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◎青薔薇は枯れる
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「私はレナって言います。…もしかしたらお二人が探してる人と一緒かもしれないので話を…」
「…!是非!」
僕は食い気味に承諾した。
近くにあったスタバに入り、ミル、レナさん、僕の3人で同じ席に座り自己紹介を軽く済ませた。
「…そして、本題ですが、僕達は今、白髪の男の人を探していて、彼は右腕に銀色の腕時計をしてるという特徴を知ってるんですが、レナさんは?」
「私は、彼の名前を、知ってます。」
なんだって!?名前!?
「え!?そうなんですか!?」
「まあまあ。ホス。落ち着いて店内だから。」
ミルは両手を上下に振って僕を宥めた。
「はい。彼は、モルフェ。私の元恋人です。」
「モルフェ…ですって?」
今度はミルが身を乗り出してレナさんに寄った。
モルフェ、といえば、エデンのNPCが僕のことをそう呼んでいた。
「ミルも、モルフェと関係があるのかい?」
「あ、ああ。あるよ。彼はあんた、レナを探してて、いつも私の部屋に逃げてきていた。」
「私を探してたんですか?」
「ああ。少しあんたのことも聞いたけど、なんか昔にあったの?」
「はい…。実は、私が彼に質問したんです。私のことを愛してるかって。そしたら、彼は好きだとしか言わなくて、愛してるとは言ってくれなかったんです。」
モルフェはレナさんを愛していなかったのだろうか。
「…だから、あいつは恋と愛の違いなんて気にしてたのか。」
「…やっぱり彼は私の質問を…。」
「ああ。あいつの本心はどうなのか知らないけど、少なくとも私から見たら、あんたを相当大事にしてたみたいだったよ。」
レナさんも、かける言葉を間違えた人なのか…。
しばらく、僕達3人は黙ってコーヒーを飲んだ。
…そこにレナさんが割って入った。
「…お二人はどうしてモルフェくんを探してるんですか?」
「僕達の推測だと、彼が、僕の彼女、ナッツを連れ去った犯人の可能性があるからです。」
「モルフェくんが、攫った…んですか?女の子を?」
「はい。あくまで僕たちの推測ですけど。」
「…でも、ミルさん。モルフェくんは私を探していたんですよね?」
「う、うん。」
「なら、どうして…」
「レナ。一つ加えておくと、モルフェはあんたを探してる時とナッツちゃんを攫った時でアバターが違ったんだよ。それについて、何か知ってることは?」
「い、いえ、彼はいつも同じアバター…のはずです。」
歯切れの悪い返事だった。
「何か知ってるんですか?レナさん。」
「…人の安全がかかってるなら、もう、探り探りやっている場合ではありませんよね。」
彼女は独り言を発してから、椅子をギギィと引きながら立ち上がった。
「ミルさん、ホスさん。これから行く場所は秘密にして下さいね。」
ミルと僕は彼女の雰囲気に圧倒されながら頷きレナさんに付いて行った。
モールパークを抜け、ホームパークへワープして彼女の早い足取りに合わせた。
ホームパークとは、その名の通りで、このIFで住みたいと、なった時、ペアがあれば買える有料の家の集合地である。
僕もナッツと時たまにここで家を買おうかと話した。
「着きました。」
彼女が立ち止まった家は至ってシンプルなモダン風な家だった。
レナさんは鍵をじゃらじゃらとさせながらドアを開けて僕たちを招いた。
「お帰りなさい。レナ様……と、その他のお客様。」
出迎えてくれたのは……。
黒髪、黒目、黒いスーツに身を包んだ真面目そうな女性だ。
「ただいま。リサ。」
リサと呼ばれる女の人にレナさんは耳打ちして何かを伝えた。
「…ともかく、お上がり下さい。」
僕はミルの顔を見た。ミルも僕の方を見ていたたため、顔を見合わせた。訳もわからないって感じの表情だ。
リビングに先ほどの3人に足してリサさんの1人合わせて4人で1つのテーブルを囲んだ。
「ミルさん、ホスさん。紹介します。彼女はリサ。モルフェくんの元秘書です。」
「よろしくお願いします。」
リサさんはなんとも行儀良く姿勢良く礼をした。
「リサ、こっちはミルさん。こっちはホスさんだよ。」
僕達もそれぞれぎこちないながらも礼をした。
「…というか、モルフェの元秘書なんですか!?」
ようやく、頭が働いた僕はリサさんに聞いた。
「はい。私はマスターの、モルフェの元秘書です。」
信じられない。さっきまで犯人の情報なんて空を掴むようなものしかなかったのに、今や名前も元恋人や元秘書が目の前にいる。
「2人は家族か何かですか?」
僕は向かい側に座るレナさんとリサさんに聞いた。
「いやいや、家族というより、リサは居候です。」
話は少し遡る。
リサさんはモルフェから離れた後、ホームパークに行き自分の住む場所を見つけようとした。しかしお金がないため途方に暮れていた。道端に蹲っていると、レナさんが偶然見つけたらしい。そこからリサさんを引き取る形でレナさんは家に招いたらしい。
話し終えるとレナさんは2階にお菓子を取りに行くと言っていなくなってしまった。
このあらすじを聞き、ミルは続いて質問した。
「リサ…だっけ。あんた、"元"ってどういう意味?」
「私は、マスターにクビにされてしまったのです。」
「いつからさ。」
ミルの声が低くなっている。
「今から約1週間前です。」
「じゃあ、あんたは、ナッツちゃんがモルフェに連れてかれるのも、そのずっと前からのあいつの虐待も知ってるんだね。」
「はい。承知しています。」
ミルは普段とは違う冷たい雰囲気を纏っている。
彼女は席を立ちリサさんの方に詰め寄った。
「あんたは!それでもあいつを止めようとはしなかったの!?」
ミル…。
「ナッツちゃんが苦しい思いをしてる時、あんたは見て見ぬふりをしたの!?」
……。
「あんたは彼女を見殺しにしたの!?」
ミルは、拳を上げ…。
いや、ダメだ!殴るなんて!
