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第一章 忍び寄る灰の気配
第40話「光の奇跡と、ちょっとした混乱」
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ミレーナの手足に生えた鱗が、音もなく砕けていった。
まるで砂のように細かくなり、淡い光に溶けるように消えていく。
黒く変色していた肌も、徐々に本来の色を取り戻しはじめる。
闇に蝕まれていた彼女の身体から、静かに、確かに――“人間”の輪郭が戻っていく。
その光景を、ルークは目を見開いたまま見つめていた。
「……戻っ、て……こ……い……」
かすれるような声でそう呟いた直後、彼の身体は限界を迎えた。
膝が崩れ、そのまま意識を手放す。
「ルーク!」
すぐさま駆け寄ったララが彼を支え、ガイが背中を押さえるようにして床に寝かせる。
「医師を――!」
駆けつけた医師がルークの脈を確認し、小さく息を吐いた。
「大丈夫です。極度の疲労と魔力消耗による気絶でしょう。命に別状はありません」
その言葉に、ララとガイが顔を見合わせる。少しだけ肩の力が抜けた。
続いて、医師はベッドの上のミレーナに目を向け、検査を始める。
しばらくの沈黙の後、医師が言った。
「……魔素の浸蝕、すべて消えています。細胞も再生しており、異常なし。驚くべき回復力です!」
その場にいた者たちは、安堵と歓喜が入り混じった声を上げた。
「よっしゃあああああ!!」
「ほんとに……助かったんだな!」
「さすがルーク! やる時はやるな!」
ララとガイも同時に拳を握って喜び、ララはこっそりルークの頭を優しく撫でた。
(……よく、頑張ったね)
そう心の中で呟きながら、ララはそっと笑みを浮かべた。
◆
数日後。
病室に、やわらかな朝の光が差し込んでいた。
その光の中で、ミレーナが静かにまぶたを開ける。
視界はまだぼやけている。頭も重い。
だが、確かに生きている感覚があった。
「ここ……は……?」
ゆっくりと顔を横に向ける。
そこには、椅子に座ったまま眠る一人の少年の姿があった。
ミレーナの手を握ったまま、微かに寝息を立てている。
「……ル、ーク……?」
掠れた声で呼びかけた瞬間、彼のまぶたがゆっくりと開く。
そして、目が合った。
「……ミレーナ!?」
ルークが驚いたように叫び、すぐにその表情が安堵に変わった。
「目、覚めたんだな……良かった……!」
彼は本当に嬉しそうに微笑み、手をぎゅっと握り返す。
「どう、して……」
ミレーナは震える声で言った。
自分のしてしまったこと、記憶は曖昧でも罪悪感は残っている。
この状況と、彼の表情を見れば、誰が自分を助けてくれたのかは明らかだった。
◆
「……誰しもが、道を間違えることがある」
ルークはミレーナの手を包んだまま、静かに語り始めた。
「俺も、昔間違えたことがあった。……そのせいで、大切な仲間を、失ったこともある」
その声には、悔しさと過去の痛みがにじんでいた。
「これからも、間違えることはあるかもしれない。けど……間違えた自分を正してくれる誰かがいるなら、どんなに遠回りしても、また前に進めると思ってる」
ルークはふっと笑った。
「お互いのダメなとこ、指摘し合ってさ。ぶつかりながらでも、成長していける関係って、悪くないだろ?」
その言葉に、ミレーナは目を見開き、そして――顔を真っ赤にして、俯いた。
「……ありがとっ……」
小さな声だった。けれど、はっきりと届いた。
ルークは立ち上がると、やや照れたように顔を逸らす。
「よし。意識も戻ったし、そろそろ行くわ。……ゆっくり休めよ」
背を向け、病室の出口へ向かう。
「……待って」
その声に、ルークは足を止めて振り返る。
「ん?」
次の瞬間、ミレーナがベッドから手を伸ばし、ルークのネクタイをぎゅっと掴んだ。
「ッ!?」
そのまま引き寄せられ、彼女の唇が――ルークの唇に重なった。
◆
しばしの静寂。
どちらも動けず、時間が止まったような錯覚に陥る。
――が。
「――はぁぁぁぁあ!?」
盛大に開かれる病室の扉と同時に、怒声が響いた。
「な、なにやってんのよぉぉぉぉぉぉ!!」
立っていたのは、ララ。そして、その後ろにガイ。
キスをしていたミレーナとルークを目撃し、ララの顔がみるみるうちに真っ赤になった。
「ちょっと、ミレーナちゃん!? なに勝手にキスしてんの!? ルークも! 何されてんのよ!?」
「ち、ちがっ、違うってこれは事故というか……! うおおおお!? 離せッ! 俺を巻き込むな!」
ララがミレーナに掴みかかり、ミレーナは涼しい顔でネクタイを離さない。
ルークは必死に二人の間で手を振り回す。
一方、ガイはというと――
「……ま、元気そうでなによりだな」
呆れとも苦笑ともつかない表情を浮かべて、そっとドアを閉めた。
こうして、騒がしくも温かい笑いに包まれながら――
ルークたちの戦いがひとつの節目を迎えた。
まるで砂のように細かくなり、淡い光に溶けるように消えていく。
黒く変色していた肌も、徐々に本来の色を取り戻しはじめる。
闇に蝕まれていた彼女の身体から、静かに、確かに――“人間”の輪郭が戻っていく。
その光景を、ルークは目を見開いたまま見つめていた。
「……戻っ、て……こ……い……」
かすれるような声でそう呟いた直後、彼の身体は限界を迎えた。
膝が崩れ、そのまま意識を手放す。
「ルーク!」
すぐさま駆け寄ったララが彼を支え、ガイが背中を押さえるようにして床に寝かせる。
「医師を――!」
駆けつけた医師がルークの脈を確認し、小さく息を吐いた。
「大丈夫です。極度の疲労と魔力消耗による気絶でしょう。命に別状はありません」
その言葉に、ララとガイが顔を見合わせる。少しだけ肩の力が抜けた。
続いて、医師はベッドの上のミレーナに目を向け、検査を始める。
しばらくの沈黙の後、医師が言った。
「……魔素の浸蝕、すべて消えています。細胞も再生しており、異常なし。驚くべき回復力です!」
その場にいた者たちは、安堵と歓喜が入り混じった声を上げた。
「よっしゃあああああ!!」
「ほんとに……助かったんだな!」
「さすがルーク! やる時はやるな!」
ララとガイも同時に拳を握って喜び、ララはこっそりルークの頭を優しく撫でた。
(……よく、頑張ったね)
そう心の中で呟きながら、ララはそっと笑みを浮かべた。
◆
数日後。
病室に、やわらかな朝の光が差し込んでいた。
その光の中で、ミレーナが静かにまぶたを開ける。
視界はまだぼやけている。頭も重い。
だが、確かに生きている感覚があった。
「ここ……は……?」
ゆっくりと顔を横に向ける。
そこには、椅子に座ったまま眠る一人の少年の姿があった。
ミレーナの手を握ったまま、微かに寝息を立てている。
「……ル、ーク……?」
掠れた声で呼びかけた瞬間、彼のまぶたがゆっくりと開く。
そして、目が合った。
「……ミレーナ!?」
ルークが驚いたように叫び、すぐにその表情が安堵に変わった。
「目、覚めたんだな……良かった……!」
彼は本当に嬉しそうに微笑み、手をぎゅっと握り返す。
「どう、して……」
ミレーナは震える声で言った。
自分のしてしまったこと、記憶は曖昧でも罪悪感は残っている。
この状況と、彼の表情を見れば、誰が自分を助けてくれたのかは明らかだった。
◆
「……誰しもが、道を間違えることがある」
ルークはミレーナの手を包んだまま、静かに語り始めた。
「俺も、昔間違えたことがあった。……そのせいで、大切な仲間を、失ったこともある」
その声には、悔しさと過去の痛みがにじんでいた。
「これからも、間違えることはあるかもしれない。けど……間違えた自分を正してくれる誰かがいるなら、どんなに遠回りしても、また前に進めると思ってる」
ルークはふっと笑った。
「お互いのダメなとこ、指摘し合ってさ。ぶつかりながらでも、成長していける関係って、悪くないだろ?」
その言葉に、ミレーナは目を見開き、そして――顔を真っ赤にして、俯いた。
「……ありがとっ……」
小さな声だった。けれど、はっきりと届いた。
ルークは立ち上がると、やや照れたように顔を逸らす。
「よし。意識も戻ったし、そろそろ行くわ。……ゆっくり休めよ」
背を向け、病室の出口へ向かう。
「……待って」
その声に、ルークは足を止めて振り返る。
「ん?」
次の瞬間、ミレーナがベッドから手を伸ばし、ルークのネクタイをぎゅっと掴んだ。
「ッ!?」
そのまま引き寄せられ、彼女の唇が――ルークの唇に重なった。
◆
しばしの静寂。
どちらも動けず、時間が止まったような錯覚に陥る。
――が。
「――はぁぁぁぁあ!?」
盛大に開かれる病室の扉と同時に、怒声が響いた。
「な、なにやってんのよぉぉぉぉぉぉ!!」
立っていたのは、ララ。そして、その後ろにガイ。
キスをしていたミレーナとルークを目撃し、ララの顔がみるみるうちに真っ赤になった。
「ちょっと、ミレーナちゃん!? なに勝手にキスしてんの!? ルークも! 何されてんのよ!?」
「ち、ちがっ、違うってこれは事故というか……! うおおおお!? 離せッ! 俺を巻き込むな!」
ララがミレーナに掴みかかり、ミレーナは涼しい顔でネクタイを離さない。
ルークは必死に二人の間で手を振り回す。
一方、ガイはというと――
「……ま、元気そうでなによりだな」
呆れとも苦笑ともつかない表情を浮かべて、そっとドアを閉めた。
こうして、騒がしくも温かい笑いに包まれながら――
ルークたちの戦いがひとつの節目を迎えた。
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