トンネルを抜けると、そこはあやかしの駅でした。

アラ・ドーモ

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宝物と、山の子と。

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「あそぼうまさつき!みんなであそぼう!」
 子供達の中では一番年長者(とはいっても小学校低学年くらいだが)の男の子の一言で、今までどこかに隠れていた子供たちがわあっと僕のまわりに集まってきた。
 年齢もまちまちなら服装もばらばら。オーバーサイズのTシャツを着ている子供もいれば、時代劇に出てきそうな着物の子もいる。おまけに靴を履いてない子まで……と、全然統一感がない。
 でもそのおかげで何人いるか数えやすかった。1.2……ざっと10人か。

 しかし、遊ぶといったっていったいなんの遊びをすればいいんだか。ゲーム機なんて持ってるようには見えないし。僕はさっき遊びを持ちかけた子に聞いてみた。
「んっと……かくれんぼかな。もちろんまさつきが鬼じゃ!」

 どうもこの子がリーダー格なんだろうか。またしても彼の一言にわあっと全員が同調する。

「分かったよ、僕が鬼ね。でも線路に出たりとか危ないところに行っちゃダメだよ」
「ああ、わかっとる。に迷惑はかけん」
 この子たちは駅長のことをそう呼んでるのか。なんて心の隅で思いながら、僕は準備を始めた。
 懐かしいな、かくれんぼなんて何年ぶりだろう。記憶をたどってみても、そうだな……小学生の頃、この子たちと同じくらいの年齢の時に遊んだくらい……かな?

 さて、ホームの柱でカウントダウン……と。
ーもういいかい。
ーまあだだよ。

ーもういいかい。
ーもういいよ。

 顔を上げると、さっきまでの喧騒はどこへやら……だ。風がホーム脇の草を撫でる音しかしない。

 この会社は単線……つまり線路が一本しかない。なのでホームも一つしかないんだけど、一応臨時用のホームが向かいにあるんだ。けどほとんど使われたことがなくて草ぼうぼうだけど。

 そして今となっては稀少な木製のロングベンチが、改札から入ってすぐの場所とホームの後方に一つずつ。本当にシンプルな作りだ。
 そして錆びついた広告看板が数枚立っている程度で、もちろんホーム柵もドアも付けられていない。当たり前といえば当たり前だけどね。そんな物を必要としないくらい少ない乗降者なんだし。

 さてさて、みんな一体どこへ消えたんだか……
 窓口の寄さんに聞いてはみたけど「僕に聞くのは反則ですよ」ってにっこり笑顔で返されちゃったし。まあしょうがない、自分の力でとことん探すしかないか。
 幸いにも次の電車到着まで40分近くある。ゆっくり探してみましょうか……と思った瞬間、正面の柱の陰から、ふわりと風になびく髪の毛が。
 回り込んでまずは一人目。最初は女の子だ。
「え、もう⁉︎ まさつきはやすぎ!」おかっぱ頭の女の子が、驚いた目で僕をみていた。
 もう一度耳をすますと、柱の上からずずっと鼻水をすする音が。
 はい二人目。上手いこと柱の梁に隠れていたみたいだけど、その音までは隠せなかった。
「うそぉ……」と言葉少なに話すその子にティッシュを渡し、僕は残りの八人を探しにいった。
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