働きすぎた社畜、死んだらダンジョン核に転生して魔王に!? 〜自由に生きてたら、気づけば勇者と結婚してました〜

烏羽 楓

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第二章 動き出す利権争い

第11話「資源と欲望と、ダンジョン経済」

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 このダンジョンが生まれてから、はや数か月――。

 ダンジョン「双角の迷宮」は、日に日に拡張され、今では十階層を数えるまでになっていた。
 
 最下層である十階層には、オーガキングを中ボスとして配置済み。巨体に見合わぬ俊敏性と、重魔力をまとった打撃は、並の冒険者では手も足も出ないだろう。

 それだけじゃない。
 最近の発見で、さらに興味深い事実が判明した。

「どうやら、冒険者が戦闘で使う“魔力”ってやつ……あれ、ダンジョンで消費されると経験値として換算されてるっぽいんだよな」

 そう、敵を倒さなくても、戦闘行動そのものが“経験”としてダンジョンに蓄積される。
 つまり、人を殺さずともダンジョンは育つ。魔素の流れが、そういう仕組みになっているらしい。

 だから、俺は思い切って方針を変えた。
 戦いに来た冒険者には報酬を――それも“ゲームっぽく”出してやることにした。

 週に一度、特定の場所に中級宝箱。
 月に一度、上級宝箱。

 このちょっとした“ご褒美イベント”が功を奏したのか、ダンジョンの知名度は爆発的に広まった。
 
 探索にくる冒険者の数は日々右肩上がり。配信されてる効果もあってか、SNSではハッシュタグ「#双角チャレンジ」が連日トレンド入りしている。

 今日も、俺はモニターの前でそんな様子を見守っていた。

「……さて、そろそろ宝箱の更新タイミングかな」

 そう呟いたところで、隣に控えていたレイラが静かに口を開く。

マスター。どうして人間たちは、こうも懲りずに攻略しようとするのでしょうか?」

「ん? ああ……そうか。レイラたちは、人間界のことを知らないんだったな」

 俺はモニターから目を離し、少しだけ説明モードに切り替えた。

「人間界じゃ、もうまともな資源ってほとんど枯渇しかけててな。ダンジョンから得られる鉱石や植物は、純度が高くて希少性も高い。高額で取り引きされるってなれば、そりゃあ、欲しがるわけだ」

「資源……ですか」

「おまけに今の時代、ダンジョン攻略を配信して稼ぐ“配信者”ってのもいてさ。視聴者からの投げ銭とか、広告収益で一攫千金ってケースもある。危険はあるが、見返りが大きい職業として成立してるわけ」

 俺がそう言うと、レイラは少しだけ眉をひそめた。

「しかし、ダンジョンとは……本来、コアを破壊すれば消えるものですよ? そのリスクがあるのに、なぜ?」

「それが人間社会の抜け目なさってやつさ。基本的には大手企業や冒険者組合が、専属の冒険者を使って制圧“だけ”するんだ」

「制圧”だけ”、ですか?」

「そう。ダンジョンコアを破壊せずに“制御装置”を取り付ける。なんかあった時にすぐ破壊出来るようにな。すると、そのダンジョンの“所有権”を主張できるようになる。入場料、資源の持ち出し料、採掘権……あらゆる形で利益が発生するようになるのさ」

 つまり、ダンジョンというのは現代社会における“超高性能の利権マシン”なのだ。

「……汚い考え方ですね。私たちからすれば、同族を殺しにくる侵略者です」

「まぁ、それは否定できない。けど、人間の多くは、ただ“その枠組みに従って生きてるだけ”だったりもするんだ」

 俺は肩をすくめた。

「擁護するわけじゃないけどな。トップに立つ奴が都合よくルールを決めて、あとは下がそれに従って動く……そういう仕組みが回ってるだけなんだよ」

 レイラは黙っていたが、その視線は微かに鋭さを増していた。
 そして、俺はそのまま、ダンジョン端末のネットブラウザを起動し、いつもの情報収集を始めた。

「っと……なんだこれ?」

 モニターに映った、とあるニュース記事が目に飛び込む。

 ――《冒険者組合と数社の大企業、"双角の迷宮"の所有権をめぐり協議開始へ》

 クリックする指が、自然と止まることはなかった。
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