「ダメだ!彼女はまだ何も言ってない!」
僕はミルの振り上げた腕を抑えた。
「ホス。手を離せ。こいつはあの子が傷つけられるのを黙って見てたんだよ。殴られても文句なんか言えないでしょ。」
「ミル!落ち着け!」
「ホス!あんたこそ!平気なの!?今、目の前にあいつの共犯者がいるんだよ?」
「…僕は、知れれば良い。ナッツが無事かどうか。」
その言葉を聞いてミルは力の入った拳を緩めた。
「ミル様。私は誤ちを犯しました。私がマスターの元から去らずに必死に止めていればナッツ様を精神的、肉体的に傷つけずに済んだはずです。ですが、私は…」
リサさんは僕達に謝罪した。深々とお辞儀をして、声色もしんしんとしながらも誠意の感じるものだった。
「…私は、勇気が持てなかった。」
リサさんに繋がるようにミルが話し始めた。
「私は4ヶ月前から知ってるんだ。彼女が小さな声でごめんなさい、ごめんなさいって言っていたのを。それをしてるのがモルフェだって分かったのは間もなかった。」
ミルはナッツが虐められていることを…
「なのに、私は止められなかった。どう止めればいいのか分からなかった。」
知っていたのに、無視した。
「長い間、ずっと悩んでた。怖かった、なんてあの子と比にならないだろうけど…」
……。
「ホス。今更かもしれない。けど言わせて欲しい。…ごめん。」
……。
「みんな、彼女を、ナッツを助けられた。けどできなかったんだ。その理由が恐怖でも、力不足であっても、誤ちであっても。」
ミルの下げた頭をトントンと叩く。
「だから、僕は誰が悪いとか、誰の責任なんてことは問い詰めない。僕が望むのはナッツの無事だけだ。」
「…ホス。」
「ホス様、ミル様。私も、彼女を救いたいです。私の誤ちを正したいです。」
「ああ。リサさん。頼むよ。彼の元秘書ってだけでわかる情報があるかもしれないからね。」
「ありがとうございます。全力でサポートさせていただきます。」
僕達3人が握手し合っていると、2階からレナさんがやってきた。
「3人とも小麦は大丈夫?」
なんとも気が抜ける問いかけだ。
「あ。私、小麦アレルギーだよ。」
ミルはそれに答えた。
「ミル様。ゲーム内ではアレルギー反応は出ませんよ。」
レナさんお手製のクッキーを食べて僕達3人の気も落ち着いた頃。
「皆様。私はマスター、モルフェの居場所を知っています。そしてある条件を満たせればそこに連れて行くこともできます。」
リサさんは言った。
僕は彼女の発言に質問を投げた。
「条件って?」
「マスターが今いる場所から離れることです。」
「どういうこと?」
ミルも質問した。
「マスターは今、IFの制御室、イデ城に閉じこもっています。ナッツ様を連れ込みながら。そしてイデ城の開放条件はマスターが他のパークに行くこと、また、マスターがIFからログアウトすることです。」
「それなら、モルフェくんがログアウトするのを待っていれば開放されるんじゃ…」
レナさんが発した言葉に僕も納得だった。
「マスターはここ数日、ずっとIFにログインしたままです。ログアウトした軌跡はありません。」
「…だから、直接誘き出さなきゃいけないのか。」
僕は理解を改めた。
「でも、どうやってやるんだ?」
「……。」
「……。」
「…私が囮になる。」
そう口を開いたのはレナさんだった。
「私なら、モルフェくんを外に出せる。」
「…確かに、マスターはレナ様をお慕いしています。それなら…」
「でも。良いのか?」
少し勢いづいた会話の流れを止めるようにミルはレナさんに言った。
「…うん。私も、彼に言いたいことがあるから。」
「…そう、か。」
「…であれば、レナ様と私がイデ城の前までワープします。そして、マスターを誘い出します。
誘い出せたら、お二人、ミル様とホス様にご連絡します。受け取ったらイデ城の内部にワープさせます。申し訳ありませんが城内のどこにナッツ様がいるか、私には分かりません。ですのでお二人で探してください。」
僕とミルは頷き答えた。
「ナッツ様を見つけたら、ワープ先をホームパークに指定してワープしてください。成功したらメッセージを私に送ってください。私とレナ様も状況を見て離脱します。」
「その後、モルフェがナッツちゃんがいないことに気づいたらどうするんだ?」
「…私が対処します。」
リサさんの言葉に嫌な気を感じた。
「とにかく、成功したら、3人の皆様はすぐにナッツ様にリアルでの居場所を聞きだし身柄を確保してください。私はリアルには介入できませんので、そちらは頼みます。」
「…分かった。」
僕は震える手を抑えて言った。
「作戦の実行は明日の朝に始めます。始める前にここに来てください。」
ミルはアダルトパークに戻り、明日から何日か休むことを伝えに行った。
リサさんはレナさんが貸してくれている部屋に戻ってしまった。クビにした上司にまた会いに行くのだから感情の整理が必要だろうと思う。
それで言えば、レナさんも、である。
「レナさん、大丈夫です…か?」
「う、うん。」
空が暗くなりリビングのランプの光が壁に色んな影を映している。
「聞いても…いいですか?」
彼女は小さく頭を縦に振った。
「…モルフェに何を伝えようとしてるんですか?」
「私、彼に質問したって言ったわよね。」
「…はい。」
「なんであんな質問したか、分かる?」
「…いいえ。」
「私、愛が欲しかったの。誰かに好きになってもらうんじゃなくて、愛して欲しかったの。完璧な家族が欲しかった。子供と私と夫がいる生活がね。私にとってはそれだけが全てだった。」
……。
「私には、夫がいなかった。それが嫌だった。だからこの"夢が叶うゲーム"を始めたの。夫を見つけたかったから。」
「…それで、見つけたのはモルフェですか?」
「…うん。彼は私を大切にしてくれた。私も彼が好きだった。」
……。
「私は、彼を夫に選ぶために質問した。"愛してくれる?"って。結果はさっき言った通り。彼は"好きだ"としか言ってくれなかった。」
………。
「…その時、私、彼に言ったの。"好きと愛してるは違う"って。その時の私は分かっていた、好きと愛することの差を。でも、今は分からなくなった。」
「…どうしてですか。」
「私が子供達を産んだ時、産むことに反対した親がいた、妊娠したことを知って私から去ったリアルの"彼"がいた。私が産んだ子達を抱えて泣いて喜んでたの。」
………。
「…親も"彼"も私を愛していないと思ってた。だから子を捨てろって言ったんだと思ってた。でも違った。どれもこれも、私を愛してくれて考えてくれたことだった。それを知って分からなくなった。愛も、好きという気持ちの差も、それ自体ですら分からなくなった。」
……。
「だから、私は彼に、モルフェくんに謝りたいの。あんな別れ方をしてごめんって。あの時、私は人の愛を判別できるって思い込んでいたって。そのせいで今まで苦しませてごめんって。」
…。
「…ごめんなさい。……彼が、ナッツさんを連れ去ったのは私にも責任がある。」
「…そんな、ことは…」
「私は誤ちを犯した。だから、私も責任を取る。囮になるのも、彼の心を治すのも。私がしなきゃいけないことなの。」
「…僕も、失敗しました。だから、こんなことになってるんです。リサさんとミルにも言いましたけど、誰が悪いとか、原因とか、関係ないんです。ナッツが笑って親のもとに帰れるようにできれば、それでいいんです。」
「…ホス。…私の心配してくれてありがとね。」
「え?どうして…」
「だって私が元彼に会うのが辛いと思ったんでしょ?だから、ありがと。」
「…はい。ど、どういたしまして…?」
レナさんはふふっと笑いながらオレンジ色の髪を青薔薇のイヤリングが着いた耳にかけた。
翌日、朝。
「それでは、皆様。ナッツ様を救出しましょう!」
「「「おー!!」」」
リサさんの言葉に合わせて僕達は意気込んだ。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
「おはよう。モルフェ。」
「ああ。おはよう。ナッツ。」
彼女に軽くキスをしてベットから起きる。
「ナッツ、そのまま寝ててもいいけど早く起きろよー。」
「うん。分かったー。」
ナッツの寝起き声で口元が緩まずにはいられない。
俺はキッチンに向かい、朝食を作る。今日のメニューは、スクランブルエッグとウィンナーとベーコン。焼きたてのパンを添えてって感じかな。
冷蔵庫からオレンジジュースを2本出す。
俺用と彼女の用だ。
着火したコンロの上に油を引いたフライパンを置く。卵を3個割りフライパンの上でかき混ぜる。優雅な朝にちょうどいい音楽を流しながら。
しかし、そんな音楽にそぐわない雑な耳に響くような音が聞こえた。
[ピンポーン!!]
ドアベルだ。
「誰だ。こんな朝早くに。」
この城に来客なんて中々いないのに。
俺はドアの前に立ち、片手で片方のドアをそっと開けた。
すると目の前には、女が1人、機械が1つ立っていた。
[マスター。]
「モルフェくん。」
「何のようだ。」
[マスター。レナ様がマスターに話があると…]
「お前には聞いてない。黙ってろ。」
「モルフェくん。私、あなたに謝りたくて…」
俺はドアを力一杯開けた。ドアが壁に当たった音も聞こえた。だがどうでもいい。
「今更何を?なんだ、こいつから聞いたか?俺がIFのゲームマスターだって。世界一の金持ちだって。だからよりを戻したいってか?」
「違う。私はあの時のことについて謝りたくて…」
「謝る?必要ない。今の俺には彼女がいる。君はもう必要ない。君が俺に言ったことと同じだ。俺は君が好きだった。でも好き止まりだったのさ。でも今は違う。俺は彼女を愛してる。
彼女のためを思って、彼女を救ったんだ。どうだ?すごいだろ?君にそんなことができるか?愛する人のために行動できるか?」
「いや、モルフェくん…」
「できないよな?君は自分のことばっかりだ。俺の話を聞きすらしなかった。俺が何を思って君を想っていたのか、その理由を聞かなかった。」
「…モルくん。ごめんなさい!」
「…は?」
「あなたの言う通りだった。私はあなたの話を聞かないで一方的に別れた。私が別れを切り出した理由も言わないで去った。だから今、ちゃんと説明させて。それで謝らせて。」
「…それで?どうなる?君は説明するだけして、謝るだけ謝って、それで、俺は、何すればいい?許せってか?できるかよ。そんなこと。」
「……。」
「謝るなんて、結局、自己満足さ。君が俺に恩返ししたいって言ったあの時から君はずっと自分のことばっかだ。自己満足だ。」
「私は、あなたが心配で…」
「…心配か。じゃあ今まで何してた?カズトのところに行って何してた?言ってみろよ。」
「…っ!何でそれを!」
「はっ。ほらな。どうせあいつに乗り換えたんだろ?だけど、もうあいつは殺した。残念だったな。まぁ、でも君にとっては数ある男のうちの1人に過ぎないんだろうなぁ。」
「…っ!モルフェくん!君の方こそ!女の子を連れ去ってるんでしょ!?私よりももっとおかしいし、イカれてる!」
「君の方こそ!」
と、息を吸った時、声がした。聞き慣れた声だった。
「モルフェ!!助けて!!」
「ナッツ!」
1分30秒前。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
R:突入開始(既読)
H:了解(既読)
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
僕とミルは城の中にワープされた。
「ここが、イデ城。」
ミルは城の装飾や辺りを見回している。
「ミルは1階を頼む。僕は2階を。」
「了解。」
僕は階段を登り2階に向かった。
登った途端に気づいた。ある声に。
「モルフェー。大丈夫ー?」
部屋から"彼女"が出てきた。
「ナッツ…?」
「…っ!嫌!」
「ナッツ!」
彼女は僕を見るなり走って逃げて行った。
「おい!どうして…」
…そうだ、彼女にとってモルフェも僕も同じ"あのホス"なんだ。いじめられ、怒鳴られたんだ。
じゃあ、どうすれば…。
「ナッツちゃん!こっちだよ!」
っ!ミル!
ミルはナッツをある部屋に入れた。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
「大丈夫?ナッツちゃん。」
「う、うん。ありがと。でもあなたは…」
「私はミル。あなたを助けにきたの。あなたは騙されてる。あのモルフェっていう男に。」
「え?モルフェが私を騙してる?」
「そう、あなたに酷いことをしたホスもモルフェ。だから、今、扉の外にいる彼こそが本物のホス。あなたの本当の彼。」
「…そんな。」
「一旦、ホスに会おう?」
「…う、うん。」
私は座り込んだナッツちゃんを立たせ扉を開けた。
「ナッツ!」
「…!」
ホスはナッツちゃんを抱いた。
「ナッツ。ごめん!僕が君にあんなこと言わなきゃ、君はモルフェに騙されなかったのに。本当にごめんよ。」
「…うん。」
…?それだけ?ホスに言う言葉って。
ナッツちゃんは大きく息を吸って、
「モルフェ!助けて!!」
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
「ナッツ!」
レナから目を逸らし彼女の方へ向かおうとした、その時。右手を掴まれた。
「後にしてく…れ。」
[一叶。]
掴んだのは、"リサ"だった。
顔を歪ませ、目に涙を浮かべ、力は入ってないが精一杯に俺を止めようとしている。
……。だが、ダメだ。行かなくちゃ。彼女を助けなきゃ。
俺は掴んだ手を振り解いて、声がする方へワープした。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
「ホス!」
ミルが僕をナッツから引き剥がす。
その後すぐ、ヤツが現れた。
白い刃をスレスレに避けるが彼女はヤツの腕の中にいる。
「ナッツは、俺のものだ。」
「…お前が、モルフェ。」
「モルフェ。やめるんだ。こんなこと間違ってる。」
ミルは彼を見ると説得し始めた。
「ミル。君には関係ない。俺は彼女を救ってる。」
……。
「…救ってる?…ふざけるなよ!人の人生めちゃくちゃにしやがって!」
「めちゃくちゃにしてるのはお前の方だろ。ホス?ナッツに暴言、言って苦しませただろ?」
「……っ。」
「モルフェくん!こんなこと止めようよ!」
レナさんとリサさんも追いついた。
「マスター。お願いです。」
「あー。そうか、そうか、みんな、寄ってたかって俺を敵にしたいんだな。だが言わせて貰えばみんな、ここにいるみんな、誤ちを犯してる誰もが、ミスをしてる。言葉の掛け方、勇気の出し方、行動する時間。」
……。
「ナッツは俺を選んだんだ。別に強要してない。最初に来るかどうかも聞いた。付き合っていいか、も聞いた。それに彼女は同意した。俺は何も間違ったことなんてしてない。」
そうだ。ナッツに対して
……「僕をその名で呼ぶな!」……
なんて言って悲しませたのは僕だ。
怒鳴っただけで理由も謝罪も言わなかった。彼女なら分かってくれると、どこかで思っていた。だから、彼女は今ヤツの腕の中にいる。
…でも、みんな、誤ちを正そうとしてる。
過去できなかったことを今やろうとしてる。
過去しなかったことを今しようとしてる。
過去してしまったことを今直そうしてる。
僕も、向き合うんだ。
「ナッツ。」
「……。」
「君は覚えてるかな。僕は塾帰りで夜遅かったのに、君は塾の前でずっと待っててくれた。寒いって言って、僕が持ってたホッカイロをほっぺに当てると暖かいって鼻を赤くして言った。」
「…。」
「これはどうかな。君が学校でいじめられていた時、僕が止めた。けど逆にボコボコにされちゃって半泣きだった。そんなみっともない僕を君は抱えて頭を撫でてくれた。」
「…ホス。」
「こんなのもある。君は僕と朝から晩まで電話したいって言って、スマホの電池がなくなっても充電しながら答えたんだ。そうしたら君のお母さんが「もうそろそろ終わりにしなさい!」って怒ってて、君は伝えたいこと言いたいことを早口で僕に言った。でも結局聞き取れてなくて次の日に同じ話をした。」
「…ユウマ。」
「…初めて会った時のこと。君は野良猫に餌をやっていた。数匹の猫に囲まれて、嬉しそうに餌をやっていた。僕はその時、家族のことで悩んでた。君はそのことに気づいたのかどうか知らないけど、僕に近寄って手を引っ張った。そしてこう言った。」
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
「猫ちゃんに餌あげてみない?」
「いいのかい?」
「もちろん!この子達、お腹ぺこぺこだから喜んでくれるよ!」
僕は彼女から貰ったひとつまみの餌を猫の口元に運んだ。そしたら、パクっと食べる…んじゃなくて舌でペロペロ舐め始めた。
「…っ!くすぐったい!」
「でしょー!」
猫を膝に乗せて優しく撫でている彼女の隣に座った。
「君は、いつもここに?」
「うん。ここに来ると忘れたものを思い出せるんだー。」
「へー。」
「君は?」
「…?ぼ、僕はたまたまここに来て、」
「そっかー。じゃあ運命だね。」
「え?」
「だって君がたまたま来た時に私がいたんでしょ?」
「うん。でも、君はいつもここにいるんでしょ?」
「…確かに。でも、やっぱり運命だよ。こんなに話してて落ち着く人いなかったもん。」
夕暮れ時、逆光でいろんなものがよく見えなかった。なのに。そう言って笑う君の顔はよく見えた。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
「…優馬。」
「…胡。覚えてる?」
……。
「僕は君が大好きだってこと。」
「優馬!優馬ー!」
「おい!ナッツ!」
胡はモルフェの腕を解いて僕の元に走って、抱きついた。
「優馬。ごめんなさい。私、私。ずっと。あなたのことを…」
「いいんだ。いいんだ。僕こそ、君にそんな名前で呼ぶな、なんて怒鳴ってごめん。傷付いたよな。」
「ううん。もう大丈夫。なんだって、優馬が私に謝りに来てくれたんだもん。」
「おい。ナッツ。戻ってこいよ。」
胡はモルフェの方を向き、こう言った。
「モルフェ…さん。ごめんなさい。騙すようになっちゃって。本当に…」
「ふざけるなよ。なんで、またこうなる。俺は間違ったことをしたのか。ダメだダメダメだ!許さない!こんな結果は俺が認めない!」
モルフェは刀を抜いて、僕達に…。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
あー。懐かしい。
僕の母親か。僕の父親か。
僕は椅子に座ってる。
机には何も乗ってない。食べ物も花もない。
あるのは、バーナーで温められたクッキーの型。
母は泣いてる。父はトングでその型を持ってる。僕の顔に近付けられる。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
[マスター!」
俺は、起きた。床に寝ていた。汗まみれで気持ち悪い。実際は違うが。アバターは汗をかかない。
「何がどうなってる。」
[マスター。現在、IFにログイン中の全てのプレイヤーが気絶しています。」
「なんだって!?気絶だと?」
[はい。症状は…あの時のものと一致しています。」
「…まさか、レナのと。」
[はい。」
俺は立ち上がり、3階にワープし、大きな扉を開いた。
「…っ!助け…て」
「いやっ!いやっ!」
「誰…か」
「…近づかないでっ!」
「…殺されるっ!」
「死にたくない…」
全プレイヤーは悪夢に晒されている。
「…!是非!」
僕は食い気味に承諾した。
近くにあったスタバに入り、ミル、レナさん、僕の3人で同じ席に座り自己紹介を軽く済ませた。
「…そして、本題ですが、僕達は今、白髪の男の人を探していて、彼は右腕に銀色の腕時計をしてるという特徴を知ってるんですが、レナさんは?」
「私は、彼の名前を、知ってます。」
なんだって!?名前!?
「え!?そうなんですか!?」
「まあまあ。ホス。落ち着いて店内だから。」
ミルは両手を上下に振って僕を宥めた。
「はい。彼は、モルフェ。私の元恋人です。」
「モルフェ…ですって?」
今度はミルが身を乗り出してレナさんに寄った。
モルフェ、といえば、エデンのNPCが僕のことをそう呼んでいた。
「ミルも、モルフェと関係があるのかい?」
「あ、ああ。あるよ。彼はあんた、レナを探してて、いつも私の部屋に逃げてきていた。」
「私を探してたんですか?」
「ああ。少しあんたのことも聞いたけど、なんか昔にあったの?」
「はい…。実は、私が彼に質問したんです。私のことを愛してるかって。そしたら、彼は好きだとしか言わなくて、愛してるとは言ってくれなかったんです。」
モルフェはレナさんを愛していなかったのだろうか。
「…だから、あいつは恋と愛の違いなんて気にしてたのか。」
「…やっぱり彼は私の質問を…。」
「ああ。あいつの本心はどうなのか知らないけど、少なくとも私から見たら、あんたを相当大事にしてたみたいだったよ。」
レナさんも、かける言葉を間違えた人なのか…。
しばらく、僕達3人は黙ってコーヒーを飲んだ。
…そこにレナさんが割って入った。
「…お二人はどうしてモルフェくんを探してるんですか?」
「僕達の推測だと、彼が、僕の彼女、ナッツを連れ去った犯人の可能性があるからです。」
「モルフェくんが、攫った…んですか?女の子を?」
「はい。あくまで僕たちの推測ですけど。」
「…でも、ミルさん。モルフェくんは私を探していたんですよね?」
「う、うん。」
「なら、どうして…」
「レナ。一つ加えておくと、モルフェはあんたを探してる時とナッツちゃんを攫った時でアバターが違ったんだよ。それについて、何か知ってることは?」
「い、いえ、彼はいつも同じアバター…のはずです。」
歯切れの悪い返事だった。
「何か知ってるんですか?レナさん。」
「…人の安全がかかってるなら、もう、探り探りやっている場合ではありませんよね。」
彼女は独り言を発してから、椅子をギギィと引きながら立ち上がった。
「ミルさん、ホスさん。これから行く場所は秘密にして下さいね。」
ミルと僕は彼女の雰囲気に圧倒されながら頷きレナさんに付いて行った。
モールパークを抜け、ホームパークへワープして彼女の早い足取りに合わせた。
ホームパークとは、その名の通りで、このIFで住みたいと、なった時、ペアがあれば買える有料の家の集合地である。
僕もナッツと時たまにここで家を買おうかと話した。
「着きました。」
彼女が立ち止まった家は至ってシンプルなモダン風な家だった。
レナさんは鍵をじゃらじゃらとさせながらドアを開けて僕たちを招いた。
「お帰りなさい。レナ様……と、その他のお客様。」
出迎えてくれたのは……。
黒髪、黒目、黒いスーツに身を包んだ真面目そうな女性だ。
「ただいま。リサ。」
リサと呼ばれる女の人にレナさんは耳打ちして何かを伝えた。
「…ともかく、お上がり下さい。」
僕はミルの顔を見た。ミルも僕の方を見ていたたため、顔を見合わせた。訳もわからないって感じの表情だ。
リビングに先ほどの3人に足してリサさんの1人合わせて4人で1つのテーブルを囲んだ。
「ミルさん、ホスさん。紹介します。彼女はリサ。モルフェくんの元秘書です。」
「よろしくお願いします。」
リサさんはなんとも行儀良く姿勢良く礼をした。
「リサ、こっちはミルさん。こっちはホスさんだよ。」
僕達もそれぞれぎこちないながらも礼をした。
「…というか、モルフェの元秘書なんですか!?」
ようやく、頭が働いた僕はリサさんに聞いた。
「はい。私はマスターの、モルフェの元秘書です。」
信じられない。さっきまで犯人の情報なんて空を掴むようなものしかなかったのに、今や名前も元恋人や元秘書が目の前にいる。
「2人は家族か何かですか?」
僕は向かい側に座るレナさんとリサさんに聞いた。
「いやいや、家族というより、リサは居候です。」
話は少し遡る。
リサさんはモルフェから離れた後、ホームパークに行き自分の住む場所を見つけようとした。しかしお金がないため途方に暮れていた。道端に蹲っていると、レナさんが偶然見つけたらしい。そこからリサさんを引き取る形でレナさんは家に招いたらしい。
話し終えるとレナさんは2階にお菓子を取りに行くと言っていなくなってしまった。
このあらすじを聞き、ミルは続いて質問した。
「リサ…だっけ。あんた、"元"ってどういう意味?」
「私は、マスターにクビにされてしまったのです。」
「いつからさ。」
ミルの声が低くなっている。
「今から約1週間前です。」
「じゃあ、あんたは、ナッツちゃんがモルフェに連れてかれるのも、そのずっと前からのあいつの虐待も知ってるんだね。」
「はい。承知しています。」
ミルは普段とは違う冷たい雰囲気を纏っている。
彼女は席を立ちリサさんの方に詰め寄った。
「あんたは!それでもあいつを止めようとはしなかったの!?」
ミル…。
「ナッツちゃんが苦しい思いをしてる時、あんたは見て見ぬふりをしたの!?」
……。
「あんたは彼女を見殺しにしたの!?」
ミルは、拳を上げ…。
いや、ダメだ!殴るなんて!
「ダメだ!彼女はまだ何も言ってない!」
僕はミルの振り上げた腕を抑えた。
「ホス。手を離せ。こいつはあの子が傷つけられるのを黙って見てたんだよ。殴られても文句なんか言えないでしょ。」
「ミル!落ち着け!」
「ホス!あんたこそ!平気なの!?今、目の前にあいつの共犯者がいるんだよ?」
「…僕は、知れれば良い。ナッツが無事かどうか。」
その言葉を聞いてミルは力の入った拳を緩めた。
「ミル様。私は誤ちを犯しました。私がマスターの元から去らずに必死に止めていればナッツ様を精神的、肉体的に傷つけずに済んだはずです。ですが、私は…」
リサさんは僕達に謝罪した。深々とお辞儀をして、声色もしんしんとしながらも誠意の感じるものだった。
「…私は、勇気が持てなかった。」
リサさんに繋がるようにミルが話し始めた。
「私は4ヶ月前から知ってるんだ。彼女が小さな声でごめんなさい、ごめんなさいって言っていたのを。それをしてるのがモルフェだって分かったのは間もなかった。」
ミルはナッツが虐められていることを…
「なのに、私は止められなかった。どう止めればいいのか分からなかった。」
知っていたのに、無視した。
「長い間、ずっと悩んでた。怖かった、なんてあの子と比にならないだろうけど…」
……。
「ホス。今更かもしれない。けど言わせて欲しい。…ごめん。」
……。
「みんな、彼女を、ナッツを助けられた。けどできなかったんだ。その理由が恐怖でも、力不足であっても、誤ちであっても。」
ミルの下げた頭をトントンと叩く。
「だから、僕は誰が悪いとか、誰の責任なんてことは問い詰めない。僕が望むのはナッツの無事だけだ。」
「…ホス。」
「ホス様、ミル様。私も、彼女を救いたいです。私の誤ちを正したいです。」
「ああ。リサさん。頼むよ。彼の元秘書ってだけでわかる情報があるかもしれないからね。」
「ありがとうございます。全力でサポートさせていただきます。」
僕達3人が握手し合っていると、2階からレナさんがやってきた。
「3人とも小麦は大丈夫?」
なんとも気が抜ける問いかけだ。
「あ。私、小麦アレルギーだよ。」
ミルはそれに答えた。
「ミル様。ゲーム内ではアレルギー反応は出ませんよ。」
レナさんお手製のクッキーを食べて僕達3人の気も落ち着いた頃。
「皆様。私はマスター、モルフェの居場所を知っています。そしてある条件を満たせればそこに連れて行くこともできます。」
リサさんは言った。
僕は彼女の発言に質問を投げた。
「条件って?」
「マスターが今いる場所から離れることです。」
「どういうこと?」
ミルも質問した。
「マスターは今、IFの制御室、イデ城に閉じこもっています。ナッツ様を連れ込みながら。そしてイデ城の開放条件はマスターが他のパークに行くこと、また、マスターがIFからログアウトすることです。」
「それなら、モルフェくんがログアウトするのを待っていれば開放されるんじゃ…」
レナさんが発した言葉に僕も納得だった。
「マスターはここ数日、ずっとIFにログインしたままです。ログアウトした軌跡はありません。」
「…だから、直接誘き出さなきゃいけないのか。」
僕は理解を改めた。
「でも、どうやってやるんだ?」
「……。」
「……。」
「…私が囮になる。」
そう口を開いたのはレナさんだった。
「私なら、モルフェくんを外に出せる。」
「…確かに、マスターはレナ様をお慕いしています。それなら…」
「でも。良いのか?」
少し勢いづいた会話の流れを止めるようにミルはレナさんに言った。
「…うん。私も、彼に言いたいことがあるから。」
「…そう、か。」
「…であれば、レナ様と私がイデ城の前までワープします。そして、マスターを誘い出します。
誘い出せたら、お二人、ミル様とホス様にご連絡します。受け取ったらイデ城の内部にワープさせます。申し訳ありませんが城内のどこにナッツ様がいるか、私には分かりません。ですのでお二人で探してください。」
僕とミルは頷き答えた。
「ナッツ様を見つけたら、ワープ先をホームパークに指定してワープしてください。成功したらメッセージを私に送ってください。私とレナ様も状況を見て離脱します。」
「その後、モルフェがナッツちゃんがいないことに気づいたらどうするんだ?」
「…私が対処します。」
リサさんの言葉に嫌な気を感じた。
「とにかく、成功したら、3人の皆様はすぐにナッツ様にリアルでの居場所を聞きだし身柄を確保してください。私はリアルには介入できませんので、そちらは頼みます。」
「…分かった。」
僕は震える手を抑えて言った。
「作戦の実行は明日の朝に始めます。始める前にここに来てください。」
ミルはアダルトパークに戻り、明日から何日か休むことを伝えに行った。
リサさんはレナさんが貸してくれている部屋に戻ってしまった。クビにした上司にまた会いに行くのだから感情の整理が必要だろうと思う。
それで言えば、レナさんも、である。
「レナさん、大丈夫です…か?」
「う、うん。」
空が暗くなりリビングのランプの光が壁に色んな影を映している。
「聞いても…いいですか?」
彼女は小さく頭を縦に振った。
「…モルフェに何を伝えようとしてるんですか?」
「私、彼に質問したって言ったわよね。」
「…はい。」
「なんであんな質問したか、分かる?」
「…いいえ。」
「私、愛が欲しかったの。誰かに好きになってもらうんじゃなくて、愛して欲しかったの。完璧な家族が欲しかった。子供と私と夫がいる生活がね。私にとってはそれだけが全てだった。」
……。
「私には、夫がいなかった。それが嫌だった。だからこの"夢が叶うゲーム"を始めたの。夫を見つけたかったから。」
「…それで、見つけたのはモルフェですか?」
「…うん。彼は私を大切にしてくれた。私も彼が好きだった。」
……。
「私は、彼を夫に選ぶために質問した。"愛してくれる?"って。結果はさっき言った通り。彼は"好きだ"としか言ってくれなかった。」
………。
「…その時、私、彼に言ったの。"好きと愛してるは違う"って。その時の私は分かっていた、好きと愛することの差を。でも、今は分からなくなった。」
「…どうしてですか。」
「私が子供達を産んだ時、産むことに反対した親がいた、妊娠したことを知って私から去ったリアルの"彼"がいた。私が産んだ子達を抱えて泣いて喜んでたの。」
………。
「…親も"彼"も私を愛していないと思ってた。だから子を捨てろって言ったんだと思ってた。でも違った。どれもこれも、私を愛してくれて考えてくれたことだった。それを知って分からなくなった。愛も、好きという気持ちの差も、それ自体ですら分からなくなった。」
……。
「だから、私は彼に、モルフェくんに謝りたいの。あんな別れ方をしてごめんって。あの時、私は人の愛を判別できるって思い込んでいたって。そのせいで今まで苦しませてごめんって。」
…。
「…ごめんなさい。……彼が、ナッツさんを連れ去ったのは私にも責任がある。」
「…そんな、ことは…」
「私は誤ちを犯した。だから、私も責任を取る。囮になるのも、彼の心を治すのも。私がしなきゃいけないことなの。」
「…僕も、失敗しました。だから、こんなことになってるんです。リサさんとミルにも言いましたけど、誰が悪いとか、原因とか、関係ないんです。ナッツが笑って親のもとに帰れるようにできれば、それでいいんです。」
「…ホス。…私の心配してくれてありがとね。」
「え?どうして…」
「だって私が元彼に会うのが辛いと思ったんでしょ?だから、ありがと。」
「…はい。ど、どういたしまして…?」
レナさんはふふっと笑いながらオレンジ色の髪を青薔薇のイヤリングが着いた耳にかけた。
翌日、朝。
「それでは、皆様。ナッツ様を救出しましょう!」
「「「おー!!」」」
リサさんの言葉に合わせて僕達は意気込んだ。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
「おはよう。モルフェ。」
「ああ。おはよう。ナッツ。」
彼女に軽くキスをしてベットから起きる。
「ナッツ、そのまま寝ててもいいけど早く起きろよー。」
「うん。分かったー。」
ナッツの寝起き声で口元が緩まずにはいられない。
俺はキッチンに向かい、朝食を作る。今日のメニューは、スクランブルエッグとウィンナーとベーコン。焼きたてのパンを添えてって感じかな。
冷蔵庫からオレンジジュースを2本出す。
俺用と彼女の用だ。
着火したコンロの上に油を引いたフライパンを置く。卵を3個割りフライパンの上でかき混ぜる。優雅な朝にちょうどいい音楽を流しながら。
しかし、そんな音楽にそぐわない雑な耳に響くような音が聞こえた。
[ピンポーン!!]
ドアベルだ。
「誰だ。こんな朝早くに。」
この城に来客なんて中々いないのに。
俺はドアの前に立ち、片手で片方のドアをそっと開けた。
すると目の前には、女が1人、機械が1つ立っていた。
[マスター。]
「モルフェくん。」
「何のようだ。」
[マスター。レナ様がマスターに話があると…]
「お前には聞いてない。黙ってろ。」
「モルフェくん。私、あなたに謝りたくて…」
俺はドアを力一杯開けた。ドアが壁に当たった音も聞こえた。だがどうでもいい。
「今更何を?なんだ、こいつから聞いたか?俺がIFのゲームマスターだって。世界一の金持ちだって。だからよりを戻したいってか?」
「違う。私はあの時のことについて謝りたくて…」
「謝る?必要ない。今の俺には彼女がいる。君はもう必要ない。君が俺に言ったことと同じだ。俺は君が好きだった。でも好き止まりだったのさ。でも今は違う。俺は彼女を愛してる。
彼女のためを思って、彼女を救ったんだ。どうだ?すごいだろ?君にそんなことができるか?愛する人のために行動できるか?」
「いや、モルフェくん…」
「できないよな?君は自分のことばっかりだ。俺の話を聞きすらしなかった。俺が何を思って君を想っていたのか、その理由を聞かなかった。」
「…モルくん。ごめんなさい!」
「…は?」
「あなたの言う通りだった。私はあなたの話を聞かないで一方的に別れた。私が別れを切り出した理由も言わないで去った。だから今、ちゃんと説明させて。それで謝らせて。」
「…それで?どうなる?君は説明するだけして、謝るだけ謝って、それで、俺は、何すればいい?許せってか?できるかよ。そんなこと。」
「……。」
「謝るなんて、結局、自己満足さ。君が俺に恩返ししたいって言ったあの時から君はずっと自分のことばっかだ。自己満足だ。」
「私は、あなたが心配で…」
「…心配か。じゃあ今まで何してた?カズトのところに行って何してた?言ってみろよ。」
「…っ!何でそれを!」
「はっ。ほらな。どうせあいつに乗り換えたんだろ?だけど、もうあいつは殺した。残念だったな。まぁ、でも君にとっては数ある男のうちの1人に過ぎないんだろうなぁ。」
「…っ!モルフェくん!君の方こそ!女の子を連れ去ってるんでしょ!?私よりももっとおかしいし、イカれてる!」
「君の方こそ!」
と、息を吸った時、声がした。聞き慣れた声だった。
「モルフェ!!助けて!!」
「ナッツ!」
1分30秒前。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
R:突入開始(既読)
H:了解(既読)
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
僕とミルは城の中にワープされた。
「ここが、イデ城。」
ミルは城の装飾や辺りを見回している。
「ミルは1階を頼む。僕は2階を。」
「了解。」
僕は階段を登り2階に向かった。
登った途端に気づいた。ある声に。
「モルフェー。大丈夫ー?」
部屋から"彼女"が出てきた。
「ナッツ…?」
「…っ!嫌!」
「ナッツ!」
彼女は僕を見るなり走って逃げて行った。
「おい!どうして…」
…そうだ、彼女にとってモルフェも僕も同じ"あのホス"なんだ。いじめられ、怒鳴られたんだ。
じゃあ、どうすれば…。
「ナッツちゃん!こっちだよ!」
っ!ミル!
ミルはナッツをある部屋に入れた。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
「大丈夫?ナッツちゃん。」
「う、うん。ありがと。でもあなたは…」
「私はミル。あなたを助けにきたの。あなたは騙されてる。あのモルフェっていう男に。」
「え?モルフェが私を騙してる?」
「そう、あなたに酷いことをしたホスもモルフェ。だから、今、扉の外にいる彼こそが本物のホス。あなたの本当の彼。」
「…そんな。」
「一旦、ホスに会おう?」
「…う、うん。」
私は座り込んだナッツちゃんを立たせ扉を開けた。
「ナッツ!」
「…!」
ホスはナッツちゃんを抱いた。
「ナッツ。ごめん!僕が君にあんなこと言わなきゃ、君はモルフェに騙されなかったのに。本当にごめんよ。」
「…うん。」
…?それだけ?ホスに言う言葉って。
ナッツちゃんは大きく息を吸って、
「モルフェ!助けて!!」
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
「ナッツ!」
レナから目を逸らし彼女の方へ向かおうとした、その時。右手を掴まれた。
「後にしてく…れ。」
[一叶。]
掴んだのは、"リサ"だった。
顔を歪ませ、目に涙を浮かべ、力は入ってないが精一杯に俺を止めようとしている。
……。だが、ダメだ。行かなくちゃ。彼女を助けなきゃ。
俺は掴んだ手を振り解いて、声がする方へワープした。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
「ホス!」
ミルが僕をナッツから引き剥がす。
その後すぐ、ヤツが現れた。
白い刃をスレスレに避けるが彼女はヤツの腕の中にいる。
「ナッツは、俺のものだ。」
「…お前が、モルフェ。」
「モルフェ。やめるんだ。こんなこと間違ってる。」
ミルは彼を見ると説得し始めた。
「ミル。君には関係ない。俺は彼女を救ってる。」
……。
「…救ってる?…ふざけるなよ!人の人生めちゃくちゃにしやがって!」
「めちゃくちゃにしてるのはお前の方だろ。ホス?ナッツに暴言、言って苦しませただろ?」
「……っ。」
「モルフェくん!こんなこと止めようよ!」
レナさんとリサさんも追いついた。
「マスター。お願いです。」
「あー。そうか、そうか、みんな、寄ってたかって俺を敵にしたいんだな。だが言わせて貰えばみんな、ここにいるみんな、誤ちを犯してる誰もが、ミスをしてる。言葉の掛け方、勇気の出し方、行動する時間。」
……。
「ナッツは俺を選んだんだ。別に強要してない。最初に来るかどうかも聞いた。付き合っていいか、も聞いた。それに彼女は同意した。俺は何も間違ったことなんてしてない。」
そうだ。ナッツに対して
……「僕をその名で呼ぶな!」……
なんて言って悲しませたのは僕だ。
怒鳴っただけで理由も謝罪も言わなかった。彼女なら分かってくれると、どこかで思っていた。だから、彼女は今ヤツの腕の中にいる。
…でも、みんな、誤ちを正そうとしてる。
過去できなかったことを今やろうとしてる。
過去しなかったことを今しようとしてる。
過去してしまったことを今直そうしてる。
僕も、向き合うんだ。
「ナッツ。」
「……。」
「君は覚えてるかな。僕は塾帰りで夜遅かったのに、君は塾の前でずっと待っててくれた。寒いって言って、僕が持ってたホッカイロをほっぺに当てると暖かいって鼻を赤くして言った。」
「…。」
「これはどうかな。君が学校でいじめられていた時、僕が止めた。けど逆にボコボコにされちゃって半泣きだった。そんなみっともない僕を君は抱えて頭を撫でてくれた。」
「…ホス。」
「こんなのもある。君は僕と朝から晩まで電話したいって言って、スマホの電池がなくなっても充電しながら答えたんだ。そうしたら君のお母さんが「もうそろそろ終わりにしなさい!」って怒ってて、君は伝えたいこと言いたいことを早口で僕に言った。でも結局聞き取れてなくて次の日に同じ話をした。」
「…ユウマ。」
「…初めて会った時のこと。君は野良猫に餌をやっていた。数匹の猫に囲まれて、嬉しそうに餌をやっていた。僕はその時、家族のことで悩んでた。君はそのことに気づいたのかどうか知らないけど、僕に近寄って手を引っ張った。そしてこう言った。」
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
「猫ちゃんに餌あげてみない?」
「いいのかい?」
「もちろん!この子達、お腹ぺこぺこだから喜んでくれるよ!」
僕は彼女から貰ったひとつまみの餌を猫の口元に運んだ。そしたら、パクっと食べる…んじゃなくて舌でペロペロ舐め始めた。
「…っ!くすぐったい!」
「でしょー!」
猫を膝に乗せて優しく撫でている彼女の隣に座った。
「君は、いつもここに?」
「うん。ここに来ると忘れたものを思い出せるんだー。」
「へー。」
「君は?」
「…?ぼ、僕はたまたまここに来て、」
「そっかー。じゃあ運命だね。」
「え?」
「だって君がたまたま来た時に私がいたんでしょ?」
「うん。でも、君はいつもここにいるんでしょ?」
「…確かに。でも、やっぱり運命だよ。こんなに話してて落ち着く人いなかったもん。」
夕暮れ時、逆光でいろんなものがよく見えなかった。なのに。そう言って笑う君の顔はよく見えた。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
「…優馬。」
「…胡。覚えてる?」
……。
「僕は君が大好きだってこと。」
「優馬!優馬ー!」
「おい!ナッツ!」
胡はモルフェの腕を解いて僕の元に走って、抱きついた。
「優馬。ごめんなさい。私、私。ずっと。あなたのことを…」
「いいんだ。いいんだ。僕こそ、君にそんな名前で呼ぶな、なんて怒鳴ってごめん。傷付いたよな。」
「ううん。もう大丈夫。なんだって、優馬が私に謝りに来てくれたんだもん。」
「おい。ナッツ。戻ってこいよ。」
胡はモルフェの方を向き、こう言った。
「モルフェ…さん。ごめんなさい。騙すようになっちゃって。本当に…」
「ふざけるなよ。なんで、またこうなる。俺は間違ったことをしたのか。ダメだダメダメだ!許さない!こんな結果は俺が認めない!」
モルフェは刀を抜いて、僕達に…。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
あー。懐かしい。
僕の母親か。僕の父親か。
僕は椅子に座ってる。
机には何も乗ってない。食べ物も花もない。
あるのは、バーナーで温められたクッキーの型。
母は泣いてる。父はトングでその型を持ってる。僕の顔に近付けられる。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
[マスター!」
俺は、起きた。床に寝ていた。汗まみれで気持ち悪い。実際は違うが。アバターは汗をかかない。
「何がどうなってる。」
[マスター。現在、IFにログイン中の全てのプレイヤーが気絶しています。」
「なんだって!?気絶だと?」
[はい。症状は…あの時のものと一致しています。」
「…まさか、レナのと。」
[はい。」
俺は立ち上がり、3階にワープし、大きな扉を開いた。
「…っ!助け…て」
「いやっ!いやっ!」
「誰…か」
「…近づかないでっ!」
「…殺されるっ!」
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