14 / 142
第1章 冒険者への道のり
13. 涙
しおりを挟む
「……俺、男なんですけど」
「愛に性別など関係ありません」
「へ、へえ~…そうなんだ……でもよりにもよって、なんで俺なんか…」
「あなたはとても美しい……私の種族――エルフには、あなたのような美しい赤褐色の髪を持つ者はおりません。あなたを一目見た瞬間から、私は恋に落ちてしまったのです」
俺はカァーッと顔が熱くなった。生まれて初めて――前世も含めて――告白されてしまった。それもこんな美形に。
「俺はその……」
「すみません…こんなときに……ほんとうは出会ってすぐに伝えたかったのですが…ガードが固くて」
「……ウィル?」
「ノアとウィルは、やはり付き合っているのですか?」
「俺とウィルが!?そんなわけないよ!ウィルはただの幼なじみだから」
ウィルと付き合う!?それだけはない!あり得ない。
「では、私にもチャンスがありますね」
美しい顔で、エルフが微笑む。
「えっと……それはどうだろう?」
「どなたか、心に決めた方がいるのですか?」
心に……?誰の顔も浮かばなかった。城に仕えるメイドや城下の女性と話す機会はあったが、冒険者になるために画策するのに忙しくて、恋をするのだとか、そんな暇はなかった。
「…いないけど……ごめん、エトワール。君の気持ちは嬉しいけど、応えることはできない」
エトワールの顔が悲しそうに歪む。世の女性たちに謝りたい気分になるが、俺にもゆずれないものがある。
「俺の夢は、一流の冒険者になることなんだ。でも、今はまだ実力不足だから、もっと、人一倍努力しないといけない。だから、今は恋愛に時間を使っている暇はないんだ」
それに、俺にエトワールはもったいない。こんな俺より君にふさわしい人が必ずいる――
「わかりました。では私はノアが冒険者になれるように、そばで支えますね」
「エトワール…」
『冒険者になりたい』前世からの俺の夢。誰にも――…ずっとそばにいたウィルでさえ、「支える」なんてことは言ってくれはしなかった。
俺はベルムデウス帝国の皇子で、それ以外の何者かになる夢なんて、捨てなければならなかった。
立場、責任、義務――城にいると、息が詰まった。
暗黙の従順を求められ――期待、羨望、妬み、蔑み……目に見えない何かに、圧し潰されそうになっていた――
「ありがとう…」
「ノア……?泣いているの?」
うわ…みっともない。
「ごめん…今まで、俺が冒険者になることを応援してくれる人なんていなくて、ずっとひとりでやってきたから…なんか嬉しくて」
「……ノア」
でも、エトワールは俺の隠している身分を知らない。それを知ってしまったら、どうなってしまうのだろうか……
けれど今は、それよりもまず――
「……早いとこみんなと合流しないと」
俺は服の袖で涙をぬぐった。
「……待ってください」
「エトワール?」
「何かが…近づいています」
エトワールが耳に手を添えて集中している。
「これは…獣の唸り声?」
「愛に性別など関係ありません」
「へ、へえ~…そうなんだ……でもよりにもよって、なんで俺なんか…」
「あなたはとても美しい……私の種族――エルフには、あなたのような美しい赤褐色の髪を持つ者はおりません。あなたを一目見た瞬間から、私は恋に落ちてしまったのです」
俺はカァーッと顔が熱くなった。生まれて初めて――前世も含めて――告白されてしまった。それもこんな美形に。
「俺はその……」
「すみません…こんなときに……ほんとうは出会ってすぐに伝えたかったのですが…ガードが固くて」
「……ウィル?」
「ノアとウィルは、やはり付き合っているのですか?」
「俺とウィルが!?そんなわけないよ!ウィルはただの幼なじみだから」
ウィルと付き合う!?それだけはない!あり得ない。
「では、私にもチャンスがありますね」
美しい顔で、エルフが微笑む。
「えっと……それはどうだろう?」
「どなたか、心に決めた方がいるのですか?」
心に……?誰の顔も浮かばなかった。城に仕えるメイドや城下の女性と話す機会はあったが、冒険者になるために画策するのに忙しくて、恋をするのだとか、そんな暇はなかった。
「…いないけど……ごめん、エトワール。君の気持ちは嬉しいけど、応えることはできない」
エトワールの顔が悲しそうに歪む。世の女性たちに謝りたい気分になるが、俺にもゆずれないものがある。
「俺の夢は、一流の冒険者になることなんだ。でも、今はまだ実力不足だから、もっと、人一倍努力しないといけない。だから、今は恋愛に時間を使っている暇はないんだ」
それに、俺にエトワールはもったいない。こんな俺より君にふさわしい人が必ずいる――
「わかりました。では私はノアが冒険者になれるように、そばで支えますね」
「エトワール…」
『冒険者になりたい』前世からの俺の夢。誰にも――…ずっとそばにいたウィルでさえ、「支える」なんてことは言ってくれはしなかった。
俺はベルムデウス帝国の皇子で、それ以外の何者かになる夢なんて、捨てなければならなかった。
立場、責任、義務――城にいると、息が詰まった。
暗黙の従順を求められ――期待、羨望、妬み、蔑み……目に見えない何かに、圧し潰されそうになっていた――
「ありがとう…」
「ノア……?泣いているの?」
うわ…みっともない。
「ごめん…今まで、俺が冒険者になることを応援してくれる人なんていなくて、ずっとひとりでやってきたから…なんか嬉しくて」
「……ノア」
でも、エトワールは俺の隠している身分を知らない。それを知ってしまったら、どうなってしまうのだろうか……
けれど今は、それよりもまず――
「……早いとこみんなと合流しないと」
俺は服の袖で涙をぬぐった。
「……待ってください」
「エトワール?」
「何かが…近づいています」
エトワールが耳に手を添えて集中している。
「これは…獣の唸り声?」
50
あなたにおすすめの小説
【新版】転生悪役モブは溺愛されんでいいので死にたくない!
煮卵
BL
ゲーム会社に勤めていた俺はゲームの世界の『婚約破棄』イベントの混乱で殺されてしまうモブに転生した。
処刑の原因となる婚約破棄を避けるべく王子に友人として接近。
なんか数ヶ月おきに繰り返される「恋人や出会いのためのお祭り」をできる限り第二皇子と過ごし、
婚約破棄の原因となる主人公と出会うきっかけを徹底的に排除する。
最近では監視をつけるまでもなくいつも一緒にいたいと言い出すようになった・・・
やんごとなき血筋のハンサムな王子様を淑女たちから遠ざけ男の俺とばかり過ごすように
仕向けるのはちょっと申し訳ない気もしたが、俺の運命のためだ。仕方あるまい。
クレバーな立ち振る舞いにより、俺の死亡フラグは完全に回避された・・・
と思ったら、婚約の儀の当日、「私には思い人がいるのです」
と言いやがる!一体誰だ!?
その日の夜、俺はゲームの告白イベントがある薔薇園に呼び出されて・・・
ーーーーーーーー
この作品は以前投稿した「転生悪役モブは溺愛されんで良いので死にたくない!」に
加筆修正を加えたものです。
リュシアンの転生前の設定や主人公二人の出会いのシーンを追加し、
あまり描けていなかったキャラクターのシーンを追加しています。
展開が少し変わっていますので新しい小説として投稿しています。
続編出ました
転生悪役令嬢は溺愛されんでいいので推しカプを見守りたい! https://www.alphapolis.co.jp/novel/687110240/826989668
ーーーー
校正・文体の調整に生成AIを利用しています。
この俺が正ヒロインとして殿方に求愛されるわけがない!
ゆずまめ鯉
BL
五歳の頃の授業中、頭に衝撃を受けたことから、自分が、前世の妹が遊んでいた乙女ゲームの世界にいることに気づいてしまったニエル・ガルフィオン。
ニエルの外見はどこからどう見ても金髪碧眼の美少年。しかもヒロインとはくっつかないモブキャラだったので、伯爵家次男として悠々自適に暮らそうとしていた。
これなら異性にもモテると信じて疑わなかった。
ところが、正ヒロインであるイリーナと結ばれるはずのチート級メインキャラであるユージン・アイアンズが熱心に構うのは、モブで攻略対象外のニエルで……!?
