愛が重たい。
忘れ物がないか最終確認をし、ついに出発することになった。
「よし、それじゃそろそろ行くか」
「用意万端みたいだけど、どこに行くの?」
「ブラウフォンス」
ブラウフォンスは帝国から自治権を与えられた自由都市のひとつだ。皇都から距離がある割に治安は安定しているし、なかなか規模の大きな冒険者ギルドがあり、俺にはうってつけだった。
「住宅街に一軒家の手配をしてる。借家だけど」
「ほんとに準備万端だね。君の執念には驚かされるよ」
荷物の箱を上に高く積み上げることで、なんとかウィルが入るスペースを確保する。
「よし、じゃあ魔法陣の上に立ってくれ」
呪文の詠唱を始めると、魔法陣が淡く光りだす。
詠唱が完了し、魔法陣から強い光が放たれ、俺たちは転移したのだった。
箱に衣類や生活必需品など荷物を詰め、掃除のメイドなどに見つからないよう隠していた、魔法陣が書かれた紙を取り出す。
この魔法陣は高位の魔法使いが書いたもので、大金を払って秘密裏に仕入れたものだった。
これを使って首都から離れた土地に転移し、冒険者を始めるのだ。
「ルクス、何してるんだ?」
「なっ…!?」
背後からかけられた声に驚いて振り返る。
「ウィル!どうしてここに」
幼馴染みで従者のウィル・クリスティオが窓辺に腕を組んで立っていた。
「寝室の扉は鍵がかかってたから、なんだか予感がして……窓から入った。君こそ何をしている?その魔法陣…転移魔法か?」
「勝手に人の部屋に入るなよ!君には関係ない!!」
「関係大アリ。俺は君の従者兼、護衛兼、幼馴染みだ。君の安全を守るのが俺の役目」
ウィルと俺は同じ乳母に育てられた。俺が前世の記憶を思い出す前から、ずっと俺の傍にいて一緒に成長してきた。
だが、俺より10㎝は背が高い。さらさらでまっすぐな黒髪を短髪に切り揃えている。瞳の色は緑だ。剣や弓の腕は同年代の騎士たちの中で一番で、帝国全体で見てもトップクラス。頭もいい。俺のコンプレックスを刺激してやまないヤツは、もちろんモテる。ムカつく。
「止めてくれるなよ、ウィル。俺は冒険者になるんだから」
「夕食のとき、皇帝陛下に止められてたよね。ああ…なるほど、魔法陣を使ってこっそり城を抜け出そうってわけか」
……まずいヤツに見つかってしまった。
「ウィル…俺を止めたってムダだから。おまえのせいで今回失敗したって、またやる。ぜったい諦めないからな。」
「…わかった」
「えっ…いいのか!?」
「君が我が儘を言って折れるのは、いつも俺の方。それに、君が誰よりも頑固なのを、俺は誰よりも知ってる」
あまり表情を変えず、淡々としているのがウィルの話し方だ。そして何でも冷静に卒なくこなす。何年も一緒に過ごしているが、俺はウィルが慌てている姿をほとんど見たことがない。
「ただし、ひとつ条件がある」
「な、なんだよ」
「俺も同行するから」
本当は何もかも自分一人の力でやっていきたかったが、しょうがないか……
「わかった…だが兄上には連絡するなよ」
「ルクスは俺がついてるから無事ってことは伝えるよ。そうしないと陛下がどうなるか…君、そこらへんもちゃんと考えてる?」
「む…ちゃんと考えてるさ。置き手紙を残していくから」
第二皇子の紋章で封蝋をした封筒を懐から取り出し、ウィルに見せる。
「手紙だけじゃ…どうかな。誘拐犯がムリヤリ君に書かせたと考えることもできるし、そうなったら大騒ぎだよ」
心配性な兄が半狂乱になる姿がありありと目に浮かぶ。
「はあ…めんどうだな…」
「いまさら」
ブラコンな兄の過保護な愛が重たい。
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「よし、それじゃそろそろ行くか」
「用意万端みたいだけど、どこに行くの?」
「ブラウフォンス」
ブラウフォンスは帝国から自治権を与えられた自由都市のひとつだ。皇都から距離がある割に治安は安定しているし、なかなか規模の大きな冒険者ギルドがあり、俺にはうってつけだった。
「住宅街に一軒家の手配をしてる。借家だけど」
「ほんとに準備万端だね。君の執念には驚かされるよ」
荷物の箱を上に高く積み上げることで、なんとかウィルが入るスペースを確保する。
「よし、じゃあ魔法陣の上に立ってくれ」
呪文の詠唱を始めると、魔法陣が淡く光りだす。
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