無用庵隠居清左衛門

蔵屋

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第一章

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前老中田沼意次から引き継いで老中となった松平定信は、厳しい倹約令として寛政の改革かんせいのかいかくを実施した。
第8代将軍徳川吉宗によって実施された享保の改革きょうほうのかいかく天保の改革てんぽうのかいかくと合わせて幕政改革の三大改革という。
松平定信は厳しい倹約令を実施したのだった。江戸幕府は町人たちを中心とした貨幣経済の発達に伴い逼迫ひっぱくした幕府の財政で苦しんでいた。
幕府の財政再建を目的とした改革を実施する事は江戸幕府にとって緊急の課題であった。
この時期、各地方の諸藩に於いても藩政改革が行われていたのであった。

そんな中、徳川家直参旗本であった緒方清左衛門は、己の出世の事しか考えない同僚に嫌気がさしていた。
清左衛門は無欲の徳川家直参旗本であった。
俸禄も入らず、出世欲もなく、ただひたすら、女房の千歳と娘の弥生と、三人仲睦まじく暮らす平穏な日々であればよかったのである。
ある日、清左衛門に理不尽な言いがかりが同僚立花右近からあったのだ。
清左衛門は右近の言いがかりを相手にせず、
無視したのであった。
そして、松平定信に対して、隠居願いを提出したのであった。
「おぬし、本当にそれで良いのだな」
「拙者、一向に構いません」
「分かった。好きにするがよい」

こうして、清左衛門は、隠居生活に入ったのである。

しかし、同僚からは清左衛門の律儀な性格を知っているだけに、頼りがいのあった清左衛門が隠居するとになると、たちまちいろんな問題が起きて、むしろ清左衛門に相談することがたくさん出てくるのである。
清左衛門は同僚から相談があれば、どんな些細なことであっても、必ず相談に乗り一緒になって問題を解決するのであった。
このような日々が隠居生活であるにもかかわらず、日常的に、頼りがいのある清左衛門のところに、同僚たちが相談に来るようになったのである。
清左衛門のもとには、次から次と厄介事や揉め事の相談が来るようになったのである。
ある日、同僚の相馬権兵衛が清左衛門のところにやって来た。
「やあ、元気かい?近くまで来たもので、ちょっと様子伺いに寄ったまでよ。おぬし、元気そうだな」
「おかげさんで(笑い)」
「ようこそお越しになりました。粗末なお茶でございます。京都の名物の和菓子を一緒に召し上がってください」
「おお、これはかたじけない。早速、いただくことにしよう」
そう言って、権兵衛は、和菓子を口の中に入れ頬張った。
「これは美味しい。なんと甘い、しかも何とも言えない美味しい甘い味だ。口の中でとろけるようじゃ」
「それはよろしゅうございました。よかったです。相馬様に喜んでもらえて(笑い)」
女房の千歳は徳川家康の血族であった。
本来ならば清左衛門と結婚するのではなくて、尾張家や、紀州家や、水戸家とも縁談話があったが、断り続けて、結局、以前から面識のあった清左衛門と結婚したのである。
この二人の仲人は前老中田沼意次であった。
二人は結婚をすることにより、毎日が楽しい、平穏な暮らしであった。
そのため10ヵ月後には、長女の弥生が誕生したのである。
今から13年前の話である。 
長女の弥生は今は13歳になっている。 
清左衛門は43歳。千歳は37歳である。

この江戸の町に、松平定信の倹約令に対して、反感を持つ浪人や町人たちが悪行を企てるようになったのである。
これ以降、江戸の町の治安は悪くなっていくのであった。

清左衛門の所には、同僚のみならず、与力や同心たちが相談に来るようになったのである。
清左衛門は一刀流の免許皆伝の達人であった。
与力や同心たちは、江戸の町の治安維持のために、清左衛門に協力を要請したのであった。
清左衛門は江戸の町の治安維持のために、
ひとり立ち上がったのであった。







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