ユージン・アイアンズ(19)×ニエル・ガルフィオン(19)
公爵家嫡男と伯爵家次男の同い年BLです。
【完結】帝王様は、表でも裏でも有名な飼い猫を溺愛する
綾雅(りょうが)要らない悪役令嬢
BL
離地暦201年――人類は地球を離れ、宇宙で新たな生活を始め200年近くが経過した。貧困の差が広がる地球を捨て、裕福な人々は宇宙へ進出していく。
狙撃手として裏で名を馳せたルーイは、地球での狙撃の帰りに公安に拘束された。逃走経路を疎かにした結果だ。表では一流モデルとして有名な青年が裏路地で保護される、滅多にない事態に公安は彼を疑うが……。
表も裏もひっくるめてルーイの『飼い主』である権力者リューアは公安からの問い合わせに対し、彼の保護と称した強制連行を指示する。
権力者一族の争いに巻き込まれるルーイと、ひたすらに彼に甘いリューアの愛の行方は?
【重複投稿】エブリスタ、アルファポリス、小説家になろう
【注意】※印は性的表現有ります
【16+4話完結】虚な森の主と、世界から逃げた僕〜転生したら甘すぎる独占欲に囚われました〜
キノア9g
BL
「貴族の僕が異世界で出会ったのは、愛が重すぎる“森の主”でした。」
平凡なサラリーマンだった蓮は、気づけばひ弱で美しい貴族の青年として異世界に転生していた。しかし、待ち受けていたのは窮屈な貴族社会と、政略結婚という重すぎる現実。
そんな日常から逃げ出すように迷い込んだ「禁忌の森」で、蓮が出会ったのは──全てが虚ろで無感情な“森の主”ゼルフィードだった。
彼の周囲は生命を吸い尽くし、あらゆるものを枯らすという。だけど、蓮だけはなぜかゼルフィードの影響を受けない、唯一の存在。
「お前だけが、俺の世界に色をくれた」
蓮の存在が、ゼルフィードにとってかけがえのない「特異点」だと気づいた瞬間、無感情だった主の瞳に、激しいまでの独占欲と溺愛が宿る。
甘く、そしてどこまでも深い溺愛に包まれる、異世界ファンタジー
今世はメシウマ召喚獣
片里 狛
BL
オーバーワークが原因でうっかり命を落としたはずの最上春伊25歳。召喚獣として呼び出された世界で、娼館の料理人として働くことになって!?的なBL小説です。
最終的に溺愛系娼館主人様×全般的にふつーの日本人青年。
※女の子もゴリゴリ出てきます。
※設定ふんわりとしか考えてないので穴があってもスルーしてください。お約束等には疎いので優しい気持ちで読んでくださると幸い。
※誤字脱字の報告は不要です。いつか直したい。
※なるべくさくさく更新したい。
【本編完結済】神子は二度、姿を現す
江多之折(エタノール)
BL
1/7外伝含め完結
ファンタジー世界で成人し、就職しに王城を訪れたところ異世界に転移した少年が転移先の世界で神子となり、壮絶な日々の末、自ら命を絶った前世を思い出した主人公。
死んでも戻りたかった元の世界には戻ることなく異世界で生まれ変わっていた事に絶望したが
神子が亡くなった後に取り残された王子の苦しみを知り、向き合う事を決めた。
戻れなかった事を恨み、死んだことを後悔し、傷付いた王子を助けたいと願う少年の葛藤。
王子様×元神子が転生した侍従の過去の苦しみに向き合い、悩みながら乗り越えるための物語。
※小説家になろうに掲載していた作品を改修して投稿しています。
描写はキスまでの全年齢BL
【完結】だから俺は主人公じゃない!
美兎
BL
ある日通り魔に殺された岬りおが、次に目を覚ましたら別の世界の人間になっていた。
しかもそれは腐男子な自分が好きなキャラクターがいるゲームの世界!?
でも自分は名前も聞いた事もないモブキャラ。
そんなモブな自分に話しかけてきてくれた相手とは……。
主人公がいるはずなのに、攻略対象がことごとく自分に言い寄ってきて大混乱!
だから、…俺は主人公じゃないんだってば!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる