21 / 33
宝物と、山の子と。
3-3
しおりを挟む
「あそぼうまさつき!みんなであそぼう!」
子供達の中では一番年長者(とはいっても小学校低学年くらいだが)の男の子の一言で、今までどこかに隠れていた子供たちがわあっと僕のまわりに集まってきた。
年齢もまちまちなら服装もばらばら。オーバーサイズのTシャツを着ている子供もいれば、時代劇に出てきそうな着物の子もいる。おまけに靴を履いてない子まで……と、全然統一感がない。
でもそのおかげで何人いるか数えやすかった。1.2……ざっと10人か。
しかし、遊ぶといったっていったいなんの遊びをすればいいんだか。ゲーム機なんて持ってるようには見えないし。僕はさっき遊びを持ちかけた子に聞いてみた。
「んっと……かくれんぼかな。もちろんまさつきが鬼じゃ!」
どうもこの子がリーダー格なんだろうか。またしても彼の一言にわあっと全員が同調する。
「分かったよ、僕が鬼ね。でも線路に出たりとか危ないところに行っちゃダメだよ」
「ああ、わかっとる。たえ様に迷惑はかけん」
この子たちは駅長のことをそう呼んでるのか。なんて心の隅で思いながら、僕は準備を始めた。
懐かしいな、かくれんぼなんて何年ぶりだろう。記憶をたどってみても、そうだな……小学生の頃、この子たちと同じくらいの年齢の時に遊んだくらい……かな?
さて、ホームの柱でカウントダウン……と。
ーもういいかい。
ーまあだだよ。
ーもういいかい。
ーもういいよ。
顔を上げると、さっきまでの喧騒はどこへやら……だ。風がホーム脇の草を撫でる音しかしない。
この会社は単線……つまり線路が一本しかない。なのでホームも一つしかないんだけど、一応臨時用のホームが向かいにあるんだ。けどほとんど使われたことがなくて草ぼうぼうだけど。
そして今となっては稀少な木製のロングベンチが、改札から入ってすぐの場所とホームの後方に一つずつ。本当にシンプルな作りだ。
そして錆びついた広告看板が数枚立っている程度で、もちろんホーム柵もドアも付けられていない。当たり前といえば当たり前だけどね。そんな物を必要としないくらい少ない乗降者なんだし。
さてさて、みんな一体どこへ消えたんだか……
窓口の寄さんに聞いてはみたけど「僕に聞くのは反則ですよ」ってにっこり笑顔で返されちゃったし。まあしょうがない、自分の力でとことん探すしかないか。
幸いにも次の電車到着まで40分近くある。ゆっくり探してみましょうか……と思った瞬間、正面の柱の陰から、ふわりと風になびく髪の毛が。
回り込んでまずは一人目。最初は女の子だ。
「え、もう⁉︎ まさつきはやすぎ!」おかっぱ頭の女の子が、驚いた目で僕をみていた。
もう一度耳をすますと、柱の上からずずっと鼻水をすする音が。
はい二人目。上手いこと柱の梁に隠れていたみたいだけど、その音までは隠せなかった。
「うそぉ……」と言葉少なに話すその子にティッシュを渡し、僕は残りの八人を探しにいった。
子供達の中では一番年長者(とはいっても小学校低学年くらいだが)の男の子の一言で、今までどこかに隠れていた子供たちがわあっと僕のまわりに集まってきた。
年齢もまちまちなら服装もばらばら。オーバーサイズのTシャツを着ている子供もいれば、時代劇に出てきそうな着物の子もいる。おまけに靴を履いてない子まで……と、全然統一感がない。
でもそのおかげで何人いるか数えやすかった。1.2……ざっと10人か。
しかし、遊ぶといったっていったいなんの遊びをすればいいんだか。ゲーム機なんて持ってるようには見えないし。僕はさっき遊びを持ちかけた子に聞いてみた。
「んっと……かくれんぼかな。もちろんまさつきが鬼じゃ!」
どうもこの子がリーダー格なんだろうか。またしても彼の一言にわあっと全員が同調する。
「分かったよ、僕が鬼ね。でも線路に出たりとか危ないところに行っちゃダメだよ」
「ああ、わかっとる。たえ様に迷惑はかけん」
この子たちは駅長のことをそう呼んでるのか。なんて心の隅で思いながら、僕は準備を始めた。
懐かしいな、かくれんぼなんて何年ぶりだろう。記憶をたどってみても、そうだな……小学生の頃、この子たちと同じくらいの年齢の時に遊んだくらい……かな?
さて、ホームの柱でカウントダウン……と。
ーもういいかい。
ーまあだだよ。
ーもういいかい。
ーもういいよ。
顔を上げると、さっきまでの喧騒はどこへやら……だ。風がホーム脇の草を撫でる音しかしない。
この会社は単線……つまり線路が一本しかない。なのでホームも一つしかないんだけど、一応臨時用のホームが向かいにあるんだ。けどほとんど使われたことがなくて草ぼうぼうだけど。
そして今となっては稀少な木製のロングベンチが、改札から入ってすぐの場所とホームの後方に一つずつ。本当にシンプルな作りだ。
そして錆びついた広告看板が数枚立っている程度で、もちろんホーム柵もドアも付けられていない。当たり前といえば当たり前だけどね。そんな物を必要としないくらい少ない乗降者なんだし。
さてさて、みんな一体どこへ消えたんだか……
窓口の寄さんに聞いてはみたけど「僕に聞くのは反則ですよ」ってにっこり笑顔で返されちゃったし。まあしょうがない、自分の力でとことん探すしかないか。
幸いにも次の電車到着まで40分近くある。ゆっくり探してみましょうか……と思った瞬間、正面の柱の陰から、ふわりと風になびく髪の毛が。
回り込んでまずは一人目。最初は女の子だ。
「え、もう⁉︎ まさつきはやすぎ!」おかっぱ頭の女の子が、驚いた目で僕をみていた。
もう一度耳をすますと、柱の上からずずっと鼻水をすする音が。
はい二人目。上手いこと柱の梁に隠れていたみたいだけど、その音までは隠せなかった。
「うそぉ……」と言葉少なに話すその子にティッシュを渡し、僕は残りの八人を探しにいった。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
愛された側妃と、愛されなかった正妃
編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。
夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。
連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。
正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。
※カクヨムさんにも掲載中
※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります
※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。
俺を振ったはずの腐れ縁幼馴染が、俺に告白してきました。
true177
恋愛
一年前、伊藤 健介(いとう けんすけ)は幼馴染の多田 悠奈(ただ ゆうな)に振られた。それも、心無い手紙を下駄箱に入れられて。
それ以来悠奈を避けるようになっていた健介だが、二年生に進級した春になって悠奈がいきなり告白を仕掛けてきた。
これはハニートラップか、一年前の出来事を忘れてしまっているのか……。ともかく、健介は断った。
日常が一変したのは、それからである。やたらと悠奈が絡んでくるようになったのだ。
彼女の狙いは、いったい何なのだろうか……。
※小説家になろう、ハーメルンにも同一作品を投稿しています。
※内部進行完結済みです。毎日連載です。
私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。
MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。
悪役令息、前世の記憶により悪評が嵩んで死ぬことを悟り教会に出家しに行った結果、最強の聖騎士になり伝説になる
竜頭蛇
ファンタジー
ある日、前世の記憶を思い出したシド・カマッセイはこの世界がギャルゲー「ヒロイックキングダム」の世界であり、自分がギャルゲの悪役令息であると理解する。
評判が悪すぎて破滅する運命にあるが父親が毒親でシドの悪評を広げたり、関係を作ったものには危害を加えるので現状では何をやっても悪評に繋がるを悟り、家との関係を断って出家をすることを決意する。
身を寄せた教会で働くうちに評判が上がりすぎて、聖女や信者から崇められたり、女神から一目置かれ、やがて最強の聖騎士となり、伝説となる物語。
黒瀬部長は部下を溺愛したい
桐生桜
恋愛
イケメン上司の黒瀬部長は営業部のエース。
人にも自分にも厳しくちょっぴり怖い……けど!
好きな人にはとことん尽くして甘やかしたい、愛でたい……の溺愛体質。
部下である白石莉央はその溺愛を一心に受け、とことん愛される。
スパダリ鬼上司×新人OLのイチャラブストーリーを一話ショートに。
友人(勇者)に恋人も幼馴染も取られたけど悔しくない。 だって俺は転生者だから。
石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていた魔法戦士のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもない状態だった。
だが、此の状態は彼にとっては『本当の幸せ』を掴む事に必要だった
何故なら、彼は『転生者』だから…
今度は違う切り口からのアプローチ。
追放の話しの一話は、前作とかなり似ていますが2話からは、かなり変わります。
こうご期待。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる